機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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第十七話 伝説との邂逅

 地上でなお南アフリカ決戦が続けられていたC.E.七一年一月初旬。

 第二次世界樹攻防戦においてL1宙域の主権を失ったZ.E.O.N.側は、それまで通商破壊部隊の補給拠点としていた世界樹要塞に替わり、新たなる補給拠点となる基地の整備を進めていた。

 それらは、暗礁宙域や民間が使用している航路上等に建設され、重要度の高いものには、Z.A.F.Tが開発したアクティブステルス装置を導入し、その存在を可能な限り隠蔽するものもあった。

 

 そんな補給基地の一つに、二隻のZ.A.F.T艦艇が入港を果たした。

 ナスカ級とローラシア級の二隻である。

 ナスカ級の艦名は"ヴェサリウス"、そしてローラシア級の艦名は"ガモフ"。

 この二隻は何を隠そう、Z.A.F.Tのエースパイロットであるラウ・ル・クルーゼ少佐が指揮する部隊の旗艦と所属艦なのである。

 

 二隻は、任務であった宇宙海賊討伐を終えて、本国への帰還の途につくべく、この補給基地で必要な補給を受けるべく立ち寄ったのであった。

 

「はー、やっと本国に帰れるぜ。これで、あのデブリに隠れてちょろちょろと戦う宇宙海賊連中とは暫くお別れだな」

 

 そんな二隻の内の片割れ、ヴェサリウス艦内に設けられた士官室と呼ばれる一室。

 パイロットやクルー等が休息を得る為に設けられたその室内で、ザフトレッドの赤い軍服を着込んだ五人の隊員が、任務の疲れを癒すべく雑談していた。

 

「だがディアッカ、東洋の古い言葉に"家に帰るまでが遠足"って言葉もあるぞ。途中で他の宇宙海賊と遭遇しないとは限らないから、油断するなよ」

 

「なぁラスティ、何だその家に帰るまでが遠足って、聞いた事ないぞ?」

 

「家に帰るまで油断してはいけないって意味だよ。あれ? 知らない?」

 

 その五人とは、誰であろうラスティ達五人である。

 ラスティは自身の口にした言葉を、他の三人にも知っているかどうか尋ねるが、他の三人も首を横に振るのであった。

 

「でも、ラスティの言う通り。ここはまだ戦場です、あまり油断し過ぎないようにしないと」

 

「ふん、何が戦場だ。戦場とは、激しく火線が飛び交い一瞬の判断が生と死を分かつ極限の緊張感を持つ場所の事だ。宇宙海賊との戦闘など、射撃訓練などと変わらん!」

 

 言葉は知らずとも、その意味については同意を示したニコルに、イザークが噛みつく。

 と言うのも、実は彼ら五人は、クルーゼ少佐指揮の部隊へと配属されて以来、今回の様な宇宙海賊の討伐など、治安維持の任務に従事しており。

 まだ配属以来一度も、地球連合軍との戦闘を経験していなかった。

 

 おそらく最高評議会議員たちのご子息という事で、比較的安全な任務等に従事させるように上が取り計らったのだろうが。

 イザークにとっては、それが気に入らなかった。

 彼は、Z.A.F.Tを代表する軍人であるクルーゼ少佐の下に配属されれば、最前線に赴き、そこで地球連合軍相手に戦い、華々しく活躍する事を夢見ていた。

 所が、現実は配属以来、第二次世界樹攻防戦等にも参加する事無く、最前線からは程遠い場所で、軍人どころかただの犯罪集団である宇宙海賊を討伐する日々。

 

 これにイザークはほとほと嫌気がさしていた。

 

「だけどイザーク、宇宙海賊の討伐や治安維持も、全体からすれば重要な任務だし。確かに派手さはないけど、地球連合軍相手に戦うのと優劣の差はそんなにないんじゃないか?」

 

「ラスティ、俺は治安維持の重要性は重々承知している。俺が言いたいのは、Z.A.F.Tの名だたるエースであるクルーゼ隊長が指揮する部隊であるにも拘らず、与えられる任務がどれも分不相応なものばかりな事が気に入らないんだ!」

