「くそったれ、やっぱりそう来るか」
千佳の砲撃の威力に弟と同じように悪態をつきながら、颯太郎と日佐人は何とか建物を壁にして生き残った。しかし、その隙を生むことが玉狛の狙いだった。空閑は砲撃をギリギリで避けると、すぐにグラスホッパーで戦場を離脱し、修と堤の場所へ飛んでいく。颯太郎がすぐにイーグレットを構えるも、既に建物の向こうへ消えていってしまった。いくら颯太郎でも、この状況で壁抜きショットを決めることは難しい。故に、颯太郎は銃口を下げた。
「あのメガネ中々やるじゃねーか」
颯太郎は不適に笑っていた。今度はこっちの番だ。と言っているかのように。
堤はショットガンを両手に構え、修に銃口を向けていた。
レイガストはもうヒビが入っており、修自身も被弾した所からトリオンが漏れ、あともう一回フルアタックすれば倒すことができるだろう。
堤はそう思って引き金に指をかけたその瞬間、砲撃が飛んできた。
砲撃は自分たちがいる場所とは少し離れた所に落ちたが、その衝撃は近くの建物を吹き飛ばしそうなくらいの威力で、堤は思わずそっちを見てしまった。
それが、修の狙いだと気付かずに。
(よし、今だ!)
修は大砲が飛んできて驚いている堤を見ると、すぐに堤の銃口から外れようとする。
しかし、堤もそれに気づき再び引き金を引こうとしたする。
すると修はスラスターを起動して、堤が打つ前に懐に入りそのまま突撃した。
突き飛ばされた堤に向かって、細かくしたアステロイドを放つ。
堤はフルアタックをしていたためガードが出来ない。
しかしこれで落ちるほど堤は弱くない。
堤は右手のショットガンでアステロイドの一部を打ち落とすと、そのまま横に倒れ込むように避ける。
しかし落としきれなかったアステロイドが諏訪の脇腹を抉る。
『警告、トリオン漏出甚大』
それを見た修はすかさずアステロイドをもう一度放つ。
しかし、堤は倒れ込んだ姿勢で左手のショットガンを修に向ける。
まさか相打ち覚悟か。そう思った修はアステロイドを撃ったあとすぐにレイガストを構える。
堤はそのままショットガンを放つと、堤の体にアステロイドが刺さった。
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
堤の体が光になって飛んでいった。
「あーっとー!ここで諏訪隊の堤隊員がベイルアウト!玉狛第二の三雲隊長が劣勢から逆転勝利!これで諏訪隊と並びました!」
解説席では、桜子が興奮した様子で伝える。
「玉狛は雨鳥隊員の使い方が上手いですね。荒船隊に上を取られたときや、今みたいに追い込まれた状況で使うことで、相手に流れを持っていかせません。」
「さっきの場面で大砲を撃たなかったら、玉狛は空閑くんとメガネ君二人とも落とされる可能性が大きかった。その状況から空閑くんは離脱できて、メガネくんは一点取ったわけだから、良い判断だったね。」
東と犬飼がそう解説すると、桜子はなるほどーと言い、今度はこの後の戦いについて聞く。
「堤隊員が落とされたことによって三雲隊長と空閑隊員が合流しましたが、今後はどのような展開になると思いますか?」
「玉狛の雨取隊員の位置がバレてしまったので、近くにいる荒船隊の2人か諏訪のどちらかが取りに行きたいですが、諏訪は荒船達が邪魔で動けなく、荒船も半崎の援護射撃がなくなると諏訪に落とされます。もしかしたらこれも狙いだったのかもしれませんね。」
「くそ...!」
諏訪隊の作戦室に戻ってきた堤は悔しさをあらわにしていた。
普段堤は感情をあまり表に出すタイプではないが、今回は違った。
あと一歩の所まで追い詰めておきながら自分の反応が遅れたせいで逆に落とされてしまった。
自分の不甲斐なさに腹が立つ。
