機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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第五話 勝者と敗者

 アナンケを含む第一艦隊に対して左側面からの強襲、更には分断により同艦隊を大混乱に陥れたZ.E.O.N.艦隊は。

 勢いそのままに、第一艦隊の横に展開していた、A.E.C.の第四艦隊に襲い掛かった。

 Nジャマーの影響下により第一艦隊の大混乱を把握できなかった第四艦隊は、Z.E.O.N.艦隊の側面からの強襲に対応できず。

 こちらも、側面から食い込まれ、勢いを止められず分断を許してしまう事となった。

 

 こうして二個艦隊を分断したZ.E.O.N.艦隊は、そのまま第二艦隊が抜けた宙域を通り、そこで一旦動きを止めると。

 後方に控えていた東アジア共和国の第六艦隊が、Nジャマーの影響下で遅ればせながら、Z.E.O.N.のMS隊の攻撃にさらされている第一艦隊と第四艦隊の救援に駆け付けた所を強襲。

 友軍の救援に焦る気持ちと汚名挽回の焦りがあった第六艦隊は、艦隊陣形が縦に伸びてしまい、Z.E.O.N.艦隊は陣形の伸びた第六艦隊の右側面、二時の方向から強烈な攻撃を受ける事となった。

 

 このように連合の各艦隊が各個撃破の如く連携を欠いたのは、やはりNジャマーの影響もさることながら。

 連合艦隊旗艦アナンケの撃沈、及びレビル将軍が脱出直後にZ.E.O.N.に拿捕される等。

 指揮権移譲が速やかに行えず、指揮系統が混乱した事も一因にあると、後年の研究で指摘されている。

 

 上記のように、連合艦隊の大部分が混乱により組織的抵抗が行えない中にあっても、組織立って戦闘を行っていた艦隊や部隊等も存在した。

 その内の一つが、後方に展開していたA.O.C.U.の二つの艦隊、第九艦隊と第十三艦隊であった。

 

 その一方、第九艦隊の旗艦である、原作C.E.世界には見られない大艦巨砲主義の化身の如く四〇〇メートルもの巨体を有した、別世界ではバーミンガム級戦艦と呼ばれていた巨大戦艦。

 A.O.C.U.宇宙軍が保有する戦闘艦艇の中において現時点で最大級の規模を誇る扶桑級宇宙戦艦の一番艦、扶桑の艦橋内で司令官席に腰を下ろしている中老褐色の男性、第九艦隊司令官のブイ提督は、麾下の艦隊に矢継ぎ早に指示を飛ばしていた。

 

「焦る気持ちは分かるが前に出過ぎるな! 焦って出過ぎればミイラ取りがミイラになるぞ!」

 

 目の前の巨大スクリーンに映し出される戦況を目にしながら、ブイ提督は声を張る。

 

「第十三艦隊と速度は合わせろ! 弾幕も絶やすな!! 我々が最後の砦と思え!!」

 

 外部映像を映し出すスクリーンには、第九艦隊の各艦から幾つもの光線が伸び、伸びだ先では、いくつかの閃光が生まれる。

 刹那、閃光の間から伸びた一筋の光が、扶桑の横をかすめていく。

 

「アンチビーム爆雷の減衰率は!?」

 

「現在減衰率は有効範囲内ですが、イエローゾーンに近づきつつあります」

 

「再散布の準備、怠るなよ。……友軍の後退状況は!?」

 

「中衛に展開していた大西洋連邦の第五艦隊とA.O.C.U.の第十艦隊は、現在は建て直し組織立って後退していますが、その他の艦隊に関しては、特に前衛の艦隊については偵察隊からの報告待ちです」

 

「偵察隊より報告! 第一艦隊臨時旗艦、宇宙母艦"ネレイド"の撃沈を確認!」

 

「っ!? カニンガン提督の安否は!?」

 

「偵察隊からは、ネレイドから脱出シャトルが脱出したとの報告等はないと」

 

「くそっ!」

 

 報告を聞き、ブイ提督は自身の座る司令官席の肘掛けを叩く。

 しかし、悔いた所で死んだ者は生き返らない。自身に今求められているのは、今生き残った者を一人でも多く帰還させる事。

 ブイ提督は直ぐに頭を切り替えると、直ちに次の指示を飛ばし始める。

 

「我が艦隊と第十三艦隊を除く友軍残存艦隊に撤退信号を! 我が艦隊は、第十三艦隊と共に撤退支援に全力を尽くす!」

 

「了解!」

 

「全艦に通達! ここからが正念場だ! 一人でも多くの友軍を脱出させるぞ!」

 

