HUNTER-KILLER 〜節度無き狩人に蒼色の弾丸を〜 作:BOMBデライオン
「来たぞ! 撃てェえい!!」
指揮長の命令により、遠距離武器を装備した兵らが一斉射撃を行う。
そして彼らを囲むように守る
この陣形を見る人が見れば、ファランクス、もしくはテルシオのようにも見えるだろう。
前者のファランクスとは、古代において用いられた重装歩兵による密集陣形である。
ズラリと並べられた大盾と、その隙間から出された槍によって、この陣形は正面からであれば無類の攻守性を誇っていた。
そしてテルシオとは、大量の
これら2つを組み合わせたのが、今回の陣形である。
1枚の壁のように連なられた大盾による防御は如何なるモンスターの攻撃をも弾き返し、大人数による弾丸の嵐は
ギルドによる人数制限を度外視して初めて実現できるこの陣形は密猟者の間では幅広く採用されており、その効果の程は時代の流れが証明していた。
実際、強すぎるのである。
攻撃をする人数がいつもの倍以上もいるのだ。
おまけに違法改造された武器は低ランクでもかなりの威力を発揮するため、
だが、今回は相手が悪かった。
「ええい! 何をしている! 敵は1人だぞ!」
何発も撃ち込まれているはずなのに、依然として人間とは思えない速度で走る標的に、指揮長は恐怖を憶えていた。
「ダメです! あいつ、死体を盾にしています!」
「それは分かっている! あれで弾の貫通は防げても、衝撃はどうなる?!」
無論、衝撃はそのまま伝わる。
これは大型モンスターの攻撃を盾でガードは出来ても、そのまま後ろに大きく吹っ飛ばされるのと同じ原理である。
「そもそも防具を着けた状態であれほど速く走るのは不可能だろうがッ!!」
「その不可能が目の前に居るんですから、認めざるを得ませんよ!」
ボォン!!
そうこうしているうちに、前衛であるランス使いが爆発により、陣形を崩された。
「なんだ?! 拡散弾か?!」
…いや、拡散弾にしては威力が低すぎるし、まだ弾が届くような距離ではない。
何より、爆発は
「違います! めちゃくちゃ小さい投げタル爆弾です! 威力は低いですが、山なりに飛んでくるので防ぎようがありません!」
「防ぎようはある! へビィボウガン使いは散弾用意! 対空迎撃だ!」
ドドドドドド!!!!
すぐさま上空へと銃口が向けられ、対空砲火が開始された。
空に散りばめられた大量の弾丸はまらで曳光弾のように光を帯びながら乱舞し、弾幕が張られる。
しかし、散弾と言えど対モンスター用のものは弾が大きく、数が少ない。
見た目の効果は絶大であったが、実際は絵に描いた餅であった。
「ヤバい! 来た来た来たぁッ!!」
ボォン!!
──陣形が崩れた
狩人はその一瞬の隙を逃さない。
もしも生存者がいたならば、こう語っただろう。
「あの時間は悪夢そのものだった」と。
トドメと言わんばかりの大量の投げタル爆弾。
これにより立て直しを図っていた陣形は完全に総崩れを起こし、穴が空いた部分からは容赦無く散弾がぶち込まれた。
「悪魔め…ッ!」
防具の防御力が高いものは辛うじてこの猛攻に耐えていたが、
指揮長は少しの思考の末、決断する。
「守ってばかりでは勝てん! 両翼の生存者は前進せよ! 敵を囲い込め!」
すでに敵との距離は目と鼻の先であり、今から引き返したとしても、逃げられない。
いくらこの化け物でも、全方位を近接持ちに囲まれたら終わりだ!
…と、誰もが思っていた。
次の瞬間、その場にいる誰もが驚愕の光景を目の当たりにする。
「…ッ?!」
「なん…だとッ?!」
敵がいきなり走り出したかと思いきや、
まるで操虫棍使いのような華麗な跳躍で鉄の壁を飛び越え、包囲網はいとも容易く突破されたのだ。
「防具を着けてそれかよ! 化け物か!」
背後を取られたランサーは振り向く間もなく絶命し、為す術が完全に無くなった密猟者達は絶望した。
今までどんなモンスターにも負けたことのない彼らが、たった1人の男にここまでやられるのは想定外だったのである。
「まだだ! 包囲がダメなら個別でかかれ! 数的優位を活かしてゴリ押すのだ!」
よくよく見れば、武器や装備はランポス系のようだ。
そのモンスターはパワーよりもスピードを重視した動きが特徴であるが、新人ならともかく、多少なりとも経験を積んだハンターであればさほど苦戦するような相手ではない。
装備の性能は素材が取れるモンスターの強度に依存するのだ。
そんなモンスターから作られる防具など、強い訳がない。
…はずだった。
長らく雑魚の代名詞という扱いを受けていたドスランポスだが、『未知なる樹海』では時々、異常なまでの強さの個体が見つかることがあるらしい。
事実、目の前で行われている大立ち回りから男の素の実力だけでなく、防具の性能の良さも見て取れる。
「そういえば…」
もはや都市伝説のような存在なのだが、未知なる樹海で見つかるドスランポスの中に、さらに別格の個体が居るらしい。
実際に遭遇したハンターがそう呼んだことで、『蒼い死神』とまでに呼ばれるようになった個体だ。
どれほど強いのかと言うと、そいつに勝負を挑んだG級ハンターがグループごと全滅しただとか、発見当初の
もしそいつの素材で防具を作った場合、一体どれほどの性能になるのか想像もつかない。
「──お前がそうなのか…」
「何の事だ?」
刹那、放たれた弾丸によって男の意識は永遠に閉ざされた。
「…ふぅ」
依頼開始から数十分で敵勢力の大部分を殺害することに成功した。
ギルドがずっと手を焼いていた団体をこれほどまでの壊滅的状態に追い込んだのだから、現時点で帰っても良いくらいの大戦果だ。
だが、そうも行かない。
依頼書には殲滅と記されている。
組織が組織なだけに、入って早々クエスト失敗とかシャレにならない。
「やめてくれ…! やめてくれよぉ…!」
パァン!!
だからこうして命乞いをしようがしまいが、この場にいる全員に等しく
普通の人から見れば俺はとんでもない殺人鬼だが、別に俺が異常という訳では無い。
仕事をキチンと終えることができ、少し運動が得意なだけの、ちゃんとした常識を持った人間だ。
何より、
何よりも個人的な恨みがあるため、密猟者は大嫌いだ。
世に蔓延るクソ共を殺すことが出来るのならば、俺は喜んで死地へと向かおう。
「…もう少しか」
殺害人数:47人
残敵:5人
すでに似顔絵にあった人物は1人を残して全員殺害している。
後はこのグループのリーダーと、逃亡兵を叩くだけの簡単なお仕事だ。