 

「でもさ、仕方ないんじゃないか。確かにクルーゼ隊長は自他とも認めるエースだけどさ、俺達はまだ、知識はあっても経験が足りない、周りから見ればまだまだ半人前。しかも、漏れなく最高評議会議員の子供という血の肩書まである。……下手に最前線に出して相手のエースと出会ったり、万が一戦死、なんて事になったら。それこそ軍のお偉いさんの首がどれ程飛ぶことになるか」

 

「っ、だ、だが! 国家の為に戦って戦死する事は、軍人としての本望だろうが!?」

 

「確かに、名誉の戦死は軍人の名誉かもしれないけどさ。俺達は、軍人である前に、両親にとってはかけがえのない子供なんだぜ。親に先立つは不孝、両親より先に死ぬなんて最大の親不孝をイザークは望んでるのか?」

 

「そ、それは……」

 

 当然彼らの両親も、彼らがアカデミーに入学した時から、心のどこかでその時が訪れる覚悟はしているだろう。

 だが、やはり事前に覚悟はしていても、実際にその瞬間が訪れた時に取り乱す事も悲しむこともなく、淡々と事実を受け入れられるかどうかは分からない。

 しかし、親が子の死を、あるいはその反対を、淡々と受け入れられる等、ほぼありえないだろう。それこそ、親子の縁を切っているなどの、よほどの事情でもない限り。

 

「ま、焦る気持ちも分からなくはないけどさ。今は経験を積んで、周りから一人前って認められるようになってからでも、イザークの望む戦場に赴くのは、遅くはないんじゃないか? な、アスラン?」

 

「え? あぁ、そうだな……」

 

 こうして、五人が雑談を行っていると、不意に、室内に警戒体制への移行を告げる第三種戦闘配置のアナウンスが流れる。

 

「お? 何だ?」

 

「何かあったんでしょうか?」

 

「艦橋に行ってみよう!」

 

 いの一番に艦橋へと向かうアスランの後に続き、残りの四人も士官室を後に艦橋へと向かう。

 程なくして、五人はヴェサリウスの艦橋へと足を踏み入れた。

 

「君達か……」

 

「クルーゼ隊長、一体何が起こっているのです?」

 

 艦橋要員である乗組員たちが各々の定位置で自身の職務に励む艦橋内。

 その中で、司令官席に腰を下ろした、Z.A.F.T内で主に佐官以上の階級の者が着用を許されている白い制服を着用した仮面の男性。

 

 誰であろう、ラウ・ル・クルーゼ少佐に、アスランが艦橋内に足を踏み入れるや否や状況を尋ねる。

 

「補給基地の守備隊が敷設したセンサーの一つに所属不明の小型の反応が現れたのだよ、それも数は一つ」

 

「単独?」

 

「デブリか何かを誤って捉えただけって可能性はないんですか?」

 

「この補給基地目掛けて真っ直ぐ進行している物を、デブリとは呼べんさ」

 

「でも、仮に敵だとしても、反応の大きさからして戦闘艦艇でないとなると、単独というのは妙ですね」

 

「そういえば、この補給基地は民間が使用していた航路上に建設されたもの、ですよね。なら、民間のシャトルか何かの可能性は?」

 

「元々、開戦によりこの航路の民間の利用率は低下していた。更に補給基地を建設して以降は、全く利用されていない。となれば、民間シャトルの可能性も限りなく低いと言うものだ」

 

「ではクルーゼ隊長は、やはり接近中の反応は敵だと?」

 

「現状ではその可能性が一番高い」

 

「だけどさ、捉えたのは小型の反応が一つなんでしょ? だったら幾ら何でも、この補給基地には守備隊だっているんだぜ、それを単独でって、どう考えても無謀だろ」

 

「確かに、ディアッカの言う通り、普通に考えれば自殺行為に他ならないが。私としては、少し胸騒ぎがしてね。そこで、展開中の補給基地守備隊の隊長にかけ合い、我が隊からも戦力を抽出する事とした」

