音楽聴きながらやると、すげぇ執筆が進む(二回目)。
主に聞いているのは、トランスフォーマー・ザ・ムービーのBGMやG.IジョーのBGM、それと洋ゲーとかです。
無断で生産用に保管してあったエレ二ウム九九式を持ち出し、警備兵に見付かった際にはその警備兵を駆け付けた他の者たちと共に殺害したシヌ・リーオは、追撃の魔導士一個小隊のうち二人を殺害して見事に逃走した。
人気の無い場所へ着陸すれば、シヌはさっそく強奪したエレ二ウム九九式を装備しようとする。
「これは、これは最強の俺のための物だ…! あの気色悪いおっさんのじゃない!」
シヌは不気味な笑顔を浮かべながら言った後、エレ二ウム九九式を装備し始める。
気色の悪いおっさんとは、ターニャのことだろう。彼は存在Xに見放された際、新たな転生者であるターニャのことを知らされたのだ。
ターニャがエレ二ウム九九式を装備した後、更に余計なことを存在Xは言った。この者に神である自分への信仰心を持たせるため、お前にはもう用済みだと。これに怒らない人間は、自分を湧き負けている者か、自分を卑下している者だけだ。
なまじ存在Xより強大な力を手に入れ、それを自分の物だと思い込んでいるシヌにとって自身をこの世界へ転生させた者の言葉は、怒り狂わせるには十分すぎる言葉であった。
その言葉で、シヌはこの凶行に及んだのだ。
「力が、力が沸き上がるぞ…! これは、これは俺の力だ…! 俺の力なんだ! そして俺はこの世界で最強だ! 無敵で、最強なんだァァァ!!」
エレ二ウム九九式を装備し終えたシヌの全身に、同じく装備したターニャと同様の力が染み渡ったが、その力は邪悪な物であった。
皮膚が腐敗して死者のような肌となり、おぞましい風貌へと変化していく。シヌが蔑視する化け物であるが、沸き上がる力に当の本人はその化け物自体になっていることに気付きもしない。力の虜となっているのだ。
こうして、転生前の平凡というか、ネットの中だけが取り柄だったちっぽけな存在で、転生後は見た目だけは綺麗で中身は粗悪でシヌは、遂に身も心も怪物となった。
「俺は最強だ。この世界の支配者だ…! その支配者には、部下が必要だ。それも大勢の…! そして俺にはその力がある! 死者の軍勢を召還できる力を!!」
悍ましい怪物となったシヌは、この世界の支配者として君臨すべく、エレ二ウム九九式の影響で新たに手に入れた力、それも死者を蘇らせる力を使い、死者の軍勢を呼び起こそうと、地面に手を突っ込んだ。
大地に彼の邪悪な力が浸透すれば、亀裂が不気味に緑へ発光して、死者たちが地中よりはい出て来る。
彼が蘇らせた死者は、生前に魔力を持っていた者たちだ。その殆どが魔導士として軍隊に勤務し、散っていったか退役後や除隊で、事故や病死、老衰などの最期を迎えた者たちばかりである。
死者の大軍勢、それも魔導士一個軍を手に入れたシヌは、さっそく存在Xのお気に入り、ターニャを抹殺すべく、直ぐに行動に出た。
「お前のお気に入りのおっさんをぶち殺して、吠えずらかかせてやるぜ、糞神!」
居場所は分かっている。後は向かってターニャを殺すだけ。そう存在Xに宣言したシヌは浮遊し、自分が現世に無理やり呼び戻した死霊、またの名をゾンビ魔導士軍団を引き連れ、ターニャを殺しに西部へと進軍を開始した。
エレ二ウム九九式を装備し、恐ろしい怪物となったシヌ・リーオが行った戦死した魔導士による復活は、瀕死のフリードリヒが最強の超人兵士らと死闘を繰り広げている東部戦線にも影響が出ていた。
「な、なんだ! 戦死した魔導士が生き返っている!?」
