「さあ試合もいよいよ佳境を迎えようとしています!果たしてどの部隊が勝利するのか!解説のお二人はどう思いますか?」
桜子の問いに東と犬飼が答える。
「玉狛と諏訪隊が少し有利ですね。玉狛は砲撃でいつでも戦況を変えることが出来ます。一方諏訪隊は、スナイパーの颯太郎隊員は当然ですが、笹森隊員も姿を眩ませています。この2人の動きにかかっているでしょう。」
「荒船隊はちょっとしんどいかなー。人数が1人少ないし、中距離が得意の諏訪さんとメガネくんが近くにいる。半崎の援護射撃でうまく立ち回って漁夫の利を狙う感じかな?」
荒船隊の基本戦法は、3人の狙撃による多角的な攻撃だ。
穂刈が開始早々落とされてしまったため、荒船が前を張り、半崎が援護射撃をするという形を取るしかなかった。
もし3人揃っていたら、わざわざ敵の前に姿を見せることはせず、全員が狙撃を狙っただろう。
荒船隊は序盤に穂刈を落とされた影響が出ていた。
今一ヶ所に集まって3部隊は睨み合いが続いている。
各々が自分の武器を握りしめ、ピンと緊張感が漂っていた。
しかし、その静寂がとうとう破られた。
修が荒船に向かってアステロイドを発射。
と同時に空閑が荒船に斬りかかる。
荒船はバッグワームを解除してシールドで修の攻撃を防ぐと、右手に握っている孤月で空閑を迎え撃つ。
鍔迫り合いをしていると横から諏訪がショットガンでまとめて吹っ飛ばそうとするが、2人とも後ろに飛び、避けると、今度は修がレイガストで諏訪に斬りかかる。
しかし、諏訪は瞬時に左手のショットガンをシールドに切り替え、攻撃を受け流すと、右手のショットガンを撃つ。
修は何とかレイガストをシールドモードにするが、あまりに近距離からの攻撃だったので崖の下まで吹っ飛ばされた。
「ユウマくん、日佐人くんが右後ろからカメレオンで来てる。すぐくるよ!」
(それさえ分かってれば姿をみせた時に、殺せる。」
カメレオンは姿を消すという一見無敵にも見えるトリガーだが、カメレオンを起動したままだと攻撃が出来ないと言う欠点がある。
それを知っている遊真は、諏訪を狙うと見せて姿を見せた笹森を殺ろうと考えた。
追撃しようとする諏訪に斬りかかろうとする。
しかし、動こうとした遊真の体が急に止まった。
試合を見ているC級隊員や解説席、その場にいる荒船も含めて何が起きたのか分からなかった。
遊真はすぐに背中からスコーピオンを出すと、そこには、ガッチリと遊真をホールドしている日佐人の姿があった。
「諏訪さん、止めました!」
「よくやった、日佐人!」
諏訪は振り返ると、遊真達に向かってショットガンを撃とうとしたその時、
「千佳!」
「うん!」
諏訪達がいる真ん中に砲撃が落ちた。
千佳は撃った後移動を始めるが、半崎がそれを逃さない。
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
道路や建物が崩れ落ちる中、遊真はすぐに拘束から抜け出すと、笹森の体を斜めに叩き切った。
『警告、トリオン漏出甚大』
日佐人の体から大量のトリオンが漏れ、それを確認した遊真は諏訪の所に向かおうとする。
ダメージもデカく、射撃トリガーを装備していない笹森は反撃してこないだろう。
なら、体勢を崩しているかつ、中距離戦を得意としている諏訪を狙った方がのちに楽になるだろうと考えた。
しかし
「...アステロイド」
遊真の肩を無数の弾丸が貫通していった。
遊真は一瞬何が起きたかわからなかったが、そこにはニヤッと不気味に微笑んでいる日佐人の姿があった。
笹森の姿をはっきりと捉えて反撃しようとするが、遊真の体が横に真っ二つになった。
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
アナウンスが流れると、日佐人と空閑が光となって飛んでいった。
「ここで雨取隊員、空閑隊員、そして笹森隊員がベイルアウト!玉狛が笹森隊員を落として一点、荒船隊が空閑隊員と雨取隊員を落として2点を獲得しました!」
桜子が説明すると、東と犬飼が続く。
「笹森隊員のアステロイドには驚きましたね。空閑は緑川に8ー2で勝つ程の腕前なので、真正面から挑んでは厳しいですが、今まで使ったことのないアステロイドを使うことで完璧に不意をつきました。」
