HUNTER-KILLER 〜節度無き狩人に蒼色の弾丸を〜   作:BOMBデライオン

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2話

「はあ…! はあッ…!」

 

 最悪だ…! 

 ありのまま今起こったことを話すぜ! 

 俺達はいつも通り小型モンスターを狩っていた! 

 万事順調だったはずなのに…なのに、たった1人のハンターによって俺以外の全員が全滅しちまった! 

 ライトボウガンによく見られる軽い発砲音が聞こえたと思ったら、次の瞬間にはみんな倒れてたんだ! 

 何をされたのか分からねーと思うが、言っている俺自身も何をされたのかサッパリだ! 

 

「クソッ! 何なんだよお前は!」

 

 ザッザッと近付く足音はまるで黄泉へのカウントダウンのように聞こえた。

 

「やめろォ! 俺に近づくなアッ!!」

 

 チャッ…

 

「あ…」

 

 額にボウガンの銃口が突きつけられ、密猟者は恐怖のあまり、気絶した。

 

「死ね」

 

 パドォオン!!! 

 

 


 

 

「あら、もうお済みになったので?」

 

 血の滲んだ麻袋がカウンターに置かれる。

 それに気付いた受付嬢は砂時計を止め、中身の確認を始めた。

 

「1番良し、2番良し、3番良し、4、5、6…。 あら? 1つ足りませんよ?」

 

「ああ、その事についてなんだが…」

 

 男は決まりが悪そうに、頭部の大部分が消滅した首をゴトリと置いてみせた。

 

「あらら…」

 

「勢いでついやってしまったんだ。 これじゃあ確認は出来ねえよな…」

 

 この依頼内容では、討伐した証拠に首を持ってこなければならない。

 首を持ってくるのは殺害した人物の確認をするためであり、普通に考えれば、男の落選は確定したようなものであった。

 

「大丈夫ですよ。 顔の確認が出来なくとも目標(密猟者)には変わりありませんし、似顔絵の人物達はあくまでサブクエストみたいなものです」

 

「…?」

 

 受付嬢の発した言葉は男の予想から大きく外れていた。

 彼はてっきり、不合格の烙印を押されるとばかり思っていたのだ。

 

「どういうことだ?」

 

「いえ、実はこのクエストには別の目的がありまして…」

 

 彼女は集会所に2人以外に誰も居ないことを再度確認すると、小声で囁いた。

 

「これは、人を殺めることに躊躇があるか否かを見るためのものなんです…」

 

「なるほど、首を持ってこさせたのもそういう事か」

 

「話が早いですねぇ…。 そうですよ? モンスターの剥ぎ取りは出来ても、人の首をギコギコ出来る人は限られますから」

 

「恐ろしい組織だ…」

 

 その一員である受付嬢が、平然とそういう事を言うあたり、組織のヤバさが伺える。

 むしろ、こんなものはまだ序の口だった。

 

「で、人を殺した感想はどうです? 至近距離で浴びる血の生暖かさはどうでした? 断末魔は? 苦痛に満ちた顔は? 人の道を外れたのですよ? あなたは」

 

 こんな事を平気な顔で聞いてくるのだ。

 R15なんかでは済ませられないぞこれは…。

 

「まだ続けられそうですか?」

 

「それは大丈夫だ。 問題ない」

 

「合格です」

 

 この組織が必要とする人材は、こういう汚れ仕事を平然とやってのける者だけだった。

 そういう人間は、これから何十何百回と引き金を引く覚悟がすでに出来ている。

 もう後には戻れないからだ。

 

「では、次の指令をお待ち下さい。 またお会いしましょう」

 

「え?」

 

「え?」

 

「…それだけか?」

 

「それ以外に何があると言うんです?」

 

「いやてっきり、これから説明があるものだと…」

 

「そんなのする訳ないじゃないですか。 誰かに聞かれたらどうするんです? 機密漏洩で2人とも首チョンパですよ?」

 

 確かに、今や集会所に入っていくだけでも奇異の目で見られるのに、これ以上時間をかけたら怪しまれるのも道理だ。

 ここほど密会に打って付けの場所はないからな。

 

「分かった。 指令が来るまでは自由で良いんだな?」

 

「そうです。 モンスターを狩るなりなんなりして自由にしてて下さいな」

 