数百人の超人兵士を一人で、しかも片腕の無い状態で交戦していたフリードリヒは、撤退の最中やモスコー攻防戦で戦死した敵味方の魔導士らが復活し、西へと向かっているの見て交戦を止める。超人兵士らも先ほど殺したはずの魔導士が復活しているのを見て驚き、同じく戦うのを止めてみていた。
この隙に主君と共に撤退するチャンスと思ってか、フリードリヒの部下たちは彼の周りに集まり、身体を掴んで連れて行こうとする。
「な、なんだお前たち!? 離さんか!」
「いえ、今においてチャンスはありませぬ。御免!」
重傷の身にも関わらず、戦い続けようとする主君を見兼ねての行動である。大した力も残っていないフリードリヒは、部下たちに撤退中の友軍の方へと連れて行かれた。
戦死したはずの魔導士が生き返り、シヌの元へ集結しているのは、モスコーだけではない。世界各地で戦死や病死、あるいは事故死か老衰した魔導士らが蘇り、飛んでシヌの元へ集結しているのだ。
この摩訶不思議というか、恐ろしい現象に世界中はどこかの国かどこかの魔導士が、禁じられた死者蘇生の魔法を使ったのだと思った。ぜートゥーアが居る本部にも、その恐ろしい現象の報告がなされる。
「報告します! 世界各地で死亡した魔導士が蘇ると言う現象が…!」
「死んだ者が蘇る? 死者蘇生の魔法か?」
「そ、そのようですが…」
報告しに来た士官に、死者蘇生の魔法なのかを問えば、士官は魔法については知らない。それと同時に近くの電話が鳴り、ゼートゥーアは受話器を取って電話に出る。彼の本部に電話をかけてきたのは、あのドクことシューゲルである。
「なんだ?」
『もう既に報告は行き届いておりますが、現在起きている怪奇現象はシヌの仕業です!』
「あのクソか? 一体、何をやらかしたのだ?」
『私の最高傑作、エレ二ウム九九式を盗み、友軍の将兵を数名殺害しただけでなく、それを装備してこの惨状を起こしました。や、奴を早く止めねば、恐ろしいことになります! 直ちにデグレチャフ中佐に指令を!』
起きている現象について問われれば、シューゲルはシヌが自分の最高傑作を盗んで装備し、死んだ魔導士らを蘇らせたと起こっていることを話した。その後、エレ二ウム九九式を装備して怪物となったシヌを斃せるのは、同じくエレ二ウム九九式を装備したターニャしか居ないと告げる。
取り敢えずターニャしか居ないことは分かったゼートゥーアであるが、なんでまた彼女なのかを問い詰める。
「何故デグレチャフ中佐だ? 他に適任者は?」
『同じくエレ二ウム九九式を装備しているからですよ! 頼みます! 直ぐに指令を! 出なければこの世界が! 死者の、死者の世界に!!』
「あぁ、分かった。そう慌てるな、直ぐにデグレチャフ中佐に指令を出す。でっ、奴はどこに居るか見当がついているのか?」
切羽詰まった口調で、必死にターニャに指令を出すように告げるシューゲルに、ゼートゥーアはいったん受話器から耳を離し、了承してからシヌがどこに居るか分かるのかを問えば、開発者であるマッドサイエンティストは、エレ二ウム九九式用のレーダーがあるので、何処に居るか分かると答える。
『心配ご無用。あのゴミ、ではなく世界の敵は、デグレチャフ中佐の方へと向かっております。試験用にと開発しておいた特別製のレーダーが役に立ちました。後は、閣下の言葉があれば、中佐は自ずと勇者となり、あの怪物に挑むはずです』
「まるでおとぎ話のようだ。では、こちらから指令を出しておく」
『ありがとうございます! 私はできる限り中佐の支援に回ります! では、失礼を!』
「全く、何が起こっていると言うのだ…?」
シューゲルの慌てっぷりに、ある意味で疲れたゼートゥーアは、窓を見て世界で一体何が起こっているのか不安となった。
