凡人の軌跡   作:kuku_kuku

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士官学院編:七耀暦1204年10月後半

 ========= 七耀暦1204年10月24日 =========

 

 学院祭二日目。

 ステージ演奏はどうにか成功に終わった。クロウ先輩発案のアンコール用の三曲目まで含めて全曲成功し、評判は上々だったようだ。

 本当によかった。

 

 まだ後夜祭の途中だが、少し疲れたので休憩がてら日記を付けてしまう。

 

 今日は朝からジョルジュ部長を手伝い機械人形の調査をした。まあ、専門的すぎて機材の搬送くらいしかまともに手伝えなかったが。

 分かったことは少なく、未知の金属で出来ていること、人が乗って動かすようなものであるということだけ。

 

 本格的な機材を揃えなければこれ以上はどうしようもないとの結論にいたり、学院長に報告だけ済ませて調査は後日改めて行うことに決定した。

 

 午後からのステージ演奏までの時間は、特に予定もないため見回りを行っていたが、途中からセリーヌさんと合流した。

 

「ちょうどいいわ。報酬の先払いよ。海鮮焼きそばを食べさせなさい」

 

 とのことで、セリーヌさんを頭に乗せて屋台を巡ることとなった。

 餌に関しては委員長に許可を取らないとダメなのではないかと思ったが、「何でそういうところだけ猫扱いなのよ!」と頭を叩かれた。

 

「先に言っておくけど、エマのことはあの子自身から聞きなさい。とりあえずは霊力に関してだけでいいでしょ?」

 

 最終的にクレープやチェリーパイまで要求されたが、肝心の霊力に関して少しだけ教えて頂くことが出来た。

 委員長もたまにその単語を口にしていたが、根本的な部分では導力と同質ではあるが、それとは似て非なるエネルギーが霊力であると言う。

 ローエングリン城と旧校舎のあの結界や不可思議な現象も、それによるものらしい。

 そして、委員長のようにその力を使えるかどうかや、その強弱は別としても、誰しもが持ち、また何処にでも在る力だと言う。

 それ故に暗黒時代やそれ以前の時代には霊力を扱う技術体系は多く発展しており、また現代においても密かに受け継がれている。

 旧校舎などはそういった技術体系で構築された遺跡なのだとか。

 

「ま、続きはまた今度ね。次は新鮮なミルクが飲みたいわ」 

 

 屋台でミルクが売られているものなのか分からずに彷徨っていると、オリビエさん、アルフィン皇女様、リィンの妹さん、クレア大尉と遭遇した。

 

「午後からは君も演奏すると聞いたよ。ふふ、楽しみだねえ。僕も飛び入りで参加させてもらいたいものだが、ここは一つ今日は君たちの勇姿を存分に楽しませてもらおうか」

 

 先月の実習時はオリビエさんとクレア大尉に色々と迷惑をかけてしまったため、そのことについて謝罪をしたが、オリビエさんからは気にする必要はないさと肩を叩かれた。

 

 その後、結局ミルクを見つけることは出来なかったため、ジェラートで手を打って頂き、セリーヌさんはご満悦の様子で去って行った。

 

 ステージ演奏の直前には、アンゼリカ先輩が来てくれた。

 ログナー侯爵から軟禁されていたが、見合い話を受けることを条件に来ることが出来たのだとか。

 

 色々と大変そうだとも思ったが、挨拶もほどほどにⅦ組の女性陣に抱きついて「やっぱり女の子はいいねえ。柔らかい。匂いもいい」などと思う存分セクハラをしていたので平常運転だ。

 

 その後のステージは無事に成功。

 ミスをしないことに精一杯で、観客席の様子まで見る余裕なんてなかったが、聞いた話によると客席も大いに盛り上がってくれていたらしい。

 本当によかった。

 

 その後の後夜祭では、学院祭に参加されていたアルゼイド子爵と少しだけ会話した。爺ちゃんからの手紙の件を話すと「それはよかった。頭を抱えておられたから、余計なことを話してしまったかと少し心配していたが」とのことだった。

 