 そうして俺は集会所を去った。

 まるで仕事に(あぶ)れ、唯一の収入源を失った多くのハンター達と同じ悲壮感を出すと、周りの奇異の目が同情に変わる。

 道端に座り込む路上生活者は俺を仲間と認識したらしく、周りと同様に同情の目を向けた。

 

「おいあんちゃん! お前さんも無職になっちまったのか?」

 

 チェーンS装備に身を包んだ元ハンターらしき男が俺に話しかける。

 彼も職を失った様子であり、売ってしまったのか、所々の部品が欠けていた。

 頑強な鎖で編まれた末の防御力も、こうなってしまえば砂上の楼閣である。

 

「…ああ」

 

「そうか…まっ! あまり気を落とすなよ! 仕事を失ったくらいで人は死なねえ!」

 

「みたいだな…」

 

 ここ、バルバレは移動する船型の集会所を中心にして、キャラバンが集まって形成される市場である。

 かつては世界中をさすらい、各地の様々な情報が集うため、「知りたいことがあったらバルバレに行け」と言われるほどであった。

 それゆえに依頼を求めるハンターなども多く集まり、そのハンター相手に商売をする店なども揃っていた。

 

 今はどうだ! 

 

 多くの店はシャッターが閉じられ、店先には物乞いがいるだけ。

 かつて栄華を誇ったあのバルバレがこのザマである。

 

 最近はモンスターの出現数が激減したことによって、この市場も滅多に動かなくなり、地図に載らないことで有名なバルバレが地図に載った。

 その出来事はMH(モンハン)世界の終焉のように報じられたのだ。

 

「ところでよ、あんちゃん。 あんまり大声では言えねえんだが、俺と一緒に密猟を始めないか?」

 

「密猟だと?」

 

「そうだ! 落ちぶれたハンターを雇ってくれる所なんてねえ! 家では腹を空かせた子供達が待っているんだ! 金が必要なんだ! 頼む! あんた強いんだろう? 協力してくれ!」

 

 生態系の狂いはすでに人々の生活を侵蝕していた。

 増えすぎた人間を全て養うには、一刻も早く現状の改善が必要だった。

 

「やめとけ。 今ではモンスターの数が減りすぎて、密猟者もうまく行っていないようだ」

 

「…それ、本当か?」

 

「本当だ。 この目で見てきた」

 

 実際、本当だった。

 遺跡平原にある彼らのアジトには食料を始めとする物資がほとんどなく、密猟がうまく行っていないのを確認した。

 武器と防具はろくに手入れされておらず、遺体を調べてみると、ひどく痩せており、栄養失調の症状を訴えるような手記が見つかった。

 

「そうか…。 まあ獲物が居ないんじゃあ、しょうがねえよな…?」

 

「おい…?」

 

 密猟者グループの多くは街中ではなく、そのほとんどはフィールドに拠点を置き、身を隠している。

 今回俺が向かった遺跡平原は比較的初心者向けの場所とは言え、モンスターの脅威があるうちは人が住むには適さない。

 それでも密猟者がフィールドに身を隠すのは、最近は大型のモンスターもめっきり姿を現さなくなり、ならず者が住むには打って付けの場所となったからだ。

 

 だが、ならず者がいるのはフィールドだけとは限らない。

 

「おっさん…何のつもりだ?!」

 

 スラリと剣を抜き、目の前の男は盾を構えた。

 

「悪く思うなよ小僧…。 強いて言うなら、時代が悪い」

 

 …いや、目の前だけじゃない! 

 包囲されている! 

 

「武器防具を含めた全てのアイテムを置いていけば、何もしないでやろう。 ここにいる皆、金が必要なのだ…」

 

「──おっさん、残念だ…」

 

 散弾を装填し、ボウガンを構える。

 これらはどちらも俺特製のものだ。

 

 散弾の方は1粒1粒の弾丸が小さくなり、威力と貫通力を下げた分、単純に弾丸の数が増えている。

 そしてボウガンの方はバレルを独自に改造し、射程距離と引き換えに広範囲に弾丸がばら撒かれる構造にした。

 

 上記の2つを組み合わせると、近距離では凶悪的な命中率を叩き出すライトボウガンが爆誕する。

 

「こいつは小型モンスター、及び()()()()()仕様なんだよ…!」

 

「かかれェいッ!!!」

 

 勝敗はたったの数回の発砲で決した。

 

 

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