『奴め、まだ地位と名誉を取り上げられた理由を分からんと見えるな…! 死者蘇生の術を使い、死者の軍勢を従わせて世界の理を破壊した挙句に我に反抗するとは…! あの人間より、ある意味恐ろしい奴よ。早急に手を打たねば、この世界は崩壊する! 致し方ないが、あの人間と私の信徒たち、あの大剣の男を頼るしかないか…!』
流石の存在Xも死者の軍勢を率いて自分に対する反抗の意思を見せたシヌに、対応しなければならなくなったのか、ターニャとメアリーを初めとした自分の信徒たち、それと異世界から刺客として呼び寄せたシュンに頼るほかないと考え、宇宙で戦う三名に語り掛けた。
『宇宙で戦う人間たちよ、戦いを止めるのだ…! 悍ましい存在が、お前たちの世界を破壊しようとしている。貴様らの殺し合いなど、それに比べれば遥かにつまらぬこと。もう一度言う、戦いを止めるのだ!』
宇宙で人間離れした戦いと言うか、そもそも宇宙で生身でいる時点で人間ではないターニャとメアリー、そしてシュンに、存在Xは直接頭に呼びかけ、戦いを止めてシヌを止めるように告げた。あの存在Xが頼み込んできたので、神を自称する存在の言う通りに三人は戦いを止めてその頼みに耳を傾ける。
「神様? 神様なのですね!」
「存在X!? 貴様、この期に及んで何の用だ!!」
直ぐに信仰深いメアリーは指示を受けようとしたが、ターニャは何をやらせる気だと言って怒鳴り散らしてくる。シュンは従わなければ、顔半分に刻まれた刺青、またの名を烙印を使って従わせるつもりかと思って警戒する。
自分の言う通りに戦いを止めた三人に向け、存在Xは怪物となり、自分に対して死者の軍勢を率いて反旗を翻したシヌの抹殺命令を下す。
『貴様らには何もせん。そこの異世界の男は、私の指示に従えば、印を消して自由にしてやろう。理由は話した通り、そこの人間と同じ転生者が、魔の力で怪物となり、禁術である死者蘇生の魔法を使って死者の軍勢を組織し、私に反旗を掲げ、世界を破壊しようとしている。まだ破壊行為には及んではおらんが、人間、貴様を殺してから奴は必ず世界を破壊するだろう。その為にも、先に奴を斃さねばならん。既に信徒たちにも集結命令を出し、討伐に向かわせた。お前たちは協力して奴を斃すのだ!」
「はい! その邪悪な者を斃しに向かいます!」
「そうかい、ならやってやるよ。いい加減、この世界には飽きたしな」
存在Xはシヌ討伐を指示した。これにメアリーは真っ先に従い、シュンもまた刺客としての印を消してくれるなら、やると答えた。だが、ターニャは従わない。合理主義者である彼女は直ぐに反論する。
「元々自分の招いた種ではないか。なぜ私がやらねばならん? 神を自称するなら、自分で解決すればいいだろう」
「っ! お前…!!」
このターニャのもっともな反論に、メアリーは殺意剥き出しの目付きで睨み付ける。シュンは印を消して復讐の旅に戻れるなら、良かったので、気にすることなく地球に降下した。
『なっ!? この私の頼みを無視すると言うのか! 人間!! 今の貴様の世界はここで、貴様しか奴に対抗できぬのだぞ!!』
「知るか。貴様が勝手に私を、信仰心を持たせるとか、道徳がないとか言ってこの戦争だらけのクソったれな世界へ転生させたのだろう。私の知ったことではない」
『なんと言う奴だ…! 貴様は、この世界の人間がどうなろうが知ったことではないのか!?』
「この人でなし! 悪魔!!」
この世界が、どうなろうが知ったことではない。
そういうターニャに、存在Xとメアリーが激怒する中、彼女の脳裏にヴィーシャを初めとした部下たち、ゼートゥーアなどの理想の上司たち、戦争とは無縁なリリーの姿が浮かび上がった。
自分がやらねば、彼らはどうなってしまうのだろうか?