「なのに咄嗟に急所を外せる空閑くんはすごいね。」
実際日佐人は空閑の心臓部を狙っていた。
しかし、空閑はかわして見せた。
それは本物の戦争を体験してきたため反応できたのだ。
その空閑に致命傷を負わすことが出来たということは、かなり上手く行ったと言えよう。
「しかし、荒船隊長が孤月一閃、空閑隊員にとどめを刺したことで荒船隊の得点となりました。それに半崎隊員が雨取隊員を落として一気に2点を取りました。」
「荒船隊は上手く相手の隙を突きましたね。荒船は笹森に集中している空閑隊員を、半崎は狙撃直後の雨取隊員を狙う事で、無駄なダメージをくらう事なく得点出来ました。」
「なるほどー!ここで得点のおさらいをしておきますと、玉狛第二2得点2アウト、荒船隊2得点1アウト、諏訪隊1得点2アウトとなっております!さあここからどうなっていくのか!」
「くっそーここで大砲かよ!射線も何もお構いなしじゃねーか!」
諏訪は崩れた建物を背にしゃがみ込み、状況を確認していた。
「小佐野、今どうなってる?」
「荒船くんは近くにいるよ。メガネくんはいなくなってるけど。」
(なんとか隠れれた。ここから荒船先輩を一撃で倒す...!)
修は砲撃の混乱に乗じてバッグワームを起動し、荒船の近くの物陰に隠れていた。
今の自分の実力で正面から挑んでも勝ち目はない。
それがわかっているからこそ、奇襲を選んだ。
諏訪と荒船は今睨み合っている今なら、上手く隙をつけば1人は倒せる。
それにアステロイドで倒せなくても、躱して体勢を崩した所を攻めれば良い。
そうふんだ修は、まさに攻撃しようとしている荒船の横からアステロイドを放った。
荒船はすぐに気づくと、後ろに下がり避ける。
それを見た修はすぐにスラスターを起動して一気に荒船に迫る。
しかし、荒船は落ち着いていた。
勢いよく迫ってくるレイガストを見据え、孤月を構える。
荒船は迫ってくる修に対して、自分から近づいてきた。
スラスターを使っている時は急には止まれない。
レイガストを振りかぶっていた修の懐に入り込んだ荒船は、そのまま孤月で腹を切断した。
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
修のベイルアウトを知らせるアナウンスが流れ、光となって飛んでいった。
しかしまだ終わっていない。
諏訪がフルアタックでショットガンを乱発してきた。
「半崎、諏訪さんを狙え。今ならガード出来ない。」
荒船の言う通りフルアタックをしている時は一切ガードが出来ない。
そして今荒船の目の前で諏訪がフルアタックを仕掛けてきた。
それを狙撃で狙うのは至極真っ当な事である。
「了解です。」
そう言ってイーグレットを構えスコープを覗く。
諏訪の心臓部に狙いを定めると、半崎は引き金を引く指に力を込める。
ドンッと一発の銃声が響くと同時に、アナウンスの音がなり、一筋の光が飛んで行った。
「やれやれ、半崎のやつ結構遠くから撃ってたな。おかげで隠れながらこっちの射程に入るまでだいぶ時間がかかっちまったよ。」
そう言ってスコープから目を外したのは、颯太郎だった。
「何⁉︎」
半崎がベイルアウトしたのを確認した荒船は驚愕していた。
颯太郎は自分を狙う、もしくは狙撃後の半崎を狙うと思っていたからだ。
諏訪にフルアタックをさせる事で注意を諏訪に引きつけ、自分が諏訪目掛けて旋空弧月を放とうとしたら自分を、半崎が狙撃で狙うなら半崎を、と言う風に、その隙を突いてくるのかと思っていたが、実際は狙撃前の半崎を狙っていた。
完全に虚をつかれた。
「よそ見してていいのか!」
衝撃を受けている間にも諏訪のフルアタックショットガンがダメージを与えてくる。
完全にガンナーの間合いでフルアタックを受け続けたシールドが割れると、荒船の全身に弾丸が突き刺さった。
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
荒船のベイルアウトを確認した桜子が、試合終了を伝える。
「試合終了!生存点を含めまして、5:3:2で、諏訪隊の勝利です!」