みくびっていたわけではないと思っていたが、心のどこかで油断していたのかもしれない。
しかし、終わってしまったことをいつまでも引きずるわけにはいかない。
自分は負けてもチームはまだ戦っているのだから。
堤は急いで起き上がり小佐野の元へ向かった。
「小佐野、あれを頼む!」
「おっけー」
小佐野がそう言うと、画面の一部をタッチし、あるものを起動した。
「スターマーカー起動!」
「お、スターマーカーが起動したぞ。堤が最後つけたか。」
「これで三雲の奇襲に対応出来ますね。」
日佐人の言うように、スターマーカーとはいわば発信器のようなもので、つけた相手の位置がバッグワームを起動していても分かるトリガーである。
「玉狛は洸太郎の方に向かってるな。乱戦に持ち込みつもりか...」
乱戦に持ち込まれると、玉狛には砲撃がある。
それに加え乱戦で無類の強さを発揮する空閑が揃えばかなり厄介になる。
「日佐人、ここからは別行動だ。お前は洸太郎の方へ向かってくれ。」
「了解です。」
そう言うと、日佐人はバッグワームを起動して諏訪の元へ走っていった。
「さて、俺もやるべきことをやりに行くか。」
颯太郎は日佐人とは違う方向に走り出した。
「玉狛のスナイパーの子取りに行きますか?」
「いや、このまま諏訪さんを狙うぞ。」
今半崎に千佳を狙わせに行くと、自分がすぐ落ちてしまう。
そうなったら仮に千佳を落とせたとしても、居場所がバレた半崎が落とされて一点止まりだ。それなら、敵がが近くにいることや、半崎の援護射撃も効きやすいというメリットがある乱戦に持ち込まれた方が良いと言う判断だった。
「了解です」
荒船は何とか階段の上を取ったことで、半崎の援護射撃が効きやすくなる。それがわかっているから諏訪も攻めることができず、壁を背に膠着状態が続いていた。
「くそったれー、めんどくさい展開だぜ!」
こちらも兄貴と同じようなセリフを吐いていると、小佐野から連絡が入った。
「諏訪さーん、もうすぐ日佐人と玉狛が来るよー。」
玉狛がここに参戦したら、事態は一気に動く。
諏訪は一度深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
ここで決める。
そう心に決めた時、再び小佐野から通信が入る。
「諏訪さん左からくる!」
言われた方を見ると、修がアステロイドを撃って来ていた。
それを横に避けると諏訪は少し下がり、荒船目掛けてショットガンを発射。
荒船がそれをガードすると、隙を見逃さずに半崎が諏訪を狙撃する。
諏訪の顔面にイーグレットの弾丸が突き刺さった。
しかし
「大当たりだぜ」
諏訪は顔の前に集中シールドを貼ることによって半崎の狙撃を防いで見せたのだ。
「え、まじ?」
半崎が驚くのも無理はない。
普通シールド単品でイーグレットは防げないが、狙いを読んでシールドを集中させれば防御が可能である。
しかし読みが外れていれば一撃でベイルアウトしていたため、諏訪の胆力の凄さが垣間見える。
諏訪は階段の方へ走り修の斜線を切ると、階段で待ち伏せしている荒船にショットガンを撃つ。
それをシールドで防御するが、腕や足に擦り僅かにトリオンが漏れ始める。
荒船はすぐに孤月を抜くと、諏訪に斬りかかるが、後ろに下がり避ける。
諏訪は再び修たちがいる道路に出ると、荒船も階段から降りてきた。
つまり、今三部隊の隊長が睨み合っている。
誰かが動けば乱戦になる。
それがわかっているからこそ、睨み合いが続いているのだ。
この乱戦を制するのはどの部隊か。
諏訪好きとして、あのシーンをどうしても入れたかった。
原作でも諏訪隊頑張ってほしいですねー
スターマーカーってつけられた方は気付かないんですかね。
分かる人いたら教えてください。