機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX 作:ダルマ
ラスティが目を覚ますと、そこは、施設内でもなければ、宇宙なのか地上なのか、何処とも分からぬ真っ暗な場所にいた。
「何処だここ? ……おーい!!」
場所の見当もつかず、何処を見渡しても漆黒の闇ばかり。
堪らず、ラスティは声を張り上げ誰かいないものかと確かめる。
しかし、返事は返ってこない。
どうしたものかと、困り始めると、刹那。
暗闇を引き裂くかのように、突然、前方にスポットライトの様な光が現れる。
しかも、光の中を目を細めて見てみると、人の輪郭らしきものが確認できた。
「だ、誰だ?」
声をかけながら、光の方へと近づくラスティ。
やがて、光に近づいた頃には目も慣れ、光の中にいる人物の詳細もはっきりと分かるようになっていた。
それは、自身と同じ、ザフトレッドの制服を着たオレンジの髪をした男性であった。
ただし、何故か男性の顔はぼやけていて確認ができない。
「誰だ? お前?」
「はー、ガッカリ」
「は?」
謎の男性はラスティの質問に答える事無く、肩を竦ませ、呆れた口調で話し始めた。
「折角ここまで走ってきたのに、ちょっとつまずいた位で、もう諦めるのか?」
「何言ってるんだ?」
「お前はもっと諦めの悪い奴だろ? 何度転んでも、何度も何度も立ち上がり走り出す、そんな男だろ?」
「一体何なんだ、さっきから、まるで俺の事を知ってるような口ぶりで……」
「知ってるさ、よく知ってる。お前がこれまで出会ってきた人々の救済の為、これまで走ってきた、救済という光を灯す為の努力は、よく知ってる」
まるで何でもお見通しな謎の男性の口ぶりに、ラスティは不気味さを感じていた。
しかし同時に、何故か、この謎の男性を知っている。そんな妙な感覚も覚えるのであった。
「ま、諦めるって言うんなら、それでもいい。だけど、残されたやつはどうなる? ミーアは? 彼女はどうなる?」
「それは……」
「これまでの努力を無駄にして、ここで終わる事を、お前は望んでるのか?」
「望んでる訳ないだろ!! 俺は、俺はミーアの悲しむ顔なんて望んでない!! 約束したんだ! 絶対帰って来るってな!! だから、こんな所で諦めて立ち止まる訳ないだろ!!」
「……ふ、それでこそ、ラスティ・マッケンジーだ」
刹那、漆黒の闇の中、突如眩いばかりの光が現れ、遍く照らしてゆく。
堪らず、ラスティは目を細める。
「ラスティ。その胸の中にある熱い想い、それを灯すまで、止まるんじゃないぞ」
「お前……」
やがて、耐え切れず目をつぶる寸前。
ぼやけていた男性の顔が鮮明になり、ラスティは、その顔をはっきりと目にした。
それは紛れもなく、ラスティ・マッケンジー、自分自身の顔であった。
「頑張れよ、もう一人の俺──」
温かな光が包み込み、ラスティは再び意識を手放した。
「──っ! は!」
そして、再び意識を取り戻し目を覚ましたラスティが目にしたのは、あの摩訶不思議な空間に移動する前に見た施設内の光景であった。
「痛っ!」
次いで感じたのは、全身を襲う痛み。
どうやらストライクの上から固いコンクリートの床に落下した際に、全身を強くぶつけた為のようだ。
「ここは、地獄……か?」
否応なく聞こえる銃声、そして爆発音、人々の阿鼻叫喚の声。
これが地獄でなければ何処なんだと、ラスティは自分自身に問いかけた。
「俺、確かに撃たれて……」
そして、地獄に行くには現世で死ぬしか方法はなく。
そこから、ラスティは自身が撃たれた事を思い出す。
落下の際の衝撃でバイザー部分にヒビが入った為使い物にならなくなったヘルメットを脱ぎ捨てると、先ずは新鮮な空気をゆっくりと肺に流し込む。
硝煙や金属などの嫌な臭いが鼻を突くものの、深呼吸を終えると、ラスティは自身の胸元に視線を向けた。
すると、アサルトベストや赤いパイロットスーツを貫くように、胸元にくっきりと、撃たれた事を示す弾痕が残されていた。
しかし、撃たれたはずなのに、なぜがそこから出血している様子もなければ、肺などに血が貯まっている様子も感じられない。
ラスティは不思議に思い、撃たれた辺りを手で探ると、何か、固い感触が伝わった。
その瞬間、ラスティは急いでパイロットスーツのフロントジッパーを少し開くと、手を突っ込み、先ほど感じた固い感触の正体を取り出す。
