機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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第一話 マクスウェル姓になりました、名前はラスティです

 C.E.の世界には二種類の人類が存在する。

 コーディネイターとナチュラル。

 C.E.という世界の根幹を司るこの二つの人種概念は、機動戦士ガンダムSEEDの重要な舞台装置でもあった。

 

 遺伝子工学による遺伝子調整によって強靭な肉体と優秀な頭脳を兼ね備えた新人類、それが通称コーディネイター。

 対して、そのような遺伝子調整を一切行っていない、従来通りの人類を、通称ナチュラルと呼ぶ。

 

 

 

 そんなコーディネイターの一人にして、端正な顔立ちとオレンジの髪が特徴的な少年は、自宅に設けられた自室の一角。

 勉強机の椅子に腰を下ろして、深いため息をついていた。

 

「はぁ……」

 

 少年の名は、ラスティ・マクスウェル。

 まだあどけなさが残る、六歳の少年である。

 

「はぁ……」

 

 そんな六歳の少年ラスティが、まるで人生を三十年近くも過ごして人生最大の岐路に立たされているかのようにため息をついているのには、相応の理由があった。

 

 そもそもラスティ少年が何度も深いため息をついていたのは、ラスティ・マクスウェルが将来マッケンジー性となり、ラスティ・マッケンジーとなった後に、最期には悲惨な未来を迎える等。

 自身の行く末を既に知っているからである。

 

「どうしてラスティなのかなぁ……」

 

 では何故、そんな行く末を知っているのかと言えば。

 ラスティ少年もまた、転生者なのである。

 

 正確に言えば、機動戦士ガンダムSEEDの登場人物の一人の精神と肉体を乗っ取ってしまった為、憑依転生と呼ぶのが相応しい。

 

 折角、将来は美形になるであろう片鱗をうかがわせる顔を、眉間にしわを寄せ、思い詰めたような表情を作るラスティ少年。

 もし、両親が今のラスティ少年の様子を目にしたのなら、一目散に駆け寄り心配の言葉をかけるだろう。

 だが生憎と、ラスティ少年の両親は今、リビングで仲良くテレビを見ておりラスティ少年の事に気付いた素振りはない。

 なので、必要以上に心配される恐れはない。

 

「はぁ、せめてアスラン……、いや、やっぱりイザーク。あ、でも顔に傷が……。いや、この際ラスティ以外ならもう誰でもいい気がする」

 

 思い詰め、もはや絶望に満ちたように独り言を零すラスティ少年。

 一体、ラスティ少年の未来はどれ程悲惨なものなのか。

 

 それは、一言で言い表すならば天寿を全うせぬ"死"の運命が待ち受けているのだ。

 

 ラスティ・マッケンジーという人物は、機動戦士ガンダムSEEDの第一話に登場し、そして、早々に死んだ。

 機動戦士ガンダムSEEDの敵軍たるザフトの一軍人として登場するラスティは、第一話のバックボーンたるガンダム奪取作戦に参加し、ガンダムことG兵器の奪還を試みるも、凶弾に倒れ無念の戦死となる。

 その後の話にも登場するものの、それらは写真、或いは他者の回想内での登場で、生者としてのラスティの人生は、本編第一話時点、C.E.七一年一月二五日をもって終了している。

 

 因みに、この世界の現在の年月日は、C.E.六十年一月二五日であり。

 仮にこの世界のラスティ少年が、原作通りの最後を迎える事になるとすれば、ラスティ少年の人生は、あと十一年しかない事になる。

 そう考えると、十一年後に死ぬと分かっていて、素晴らしい未来を夢見て毎日を過ごす、なんて暢気な気分には、とてもなれなかったのだ。

 

「くそ、なんで俺がこんな事に巻き込まれなきゃならないんだよ……」

 

 頭を抱え、肉体的には六歳だというのに、未来への絶望を零しまくるラスティ少年。

 何故、他にも数多いる登場人物の中にあって、よりにもよってラスティが憑依先なのか。

 神様の悪戯だとすれば、これ程理不尽な事はないと、心の中で嘆くラスティ少年。

 

 こんな事なら、憑依転生なんて望まなかった。

 と、今更悔いるが、悔いた所で二週間前までの日常は、もう戻らない。

 

