機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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第十八話 運命の都へ

 その知らせをラスティが聞いたのは、フルアーマー・ガンダムとの遭遇という事態はあったものの、無事に本国へと帰還し、休暇を堪能し終えて、次の任務を確かめるべく基地に出向いた時であった。

 クルーゼ少佐に基地のブリーフィングルームへと集まるように指示され、そこに集まったクルーゼ隊の面々。

 フルアーマー・ガンダムとの戦闘において脳震盪を起こしていたものの、幸い後遺症もなく、また骨折などの外傷も負う事無く、数日間の安静治療の後に無事に復帰を果たしたミゲルを含め。

 

 隊長であるクルーゼ少佐の口から、ヘリオポリスで大西洋連邦が新型MSを極秘に開発している情報や、Z.E.O.N.がそれを奪取する為の計画を立案し。

 その奪取計画に従い国軍とZ.A.F.T合同の特務部隊が編成され、その特務部隊に、Z.A.F.T側からクルーゼ隊が選任された事などが告げられた。

 

 スクリーンに映し出される資料写真、そこには、ハンガーに固定されているA.O.C.U.のガンダムタイプとは異なる、額のV字型ブレードアンテナと複眼式のセンサーカメラを備えた新型MSが写っていた。

 これには、ブリーフィングルーム内にざわめきが起こる。

 

「A.O.C.U.に続いて大西洋連邦まで新型をね。確かに、こりゃヤバイな」

 

「ふん、地球の連中が作る新型なんて、Z.E.O.N.やZ.A.F.Tの作るものに比べれば数で押すしか能がない程の性能に決まってる」

 

「イザーク、前回遭遇したあのMSの事を忘れた訳じゃないだろ? 過小評価は禁物だぞ」

 

「ち、分かったよ」

 

 説明を聞きながら、ディアッカやイザークが各々の感想を漏らし、アスランがイザークに注意を促す。

 

「でも、スパイが入手したこの情報が確かなら、この新型MSにはこれまでの連合製MSにはない新技術が使われていますし。これを無傷で奪取できれば、確かにZ.E.O.N.にとっては有益ですし、これ以降の開発の出端を挫ける可能性もありますね」

 

「でもよ、上手くいくのかね? 俺達だけならまだしも、今回は国軍と合同だろ?」

 

「でもディアッカ、国軍側はあの"赤い彗星"の異名を持つシャア・アズナブル中佐率いる部隊ですよ」

 

「ナチュラルながらクルーゼ隊長と互角の腕前って言われるあのパイロットか。まぁ、なら少しは頼りになりそうだな」

 

「むしろ、名立たるエースの足を引っ張らないように、俺達の方こそ些細なミスなどを犯さないように頑張らないとな」

 

「い、言われなくても分かってる!」

 

「おいお前ら、少しは静かにしろよ……」

 

 と、私語の多い四人に対するミゲルの注意に、イザーク・ディアッカ・ニコル・アスランの四人は口をつぐんで大人しくなるのであった。

 

(いよいよきた、俺の運命が決まるこの時が……。結局奪取作戦に参加する運命からは逃れられなかったが、出来る事はやってきた、ならもう後は、駆け抜けるだけだ)

 

 一方、ラスティはと言えば。

 いよいよ到来した、自身の運命を左右する原作の開始に、定められた運命を乗り越え、新たな運命を掴むべく、決意を新たにしていた。

 

「ラスティの奴、何だかいつにも増して気合入ってないか?」

 

「珍しいな」

 

「ですね」

 

「あ、あぁ」

 

 重要な作戦である事を差し引いても随分と意気込んでいるラスティの様子を目にした同期四人は、物珍しいと感想を漏らすのであった。

 

 

 

 こうして説明と共に出撃前のブリーフィングを終えた一向に、出撃前の休暇が与えられ。

 基地を後にしたラスティは、その足でミーアの自宅を尋ねていた。

 

 何度か足を運んだ事のある、いつ見ても豪邸と呼ぶに相応しい邸宅に似合いの門構えの前で待っていると、程なく門扉が開き、顔馴染みの使用人の案内で邸宅へと足を進める。

 

「ラスティ! いらっしゃい!」

 

 と、待ちきれなかったのか、ミーアが邸宅の玄関前でラスティの事を出迎える。

 

「さ、あがってあがって! 急だったからあまり準備はできていないけど、それでも美味しい紅茶とお菓子を用意してるよ!」

 

「ありがと、ミーア」

 