「は、はは……」
弾丸を受け止め、もはや元の形や時計としての機能を失ってしまったそれは、ミーアがプレゼントしてくれた銀の懐中時計であった。
「ありがとう、ミーア」
死の運命から自身を救ってくれた女神の加護、それを感謝する様に、ラスティは小さく呟くと。
痛む体を起き上がらせると、近くのコンテナの影へと飛び込み、周囲の状況を把握し始める。
落下の衝撃で気を失っていたのは長くはなかったのか、未だヘリオポリス内では戦闘が続けられている事が、耳に届く音からも伺える。
(X105とX303がない。という事は、原作同様、とりあえずアスランは成功したか……。となるともう片方はやっぱり。……ミゲルの奴、大丈夫かな)
既に空になったトレーラーの様子を目にし、とりあえず状況の把握を終えると。
今度は、今後の自身の行動を考え始める。
(さて、どうするか。通信機もジェットパックも落下の衝撃で壊れちまったし、アサルトライフルも何処かに落とした……。あるのは、ナイフと、自動拳銃だけか)
ホルスターに収納していたナイフと自動拳銃は使えるようだったが、身を守るには、少々不安ではある。
(原作みたいにヘリオポリスが崩壊する事を想定するなら、何とか自力でヴェサリウスまで戻れる方法を見つけないと。って言ってもな、戦闘の只中にこの身一つで友軍機に助けを求めるなんて自殺行為だし……)
考えを巡らせるラスティ。
と、ふと、彼はある事を思い出した。
(まてよ。この世界にはオーブ連合首長国は存在していなくても、モルゲンレーテ社は存在している。……という事は、もしかしたら!)
そしてラスティは、ホルスターから自動拳銃を取り出すと、僅かな可能性にかけるかのように、施設の深部を目指し駆け出し始めた。
一方、ここで一旦時系列を、ヘリオポリス内部で工作員による破壊活動が開始された直後に戻す。
破壊活動の開始と同時に、小惑星と船体とを固定していたワイヤーを解除し、行動制限を解除したヴェサリウスとラッセルの二隻は潜入部隊の脱出支援の為。
残存のMS隊を発進させると共に、ヘリオポリス外に展開している警備部隊と戦闘を開始していた。
これに対し、内外からの突然の攻撃に、警備部隊側は混乱の渦中にあった。
「アントミー司令と連絡はとれたのか!?」
「それが、先ほどから呼び出してはいるのですが、依然として応答ありません」
外部に展開している警備部隊の旗艦、A.O.C.U.のハイフォン級宇宙巡洋艦を"サラミス"級という名で大西洋連邦宇宙軍にて運用している一隻、艦名マーガリー。
同艦の艦橋で、司令官席に座る警備部隊の副司令は矢継ぎ早に指示を飛ばしていた。
「くそ!」
「副司令、ヘリオポリス内に展開している部隊からZ.A.F.TのMS隊が侵入したと報告があり、応援を求めています!」
「
特殊改修が施され探知が難しかったとはいえ、ヘリオポリスへの接近を許し、あまつさえ、初撃で貴重な戦闘艦であるドレイク級宇宙護衛艦を一隻沈められており。
副司令としては、これ以上クルーゼ隊に好き勝手暴れられるのは避けたい所であった。
しかし、そんな副司令の願いも空しく、味方のMSやMAは、次々と相手のジンハイマニューバの凶弾に倒れ宇宙の塵と化していく。
「副司令、マーヴィン艦長より通信です」
「マーヴィン艦長?」
そんな報告を苦々しく聞いていると、不意に、数分前にヘリオポリスへと入港を果たした輸送艦の艦長より通信がもたらされる。
応答してマーヴィン艦長の話す内容を聞いてみれば、それは、自分達の戦闘に加勢するとの申し出であった。
「しかし、そちらは輸送艦で、自衛用以外の武装は……」
「お忘れですか、本艦には、頼れるボディガードが乗船している事を」
マーヴィン艦長の言葉を聞き、副司令ははっとした様子で思い出した。
マーヴィン艦長の指揮する輸送艦は今回、とある特務を帯びている事を。
その特務とは、G計画の核となる五機の新型MSの正規パイロットの輸送である。
そして、そんな正規パイロット達の乗る輸送艦には、万が一の際の護衛として、大西洋連邦を代表するエースパイロットが乗船していた。
それが、"エンデュミオンの鷹"の異名で知られるムウ・ラ・フラガ大尉。
そしてもう一人、フラガの部下にして大西洋連邦ではもはや数少ないメビウス・ゼロのパイロットとなったフリッツ・トラスト中尉。
以上の二名が、他数人のパイロットと共に、護衛として輸送艦に乗船していた。