 後夜祭とは篝火を囲んで踊るもののようだが、俺は踊れないので少し離れた所で座っていた。

 アンゼリカ先輩とジョルジュ部長が楽しそうに踊っているのをぼんやり見ていると、トワ会長とクロウ先輩が飲み物を持ってやって来てくれた。

 

「二人とも、改めて今日はお疲れ様。ステージ、すっごくよかったよっ! アンコールの準備もしてたなんて、驚いちゃったよ」

 

「くくく、サプライズ大成功ってな。つーか、あそこで踊ってんのジョルジュとゼリカかよ。お前らは踊らなくっていいのか?」

 

 俺はダンスなんてやったことないから無理だと返すと「相変わらず期待を裏切らねえ奴だな」と溜息を吐かれた。

 

「そ、そう言えば、今日はお仕事ばっかりじゃなくて、ちゃんと学院祭は楽しめた?」

 

 トワ会長が何故か焦り気味にそんな質問をしてきたので、少し迷って「セリーヌさんという女性と屋台巡りをした」と返せば、

 

「え……。そ、そうなんだ。学院の人じゃないよね……? 誰なのかな?」

 

 と、首を傾げるトワ会長。「最近知り合った人で、小さくて可愛い女性です」と返答すると、クロウ先輩が爆笑して、

 

「俺はちょっとリィンから話そうって誘われてたから、先に抜けるぜ。ジョルジュ達が踊り終わったらまた戻ってくるわ」

 

 と笑いながら去って行った。無言で黙り込むトワ会長に、もしかして猫を連れて屋台を回るのは衛生上ダメだったのかと疑問に思い尋ねると、

 

「え、猫……? ク、クロウ君、知ってて……っ!」

 

 と、今度は顔を真っ赤にしたトワ会長が「あ、わ、私もちょっとお仕事あるから、また戻ってくるねっ!」とわたわた走り去って行った。

 

 それがつい先程までのことだった。

 

 二人共戻って来ると言うので、この場所を離れようにも離れられない。

 十分に休憩も取れたし、今日の日記も付け終わった。

 

 暇なので、鍛錬をしよう。

 

 

 

 

 追記

 

 ガレリア要塞が消滅したらしい。

 クロスベルの大量破壊兵器による仕業だという。

 

 まだ情報が少ないが、戦争になる可能性もある。

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 ========= 七耀暦1204年10月28日 =========

 

 帝国はかつてない緊張状態になっている。

 帝国時報には巨大な球形にくり貫かれたガレリア要塞の写真が掲載され、クロスベルに侵攻した正規軍の機甲師団が呆気なく撃退されたという噂が飛び交う。

 そしてカルバート共和国とクロスベルが結託したという噂まで出てきており、全面戦争にまで発展する可能性も捨てきれないという。

 

 戦争は、駄目だ。

 共和国まで巻き込んだ戦いになれば、戦争が泥沼化して多くの犠牲者が出るのは目に見えている。

 ガレリア要塞を消滅させた兵器の件もある。多くの人が死んでしまう可能性がある。

 

 俺には、何もすることが出来ない。

 

 戦争が始まれば、トールズ士官学院もどうなるか分からない。

 軍に取り込まれ、戦争に駆り出される可能性も大いにありえる。

 

 どうすればいいのか、分からない。

 帝国には、大切な人たちがいる。

 だけど、だからといって共和国やクロスベルの人たちと争うことは考えられない。

 

 戦争は、どうやったら止めることが出来るのだろう。

 

 そもそも、何で戦争なんて話になっているのだろうか。

 

 クロスベルの独立宣言が発端ではあるが、何故そうまでしてクロスベルは独立に踏み切ったのか。

 帝国と共和国から搾取が徐々に強まってきている現状からの脱却が大きな理由だというが、あまりにも急過ぎる。

 そして帝国にお世話になっている身で言えたことでないが、帝国も何故、危険を犯してまでクロスベルという利益を求めるのか。このままでも十分ではないか。

 

 国の仕組みを変えることなんて、今の俺には出来ない。

 

 戦う力だけがあっても、どうしようもないことがある。

 以前にも同じことを考えたが、結局あの時は思考を停止して、ただただ「強くなっておいて損はない」というそれだけの考えに逃げた。

 