 

 クルーゼ少佐の口から自らの隊からも戦力を出す、との言葉が漏れた途端、イザークの目の輝きが一段と増した。

 

「なら俺が出ます! クルーゼ隊長、俺に出撃の許可を!?」

 

 そして、堪らず自ら出撃を上申するのであった。

 

「残念だがイザーク、君を出撃させることは出来ない」

 

「な! 何故です!? クルーゼ隊長!?」

 

 だが、クルーゼ少佐から返ってきた答えは、イザークを失望させるものであった。

 しかし、納得のいかないイザークは、理由を教えてもらうべくクルーゼ少佐に食い下がる。

 

「イザークを含め、君達五人の機体は、先の任務で受けた傷の修理がまだ完了していない。万全の状態ではない機体での出撃は許可できんさ」

 

「く……」

 

 理由を聞き、そこで漸くイザークは引き下がった。

 

「ではクルーゼ隊長、隊からは誰を出撃させるのですか?」

 

「ミゲルに出撃してもらった」

 

 と、クルーゼ少佐の口から選出した者の名が告げられると共に、艦橋のスクリーンがガモフより発艦した一機のオレンジ色のMSを映し出す。

 専用のパーソナルカラーで塗装されたジンハイマニューバを操縦するのは、クルーゼ隊の隊員の一人にして、ラスティ達の二期先輩にあたるミゲル・アイマン中尉。

 ザフトレッドではないものの、まるで夕日に照らされた様な色の機体を操り、高い機動力を生かした一撃必殺の戦闘から、"黄昏の魔弾"の異名を持つ、Z.A.F.Tのエースパイロットの一人である。

 

 しかしながら、その人となりは面倒見がよく気さくで。

 後輩であり階級も下であるラスティ達に、自身に対して敬語を使わず対等に接して構わないとするなど、ラスティ達にとってはまさに頼れる兄貴分の様な存在であった。

 

「成程、確かにミゲルなら不測の事態になっても安心できるな」

 

「ミゲルさんは隊長に次ぐエースですからね」

 

「まさに適任ってやつだな」

 

「まぁ、ミゲルなら仕方ない」

 

 人選に納得の様子のアスランにニコル、それにディアッカ。

 一方イザークも、出撃できない不満は残しているものの、人選そのものには納得の様子であった。

 

(そういえばこの展開は、確かアストレイシリーズに登場したエピソードの……。という事は単独で接近中のアンノウンって、まさか叢雲劾? でも、今回ミゲルの機体は原作と異なりジンハイマニューバだから、もしかすると……。いや、まだ分からないぞ)

 

 そしてラスティは、この状況に酷似している原作でのエピソードを思い出しながら、様々な相違点を考慮しつつ、その行く末を予想するのであった。

 

 

 

 

 ヴェサリウスより発艦し、警戒に当たる専用のジンハイマニューバのパイロットシートに身を預けるミゲルは、眼前のメインモニターを見つながらその時を待っていた。

 

「アンノウン、間もなく最終警戒ラインを突破!」

 

 そして、コクピット内に流れる通信を聞き、ミゲルは操縦桿を握り直すと、愛機のコンディションを確認し、口の端を吊り上げた。

 

「可愛い後輩たちが見てるんだ。無様な所を見せる訳にはいかねぇよな」

 

 そして、自分自身に言い聞かせるように独り言ちるのであった。

 

「アンノウン、最終警戒ラインをと──、な、何だ!? 急に加速した!? アンノウン急加速、会敵予想大幅修正、総員、第一戦闘配置! 」

 

「やっぱり敵か」

 

 メインモニターに映し出される、守備隊のMSが慌ただしく描く光の軌跡を見つめながら、ミゲルは冷静に動き出すタイミングを見極めていた。

 

「目標視認! おい、何だあれ!? 嘘だろ──」

 

「が、ガンダムだ! 敵はガ──」

 

「何だこの音楽、何処から聞こえてんだ──」

 

「マレク機、エイナリ機、ラデク機、シグナルロスト!」

 