「分かりました。では、お願いしたい」
こうして、副司令の許可を得たマーヴィン艦長は、港から輸送艦を出港させると、続けて護衛役であるムウ達の出撃準備を告げた。
「やれやれ、上陸にありつけるかと思ったら戦闘とはな。散々だな、フリッツ」
「全くですよ、大尉」
パイロットスーツを着込み、愛機となるメビウス・ゼロのコクピットに滑り込んだムウは、悪態をつきつつ部下であるフリッツに語りかけた。
「でも大尉。ここで俺達が頑張らないと、あの新型MSのパイロットさん達に作った"ツケ"、回収できなくなっちゃいますよ」
「そうだったな。じゃ、いっちょ頑張りますか」
こうして出撃前の談笑を終えると、ハッチが開かれ、発艦可能を告げるグリーンのランプが点灯する。
「ムウ・ラ・フラガ、出るぞ!」
「フリッツ・トラスト、出ます!」
鮮やかなオレンジ色に塗装された二機のメビウス・ゼロは、同じく輸送艦より発艦したメビウス達を引き連れ、戦いの宇宙へと参戦する。
「いいか、一人で無茶するんじゃねぇぞ、スリーマンセルで対応するんだ」
ムウはメビウスのパイロット達に指示を飛ばしながら、一対どれだけの者が生き残れるのか、不安を抱えていた。
共にグリマルディ戦線を戦い生き残ったフリッツは別として、他のメビウスのパイロット達は、その多くが実戦経験の少ない者達ばかりであった。
それは、現在ムウが所属する第八艦隊が、第二次世界樹攻防戦において被害を被った大西洋連邦宇宙軍の戦力再編のあおりを受けて、多くのベテランが引き抜かれた事が原因であった。
だが、今は目の前の戦闘に集中すべく、余計な考えを振り払うと、前方に見える戦闘の光目掛けてメビウス・ゼロを加速させた。
「艦長、オロール機が大破! ラッセルに緊急帰投するとの事です!」
「何だと!? 馬鹿な!?」
戦闘開始から有利に事を進めていた、そう感じた矢先。
ヴェサリウスの艦橋内に響いたその報告に、アデス大尉は驚き、堪らず前のめりになる。
「艦長! アーベルト機、シグナルロスト!」
「な!?」
そして、続いてもたらされた報告に、アデス大尉は艦長席を蹴り上げるように立ち上がった。
今回の作戦の為に用意した機体も、パイロットも、エース級のものの筈。
それが、警備部隊如きに苦戦するなど、予想もしない事態に、アデス大尉は困惑の表情を隠せないでいた。
「……ふ」
そんなアデス大尉を他所に、クルーゼ少佐は不敵な笑みを浮かべる。
「アデス、どうやらコバエの群れの中に、いささか面倒な事にハエが一匹……、いや二匹、紛れてしまったようだ」
「は、はぁ?」
司令官席から立ち上がり艦橋を後にしようとするクルーゼ少佐に、アデス大尉は先ほどの発言の意味を尋ねるのではなく、何処へ行かれるのかを尋ねた。
「私も出る、後は任せたぞ」
そして、今度は言葉の意味を理解し、そして呆気にとられるアデス大尉を他所に、クルーゼ少佐は格納庫へと向かうべく艦橋を後にするのであった。
ムウとフリッツの操る二機のメビウス・ゼロの活躍により、副司令の脳裏に、僅かばかりの希望の芽が見え始めた、その矢先の事。
彼のもとに、そんな芽を摘むかの如く報告がもたらされる。
「ナスカ級の後方より大型の反応三、小型の反応多数!」
「解析結果出ました! こ、これは……Z.E.O.N.のムサイ級二隻とザンジバル級の改修型と思しき戦闘艦、それにリック・ドムタイプのMSです!!」
「なん、だと……」
Z.A.F.T相手でも苦戦しているのに、そこに更にZ.E.O.N.国軍の増援。
副司令の脳裏に、死の恐怖が芽生え始めた。
一方、副司令に死の恐怖を届ける事となったZ.E.O.N.国軍ことシャア中佐指揮下の三隻は、そんな副司令の気持ちなど汲み取る事無く、無情にも攻撃を開始する。
攻撃の指示を飛ばした指揮官であるシャア中佐は、ラグナレクの艦橋で現在の戦況の報告を受けていた。
「ほぉ。クルーゼ少佐は自ら出撃したのか」
「はい。副官のアデス大尉の話によりますと、ハエが二匹ほど紛れた、とかで」
自らの副官であるドレン大尉からもたらされた報告に、シャア中佐は口元に笑みを浮かべた。
「ハエか、ふふ、成程、確かにそうだな。私も、五月蠅いハエが二匹ほど飛んでいるのを"感じる"よ」
仮面同士のシンパシーか、或いは別の何かか。
兎に角、凡人では理解できぬクルーゼ少佐の言葉の意味を理解した様子のシャア中佐。
