HUNTER-KILLER 〜節度無き狩人に蒼色の弾丸を〜   作:BOMBデライオン

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1話

 モンスターハンター。

 モンスターを専門に狩猟する事を生業とする人々、及びその職の事を指す。

 彼らは個体数が増えすぎたモンスターを討伐したり、その脅威を撤廃するためにモンスターを狩り、人間という生物の繁栄を目指すと共に自然との調和を図る狩人だ。

 決してモンスターの殲滅を目的とする職ではない。

 

 だが、このМH(モンハン)世界では近年、密猟が横行していた。

 ギルドの許可無しに乱獲を行ったり、定員を遥かにオーバーした人数での狩猟。

 

 彼らに共通する目的は金銭であった。

 知っての通り、モンスターの素材は高値で取引される。

 ある程度の実力さえあればモンスターを狩り、素材を売って生計を立てることが出来るのだ。

 一獲千金を夢見て故郷を捨て、ハンターになった者も多い。

 

 …が、現実は非情であった。

 狩りの最中に死ねたら、どれほど楽であっただろうか。

 夢の実現のために多額の借金を背負ったはいいものの、それを返す宛がない。

 

 そうだ! 同じ境遇の人を探そう!

 

 様々な理由があれど、同じようにどん底に落ちた者達が結託した結果が密猟であった。

 実力が無ければ、人数でカバーすれば良い。

 それでも足りなければ、独自に装備を改造すれば良い。

 

 そうして行われた密猟の結果は上場だった。

 標的が罠にかかったのを確認し、10人でタコ殴りにすると、1人の時は手も足も出なかったドスジャギィ率いる狗竜(くりゅう)の群れがその頭を地に伏したのだ。

 

 ハンター界隈では自分で狩ったモンスターからは素材を剥ぎ取るのがモンスターに対する礼儀であるが、その死骸から丸ごと全部素材を剥ぎ取るのは御法度である。

 自然に還る分は残さなくてならないからだ。

 中には狩猟したモンスターに黙祷を捧げたり、初めて討伐したモンスターの素材をお守り代わりに持ち歩く者もいる。

 

 そんなの関係ねえ!!

 

 生活に困った彼らにとって、ハンターとしての綺麗な精神は邪魔でしか無かった。

 全ての素材を手分けして売り、得たお金を全員で山分けにしても、普段こなしていたクエストの何倍もの金額が手に入った。

 

 味を占めた彼らは再び密猟を行い、多大な金銭を手にし、再び密猟を繰り返した。

 そうして何度も何度も密猟を行い、後に引けなくなったこのグループは恐暴竜(イビルジョー)のように各地の生態系を荒らして回り、遂にはギルドナイツによって討伐された。

 しかし実力と共に名を挙げた彼らがこの世界に与えた影響は大きく、彼らの真似をする者達が続々と現れ始めたのだ。

 

 特に小型のモンスターを標的とした大規模な乱獲はハンター業界に致命的とも言える傷跡を残した。

 モンスターの数が大きく減ったのだ。

 

 モンスターが減れば依頼も減り、仕事を失ったハンター達は依頼が無くとも狩りに行くようになった。

 彼らの密猟によって更にハンターの仕事が奪われ、密猟者がまた増える。

 悪行が更なる悪行を呼ぶ悪循環が出来上がってしまい、膨れ上がった密猟者の数はギルドも手の負えないものになってしまった。

 

 特に大きな問題となったのが、危険度の高いモンスターが人里近くに現れるようになったことだ。

 密猟者も手を出せないような強力なモンスターはその数を減らすことが無かったからである。

 しばらくすると1つの集落が地図から消え、大きな社会不安が広がった。

 

 この状況を何とかしなければ…!

 

 ギルドが苦肉の策の1つとして打ち出したのが、ギルドナイツの増強だった。

 ギルドナイツとはハンターズギルドを守り、ハンター達を統括するためのギルド直属の組織である。

 この組織に任命されたハンターはギルドナイトと呼ばれ、表向きはギルド直属のハンターとなるが、その実は「対ハンター用ハンター」だった。

 そのハードルは非常に高く、何かしらハンターとして飛び抜けた実力が必要とされ、また非常時にはハンター達の指揮を執る必要もあるため、ある程度のリーダーシップも必要である。

 

 しかし、そんな事は言っていられるほど余裕は無かった。

 彼らの裏の仕事は悪質なハンターの捜索・抹消だが、いかんせん少数精鋭なためその数が少なく、元々いた12人のメンバーは増えすぎた標的を相手に四苦八苦していたのだ。

 それに、多少ハードルを下げれば、今のメンバーに匹敵する者もいる。

 


 

「…で、俺に人を殺せと?」

 

 普段は愛嬌ある受付嬢の顔が鬼気迫る表情へと変わったことに、男は微動だにしなかった。

 

「はい。 貴方は俯瞰して見れば色々と問題が多いですが、実力は確かだと上の者が判断したまでです」

 

 シーンと静まり返った集会所に、束ねられた紙をめくる音だけが反響した。

 普段からここを使う人が見れば、明らかに異様な光景だっただろう。

 

 本当にこんな人に私達と並ぶ実力があるのだろうかと受付嬢は内心不安がった。

 目の前にいる男の防具はランポス装備なのだが、素材が足りていない状況で無理やり作ったのか、新米がよく着る見慣れたそれとはだいぶ違っていたのだ。

 

「これを断った場合、箝口令をし-」

 

「いらん」

 

 言葉が遮られ、彼女はムッとした。

 

「願っても無いことだ。 復讐の機会をくれて、どうもありがとう」

 

 ナイフをクルクルと回し、男は感謝の言葉を述べた。

 赤色のブレードに、バックが紺と黒のシマシマのそれは間違いなくランポスの素材で作られた物である。

 刃の淡く燃ゆるような光は男の眼光のように鋭かった。

 

「では編入試験という事で、こちらの依頼を受けていただくことになります」

 

「…ギルドナイトになるためには、モンスターを倒すものとばかり思っていたぜ」

 

「今はそんなこと言えませんので」

 

「確かにな」

 

 そのクエストは報酬金が無く、時間も非常に短い。

 何より、普通の人なら誰もが敬遠するような内容であった。

 

「ここに似顔絵のある人物を全員、殺害して下さい。 殺害した証拠には首を持ってきていただければ結構です」

 

 受付嬢は平然と、しかし鬼のように恐ろしい目で依頼の紙を差し出した。

 

「何か注意点は?」

 

「あ、1人も逃してはいけません。 皆殺しです」

 

「了解した。 土産は全員の生首だな」

 

「首化粧は要りませんよ?」

 

 男は紙を受け取ると、悠々と立ち去り、受付嬢だけが残された集会所は再び静寂に包まれた。

 

 ギルドナイト、その裏の仕事は汚れ仕事である。

 

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