「まさか……、相手は噂のガンダム、とはな」

 

 通信から聞こえてきた、先行した守備隊のMSパイロット達の最後の言葉を聞いたミゲルは、生唾を飲み込んだ。

 Z.A.F.T内でも第二次世界樹攻防戦の際の活躍が記憶に新しい、恐怖と同義語となりつつあるその名、ガンダム。

 その名を有する相手と直接相まみえる事となり、ミゲルは、恐怖とも興奮とも分からぬ震えを覚えていた。

 

「……きた!」

 

 愛機のレーダーがガンダムの反応を捉えるや、ミゲルは愛機を加速させ、反応に向かっていく。

 と、コクピット内にけたたましい警報音が鳴り響き、ミゲルは反射的に操縦桿を動かす。

 

 すると次の瞬間、愛機の脇をかすめるように、一対の光が流れた。

 

「何だ?」

 

 相手の先制攻撃を躱したミゲル、そんな彼の耳に、ギターやドラム、それにベースなどの楽器を用いた音に乗せボーカルの歌声が重たく響く、所謂"ヘヴィメタル"が通信回線から聞こえ始める。

 

「な!?」

 

 そして、ミゲルはメインモニターに映し出されたそれを目にする。

 背部に設けられた三基の大型ロケットブースターによる推力で、まるで流星の如く愛機に迫る、背部の大型メガ粒子砲や六連装ミサイルポッド、右腕部に二連ビームライフル、左腕部にはロケット・ランチャー。更には装甲内蔵式ミサイル等。

 更に両腕部とサブ・アーム、合わせて合計四枚ものシールドを装備する、重武装のガンダムの姿を。

 

「くっ!?」

 

 と、ミゲルはガンダムがその手に光の刃を装備している事に気が付くと、愛機をその刃の餌食にさせぬべく反射的に回避行動に移行する。

 奥歯を噛みしめながら、スラスターとAMBACを駆使して、すれ違い様に振るわれた光の刃を何とか躱すと、姿勢を立て直し、追撃に移行する。

 

「っち、何て加速性能だよ!」

 

 愛機のミゲル専用ジンハイマニューバは、精度の高い部品を厳選してチューンナップした機体で、通常のジンハイマニューバと比較して約十五パーセントの性能向上が確認されている。

 しかし、フットペダルを目一杯踏み込み、推力を最大限にまで引き上げても、前を進むガンダムに追いつけない。

 だが何とか、右腕に装備している、原作よりも大口径化したJDP2-MMX22 試製三五ミリ機甲突撃銃の射程内にまで距離を詰める事に成功すると、間髪入れずにトリガーを引く。

 

 しかし、放たれた火線はガンダムに当たる事無く空虚に宇宙の彼方へと消えた。

 

 ガンダムは、その推力に物を言わせ、直角方向へと回避してみせたからだ。

 

「えぇい、くそ!!」

 

 だが、それでもミゲルは諦めず、通信回線から絶え間なく流れる耳障りなヘヴィメタルに集中力を削がれそうになりながらも、ガンダムに何とか食らいつきながら、試製三五ミリ機甲突撃銃で攻撃を続ける。

 しかし、ガンダムは加速性能だけではない細かな動きや、サブ・アームによって展開されたシールドで防ぎながら、まるでミゲルを弄ぶかのように飛び回り続ける。

 

「それじゃそろそろ締め、いっちゃいますか」

 

 と、ガンダムのパイロットと思しき若い男性の声が聞こえたかと思えば、ガンダムが更に加速し、ミゲル機を一気に引き離す。

 そして、距離を取り旋回すると、再びミゲル機と正面から対峙する。

 

「決着をつける気か、面白い!!」

 

 迫るガンダム目掛け試製三五ミリ機甲突撃銃を撃ち続けるミゲル。

 飛来する三五ミリ弾の雨を、合計四枚のシールドで防ぐガンダム。

 

 シールドを使っている間は攻撃できまい、ミゲルがそう思った刹那。

 

「なに!?」

 