一方、そんな上官の様子を目にしたドレン大尉は、内心で深いため息をついていた。
長らく付き合いがあり、ドレン大尉自身も上官であるシャア中佐は優秀な軍人であると認識していたが、今回のように時折見せる理解不能な言動には、どう対応してよいか未だに理解できず、その度に気苦労が絶えないでいた。
因みに、同じく優秀な軍人で、共に仮面の上官を持つアデス大尉とは、今回の合同作戦にあたり交流を持ち、互いに同じように気苦労が絶えない同志という事で、急速に親交を深めた一人である。
「それで、いかがいたしますか、シャア中佐?」
「必要と判断して、折角クルーゼ少佐自ら出撃したのだ、我々が水を差しては失礼というものだよ」
「分かりました」
仮面の奥の瞳を怪しく光らせると、シャア中佐は再び静かに戦局を見守り始めた。
そして、時系列を再び現在に戻し。
ヘリオポリス内部、施設の深部を目指し走るラスティは、深部へと向かうであろうエレベーターの前にいた。
「頼む、動いてくれよ……」
恐る恐るスイッチを押すと、程なくして、扉が開きかごが姿を現す。
「よし!」
直通なのか、無駄な階層のスイッチがない中、降下のスイッチを押すと、扉が閉まり、エレベーターは降下を始める。
降下の最中、未だ行われている戦闘の影響で微細な揺れを感じつつも、ラスティを乗せたエレベーターは降下を続けた。
そして、漸く停まると、再び扉が開いた。
自動拳銃を構え、周辺の
戦闘の影響で一部電気が消え薄暗い中、ラスティは、そこから更に歩みを進めた。
そして、暫く通路を進んだ所で、人の声が聞こえ始めた。
「急げ! 兎に角
「ですが、侵入したZ.A.F.Tの連中の狙いは大西洋連邦の方だけでは?」
「馬鹿野郎! 外にはZ.E.O.N.の連中も現れてるんだよ! 連中が
通路を進むにつれ鮮明になる声。
やがて、通路の先に広がっていたのは、巨大な空間と、そこに保管されていた五機のMS。
同じ外見を有した色違いのその五機のMSの名をラスティは知っていた。
後の制式量産機であるM1アストレイの原型機の為、プロトアストレイの通称を持つ機体である。
(よし、あったぞ! プロトアストレイ!)
原作ではオーブ連合首長国所有のヘリオポリス内に設けた秘密工場において開発が進められていた同機。
どうやら、この世界でも、ヘリオポリス内に設けた秘密工場において開発が行われていた様だ。
そして、その開発計画を進めていたのは、A.E.C.であった。
秘密工場内で慌ただしく作業を行っているのは、A.E.C.の兵士達である。
(さて、問題は……。どの機体を奪うか、だな)
通路の脇に身をかがめ、秘密工場内の様子を窺いながら、どの機体を奪取するかを考えるラスティ。
プロトアストレイは、完成直後は基本的な性能に関しては差異はなかった。しかし、五号機までの各機は後に各々のパイロットの手に渡り、それぞれ個性的な改装が施される事となる。
(確か……、一号機のゴールドは原作では連合の武装をプロテクトの解除なしで運用可能で、二号機のレッドはナチュラルでも操縦できるかの検証用だった筈)
しかし、各機にはそれぞれの検証の為に細かな差異があった。
その機体毎の際を、ラスティは前世の記憶を呼び起こさせ、それを踏まえて奪取の選定を進める。
(そうだ、確か三号機のブルーは、原作では自国のみならず連合やZ.A.F.Tから盗用した膨大な量のオプション装備のデータが保存されていた筈! この世界でも同じようなデータが機体に保存されているとすれば、これは戦略的観点からしてもかなり有益だ)
そして、ラスティは奪取する機体を三号機であるフレームの色が青色に塗装された、通称ブルーフレームに決定した。
(さて、となると次の問題は、どうやってブルーフレームのコクピットに滑り込むかだよな)
こうしてと問題の一つが解決したのも束の間。
最大の問題が、新たな問題として現れる。
味方の援護もなく、ラスティ一人だけでA.E.C.の兵士達がいる中、ブルーフレームをいかに奪取するのか、という最大の問題である。
(使えるのは、ナイフと自動拳銃、それに発煙手榴弾か……)
バレないように接近し、コクピットに滑り込む。という方法は、危険は少ないが時間がかかり、もたもたしている間に機体が秘密工場から搬出される可能性も伴う。
(ミーアに絶対帰るって、約束したんだ。なら、覚悟を決めろ、ラスティ・マッケンジー!)
