諏訪の兄は狙撃手   作:塩田貝

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ROUND2④

現在颯太郎は、空閑から逃げつつ堤と合流すべく、高台を登っていた。

走りながらレーダーを確認すると、あることに気付いた。

 

 

「ん?思ったより近づかれてる...グラスホッパーか。」

 

 

颯太郎の考えた通り、空閑はグラスホッパーを使い急激に距離を詰めていた。

 

 

「洸太郎、空閑はグラスホッパーを持ってるぞ。」

 

「グラスホッパー⁉︎新しいトリガー持ってきやがったか...。日佐人は後どのくらいで合流出来そうだ?」

 

「あと少しで着きます。でも、空閑にグラスホッパーがあるなら、空閑の方が数秒早いと思います。」

 

 

そうか...と諏訪は言うと、考えこんでしまった。スナイパーは寄られてはほぼ何も出来ない。颯太郎のサイドエフェクトは逃げや索敵には使えるが、寄られたらただのスナイパーだ。接近戦で空閑を倒すのは、不可能に近かった。

 

 

「大丈夫だ洸太郎。俺もなるべく抵抗するし、日佐人と空閑が来る誤差の数秒は耐えてみせるさ。

 

「...わかったぜ。俺は今から荒船を抑える。堤はメガネに何もさせんなよ。」

 

「了解です。このままいけばもう直ぐ倒せますよ。」

 

「大砲には注意しろよ。」

 

「了解です。」

 

 

堤がそう言うと、諏訪は道路を横切って階段に向かっている荒船を見つけた。諏訪はすぐに荒船の前方目掛けてショットガンを打つ。

 

 

「よー荒船!上には行かさねーよ!」

 

 

荒船はち、と舌打ちをするとイーグレットから孤月に持ち替えた。

 

 

「まずは一点取るぞ、半崎。」

 

「了解っす」

 

 

 

 

 

 

 

「おっとー!荒船隊の荒船隊長と諏訪隊の諏訪隊長がここで合間見える!」

 

「普通この展開なら諏訪が有利ですが、荒船には半崎の援護射撃があるのでこれで五分ですね。今の距離で荒船1人だと諏訪に勝つのは厳しいので半崎は動けません。諏訪もそれを分かっていて、足止め目当てかと思います。」

 

東がそう言うと、犬飼があっと何かに気付いた。

 

「空閑くんが颯太郎さんにもう追いつくよ。」

 

画面には、屋根の上から颯太郎を見下ろす空閑の姿があった。

 

 

 

 

(もう追いつかれたか。思ったより早かったな。)

 

 

颯太郎がそう考えていると、空閑が颯太郎に襲いかかる。空閑はグラスホッパを足元に出すとそれを踏み、スコーピオン片手に颯太郎の懐目掛けて一気に接近した。それを颯太郎はバッグワームを解除しながら横に動き、ギリギリで避けると、空閑はすぐに地面を蹴り方向転換しもう一度斬りかかる。颯太郎は今度は避けずシールドで間一髪でガードすると、動きの止まった空閑を蹴り飛ばそうとするが、空閑がそれを後ろに下がり避ける。空閑は一旦距離を取ると、構えを崩さないまま颯太郎に声をかけた。

 

 

「中々やるね、颯太郎先輩。スナイパーの身のこなしじゃないんだけど?」

 

「これでもアタッカーとしてB級に上がってるからな。」

 

「なるほど、荒船さんみたいな感じか。」

 

「俺はアタッカーでマスタークラスになる前に転向したから、あいつの方がすげーよ。」

 

 

颯太郎が言い終わると、空閑がもう一度接近する。颯太郎は横に避けようとするが、空閑が読んでいた。空閑は仕留めようと右腕を振りかぶった瞬間、颯太郎は手に持っていたイーグレットをポイッと放った。颯太郎の予想外の行動に空閑は反応出来ずに当たった、その瞬間、家と家の間から日佐人が飛び出してきた。日佐人はバッグワームを解除すると、一気に接近。空閑の着地隙を見逃さなかった。孤月で空閑の右腕を落とした。

 

 

 

 

「おーっと!ここで諏訪隊の笹森隊員の奇襲!空閑隊員の右腕を切り落とした!」

 

「どんな人間でも着地は隙があります。その上で敢えて右腕を狙うことで確実に戦力を削りました。連携の取れた良い奇襲でしたね。」

 

東がそう解説すると、桜子が颯太郎のさっき見せた動きの話を振る。

 

「颯太郎先輩は先程イーグレットを投げるという、驚きの行動をしましたが、これについてはどうですか?」

 

「まさか投げるとは思わなかったなー。当たり前だけど武器を投げたら丸腰になるわけだからね。しかもタイミングが早いと普通にイーグレットを切られて自分も切られるし、遅いとイーグレットごと切られる。だからスナイパーは接近されたらガンナーみたいに戦って少しでもダメージを与えようとするんだけど、今回の颯太郎先輩の目的は一瞬でも隙を作ること。相手の頭にない動きで動きを止めたのは流石だね。」

 

 

 

 

 

空閑は腕を切られたが、すぐにグラスホッパーで距離を取る。その状況で修に連絡する。

 

「すまんオサム。腕一本落とされたし、もう少し時間がかかりそうだ。」

 

「そうか...わかった。」

 

修は今堤のフルアタックをなんとか凌いでいるが、レイガストもそろそろ限界で、修自体所々トリオンが漏れていた。

 

(どうする...空閑は片腕を失った上に合流も出来そうにない。しかも僕もあとどれだけ凌げるか分からない。なら...)

 

修はある作戦を閃いた。この作戦が最善手だと信じ指示を出す。

 

「空閑、今から言う作戦を聞いてくれ。」

 

 

 

 

「良い奇襲だ日佐人。」

 

「ありがとうございます、颯太郎さん。」

 

空閑が距離を取ってから、颯太郎と日佐人は無闇に追撃せず距離を保っていた。

 

「このまま空閑を抑えますか?」

 

「そうだな。なにも無ければだが、メガネ君は何かやってくるだろうからな。さて、どんな一手で来るか。」

 

 

 

 

 

「くそったれ、攻めきれねーな。」

 

同じ頃諏訪は、最初こそ壁に沿っていたため有利に進んでいたが、荒船に狭い階段に入られると、半崎の援護もあり中々攻められずにいた。

 

 

(まあ2人抑えられてると思えばいい方か。)

 

諏訪がショットガンを片手に構えながら考ええていると、急に爆音が響いた。荒船や諏訪がその方を向くと、自分たちの頭上をバカでかい光線が颯太郎達がいる方へ向かってとんで行っていた。それに驚いていると、もう1発今度は修と堤がいる方へ飛んで行った。そして、2発の大砲は、諏訪隊の3人がいる近くで大爆発を起こした。

 

 

「兄貴!日佐人!堤!」

 

 

諏訪隊のメンバーを玉狛の大砲が襲う。諏訪隊の運命は。


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