機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX 作:ダルマ
勝利に沸くZ.E.O.N.側に対して、地球連合側は敗北の余韻に浸る間もなく、残存する戦力の再編等に追われていた。
これまでの連戦連敗による各国の宇宙軍が被った被害はかなりのものに上り。
その為、残存戦力の温存の為に各国の残存艦隊は、各国が有する宇宙拠点に引きこもらざるを得ず。
この為、一時的ながら、制宙権はZ.E.O.N.に奪われる事となる。
こうして制宙権を手にしたZ.E.O.N.側だが、勝利の余韻に浸る彼らに、冷や水を浴びせさせるかの如く、とある一報がもたらされる。
それが、捕虜の身であったレビル将軍が、大西洋連邦の特殊部隊により救出された挙句。
Z.E.O.N.の内情を赤裸々に暴露した、所謂"Z.E.O.N.に兵なし"の演説を行ったのである。
時に、C.E.七十年三月八日の事であった。
この一報を受けたZ.E.O.N.側は、早々に、次なる一手に打って出る必要に迫られていた。
「しかしながら、報告書から考察するに、A.O.C.U.艦隊が核融合炉や或いはそれに準ずる動力機関を保有している事は明白です!」
「だからこそ、A.O.C.U.とのこれ以上の戦闘は避け、大西洋連邦と東アジア共和国に戦闘の的を絞るべきでは?」
「馬鹿を言うな。A.O.C.U.だって今や地球連合の一員なのだぞ。地球連合の一員である以上、A.O.C.U.との戦闘は避けられん!」
「では大西洋連邦と東アジア共和国を更に完膚なきまでに叩き、残りの二国を交渉の席に着かせるというのはどうでしょうか? 地球連合と言っても固い一枚岩ではありません、であれば、旗頭を標榜している大西洋連邦と東アジア共和国を叩くことにより、残り二カ国の継戦意欲を大きく削ぎ落せるはずです」
「何を手ぬるい!! 今や勝機は我らにあり! 奴らに下手に時間を与えれば折角手にした勝機が無駄になってしまう! ここは、間髪入れずに徹底的に叩くべきだ! それに、あのようなふざけた演説を繰り広げた奴らの鼻は徹底的にへし折るべきだ!」
「ギレン議長は、いかがお考えでしょうか?」
その一手を決めるべく開かれた最高評議会の場において、それまで熱を帯びていた議員達が一斉に静まり返り、一人の人物に視線を集中させる。
その者こそ、Z.E.O.N.の実質的な最高指導者にして、最高評議会議長を務めるIQ240の天才。
公王であるデギンの長男、ギレン・ザビその人である。
ギレンは涼し気な表情で暫し考えを巡らせると、程なく、ゆっくりと話し始めた。
「レビルにあのような演説をされては、もはや当初の計画にあった世界樹での決戦による連合宇宙戦力の壊滅後、和平交渉のテーブルを優位に進めるという予定は困難になったと言わざるを得ん」
「では、一体どのようになさるおつもりで?」
「"プランB"へ移行する。Nジャマーを地球に投下後、混乱に乗じて部隊を地球へと降下させ、以前より極秘裏に構築していた反政府組織と共闘し、各国を各個撃破した後、単独講和を行い、地球連合の戦力を削ぐ」
「そ、それは、オペレーション・ウロボロスの作戦概要……」
「そうだ、オペレーション・ウロボロスを発動させる!」
「し、しかし議長!! オペレーション・ウロボロスの発動にあたっては、Nジャマーの地球への降下による被害の算出では、甚大な被害が出ると言う算出がなされている! 早計な判断は慎むべきでは!?」
力強く次なる一手、オペレーション・ウロボロスの発動を宣言したギレンに対して待ったを掛けたのは。
最高評議会の議員にして、議会でも穏健派の中心人物であり、プラント内のダイクン派と称される派閥の領袖でもあるシーゲル・クラインであった。
「シーゲル、これは戦争なのだ、多少の血が流れるのは、致し方あるまい。それに、降下するのは地球全土ではない。一部の国や中立国等に向けては、ダミーであって実際のNジャマーを投下はせん。そもそも、大西洋連邦や東アジア共和国がNジャマーにより困窮すれば、それだけで他国も負担が増し早々に音を上げる筈だ。そうすれば、全体としての被害も少なくなるというものだ」
「し、しかし」
「それに、よもや忘れた訳ではあるまい? ユニウスセブンの悲劇を。あのような悲劇を二度と起こさぬ為にも、彼奴等には支払ってもらわねばならぬ、悲劇の代償、をな」
「……っく!」
ギレンの言葉を前に、シーゲルは言葉を詰まらせる。