となると、危険は伴うものの、手早くコクピットに滑り込める方法、強行突破。
その為の覚悟を決めたラスティは、ポーチから発煙手榴弾を取り出すと、安全ピンを抜き。
そして、秘密工場内目掛けて発煙手榴弾を投げた。
「ん? 何だ?」
突然床に転がってきた発煙手榴弾に気が付いた一人の兵士。
しかし、次の瞬間、発煙手榴弾から勢いよく吹き出す煙を見た兵士は、腹の底から割れんばかりの声で叫んだ。
「て、敵襲ぅーっ!!!」
その声を合図に、ラスティはブルーフレームのコクピット目掛けて一気に駆け始める。
「あそこだ! いたぞ!」
「撃て! 撃て!」
ラスティの存在に気付いた兵士達が、手にした銃器を発砲し始める。
発煙手榴弾が発生させる煙幕により狙いを定められないが、それでも自身の周囲を銃弾がかすめていくのをラスティは感じていた。
それでも、ラスティは止まる事無く、駆け続ける。
そして、遂に。
輸送準備の為にコクピットハッチが開いていた事も幸いし、ラスティは、目的のブルーフレームのコクピットに何とか滑り込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
コクピットハッチを閉め、漸く飛来する銃弾の脅威から解放されたラスティは、シートに深く座り込むと、命を懸けた全力疾走で乱れた呼吸を整え始める。
だが、そんな安堵も束の間、直ぐにこの場から脱出すべくシステムを立ち上げる。
General
Unilateral
Neuro-Link
Dispersive
Autonomic
Maneuver
──Synthesis System
システム立ち上げと同時に表示されるOSの名称、単方向の分散型神経接続によって自律機動をおこなう汎用統合性システム、を意味するそれを目にして、ラスティは笑みを浮かべた。
「やっぱSEEDのOSはこうでないとな」
そして、コンソールを操作し、A.O.C.U.のガンダムにあやかり名付けられたOSを再調整していく。
「流石に原作と違ってOSの完成度は高いが、実用実験機ならこの数値が妥当か。だけど、悪いが俺の色に染まってもらうよ。──再構築、再起動、変更、接続。……よし、全システム起動!」
最後にエンターキーを押すと共に、OSの再調整が完了し、ブルーフレームの複眼式のセンサーカメラに新たな光が宿る。
「た、退避ーッ!!」
起き上がり、動き出したブルーフレームに踏み潰されぬよう、距離を取るでA.E.C.の兵士達。
そんな彼らの様子をモニター越しに眺めながら、ラスティは近くに置かれていたプロトアストレイ用のビームライフルと対ビームシールドを装備すると、外部に脱出すべくブルーフレームを動かし始める。
と、ふと何かを思い出すと、ラスティは不意に外部スピーカーのスイッチを入れ。
「この機体はいただいていく!! Z.E.O.N.とZ.A.F.Tの栄光の為! そして……、俺の胸に秘めた野望の光を灯す為にな!!」
そんな台詞を言い残すと、バーニアを噴かせ、秘密工場を後にする。
唖然とするA.E.C.の兵士達を他所に。
(かぁー! 超気持ちいい! 一度言ってみたかったんだよな、あんな感じの台詞!)
通路を進むブルーフレームのコクピット内で、ラスティは大変満足そうな表情を浮かべていた。
という訳で、やっぱり主人公は死なない!
ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。