そんな考えも脳裏を過り、ターニャを躊躇わせる。
その後に考えてみれば、ここで逃げて、一体どこに行けば、いいのだろうかと思い始める。そうだった、この世界には自分の居場所はこの真下の地球しかないのだ。
解決策は一つ、シヌとか言うチート能力で粋がっている中身が餓鬼の男を殺し、あのクソったれの神の尻拭いする。
「ちっ、仕方ない。存在X、貴様の尻拭いをしてやる!」
『そうだ、それで良いのだ人間! 貴様の眼下の星には親愛なる友人と部下、上司がおる! 全てがお前を理解してくれる! その者を失いたくはないだろう!? お前をこの世界に転生させたことを私は後悔していない! さぁ、彼らを救うためにシヌ・リーオを討伐するのだ!!」
ターニャが仕方なくやると言えば、気を良くした存在Xは改めて討伐せよと命じた。転生前は、人のことなど知ったことが無いターニャであったが、転生後は人のことを心配するようになって、変わったことに転生させたことを後悔していないとも言う。これに応じてやって、ターニャはメアリーと共にシヌが暴れ回る地球へと降下した。
大気圏内に入り、地球の空気が吸えるようになって音が聞こえてくれば、ターニャは戦利品である短機関銃を返す。
「おい」
「っ!? どうして…?」
「返してやる。後ろから撃たれるのは御免だからな」
「あ、ありがとう…」
背後を心配してのことだが、もう私を狙いに来るなという意味もある返還だ。
投げ渡された父の遺品である短機関銃に、メアリーは大事そうに抱えて憎かったターニャに礼を言う。
シヌが見える高度まで降下すると、既に存在Xの信徒たちと死体魔導士軍団による激しい空中戦が行われていた。だが、数が少ない生者たちの方が劣勢であり、数が圧倒的の死体魔導士軍団に圧されている。生者たちの中には、黒人魔導士の神を知る者も加わっているが、数は減らせていない。
ターニャは信徒軍団の中に、軍人があまり居ないことに気付いた。経験豊かな軍人が加われば、さぞかしシヌへの接近は容易になるだろうと思い、ターニャはメアリーに後は頼むと言って、自分の部下たちが居るとされる場所まで向かう。
「あいつ等を助けてやれ。私は自分の部下たちの元へ向かう」
メアリーの返答を聞かず、ターニャは自分の部下たちの気配を察知し、そこへ瞬間移動した。
「戦闘団長殿!?」
「驚いている暇はない。なぜ貴様らは戦闘に参加せんのだ?」
「えっ? 本部に戦闘に参加しろとの命令を受けていないのですが…」
一応ながらの弾薬補給と簡単な食事をとっている最中に、現れたターニャに対し、二〇三の者たちはそれを止めて直立不動状態となって敬礼を行う。
戦闘に参加しなかったことを問われれば、西方軍本部より戦闘に参加しろとの命令を受けていないと、ヴァイスは代表して答える。その後にか、ヴィーシャは無線機を背負った女性魔導士を伴って、受話器をターニャに渡し、ゼートゥーアから指令をあると告げる。
「自分で考えようとせんのか、貴様らは? それとなんだ?」
「ゼートゥーア閣下より、緊急指令です。シヌ・リーオを討伐せよと」
「無論、そのつもりだ。もしもし、ゼートゥーア閣下ですか? 貴方が命じなくとも、私はやるつもりです。それに伴い、西方軍にあのゾンビ軍団の攻撃してほしいのですが」
『なに、貴官だけでは無理だと言うのか? 良かろう、根回しはしておく。あぁ、それで良いアイデアを思い付いたぞ。良く聞くんだ、中佐』
ヴィーシャより渡された受話器を取り、命令しなくとも、シヌは斃すと告げるターニャだが、それに伴って西方軍にも戦闘に参加するように告げる。
ターニャの考えを、多少ながら間違っていても理解しているゼートゥーアは、敵の連合軍も戦闘に参加させようと思い、彼女にシヌの攻撃を連合軍に当たるよう仕向けさせろと命じた。
『シヌの攻撃を連合軍に当たるように仕向けろ。そうすれば、奴らもあいつに攻撃をするだろう』
「中々の考えですな。我々も攻撃される可能性は?」
『安心しろ、連合軍の射程に入らないように、西方軍には厳命する。さぁ、早くあの
「了解です。二度と生き返れないように、バラバラにしてやります!」