 この世界樹攻防戦において、各国から派遣した戦力は多大な痛手を負う事となる。

 A.O.C.U.の二つの艦隊も、友軍の撤退支援の為の殿を務めた事により、その被害は、とても無視できるものではなかった。

 

 因みに、この殿の際。

 A.O.C.U.の二つの艦隊と対峙したZ.E.O.N.側は、A.O.C.U.艦隊がNジャマー影響下やアンチビーム爆雷展開内において、他国艦と比較し、艦砲攻撃の予想以下の減衰率や艦艇性能の低下が見られない事に気付き。

 この事から、同国が核融合炉ないし、それに準ずる機関の実用化に成功し、戦闘艦への搭載を行っていると推測。

 後に、Z.E.O.N.の戦略に影響を与えていく事になる。

 

 だがしかし、実はこの時のA.O.C.U.艦隊において、実用化されたばかりの熱核反応炉を搭載していた艦は、新造時から搭載されていた旗艦を含め、主機換装の為の近代化改修を受けた一部の艦に留まっており。

 実際には艦隊全艦が熱核反応炉を搭載していた訳ではないのだが、Z.E.O.N.はその事実に気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 世界樹攻防戦において多大な痛手を負った地球連合。

 その中にあって、最も被害の大きかったのが、東アジア共和国の第二艦隊であった。

 同艦隊はZ.E.O.N.の偽装撤退を見破れず追撃し、そこで、獲物が来るのを待ち伏せていたZ.E.O.N.のMS部隊の襲撃を受ける事となる。

 

「えぇい! たかが人の形をした機動兵器だろうが! 何故墜とせん!! MA隊は何をしている!?」

 

(たん)提督! ここは一旦後退し、他の友軍艦隊と合流した方が……」

 

「えぇぃ、何を言うか!! 今こそZ.E.O.N.とか言う反逆者共を一掃する好機なのだぞ! それをみすみす……」

 

 刹那、巨大な船体を揺らす衝撃が艦内を襲い、司令官席に腰を下ろす譚提督も、一瞬体を強張らせる。

 

「ち、直掩は何をしている!!?」

 

「っ! 前方に敵機動兵器が!」

 

 それはまるで、時間の流れが緩やかになったかのような感覚であった。

 艦橋内に響く報告に、譚提督の視線は、何故か吸い寄せられるかのように、すぐさま窓の外に浮遊する一体の赤い巨人を捉えた。

 

 赤い巨人は、手にしたバズーカを、譚提督が座上するアガメムノン級宇宙母艦"超勇(ちょうゆう)"の艦橋目掛けて構える。

 

「あ、あれが、モビルスーツ……」

 

 刹那、バズーカの発射口から弾頭が放たれ、超勇の艦橋を直撃する。

 直撃と同時に放たれた爆発エネルギーは、そのまま超勇艦内を駆け巡り、やがて、連鎖爆破と共に、超勇は巨大な爆発の中に消えた。

 

「残弾は、あと二発か……」

 

 超勇をデブリへと変えた張本人、赤いMSのパイロットは、コクピット内でそう呟くと、機体を翻し、次なるターゲットを探し始める。

 

 一方、そんな赤いMSの活躍を、少し離れて後に続く友軍のパイロット達が、羨ましそうに声を漏らしていた。

 

「すげぇ、宇宙母艦を沈めたの、あれで二隻だろ!? ……やっぱりエース様は格が違うな」

 

「新型の、高機動型だっけ? その性能もあるとは思うけどさ、あれはパイロットのシャア中尉の腕もあってこそだよな」

 

「まさに彗星の如し、だな」

 

 そんな赤いMSの活躍に目を奪われていた彼らであったが、程なく、彼らの興味は別のMSへと移り変わる。

 

「って、おいおい、何だよあのMS!? 他の奴とは動きが段違いだぞ」

 

「あれは、確かZ.A.F.T専用に開発・配備されたジンってMSだろ? でも、あの動き、ありゃパイロットの腕が相当いい証拠だな」

 

「だからあの機体、他の機体と違って、独自のパーソナルカラーが施されてるって訳か」

 

「白いジン、そういえば、何処かで聞いた事あるな」

 

 彼らが新たに興味を惹かれたのは、今まさに一隻のネルソン級宇宙戦艦を、装備したM68キャットゥス 五〇〇ミリ無反動砲で撃沈した一機の白いジン。

 巨大な光球を背に、もう片方の手に装備した、国軍との弾薬共通化の為原作とは口径が変化しているMMI-M8A3 七五ミリ重突撃機銃で、迎撃に駆け付けたメビウスを返り討ちにしつつ、白いジンは新たな獲物を探すべく自らの軌道を描き始める。