「他に異論はないな? では、オペレーション・ウロボロスを発動させる!」
こうしてZ.E.O.N.側は次なる一手として、オペレーション・ウロボロスの発動を決定した。
そして運命のC.E.七十年四月一日。
Z.E.O.N.側は手持ちの艦隊から幾つかの小艦隊を編成抽出し、それらを各国の補給路、及び宇宙拠点への散発的な攻撃を仕掛けさせることにより、地球連合側の動きを牽制させつつ、本命である投下艦隊を投下予定ポイントに向けて発進させた。
なお、地球連合側も、Z.E.O.N.側の動きを察知してはいたものの、まだ世界樹攻防戦の傷が癒えておらず、小艦隊の対処に手一杯で、本命の投下艦隊にまで戦力を割けない状況であった。
とはいえ、完全に指をくわえて見ている事はなく。
比較的余裕のあったA.O.C.U.と、そこまで余裕がある訳ではないが、地球連合の旗頭を自負し、更には先のレビル将軍の演説を行わせた手前、何とか捻り出すように編成した大西洋連邦の二カ国の艦隊が投下艦隊阻止の為に出撃。
しかしながら、出撃させた両国の艦隊は、投下艦隊を守護する護衛艦隊に対して圧倒的優位と言える状況にはなく。
それでも、何とか善戦はしたものの、結果としてはNジャマーの投下を阻止することは出来なかった。
投下されたNジャマーは、ダミーを含め地球各地へと投下され埋没を開始。
事前の想定通り、Nジャマーはその機能を遺憾なく発揮し、地球上の各国のエネルギー供給源である原子力発電に多大な打撃を与える事に成功する。
だが、この時、Z.E.O.N.上層部にとって想定外の事態が発生する事となる。
それが、本来は一部の国に対してダミーを投下する予定であったものが、一部の過激派により、ダミーではなく本物のNジャマーが投下され。
その結果、本来は被害を与える筈のなかった国にまで被害が及び、最終的には、Nジャマーの影響は地球全土に齎される事となった。
これは後にエイプリル・フール・クライシスと呼ばれ。
地球連合及びその他諸国に対して、大打撃となる未曽有のエネルギー危機を齎す事となった。
そして、この出来事により、地球に住む多くの人々は、Z.E.O.N.との戦争が宇宙の片隅で行われていた出来事ではなく、身近にまで迫って来ていた事を、否が応にも実感させられるのであった。
「Z.E.O.N.等のイレギュラーが存在しているお陰で、もしかしたらNジャマーではなくコロニーの方を落とすかとも心配していましたが。どうやら杞憂だったようですね」
「まぁ、仮にコロニーが落とされて、あちらの原作通りのコースで落ちたとすれば、一番の被害を受けたのは我が国になっていましたな」
「仮の話は、もうその辺りでいいでしょう」
「ブイ提督も善戦はしたようですが、如何せんZ.E.O.N.側の戦力も厚く、Nジャマーの投下を阻止できなかったようです」
「世界樹攻防戦での傷がもう少し浅ければ、等と嘆いた所で仕方がない、か。……国内の被害の全容は?」
そして、この事態に対して、組織でも緊急の会合が開かれ、今後の対応を決めるべく話し合いが行われていた。
「通信障害、及びエネルギー供給の一部停止の影響で国内の交通機関に現在も支障が生じています。ただ、事前の対策のお陰で航空輸送に関する重大な事故の発生は免れました」
「それから、現在のエネルギー不足に関してですが、以前より進めていました宇宙太陽光発電と核融合炉、水素発電等への原子力発電からの変換のお陰で、程なくエネルギー不足も解消される見通しです。それと、他国への支援も程なく可能となる筈です」
「そうか、それはよかった。しかし、事前に知っていたとはいえ、やはり被害をゼロにはできなかったか……」
「ですが、これでも、他国に比べれば事前の対策のお陰で被害はかなり軽減されています。もし仮に事前の対策が無ければ、……我が国も、他国同様に悲惨な状況だったに違いありません」
今やかつての末席から、組織内でも重鎮の一人となった高磯が、今回の一件、もう少し被害を減らせなかったのかと悔やんでいると。
そんな高磯に対して、他の出席者から最善は尽くしたとの説明が告げられる。
「……そうだな、よし。今は悔やむよりも、新たなる悲劇への備えを確立し、更なる悲劇の拡大を抑止する為に邁進する時だな」
こうして、高磯が気持ちを新たにした所で、議題はNジャマーの被害から国防。
国内のMS開発及び配備の状況について、議題が移っていく。
「コンペイ島とトリントンで行っている訓練の方は順調ですので、おそらく、"グリマルディ戦線"あたりで実戦投入できるかと」