連合軍にも戦闘に参加させようとすることも、ターニャは理解していた。ゼートゥーアがそれを言ってくれたことに感謝しつつ、ターニャは早速シヌの攻撃を連合軍に当たるように仕向けるべく、艦隊が居る海へ向かおうとする。
飛び立とうとする際に、武器を持っていないことをヴィーシャに問われた。
「あの、戦闘団長殿? 短機関銃はどうしたので?」
「あれか? 返してやった。それに武器は自力で調達する。貴官らは直ちに戦闘に参加しろ。狙う個所は頭だ、砕くのも良い」
あの短機関銃はメアリーに返してやったと答え、死体魔導士は頭を撃てば斃せると告げる。その件についても問われる。
「なんで頭なんですか? 敵は一体…?」
「ゾンビだよ、しかもタチが悪いことにゾンビ魔導士だ。大抵の場合、ゾンビの弱点は頭だ。心臓かもしれんが、一応ながら覚えておけ」
「は、はい…」
無論、ヴィーシャたちはゾンビは知らない。とにかく分かっていないような彼女らに、ターニャは頭か心臓を狙うように釘を刺しておけば、武器を調達するためにシュンの元へ急いだ。
死者魔導士ことゾンビ魔導士の軍団に苦戦する存在X信徒軍団を他所に、ターニャは邪魔になるゾンビ魔導士を魔弾で叩き落しながら向かう。次々と襲い掛かるゾンビ魔導士の中には、今まで自分が殺してきたレガドニアやフランソワの魔導士の顔が見える。無論、ターニャは覚えていない。遭遇して、頭を潰すので、思い出すこともない。
「どこかで見たような顔が居たな、まぁ良い。おい、デカ物! 武器を寄越せ!」
初陣で自分に襲ってきたレガドニアの魔導士であることも思い出すことなく、ターニャはシュンを見つけ次第、武器を寄越すように告げる。
刺客としての印を消され、自由の身となって思う存分に暴れ回るシュンは、左手にAA-12散弾銃を持ってゾンビ魔導士らを大剣と同じくバラバラにしていた。シュンが武器を自在に出すことを知ったターニャは、直ぐに武器を寄越すよう言う。
「なんであんたに武器を渡さなきゃいけねぇんだ? あんたは武器無しでやれるだろ?」
「魔力を温存するためだ? ここで続きをするか?」
「この状況で、あの続きなんて出来やしねぇよ。ほれ、持ってけ」
ここでターニャを相手にすれば面倒になると思い、シュンはベルトのコアから盗んだのに使わず仕舞いだったM4カービンを予備弾倉と共に渡す。ついでにデグレチャフ対戦車銃まで渡す。M4カービンは嬉しいが、いらない長物まで渡されたターニャは、腹いせかと激怒した。
「おい、M4カービンはともかくなんだこの対戦車銃は!? 一発しか入らん上に重いぞ!」
「おまけだ、持っておけ」
「腹いせじゃないか! たくっ!」
生前に撃ったことがあるAR15系のM4カービンは難なく扱えるターニャであるが、姓名の同じデグレチャフ対戦車銃に対してはえらく嫌がっていた。でも、使えるかもしれないので、銃紐で背中に掛けておき、予備弾倉をポーチに無理やり詰め込み、安全装置を解除してゾンビ魔導士軍団との交戦を開始する。
エレ二ウム九九式の加護のおかげか、はたまたM4カービンのおかげか、短発で狙った弾丸は全てゾンビ魔導士の頭部に命中した。連合軍も戦闘に参加させるべく、ターニャは艦隊が居る海岸まで出て、追尾してくるゾンビ魔導士を確認した。十分な数が追ってきており、その中には怪物と化したシヌも混ざっている。
『見付けたぞ! おっさん!! ぶっ殺してやるッ!!』
「狙い通りだ。さぁ、私はここだ! チート野郎! 殺しに来い!!」
追ってくるシヌを挑発し、ターニャは連合軍の艦隊まで誘導した。その間にシヌは、ゾンビ魔導士らに特攻命令を出す。自爆攻撃だ。その自爆攻撃を敢行したゾンビ魔導士の中には、自分が張り付いて爆死させたレガドニアの魔導士も含まれている。何という皮肉か。
「あいつは…!? まぁ良い! どうした!? こっちだ!!」
自爆で殺した魔導士のことを思い出しつつ、ターニャは敵艦隊に接近。対空砲火を躱しながら、シヌのゾンビ魔導士による自爆攻撃を連合軍艦隊に誘導して、アルビオンか秋津洲海軍の駆逐艦一隻を轟沈させた。