 俺に、何が出来るのだろう。

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 ========= 七耀暦1204年10月29日 =========

 

「そんな小難しいこと今更考えたって、仕方ねえだろ」

 

 クロウ先輩に相談したら、そんなことを言われた。

 

「仲の良い奴らを守って一緒に幸せになるなんて、そんな小っ恥ずかしい夢を一週間前に語ったばっかじゃねえか。で、強くなって、ついでに困ってる人も助けられるようになりたいんだろ?」

 

 これだから頭が残念な困ったちゃんは、とクロウ先輩は苦笑する。

 

「前にも言っただろ? お前は、それでいいって。お前に大きなことは出来ねえよ。お前に出来るのは、馬鹿みたいに根気強く、地道に地道に、だけど確実に少しずつでも目標に近づくことだけだっての。半年前じゃあ考えられなかったが、今じゃあお前、それで俺より喧嘩強くなっちまったじゃねえか。だからその調子で、トワ達を守って、ついでに困ってる人も救って……そしたら何時か、お前の夢も叶ってんじゃねえの?」

 

 クロウ先輩は「こんな恥ずかしい台詞言っちまうなんて、お前の残念っぷりが伝染っちまったじゃねえか。そんなことより早く荷物運んでくれよ、今日中に借りてたものは全部返しちまう予定なんだからよ」と、大量の荷物を抱えながら歩いていった。

 

 完全に忘れていたが、クロウ先輩は今月でⅦ組での補習を終え、第三学生寮を引き払う。そのついでに荷物の整理を手伝わされた。

 この人、いったいどれだけ人から借りたまま塩漬けにしていたんだ。

 

 相変わらず雑な先輩だが、お陰で少しすっきりした。

 

 俺に出来ることは、やれることは、変わらない。

 

 先ずは、目の前のことからだ。

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 ========= 七耀暦1204年10月31日 =========

 

 昨日、多くのことが起こりすぎた。

 

 だけど、それほど混乱はしていない。

 やるべきことは見えている。

 

 昨日の一連の出来事は、この先動く上で一つの大きな基準となる。

 記憶が風化しないうちに、文字に書き起こす。

 

 昨日の昼間、クロスベル問題に対するオズボーン宰相の演説がラジオ経由で帝国全土へと中継された。

 演説の内容は要するに、クロスベル、そしてカルバート共和国への宣戦布告。

 だが、『宣戦布告』のその言葉を発する直前に、オズボーン宰相は狙撃され命を落とした。

 

 手を下したのは、死んだはずの帝国解放戦線リーダー『C』。そして、その正体はクロウ先輩だった。

 

 そして宰相殺害と同時に、連動して貴族連合は帝都に奇襲をかけ、またたく間に占領して見せた。

 最新鋭の戦艦と、そしてRFグループが完成させた人型有人兵器『機甲兵』と呼ばれる兵器の力によって。

 

 そして帝都を占領した貴族連合は、同じくトリスタも手中に治めるべく侵攻を開始。目的は帝都近郊の重要拠点となるトリスタの確保と、革新派や正規軍の重鎮の子息や、正規軍に深い関わりがある教官達の身柄を押さえるため。

 教官達と、そして『結社』の人間であることを明かしたシャロンさんがトリスタを守るために貴族連合と戦う一方で、俺達Ⅶ組も別方面から攻めてきた機甲兵を撃退するため戦いに参戦した。

 

 しかし新型兵器である機甲兵は、強かった。どうにか全員がかりで一体を撃退したが、二体目には勝てず敗退。

 そして絶体絶命の状況下で、リィンの呼び声に応え現れた旧校舎地下の灰色の機械人形、『灰の騎神ヴァリマール』と呼ばれるそれが、状況を覆した。

 

 リィンが操るヴァリマールの力は圧倒的で、敵の機甲兵を容易く撃破した。

 しかしそこに、ヴァリマールと同じ『蒼の騎神』と呼ばれる機体にのったクロウ先輩が現れた。

 

 何故宰相を撃つような真似をしたのかと問うリィンに、

 