 ガンダムの背部から更に新たなサブ・アームが可動し、大型ロケットブースターにマウントしていたハイパーバズーカを装備すると、ミゲル機目掛けて弾頭を発射する。

 迫る弾頭に対し、ミゲル機は反射的に左腕に装備していたシールドを構えて受け止める。

 

「くっ!」

 

 爆音と衝撃がコクピットに伝わり、ミゲルは奥歯を噛んだ。

 そして、何とか不意打ちを凌いだと安堵した、次の瞬間。

 

「締めの一撃! 味わいな!」

 

「しま──」

 

 メインモニターに映し出された、眼前に迫るガンダムのシールド。

 それが、この戦いでミゲルが目にした最後の光景であった。

 

 ガンダムの左腕部に装備したシールドが、三基の大型ロケットブースターより生まれる推力とを掛け合わせ、その威力を倍増させたシールドバッシュを、ミゲル機にお見舞いする。

 まるでカクテルの如くコクピット内がシェイクされ、ミゲルは意識を手放し。

 一方愛機の方も、頭部やその付近をシールドバッシュで無様な姿に変貌させられると、デブリの如く宙域を漂い始めるのであった。

 

 

 

 

「さて、駆動系も問題なし……。それじゃ、そろそろフィナーレ、飾りましょうか」

 

 シールドバッシュによる左腕の影響がない事を確認すると、ミゲルとの戦いに決着をつけたガンダムのパイロットは、本来の目的である補給基地の破壊に向かおうとした。

 だがその時、破壊目標となる補給基地から、小型の反応が分離した事に気が付く。

 

「ん? 新手か?」

 

 だが、確認された反応は一つのみ。

 増援にしては少なすぎると違和感を覚えたものの、彼は対処すべく背部の大型メガ粒子砲ので狙いを定めると、トリガーを引いた。

 

 刹那、大型メガ粒子砲が吠え、一筋の光が目標目掛けて宙域を切り裂く。

 

 だが、光に飲み込まれる事がなかったのか、レーダー画面上には依然として反応は健在であった。

 

「いいねぇ、ノリのいい観客は、嫌いじゃないぜ」

 

 どうやら増援も、先ほどのミゲル同様に楽しませてくれそうな予感に、彼は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「ん? あれはシグーか? 何だ? あのバックパック?」

 

 そして、やがて相手が有視界にまで接近した所で、彼は相手の正体を確認する。

 それは、Z.A.F.Tの指揮官用MSとして知られるシグーであったが、バックパックは大型のものに変更されており、また原作から大口径化した三五ミリバルカンシステムを内装したシールドも、新型と思しきものに変更されていた。

 

「こいつも専用機ってか、いいね! ロックだね!」

 

 迫る専用シグーに向けて、二連ビームライフルやサブ・アームのハイパーバズーカを放つも、専用シグーはそれらを軽々と躱し接近してくる。

 

「戦闘中に音楽を流すとは、なかなか興味深い嗜好だな。……だが、生憎その音楽は私の好みではないので、この辺りでご退場願おうか」

 

「っ!? ガンバレルだと!?」

 

 刹那、専用シグーのバックパックの一部が切り離され、まるで意思を持っているかのようにガンダムに迫る。

 それはまさに、ガンダムのパイロットもよく知るメビウス・ゼロのガンバレルに酷似していた。

 

「ち!? 観客が演者よりも目立っちゃ、立つ瀬がないっての!」

 

 本体とは別方向から飛来するオールレンジ攻撃を前に、ガンダムのパイロットは戦闘前とは一転、舌打ちをし、苛立ちを露わにする。

 まさかシグーがガンバレルと同等の武装を装備しているなど思いもよらず、またパイロットの腕も相まって、気付けば戦闘の主導権は専用シグーに奪われ始めていた。

 

「ったく、仕方ねぇ、とっておきのパフォーマンスを使わせてもらいますか……」

 

 ガンダムのパイロットはそう呟くと、コンソールを操作し、何かのシステムを起動させた。

 すると、モニターの一つが、デブリの移動状況を表示し始める。

 