味方の艦艇を沈められたことで激怒した両海軍は、艦上戦闘機、魔導士、艦砲射撃による報復をシヌに行う。自分とゼートゥーアの企みが成功すれば、ターニャは同じエレ二ウム九九式を装備したシヌとの交戦を始める。
『お前さえ来なければ、お前さえ来なければ俺は最強だったんだ!!』
「私を恨むのは筋違いだぞ。恨むなら、奴を恨め!」
自分を憎み、激しい攻撃を行うシヌの攻撃を避けながら、ターニャはそれは筋違いであると言って、恨むのは存在Xだと告げる。これにシヌは、お気に入りのお前を殺すことこそ、存在Xに対する復讐の一つであると返す。
『黙れぇ! お気に入りをお前を殺すのも復讐なんだぁ! あいつに吠え面かかせるために死ねぇ!!』
「無茶苦茶な奴! 自分が悪いとも思わんのか、貴様は!!」
『煩い! 俺は悪くない! 悪くないんだ!!』
無茶苦茶なことを言うシヌに、ターニャは呆れつつも反撃を行う。子供染みているとはいえ、シヌの攻撃は強力だ。強力過ぎる。当たれば、いくらターニャと言えど肉塊と化すだろう。
それが分かっているターニャは攻撃を避けつつ、怪物の弱点である頭部を狙うが、魔法障壁か分厚い皮膚の所為で弾かれるばかりだ。魔法攻撃も同様である。
『無駄だ! 俺は最強なんだ! 鼻くそみてぇな弾が効くか!!』
「(あの小娘はどうした? せっかく返してやったのに! 何処をほっつき歩いてる!?)」
ターニャの全ての攻撃を防いだシヌは、自分が怪物と化していることにも気付かず、無敵の存在であることを誇り始める。交戦しているターニャは、自分に次いで戦闘力を誇るメアリーが参加していないことに気付いた。真っ先に来るはずだと思ったが、来ていない。だが、メアリーにも事情がある。それは、ゾンビ魔導士として復活した父、アンソン・スーと交戦しているのだ。
「止めてよ父さん! 私だよ! メアリーだよ!!」
そう娘だと死んだ父に訴え掛けるメアリーであるが、ゾンビ魔導士として復活したアンソン・スーは容赦なく魔弾を込めた散弾を実の娘に撃ち込む。ゾンビ魔導士としてのアンソンには、本来の魂は宿っていないのだ。それでも構わず、メアリーは交戦せずに戦えないと訴えるが、ゾンビ魔導士のアンソンには聞こえていない。
「なんで! なんで撃つの!? 私が分からないの? 父さん!!」
そんなメアリーに、シュンは同じくゾンビ魔導士として復活したオルヴァ=ジュール・カゾールや、ミシェイル・ホスマンと第一魔導大隊全員を切り裂きながら近づく。
「おい、そいつはもうお前の親父じゃねぇ! もう死体だよ!」
「そんな、あれは父さん…」
「おらぁ! だったらなんで娘に散弾銃を撃つんだ!? あれがお前の親父なのか!?」
邪魔をしに来たミシェイルを切り裂いてから、シュンは未だにかつて父だったゾンビ魔導士と戦えないメアリーに、自分を殺そうとしてくるのが親父なのかと問う。
この言葉にメアリーは自分の父を復活させ、死後に無理やり復活させ、自分の娘を殺させようとし、なおかつ辱めたシヌに対する怒りが沸き上がる。
「そうだ、父さんは死んだ。もう居ない! そして父さんの死体を使い、私を殺させようとしたあいつを、私は許さない!!」
散弾銃を撃ちながら接近するアンソンゾンビ魔導士に対し、メアリーは形見である短機関銃の銃口を向けて光の魔法を使い、かつて父だったゾンビ魔導士を浄化した。それから、身体をシヌが居る方向へ向け、元凶である怪物に復讐するべく、全速力で向かう。
「その意気だ。それとてめぇは、死んでいろぉ!!」
メアリーを鼓舞してシヌに向かわせたシュンは、自分が殺してゾンビ魔導士として復活して斧で襲い掛かるリューネブルクをもう一度殺し、彼女の後へ続いた。
この世界で史上最悪な怪物となり、世界を破壊させんとするシヌ・リーオを討伐しに…。
ゾンビ魔導士は、デグ様が今まで殺してきたと言うか、死んでいった魔導士たちが復活した物です。
なに、なんで幼女戦記でゾンビを出したかって?
誰もやったことが無いからさ。魔法があるし、やっても問題無かろう。
ゾンビとして復活した魔導士には、スナイパーエリートのゾンビアーミー的な理屈となっております。
次回はチートクソオリ主ことシヌ・リーオと、デグ様達との決戦でございます。