 ミーアに手を引かれ邸宅に足を踏み入れるラスティ。

 邸宅内には高級感漂う調度品に、ラクスとミーアのアイドル活動に関するグッズなども丁寧に飾られている。

 そんな邸宅のメインと言えるリビングダイニングへと足を運んだラスティは、椅子に腰を下ろし、ミーアの淹れた紅茶を堪能し始める。

 

「ふふ、ラスティが私の家を尋ねに来てくれるの、久しぶり」

 

「そういえば、前に尋ねたのはまだアカデミー在学中だったな」

 

「そうそう、あの時はお父様とお姉様と一緒に夕食を食べたんだよね」

 

「あ、そういえば、今日はミーアだけなのか?」

 

「うん。お父様はまだ仕事から戻られていないし、お姉様も、ユニウスセブン追悼式典の準備の為の視察の打ち合わせに行ってて、今は一人なんだ」

 

 使用人以外、父親であるシーゲル・クラインと姉であるラクス・クラインの二人の姿が見られない事を尋ねると、どうやら二人とも各々の用事でまだ帰宅していないようだ。

 

「なぁ、ミーア。ミーアはさ、ラクスと一緒にその視察には同行しないのか?」

 

「あ、うん。私は私で、その日はプラントの方で別の催しに参加する事になってるから」

 

「そ、そっか……、よかった」

 

「?」

 

 何故か視察に同行しない事に安堵するラスティの様子を、不思議に思うミーア。

 

 まさか、ラスティが原作という未来の可能性の一つを知っており、原作の様に姉のラクスと共に大天使に一時的に囚われの身となる事を危惧していた。とは、ミーアも予想だにしなかった。

 更には、原作の時期的に小動物の様な状態の原作主人公であるキラ・ヤマトに、ミーアが心奪われてしまう事も、ラスティは特に警戒していた。

 

 だが、ミーアの言葉を聞き、そんな未来が訪れる可能性がほぼなくなった事に安堵の表情を浮かべるラスティ。

 しかしながら、本人としては、ミーアの姉のラクスの視察も中止にしてほしかった所ではあったのだが、どうやらそれは叶わなかった様だ。

 

「ねぇ、ラスティ」

 

「ん?」

 

「今日は、家に来てくれて嬉しいんだけれど……。もしかして、また、任務で暫く会えなくなるのかな?」

 

「あ、あぁ……」

 

 基地から直接ミーアの自宅を尋ねた為、ザフトレッドの制服姿のラスティ。

 それを見て、ミーアも薄々、今回ラスティが自宅を尋ねに来た理由を何処かで勘付いていた様だ。

 

「詳しくは言えないけど、また任務で暫くプラントを離れる事になって。今日尋ねたのは、それを伝えに」

 

「そっか……」

 

 ラスティの口から告げられた言葉に、ミーアは寂しそうな表情を浮かべる。

 しかし、ふといつもの明るい表情に戻ると。

 

「でもしょうがないよね、ラスティは軍人さんなんだから。私達を守る為に任務を一生懸命頑張ってるんだし! 私も我儘言わずに頑張るね! 大丈夫、少しくらいラスティに会えなくなって大丈夫だよ!」

 

 心配しないでとばかりに、ラスティに告げた。

 ただ、ミーアのその様子は、何処か気丈に振舞っているようにも見えたラスティ。

 

 ふと椅子から立ち上がると、ミーアに近づき。

 そして、椅子に座る彼女を後ろから優しく抱きしめるラスティ。

 

「大丈夫。俺は絶対帰ってくる。これまでもそうだったんだ、今回も、ちゃんと帰ってくる。……そうだ、帰ってきたら、ミーアの淹れてくれた美味しい紅茶、またご馳走してくれるか?」

 

「……うん」

 

 そんな優しい彼の手に手を添えながら、ミーアは小さく返事を返すのであった。

 

「……あ、そうだ! ちょっと待ってて! ラスティに渡したいものがあるの!」

 

 その後、落ち着きを取り戻し、再び紅茶を堪能していると。

 不意に、ミーアが何かを思い出したかのように立ち上がると、何かを取りにリビングダイニングを後にする。

 

 それから数分後、再び戻ってきたミーアの手には、ラッピングの施された小さな箱が握られていた。

 

「はい、これ!」

 

「これは?」

 

「いいから開けてみて」

 

 手渡された小さな箱のラッピングを解き、蓋を開けて箱の中身を確認するラスティ。

 すると、箱の中には、綺麗な装飾の施された銀の懐中時計が入っていた。

 