 憑依転生する以前、彼はいつものように平日を過ごし、待ちに待った連休を過ごすべく、大好きなガンダムシリーズのアニメ作品を徹夜で視聴していた。

 そして、いつものように就寝して目を覚ますと、ラスティ・マクスウェルという少年に憑依転生していたのだ。

 当初は憑依転生したのが、後のラスティ・マッケンジーとは気づかなかったが。

 程なく、後のラスティ・マッケンジーと気づいた彼は、次元を超えた転生に喜ぶよりも絶望せずにはいられなかった。

 

 そして、その日から、何度枕を濡らした事か。

 だが、この世で新たな両親となったラスティ少年の父親と母親に、息子の中身が成り代わっているとも、その息子が十一年後に死亡するとも素直に発表できる筈もなく。

 必要以上に心配され、あらぬ精神病等まで疑われぬ為にも、赤の他人であるラスティ少年の両親や知り合いなどの前では、年相応のラスティ・マクスウェルを演じ、疑いの目をかわしていた。

 それでも、一人となると、やはり涙で枕を濡らした。

 

 幸い、両親に涙で枕を濡らしていると知られても、怖い夢を見た等と、肉体年齢相応の嘘で誤魔化す事は出来た。

 

「いや、でも……。もしかしたら、"この世界"では、生き残れるかもしれないしな」

 

 そんな絶望に打ちひしがれていた二週間ではあったが、ただ、この二週間、単に枕を涙で濡らし続けた訳ではなかった。

 ラスティ・マッケンジーが凶弾に倒れ死亡する、そんな未来に少しでも抗うべく、ラスティ少年は出来る範囲で出来る事を行い始めていた。

 その一つが、現在の世界情勢や国内状況等の、情報収集であった。

 

 幸い、ラスティ少年の父親であるジェレミー・マクスウェルは、行政の議員を務めている為、その手の情報を自宅にも持ち帰り、情報の入手先には困らなかった。

 だが、突然六歳の子供が、世界情勢や国内状況などを積極的に知りたがるなど、幾らコーディネイターとはいえ、親からすれば不審に思わずにはいられない。

 そこで、両親の目を盗んでは、コツコツと情報を入手し続けていた。

 

「だってこの世界は、純粋なSEEDの世界じゃないみたいだしな」

 

 そして、二週間の間に入手した情報を整理し、ラスティ少年が見出した一つの希望の光。

 それが、この世界が、ラスティ少年の知る純粋な機動戦士ガンダムSEEDの世界ではない、という事実。

 

 紀元は原作同様にC.E.である他、コーディネイターとナチュラルという二つの人種概念も存在し。

 更には、砂時計型の新世代コロニー、その総称であるプラントもまた存在する等、原作と変わらぬ部分もあるものの。

 

 そのプラントへの建造に際しての出資、所謂プラント理事国については、原作では三カ国の筈が、この世界では四カ国に変化しており。

 その内訳も、大西洋連邦・東アジア共和国・A.E.C.・A.O.C.U.と、後半二カ国に関しては原作において影も形も存在していない筈の国家である等。

 原作とは世界情勢がかなりの変化をきたしていた。

 

「そして、最大の変化と言えば、やっぱこれだよな……。Zodiac Economy Organize Nation(黄道帯経済を組織する国家)、通称Z.E.O.N.(ジオン)って、二十世紀と二十一世紀のファーストが混ざり合ってるって、そんなのありかよ」

 

 だが何よりも、原作と異なる一番のイレギュラーと言うべき存在は、このZ.E.O.N.(ジオン)であろう。

 原作の基ともなったガンダムシリーズ記念すべき第一作、機動戦士ガンダムに登場するジオン公国と同じ名を持つ国家。

 名前の由来は、地球周回軌道を黄道帯に見立て、そこに住まう自らが地球上の列強からの支配を脱し、自らの自治権確立と自由貿易圏設立を掲げたものとなっている。

 端的に言って、地球の植民地支配からの独立を標榜したものだ。

 

 

 

 

 その起源は、名前の一つと言うべき研究用コロニー"Zdiac"を中心とした、ラグランジュポイントの一つ、L5に建造されたコロニー群である。

 新世代型コロニーであるプラントの足掛かりであると同時に、地球各国が当時抱えていた人口由来の諸問題を解決する為の実験装置、としての側面も有していた。

 後に居住地よりも生産地としての機能を高めたプラントが提唱され、プラント理事国四カ国による出資によりプラントが建造された後も。

 同地点のコロニー群は、プラント理事国四カ国が独自に進める宇宙開発、及びコロニー開発の際の先例として、その存在感を示していた。

 