「そもそも士官学院に入ったのは、帝国解放戦線の計画のためでな。いずれ『鉄血』の首を狙う時の足場にするつもりだったわけだ。予想以上に楽しんじまったわけだが、俺の本分は『C』。学院生クロウ・アームブラストはただのフェイクさ」

 

 先輩は、そう淡々と応えた。そんな先輩に対してリィンは、全て嘘だったのかと悲痛な叫び声で問いかけた。

 Ⅶ組として過ごした時間。先輩達と過ごした時間。学院祭のステージ。それら全てが嘘だったのかという問いかけに、先輩はやはりどこまでも冷淡に「ああ、その通りだ」とだけ返す。

 

「悪いが、その灰の騎神に粘られると後々面倒なんでな。士官学院共々、ここでぶっ壊させてもらう。お前らを含めた学院関係者は全員軟禁ってとこか」

 

「だったら、俺が勝ったら貸した五十ミラの利子として戻ってきてもらうぞ!」

 

 二人はそう宣言し会い、騎神同士の戦いが始まった。

 巨大過ぎる体躯で、しかしまるで人そのもののように剣を振るう二体の騎神。圧倒的な力同士が衝突するその戦いに、到底、俺が割って入る余地などなかった。

 

 軍配は、クロウ先輩に上がった。序盤はリィンが押していたように見えたが、騎神を操る熟練度が桁違いだった。振り返ってみれば、クロウ先輩の圧勝だった。

 

 勝敗が決する間際、Ⅶ組の皆とこの先どう動くかを決めた。皆、考えは同じで、結論はすぐに出た。

 

 クロスベルと共和国との戦争は回避されたが、その代わりに貴族派と革新派の内戦が始まる。

 だが、リィンと灰の騎神の力は、オリビエさんが提唱する第三勢力として、その内戦に影響を与えることすらできる可能性を持っている。

 そしてその力を持つリィンは、どの勢力からも狙われることになるだろう。

 故にこの場から、リィンを逃がす。

 

 皆の説得に対して「みんなを置いて俺だけ逃げることなんて出来ない」と拒絶するリィンの意志を無視し、一緒に騎神に乗り込んでいたセリーヌさんに頼み無理やり戦線を離脱させた。

 

 その後は、逃げた灰の騎神を追おうとする蒼の騎神に攻撃を仕掛けたが、まるで通用しなかった。

 虫を払うかのように薙ぎ払われるダブルセイバーによって次々と皆が立ち上がれなくなり、まともに時間稼ぎすら出来ない中、

 

「今は倒れる時ではない! 未来を掴むためにも、落ち延び、機を伺うがいい!」

 

 アルゼイド子爵のそんな声と共に、高速巡洋艦カレイジャスがトリスタ上空に現れた。

 アルゼイド子爵、そしてオリビエさん。貴族連合の動きを察知して、カレイジャスはトリスタに応援に来てくれたのだ。

 

 優先目標を切り替えた蒼の騎神をカレイジャスが受け持ってくれる中、俺達Ⅶ組は四手に別れトリスタから落ち延びることに決めた。

 

 フィー、エリオット、マキアスは東へ。

 ラウラ、ユーシス、エマは南へ。

 ガイウス、アリサ、ミリアムは北へ。

 そして俺は西へ。

  

 寮から最低限の荷物だけ持ち出し、皆を見送った後は、トワ会長とジョルジュ部長を手伝い、革新派に連なる学生を優先して避難誘導を行った。

 

「もう学院に残っている生徒は、貴族派の子息か両派閥に関係のない者だけじゃ。彼らの安全は儂が命に代えても保証する。故に、君たちももう行きなさい。幸い君たちはどの派閥にも属しておらんから、動き易いじゃろう。トリスタから落ち延びた学生を頼んだぞ。そして、トワ・ハーシェル生徒会長。この内戦の行く末を見極め、次代の礎として諸君らが、トールズ士官学院が、何を成すのか答えを出しなさい」

 

 必要な学生の避難措置を済ませた後、学院長は投降して生徒の安全を守る道を選んだ。

 そしてトワ会長にそんな言葉を残して、俺達の脱出を手伝ってくれた。

 