 

「ほぉ……、あのパイロット、なかなかやる」

 

「成程、あれが国軍の名高きエースパイロットか。ではそのお手並み、拝見させていただくとしよう!」

 

「む!? 私を試すというのか……。ふ、よかろう。では、見せてもらおうか、コーディネイターの腕前とやらを!」

 

 程なく、赤と白の二つの軌道は、まるで吸い寄せられるかのように相まみえ。

 互いのパイロットは、言葉を交わさずとも相手の事を理解しているかの如く、互いの腕前を見極める為に、戦果を競い合い始めた。

 

「おい見ろよ! エース同士の競い合いだ!」

 

「す、すげぇ。これがエース同士の動きかよ。俺達じゃ、入る隙もありゃしねぇ」

 

「本当に、あの二人だけで連合の艦隊を壊滅させられるんじゃねぇか……」

 

 赤と白の二機のMSは、装備した火器を使用し、互いに艦船やMA、それに戦闘機などを次々と宇宙の塵に変えていく。

 その圧倒的なまでの戦闘の様子に、友軍の士気は高揚し、逆に第二艦隊の将兵達はその姿に恐れ戦くのであった。

 

 

 かくして、二人のエースパイロットの活躍も相まって、東アジア共和国の第二艦隊の最終的な被害は約七割にも及び。

 この被害は、その後の東アジア共和国の宇宙戦力の再建に長らく影響を及ぼす事となる。

 

 

 

 

 

 こうして、世界樹を巡る地球連合とZ.E.O.N.の戦いは、Z.E.O.N.の勝利で幕を下ろした。

 原作においては同戦闘で崩壊した世界樹だが、この世界では崩壊せず、Z.E.O.N.の手中に収まる事となる。

 

 しかしながら、圧倒的な戦力差ながらMSやNジャマーを駆使し勝利を手に入れたZ.E.O.N.ではあったが、それは、完全なる勝利とは言えなかった。

 

 実は当初の想定では、撤退する地球連合軍を追撃する筈であったが、実際には断念している。

 その理由は、A.O.C.U.の二つの艦隊の存在もさることながら、残存する他の艦隊の粘り強い抵抗、それらによる自軍の被害の想定以上の多さであった。

 また、血のバレンタインによる疲弊を払拭できていない事も相まって、追撃は断念されたのであった。

 

 こうして、表面上は大勝したZ.E.O.N.であったが、その裏では、地球連合軍と比較して無駄にできる戦力が少ないという、厳しい懐事情を改めて痛感していた。

 

 

 とは言え、この戦いにおいて、Z.E.O.N.側に数多くのエースパイロットが誕生する事となる。

 国軍の著名なエースパイロットにして、連合軍に"赤い彗星"の異名で恐れられる、シャア・アズナブル。

 そして、Z.A.F.Tを代表するエースパイロット、ラウ・ル・クルーゼ。

 共に先の戦いにおいて戦闘艦数隻にMAや戦闘機などを多数撃破しており。

 

 この両名は、凱旋後に執り行われた戦勝祝典において、"ネビュラ十字勲章"と呼ばれるZ.E.O.N.最高の勲章を授与され、両名とも二階級昇進により"少佐"へと昇進し、後に各々自らの隊を率いる事となる。

 

 このように、凱旋後に執り行われた戦勝祝典において華々しく国民に紹介されたエース達は、国民の士気昂揚に大いに役立ったが。

 これはその一方で、この様なエース達を大々的に担ぎ上げる事により、自軍の厳しい懐事情から国民の意識を逸らす、という側面もまた存在していた。

 

 

 因みに、凱旋したエース達の報道の在り方に対して、一部でちょっとした騒動も起こっていた。

 

 先の戦いにおいて、レビル将軍を捕虜にするという大戦果を挙げたにもかかわらず、シャアやクルーゼの戦果報道の影に隠れてしまった"黒い三連星"と呼ばれるMSチーム。

 その内の一人、オルテガ中尉は、シャアやクルーゼの戦果を一面とする等、二人と自分達との報道の差に納得がいかず。

 更には世間の、特に異性からの黄色い声がシャアとクルーゼの二人に、それも共に目元を仮面で隠しているという容姿であるにも拘らず、黄色い声が殺到する事にも納得いかず。

 

 遂には激高して、宿泊していたホテルのテレビを素手で破壊し、更には窓から投げ捨てる、という騒動を起こして、同じチームのガイア大尉とマッシュ中尉に迷惑をかけるというちょっとした騒動を起こしていた事を、ここに記載しておく。




ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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