ROUND3 ①
「お待たせしました!B級ランク戦上位夜の部の実況、綾辻です。」
ここはランク戦の観戦室。
多くのC級隊員や非番の正隊員もちらほらいることから、注目の高さがうかがえる。
そして解説の綾辻と解説の二人が実況席に座っている。
「今回の解説は太刀川隊長と迅隊員です。よろしくお願いします。」
「「どうぞよろしく。」」
「さて今回の試合は、暫定一位の二宮隊、三位の生駒隊、五位の諏訪隊、そして六位の王子隊の対戦ですが、お二人はこの試合をどう見ますか?」
絢辻の問いに太刀川が、真面目に?と聞いて真面目に、と返される。
太刀川はそういうことなら、と話し始めた。
「この組み合わせは個人的にかなり楽しみだ。まず王子隊にマップ選択権があること。王子は上位の中でも地形戦を仕掛けるのが上手いからな。それに今回は初めて上位でやる諏訪隊もいる。それも含めてどういう仕掛け方をするのかが楽しみだな。」
太刀川がそう言うと、迅も続けて話す。
「それに今回は二宮隊と生駒隊もいます。2チームとも安定して上位にいるので、諏訪隊の快進撃が続くのかも見所ですね。」
実際諏訪隊は今まで一度も上位入りをしたことがない。
爆発力こそ上位を喰らうほどの力があるが、スナイパーがいなかったため遠距離に弱く、最高でも8位止まりだった。
しかし、今は颯太郎がいる。
相手は颯太郎に集中すると諏訪隊本来の火力に圧倒され、逆に諏訪や堤、日佐人を狙い過ぎれば颯太郎に狙撃される。
颯太郎の加入により諏訪隊が大幅にパワーアップしたのは事実である。
「さあここでステージが決定しました。今回選ばれたステージは・・・」
綾辻がそう言うと、スクリーンにステージが映し出される。
「市街地Dです!」
それを聞いた太刀川はなるほどな、と呟いた。
「市街地Dはマップのど真ん中にショッピングモールがあって、その中で戦闘が起きやすい。ずっと外にいるとスナイパーに狙われるからな。パパッと中に入った方がいい。」
「そうなるとスナイパーも中に入らないといけませんからね。」
「市街地Dか・・・」
「完璧に兄貴対策だな。」
そうだろうな。と颯太郎は答えた。
しかし何か引っかかる。
(スナイパー対策のためだけなのか?今回は二人しかスナイパーがいない。それに二宮だっている。二宮対策も兼ねて市街地Bでくるかと踏んでいたが・・・)
颯太郎考え込んでいると、諏訪が話し始めた。
「市街地Dなら俺らは中に入るが、兄貴はどうする?」
「・・・俺は最初は外にいる。王子が何か企んでるだろうからな。』
(王子の狙いはなんだ・・・?)
「ただ颯太郎さんと隠岐が中に入らない可能性もある。」
太刀川の言う通り、中に入らない可能性もある。
実際颯太郎は外にいることを選択した。
そこに迅が待ったをかけた。
「そうとも限らないよ。」
「お前何か見えてるな?教えろよ。」
「見てればわかるよ。」
迅がそう言った時、綾辻が話し始めた。
「さあまもなく転送開始!各隊員は一定以上の距離をおいてランダムな地点からの転送になります!」
綾辻がそう言った瞬間、ステージに各隊員が転送される。
「マップ、市街地D。気候、暴風雨!」
ステージには凄まじい風と雨が降り注いでいた。
「めっちゃ天気悪いやん。」
『濡れたないから早いとこ中入るで。』
隠岐がぼやいていると、生駒から通信が入る。
「一回モールの中入ってから海達と合流しよか。」
ショッピングモールの中に入る理由は可笑しいが、生駒は水上と南沢と合流し、室内戦を選んだ。
「俺と海は最初から中にいたんでまず合流しますわ」
「了解。俺もなるべく早く行くわ。」
「なるほど、暴風雨か。ここなら狙撃がよりしにくくなったから、スナイパーも中に入らざるを得ないな。」
綾辻は太刀川の解説を聞いて終わったことを確認すると、転送位置について話し始めた。
「ショッピングモールの中に転送されたのは生駒隊の水上、南沢隊員と諏訪隊の諏訪隊長、王子隊の樫尾隊員です。外にいる隊員もショッピングモールを目指します。そしてスナイパーの颯太郎隊員と隠岐隊員、そして王子隊全員がバッグワームを起動しました。」
「もうかなりの隊員がモールに入っています。そうなったらいよいよ戦闘が始まりますよ。」
「すみません諏訪さん、日佐人とは合流出来ましたが、諏訪さんと合流するのもう少しかかります。」
諏訪はモール3階に転送されたが、颯太郎達は外からのスタートだった。それに今回は四つ巴のため敵に見つかる可能性も高く、慎重にならざるを得ない。
「分かった。兄貴はどうだ?」
「俺は今モールに入った。このままお前を援護できる場所まで行くが、今回は敵が多いから中々時間がかかりそうだ。」
颯太郎からの連絡を聞いた諏訪は、一呼吸置いてから指示を出す。
「日佐人と堤は俺との合流優先だ。兄貴はいつも通り頼んだぜ。」
「「「了解!」」」
「二宮さん、どうします?やっぱり合流ですか?」
二宮隊は二宮だけモールから少し離れており、辻と犬飼は比較的近くに転送された。
加えて二人の位置も近く、すぐに合流出来たこともあり、既にモールに入っている。
凛とした表情を浮かべ周囲を警戒する辻とは対照的に、不敵な笑みを浮かべながら話す犬飼に二宮はいつものように答えた。
「辻と犬飼は浮いた駒を狙え」
「「了解」」
「俺もすぐ行く。」
「ここまでは順調だね。」
そう話すのは王子隊隊長王子一彰。
この仕掛けをした張本人である。
今王子は蔵内と共にショッピングモールの近くにあるビルの屋上にいた。
「カシオ、もう移動できたかい?」
『もうすぐ着きます!』
樫尾の報告を聞き、そうかと頷いた。
この戦いでは自分たちが1番格下だ。
しかしそれがなんだというのか。
たとえ個人の力で及ばなくとも、連携と戦術で勝てばいい。
「どこかで戦闘が始まったら僕らも動く。最大限利用させてもらうよ。全員ね。」