「ミーア、これ……」

 

「えへへ、ラスティに絶対に合うと思って。Z.A.F.Tの入隊祝い、まだ渡せてなかったから」

 

「ありがとう、ミーア! これ、絶対に大事にする! 任務の時も肌身離さず持ち歩く!」

 

「うん」

 

 それから二人は楽しい時間を過ごし。

 やがて、別れの時が訪れる。

 

「頑張ってね! ラスティ!」

 

「あぁ、行ってくる!」

 

「いってらっしゃい!」

 

 門扉でミーアの可愛い敬礼に、本職の答礼で応えたラスティは、ミーアの声に見送られながら、荷物をまとめるべく隊舎を目指すのであった。

 

 

 

 

 それから数時間後。

 プラントの軍港から二隻のナスカ級が出航を果たす。

 

 共に標準塗装ではなく、今回の奪還作戦の為に特殊なステルス塗料による、宇宙に溶けやすい黒色の塗装が施され。

 更に艦尾には、追加の大型ブースターが備え付けられている。

 

 この特殊改修が施された二隻の軍艦こそ、ヘリオポリスでの奪還作戦に参加するクルーゼ隊のヴェサリウスとラッセルである。

 

「ん? ラスティ、その首から下げてる懐中時計、どうしたんだ?」

 

「これか、これはミーアからの愛のプレゼントさ。愛する俺といつまでも同じ時を共有していたいという素晴らしいプレゼントだ! どうだ、羨ましいか!?」

 

「い、いや……」

 

 そんなヴェサリウスの艦内。

 パイロットに宛がわれた居室で、勝ち誇ったような顔で、同室のアスランにミーアからプレゼントされた銀の懐中時計を見せびらかすラスティ。

 

 友人とは言え、この惚気には若干怒りを覚えたアスランではあったが、何とか表情に出す事なく怒りの炎を鎮火させる。

 

「ま、アスランは贈られるよりも贈る方が好きだろ? ラクスにピンクちゃん達をプレゼントしてきたしな」

 

「まぁ、な」

 

 ラクスはアスランの許婚である為、アスランの動向などは、ミーアや時にラクス本人の口からラスティの耳に入ってくる。

 その為、ラスティはアスランがこれまでラクスの為にプレゼントした、ピンクちゃんと呼ばれるペットロボットの"ハロ"の事も知る所であった。

 

 因みに、原作ではアスラン本人が制作したハロだが。

 この世界では、A.O.C.U.の企業であるSUN社が市販しているペットロボットとなっており。

 同社は、民間用の他、高性能型の軍用ハロも製造している。

 

 そして、ピンクちゃん達は、アスランの手で民間用のハロを独自に改造したものとなっている。

 

「あ、そういえばアスラン。出港前にラクスには会ったのか?」

 

「いや、彼女もユニウスセブン追悼式典の準備で忙しいし、そんな時に会うの迷惑かと思って、会ってない」

 

「はぁー。アスラン、余計なお節介かもしれないけど、もっとラクスの事は大事にしろよ。ラクスはお前にとって大事な許婚なんだからさ。それに、好きな人が会いに来てくれるのを迷惑だなんてラクスは考えてないと思うぞ? むしろ、好きな人が会いに来てくれてやる気百倍ってもんだ!」

 

「そ、そんなものか?」

 

「そんなもんだ。じゃ、そういう事で、この任務が終わったら、ちゃんとラクスと会うんだぞ」

 

「分かった」

 

 こうして雑談を続けるラスティ達を乗せたヴェサリウスと僚艦のラッセルは。

 やがて合流ポイントにおいて、国軍のシャア・アズナブル中佐率いる三隻の国軍艦艇。

 

 まるで巨大なシャトルを思わせる外観だが、大気圏内外で運用可能な国軍の最新鋭機動巡洋艦、ザンジバル級。

 同級の改修型で、船体下部に固定するMS射出用の電磁式カタパルトデッキ、格納庫と居住区などで構成されるカーゴベイユニットを船体後方に増設し、搭載可能なMS数を増加させた、ザンジバル改級と呼ばれる艦級の一隻、艦名"ラグナレク"。

 

 同艦を旗艦とし、僚艦のムサイ級二隻を従えたシャア中佐の部隊と合流を果たしたクルーゼ隊の二隻は、一路、運命の地ヘリオポリスへと向かうのであった。




という訳で、大変長らくお待たせいたしました。
次回より、いよいよ"原作"の時系列が始まります。


ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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