 そう、彼の呟いたとっておきのパフォーマンスとは、事前に仕込んでおいた左腕部のロケット・ランチャーをデブリに設置し、デブリそのものを質量兵器として利用するものであった。

 

「コースよーし、そんじゃ、あちらさんに気付かれないように、存分に気を引いてやるとしますか」

 

 デブリは設定したコースを進み、その先には、破壊目標である補給基地があった。

 

 まさかデブリを質量兵器として利用しているとは思ってもいないZ.A.F.T側は、ガンダムに気を取られ続け。

 やがて、デブリの存在に気付いた時には、既に補給基地への直撃は免れない状況であった。

 

「クルーゼ隊長、艦の脱出は間に合いましたが、補給基地は……」

 

「まさかデブリを質量兵器として利用するとはな、この代償、払ってもら……」

 

 と、デブリが補給基地へ直撃したのを見届けると、三基の大型ロケットブースターが唸りを上げ、ガンダムはあっと言う間に探知範囲外へと離脱していった。

 

「ちっ、あの加速性能では追撃は不可能か。……アデス、追撃は諦め救助作業を開始する。私はミゲルの機体を拾うとしよう」

 

「は! 了解しました」

 

「……どうやら、連合は通商破壊にもガンダムを投入してくるようになったか。これはおちおちしていられんな」

 

 漂うミゲル専用ジンハイマニューバの救助を行いながら、専用シグーのコクピット内で、クルーゼ少佐は苦々しく呟く。

 クルーゼ少佐の読み通り、この頃になると地球連合側は意趣返しとばかりに、Z.E.O.N.側の補給路などに対する通商破壊作戦を実行し。

 特に、A.O.C.U.はガンダムタイプのMS等、高性能機を運用する幾つかの独立戦隊を編成し、それらを通商破壊活動に従事させていた。

 

 

 

(おいおい、まさかのサンダーボルト版フルアーマー・ガンダムかよ、しかもなんだよ、原作よりさらに強化されてんじゃねぇか……。あぁ、俺、生き残れるのかなぁ)

 

 救助作業で慌ただしい艦橋から、追い出されるように再び士官室へと戻ったラスティ達五人。

 初めて目にしたガンダムとの邂逅に、五人とも圧倒され言葉がない中。

 

 ラスティは、未来への展望に不安を抱くのであった。

 

 

 

 この出来事の数日後、第二次世界樹攻防戦や南アフリカ決戦の敗北など。

 宇宙と地上との立て続けの敗北により、Z.E.O.N.の民衆の間に指導部である最高評議会、ひいてはザビ家に対する不信感や厭戦感情が漂い始めていた。

 この事態に対して、Z.E.O.N.上層部は奔走するも、今回ばかりは演説などで払拭できる程の状況ではなかった。

 

 この状況を打破するには、地球連合側からこれまでにない程の勝利等、何らかの成果を示す他なかった。

 そんな時、Z.E.O.N.側に、地球連合側に潜り込ませていたスパイから一つの情報が齎される。

 

 それは、L3宙域にて、かつて大西洋連邦とA.E.C.が宇宙開発における相互協力のシンボルとして建造されたものの、その後両国が独自の宇宙開発を進めた為、一基のみで開発が終了し、以降は半ば放置され。

 現在では、宇宙での戦線から最も遠い事もあり、両国の疎開地として扱われているコロニー、その名をギリシャ語で太陽の都を意味する"ヘリオポリス"。

 同コロニーにおいて、大西洋連邦が新型MSを、それもA.O.C.U.のガンダムタイプに酷似したものを極秘に開発している、というものであった。

 

 この情報に対し、Z.E.O.N.上層部はこの新型MSに使用されている新技術の確保、及び、ガンダムタイプに酷似している点から、民衆の不信感や厭戦感情を払拭させるプロパガンダの材料として大変有効であると判断し。

 この新型MSの奪取計画が立案される。

 

 そして、計画の実行部隊には、プロパガンダ利用の為、国軍及びZ.A.F.Tのエースパイロットが率いる部隊が充てられる事となった。




ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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