コンペイ島とは、A.O.C.U.が保有するコロニー群、ラグランジュポイントの一つであるL2宙域に存在する、通称ムンゾ。
同コロニー群の付近に存在する、ムンゾを守護する重要拠点でもある宇宙要塞の事であり。
名前の由来はその外見がお菓子の金平糖に酷似しているからである。
元は資源採掘用の小惑星であったが、現在では各種改装が施され、A.O.C.U.が保有する宇宙要塞として機能している。
因みに、トリントンとは、オーストラリア東部に位置するA.O.C.U.の基地の一つである。
「ですが、大丈夫でしょうか? 流石にリック・ドムあたりは出てこないとは思いますが、シグーやジンハイマニューバ等、Z.A.F.Tの新型を含むZ.E.O.N.相手に、我が軍のMSが何処まで戦えるか」
「まぁ、確かに、ザニー……いやダーレか。それと、ガンキャノン最初期型ですからねぇ」
現在、A.O.C.U.は他の地球連合諸国に先んじて、独自MSの開発・配備を進めていた。
最も、その外見は、ガンダムシリーズに登場するMSに瓜二つのものであったが。
一方は、機動戦士ガンダム サンダーボルトに登場する、同作品内の南洋同盟と呼ばれる勢力が独自に開発した汎用MS、ダーレと瓜二つのMS、形式番号SRf-06、採用名"ザニー"である。
ジムの頭部にザクを連想させる胴体部の外見を有したMSで、外見の基になったダーレはビーム・サーベルを運用可能であったが、こちらのザニーは残念ながらビーム・サーベルを運用できない。
その為、基本的な武装は九〇ミリ口径のグレネード・ランチャー付きMS用マシンガンの他、一二〇ミリ低反動キャノン砲に、近接戦闘用として対MS用戦闘ナイフやシールド等、実弾武装が中心となっている。
なお、動力源はMS用の熱核反応炉がまだ完成していない為、C.E.における一般的なMSの動力源であるバッテリー方式を採用している。
そしてもう一方。
機動戦士ガンダム THE ORIGINに登場する、地球連邦軍初のMS、ガンキャノン最初期型と瓜二つのMS、形式番号RCX-76-02、採用名"ガンキャノン Block 2"である。
こちらも武装は、頭部の四〇ミリバルカン砲や右肩のガトリング砲、そして左肩の低反動キャノン砲或いはミサイル・ランチャー、小型のシールドに、その他ザニーと共用の武装等、実弾武装が中心となっている。
なお、動力源もザニー同様バッテリー方式である。
なおこの二機種は、開発当初から両機種の連携を考慮されており。
ザクIを多少上回る程度の機動性ながらも、安定性の高いをザニーを前衛とし、機動性は低いものの、火力と装甲に優れるガンキャノン Block 2が後衛を務める。
因みに二機種とも、開発はA.O.C.U.を代表する企業、アナハイム・エレクトロニクス社が務めている。
原作では宇宙世紀を代表する悪名高い企業ではあるが、この世界では、転生者を中心に起業した真っ当な企業、である。
「ですが、ムラクモ・クローム社が開発中の"有明"、……見た目はどう見てもグレイズですが。は、まだ実戦投入までには暫く時間がかかりますし。ビーム兵器標準搭載機も同様です。勿論、例のフラグシップ機についても」
勿論、A.O.C.U.が開発を進めているのは先の二機種のみだけではなく。
当然ながら更なる高性能機の開発も行われているが、現状では、開発が完了し実戦投入可能なものは先の二機種のみである。
「まぁ、圧倒的と望まないまでも、グリマルディ戦線でザニーやガンキャノン Block 2が活躍すれば、他国へのライセンス生産許可を含め二機種の販売が行われ、そこで得た外貨は開発に弾みを齎してくれると思いますけどね」
「所で、そのMSを搭載する為の艦艇の整備状況については、現在どのような状況に?」
「主機換装の為の近代化改修を行っている一部宇宙戦艦並びに宇宙巡洋艦については、順調にMS搭載能力を獲得すべく近代化改修を行っております。また、新造時よりMSの運用を前提とした次世代艦も、予定通り進宙し就役に向けて公試を進めておりますので。第一陣は、原作でのグリマルディ戦線終結辺りには就役できる見込みです」
「ビンソン計画は順調か」
そして、当然ながら開発したMSを効率よく運用する為には、母艦の整備も欠かせない。
その為、A.O.C.U.ではビンソン計画と呼ばれる、MS運用能力を有した艦艇の開発・配備、並びに従来艦のMS運用能力保有の為の近代化改修を盛り込んだ、艦隊再建計画も同時に進めていた。