 導力バイクにトワ会長とジョルジュ部長を乗せて、学院長とマカロフ教官の誘導に従いトリスタを脱出した後は、街道から逸れて北西に向かい導力バイクを走らせた。

 

 帝都が貴族連合に占領された以上、安直に帝都経由で西を目指すわけには行かなかった。

 一晩中導力バイクを走らせた後、サイドカーで長距離導力通信機器によって情報を集め続けていたジョルジュ部長が、士官学院用の導力通信を拾った。

 暗号化された通信に繋げてみると、それはカレイジャスからのもので、今日の昼にはオリビエさん達と合流することが出来た。

 

 カレイジャスでラマール州まで送ってもらい、そして俺はそこから一人で導力バイクでラマール州を回る。

 トワ会長とジョルジュ部長は、カレイジャスでオリビエさんとアルゼイド子爵と共に、帝国各地を回ることになった。

 

「一人で西を回るなんて危険だけど、止めたいけど……もう、決めたんだよね?」

 

 トワ会長からは、そう言って涙目で抱き着かれた。

 カレイジャスが集めた情報によると、貴族連合の勢力は帝国西部に集中しているという。

 であるならば、リィンが西部に落ち延びた可能性が捨てきれない以上、やはり空からと地上から手分けして、一刻でも早く探し出す必要がある。

 

「私も着いて行きたいけど……でも、邪魔になっちゃうってことだよね……」

 

 導力バイクはそもそも、一人乗りを想定している。後ろに人を乗せていたり、サイドカーをつけた状態だと、存分にその小回りの効く機動力を発揮出来ない。

 それに何より、今の俺の力だと敵対する可能性能のある両派閥からトワ会長を守りきることなんて出来ない。

 だからトワ会長には、皇族であるオリビエさんがいて、そしてアルゼイド子爵が率いる第三勢力の中心であるカレイジャスの中に、現状この帝国内で最も安全な場所にいて欲しい。

 そしてそこから、Ⅶ組や学院の皆を集めて、学院長との約束を果たして欲しい。

 

「絶対に、絶対に無事に帰ってきてね。私も何ができるかまだ分からないけど、それでも一生懸命頑張るから。一生懸命頑張って、帰って来れる場所を作るから。だから絶対、生きて帰って来てねっ!」

 

 そう思いを伝えると、トワ会長は泣きながらも、俺にそう約束してくれた。

 

 

 ここまでが、昨日と、そして今日までに起きたことだ。

 あれからまだ一日しか経っていないのに、色々なことがありすぎて随分時間が経ったように思う。

 

 会長との約束と、そしてオリビエさん達との打合せの後に一眠りして、今はもう夕方。夜になれば、カレイジャスから俺は降りることになっている。

 

 今までのことから、俺がやるべきことは以下の四つ。

 

 一つ。リィンを探し、カレイジャスと連携して保護する。また、並行して、西部に逃げた学院生がいれば、これも必要に応じて保護する。

 二つ。カレイジャスに、定期的に西部の情報を伝える。

 三つ。内戦によって被害を受ける人がいれば、少しでも多く助ける。

 四つ。クロウ先輩をぶん殴る。

 

 これが当面の指針だ。

 

 クロウ先輩は、とりあえず絶対にぶん殴る。

 そして、先輩達が卒業するまで、また一緒にあの何時もの学院生活を送る。送らせる。

 

 クロウ先輩は、俺に言った。言ってくれた。俺の夢に対して、「俺にはできない生き方だが、お前ならやれるだろうさ」と。

 そして『C』はルーレの一件で、自ら傷を負うことになっても、俺の命を優先した。

 

 ならば、『C』のあの言葉は嘘だ。

 学院でのクロウ・アームブラストとしての全てが嘘だったと言うあの言葉こそが、嘘だ。

 

 だから今は、クロウ先輩が俺に言ってくれたように、出来ることを一つ一つやり遂げていく。

 

 リィンも、学院の皆も、帝国の人も助ける。

 そして、トワ会長のもとに生きて戻る。

 

 やるべきことは、それだけだ。

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次から閃の軌跡Ⅱ部となります。

あと、どこでお礼を言うべきかわからないので、ここでお礼を。
沢山の誤字報告してくれた方、本当にありがとうございます。
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