あしたのSchool Days (あしたのジョー×School Days)   作:ラバダブ

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1章 ミッドナイトウォーク

  ずっと立っている私に柔らかい言葉づかいでお母さんはそう言い、うんと頷き自室に行き制服から私服に着替える。

 

 それからお母さんと向かい合いに座り、「遅くなってごめんね、心配した?」と小さな声で訊いた。

 

 お母さんは少し考える素振りを見せて、口を開いた。

 

「そうね…、言葉が帰ってくるまでは心配してたけど今のあなたの顔を見て安心したわ」

 

「どうして?」

 

「ん〜? だって活き活きしている顔を見たら心配なんてする筈がないわ。何か良いことがあったんだなって。ねえ何があったの?」

 

 お母さんは悪戯ぽっい笑みを浮かべていった。

 

 とっさに目線を逸らし「何でもないよ」と否定しお味噌汁を誤魔化すように飲んだ。

 

 それ以上お母さんは訊かなかった。

 

 今日会ったことを話せばきっと悲しい顔をする筈だし、それにこの事は私だけの秘密にしておきたかった。

 

 夕ご飯を食べ終わり、沸いているお風呂に入り、また身体が震え始める。

 

 もし、という言葉が頭の中に駆け巡りどうしようもない恐怖で全身が冷たくなる。

 

 両肩を抱きかかえ、ネガティブになる思考に歯止めを掛けたのは矢吹さんの姿が思い浮かんだときだった。

 

 強くて、優しくて少し謎めいた人だけど、撫でてくれたては暖かく勇気をくれた。

 

「ありがとう丈さん」

 

 無意識に感謝の言葉と彼の名前を呟くと共に胸の奥が暖かく成っていくのが分かる。

 

 お風呂から上がり、明日の学校に備えるために目覚まし時計をセットして、ベッドに潜り込んだ。

 

 明日必ず会いに行こう、会いに行ってどうなるか分からないけれど丈さんだったら多分こう言うんだろうな、分からないから面白いって。

 

 ベッドの中で小さくクスクスと笑い、眠りについた。

 

 私の明日はどっちになるんだろうと考えながら。

 

 

 

 翌朝、目覚まし時計のアラーム音と同時に目を覚ますと、

 

 日課のシャワーを浴びてさっぱりし、制服に着替え学校に行く準備を始めた。

 

 ダイニングに行き朝食を食べながら口を開く。

 

「今日学校終わったらまっすぐ友達の所に行くから、少し家に帰るの遅れるかもしれないから心配しないで」

 

 お母さんはトーストにジャムを塗りながら「わかった」と言い心にトーストを渡した。

 

 お母さんの許可も取り、朝食を食べ終わりダイニングを出ると新聞を読んでいるお母さんが、へぇ〜と感心するような声を漏らした。

 

 「“ベネズエラの黒豹、帰国せずに国内最後のエキシビジョン試合”凄いわね〜」

 

 何時もと同じ時間に電車に乗り、小説を読んでいると何時もと同じ時間に乗る、伊藤さんがまた私の方を見ている。

 

 昨日の事も会ったばかりで、その視線が駄目だと思いつつ私には怖く感じた。

 

 学校の授業を受けながら、昨日手渡されたジムの住所が記載されている紙を見る。

 

 何か持って行った方が良いかもと、あれこれと考えているとあっという間に授業は終わり、委員会の仕事も無いから真っ直ぐに駅に行き、丹下拳闘クラブに向かった。

 

 近くの駅で降り歩いていると町並みは変わり、ここは本当に東京かと疑うほどの住宅街に入った。

 

 家々は木造で雰囲気も一昔前の町並み、まるでタイムスリップしたかのようだ。

 

 本当に此処にあるんだろうかと心配になっているところに、ふと≪林食料品店≫と看板に書かれたお店を見つけ、道を訊こうとお店の中に入る。

 

 「いらっしゃい」

 

 お店の奥から出で来た大きく私の頭二つ分の大きさと身体の大きい男の人が出て来た。

 

 「お客さん、どないしました?」

 

 驚いていると、関西訛りの温和な口調で言われハッとする。

 

 「あ…、あの道をお尋ねしたのですが…」

 

 「道でっか?」

 

 「はい。丹下拳闘クラブに行きたいんですけど…」

 

 「なんや、お客さん丹下ジムに用があるんでっか。丁度ええ、今ワテも行く所やさかい一緒に行きますか」

 

 私も丁度良かったと思い、「お願いします」と頭を下げた。

 

 その前に…。

 

 「レモンを5個とハチミツお願いします」

 

 「へい、レモン5個とハチミツね。毎度ありがとうございます。今後ともご贔屓にお願いします」

 

 紙袋に入れてもらい、男性はお店の前にあるトラックに乗り込んだ。

 

 「ほら、お客さんも乗りいや」

 

 助手席に乗ると男性はエンジンを掛けトラックを発進させる。

 

 「そう言えばお客さん、丹下ジムになんの用でっか?」

 

 男性は気さくに話しかけ、訊いてきた。

 

 「はい、矢吹 丈さんに先日お世話になりましてそのお礼をしに来たのですが…」

 

 「あ〜それで丹下ジムにな。ワイは西や、西

寛一。えーとお嬢さんは?」

 

 「桂 言葉です。西さん」

 

 西さんは大きな口を豪快に開けて笑いだした。

 

「そんな仰々しいのは身体がこそばゆくなるから気軽に西でええよ。ここらのガキ共もワイにはタメ口の呼び捨てやさかい。ほら着いたで」

 

車を止めて降りると、周りを見渡してもそれらしい建物は見当たらない殺風景景色が続いている。

 

唯一作られたものは古い、時代を感じる橋があるだけで掠れた文字で泪橋と書かれたいた。

 

 

「足元気を付けてな」

 

西さんはトラックから重そうな荷物を片手で軽々と持ち上げ、土手を足取りよく下る。

 

橋の下にはまた驚くような光景が眼に入った。

 

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