 しかしながら、プラント理事国四カ国の行うコロニー開発における移民政策と異なり、棄民政策を思わせる内情の違いや。

 その特殊な成り立ち故、植民地扱いの如く、地球からの搾取に、市民は不満を募らせずにはいられなかった。

 

 そんな最中、彗星の如く現れたのが、ジオン・ズム・ダイクンと呼ばれる人物であった。

 宇宙生活者の自治権確立や、ナチュラルとコーディネイターの相互理解の可能性、更には"ニュータイプ"と呼ばれる、宇宙と言う名の新たなる環境に適応した新人類の概念等。

 所謂ジオニズムを唱え、コロニーの市民のみならず、プラントの住民達からも支持を集めた。

 

 そして、C.E.五八年。

 質の高い生産品を輩出するものの、食糧の生産に関しては規制が設けられ自給自足が行えないプラント。

 一方プラントに対し、食糧生産能力の拡大により自給自足以上の食料生産能力を手に入れたコロニー。

 そんな両者が、地球の植民地支配からの独立を掲げ互いに手を取り合い誕生したのが、Z.E.O.N.であった。

 

 Z.E.O.N.の政治体制は共和制を採用し、その初代元首は、首相に当たるZ.E.O.N.最高評議会議長に選出されたジオン・ズム・ダイクンが担った。

 

 Z.E.O.N.は、その設立宣言と同時に、その主権を守るべき組織、国防隊の設立も発表した。

 しかし、この宣言は当然ながら地球側からの反感を買い、両者の関係は、武力衝突も起こり得る険悪なものへと変化していった。

 

「でも待てよ、Z.E.O.N.が存在しているって事は、ザフトが設立されない可能性もあるって事だよな……。となると、ガンダム強奪も行われないかも知れないし。いやそもそも、ジンとかザフト系モビルスーツが開発されるのか? は!? まさか、Z.E.O.N.だけにいきなりザクウォーリアなんて事はないよな」

 

 Z.E.O.N.と言う最大級のイレギュラーの存在によって、ラスティ少年は自身の運命が変化する可能性に喜びを見出していたものの。

 そのイレギュラーのお陰で、同時に自身が知る原作とはかけ離れた未来が訪れる可能性が大いにある事に、不安を抱かずにはいられなかった。

 

「そういえば、Z.E.O.N.もジオン・ズム・ダイクンもいるって事は、当然あの一家もいるんだよな……。Z.E.O.N.でもコロニーの連中はナチュラルだから、多分あの一家の面々も含めてジオン側のキャラは当然ナチュラルだろうな。ま、ガルマ様はコーディネイターでも通用しなくはないだろうが、特に厳つい三男とか、紫……。いや、前世でもジオンには美形もいたし、いやでもそれ以上に濃……、否、個性的なお顔立ちの方もいたような気がする」

 

 作品によって登場人物の差別化を図る方法は様々だ。

 口調や仕草など、様々な方法はあるが、一番分かり易いのは、何といっても個性的な外見だろう。

 派生作品を含めれば、機動戦士ガンダムから派生し、それらに登場する登場人物の数は、他のガンダムシリーズ作品群に比べ、かなりの数を誇る。

 

 その為、必然的に登場人物の差別化の為、個性的な外見を有した登場人物の数もまた、比例して多くなる。

 

 設定上ジオン公国に属してる人物が、Z.E.O.N.にも同様に存在しているかどうかは現時点では分からない。

 ただ、もし仮にそうした人物の幾人かがコーディネイターだった場合、ラスティ少年の脳内に浮かび上がった幾人かの原作同様の外見を有していると考慮すると、一体コーディネイターとはなんなのだろうかと彼は頭を抱えずにはいられなかった。

 

「ふぁ……。考え過ぎたら眠くなってきたな」

 

 眉間によっていたしわが、欠伸により久々に伸びる。

 精神年齢は肉体年齢以上のれっきとした大人であるが、肉体年齢で言えば、まだまだ六歳の子供なのだ。

 この年頃の子供にとって、十分な睡眠は発育の観点からもとても大事であった。

 

 その為、ラスティ少年はこれ以上の熟考を止めて、脳と体を休めるべく、就寝の準備に取り掛かる。

 

 ラスティ少年は机の上を片付けると、自室を後に就寝前の歯磨きや、両親へのおやすみの挨拶を経て、再び自室に戻り。

 自室のベッドに横になり、瞳を閉じるラスティ少年。

 

 程なくして、睡魔に身をゆだねると、ラスティ少年の意識は、夢の世界へと飛び立つのであった。




ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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