とはいえ、ビンソン計画は一部を除き主に宇宙での活動をメインにした計画ではあるが、無論、宇宙のみならず、地上でも円滑なMS運用を行う為の警備計画は進められている。
ミデア戦略輸送機をモデルとした、"晴空戦略輸送機"やモデル同様の名を持つ"ガンペリー戦術輸送機"の配備や、その他水上艦艇や輸送用トラック等々。
MSの運用を織り込んだ軍隊としての整備計画が順調に進行中であった。
「所で、地上で思い出したが、原作通りと推測するアフリカを起点とした重力戦線において、おそらく矢面に立つA.E.C.は、暫くは戦車を主力に据えて対応するだろうが。……どうだろう、ガンタンクを勧めてみるというのは? 改良型の第二バッチの配備も始まりますし、処分の兼ねて丁度いいのでは?」
「うーん、買いますかね? 確かに、61式戦車同様に枯れた技術で作ってますから堅実ですが、戦車よりも全高が高く被弾面積も大きいですし。何より、バクゥやドムなんかが登場したら」
「だが、バクゥやドムが登場するまでの間なら、遮蔽物の少ないアフリカの地でなら、その長射程を生かして有利に戦えるはずだとは思わんか? それにバクゥやドムが登場した後も、運用次第でまだまだ活躍できる筈だ」
61式戦車とは、A.O.C.U.をはじめ幾つかの国で運用されている戦車であり、名前の由来はC.E.六一年採用の為である。
開発元は、軍用車輛や炸薬の開発などに定評のあるA.O.C.U.の企業、有澤重工。
一五五ミリの主砲を二門、連装式に装備するという野心的な設計の戦車。
しかし、主砲以外の点では枯れた技術を用いた堅実さを持ち、その信頼性は高い。
なお、同戦車のライバル関係にあると目されているのが、A.E.C.のアクタイオン・インダストリー社と大西洋連邦のグローバル・アーマメンツ社、通称GAとの共同開発したリニアガン・タンクである。
そして、ガンタンクと呼ばれる車輛についてであるが。
こちらは機動戦士ガンダムに登場するコア・ブロック・システム搭載型ではなく、THE ORIGINに登場するガンタンク初期型と呼ばれるものに酷似したもので。
先の61式戦車を開発した有澤重工が開発した大型戦闘車輛、形式番号RTX-65、採用名"ガンタンク"である。
モデル同様両肩に二門の大口径砲を有し、両前腕部の四連装機関砲に胴体下部に対人用三連装機銃を有する。
同機は現在A.O.C.U.以外では大西洋連邦が配備しているのみで。
その為、この機会に、更なる売込みの推し進める声が出たものと思われる。
なお、会話に登場した改良型、形式番号RTX-65-02 採用名ガンタンクA2は。
電子兵装等を最新の物に換装したほか、主砲の大口径砲を有澤重工製の最新の物に換装し、排煙ダクトを追加。更には頭部をコア・ブロック・システム搭載型同様のキャノピー方式とし、両前腕部の四連装機関砲を四〇ミリ四連装ボップ・ガンに変更するなど。
よりコア・ブロック・システム搭載型に近い外見を有する機種である。
「とはいえ、いずれにせよ、これまでの宇宙のみの想定から、これからは地上でのZ.E.O.N.との戦闘にも備えなければならなくなる訳だ。各国との調整など、やるべきことは更に山積みだな」
高磯の零した言葉の通り。
エイプリル・フール・クライシスの三日後には、アフリカ及び南アメリカにおいて、反政府勢力が蜂起し、現政権との間で紛争が発生。
この混乱に乗じ、Z.E.O.N.は数日後にアフリカへと部隊を降下させる、第一次降下作戦を決行。
以前より極秘に支援を行い関係を構築していた現地の反政府勢力、クーデター政権の手助けもあり、第一次降下作戦は無事に終了し、地球での橋頭保を確保する事となる。
更に数日後に行われた第二次降下作戦では南アメリカへと部隊を降下させ、こちらも、現地クーデター政権の協力のもと無事に降下し。
近隣の重要施設、及び最重要となるマスドライバー施設確保の為に侵攻を開始したのであった。
おまけ
「プランBを発動する! ……所でドズルよ、プランBは何だ?」
「あ? なに言ってるんだ兄貴、ねぇよそんなもん」
「所で兄上、ソーラ・レイは使えないようです」
「……くそう」
ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
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