「そっかあ、切嗣さんの知り合いの娘さんだったのね」
いつも通り藤ねえと桜がやってきたので、二人にレムを紹介することにした。
事前にレムと口裏を合わせ、レムは「切嗣の知り合いの娘で、日本には観光にやってきた」と言う事にした。
「でも災難ねえ、荷物が届かないなんて」
荷物が無いのは、空港側のトラブルで世界中をたらい回しにされていると言う事にした。
実際、
「あの……藤村先生はそれでいいんですか………?」
桜が縋るように藤ねえに問いかける。
レムと一緒に住むという事に納得できていないのだろう。
それにしても、顔色は思った以上に良くない。桜はどこか調子が悪いのだろうか。
「んー、折角切嗣さんを頼って来た子を無下には出来ないし……。ま、いいんじゃない?ホームステイだと思えば」
狙い通り、藤ねえなら納得さえしてしまえば援護射撃はしてくれるものと信じていた。
我ながら見事な作戦と感心せざるを得ない。
「………それは、そうですけど……」
桜の表情は暗い。
桜に対しては、小細工を弄してしまった後ろめたさがあるので強く言えないが…。
「桜は…レムが下宿するのは反対か?」
「……いえ、お知り合いの方が住むのは良いと思います…」
「ちょっと毒舌だけど、いい奴なのは保証するよ。あんまり日本に慣れていないから、桜が色々教えてくれると助かる」
「………はい……先輩がそう言うのでしたら……」
「うん、ありがとうな桜」
よかった……人見知りの桜が了承してくれた。
そうと決まれば、歓迎会を兼ねて盛大にやるとするか!
しかし、夕食を作ろうと台所に入れば、既にレムがいて。
夕食の時間には、次々と料理を運び入れてくる。テーブルの上に湯気の立つ食事が並べられていき、しばらくして夕食の場が整えられた。
「では、食事にしましょう。――木よ、風よ、星よ、母なる大地よ」
手を組み、目をつむってレムは何事か呟き始める。藤ねえも桜も、勿論俺もしばらく呆然としていたが、それが食前の祈りだと気付くと慌てて所作を真似る。
おそらくこの、キリスト的な祈りはレムの信仰している宗教のものなのだろう。レムは一体どこの生まれなのだろうか。熱心に祈りをささげる姿から、レムは信仰に厚いのかもしれない。
そしてようやく食事を始めた訳だが、味どうこうと言うより、桜のご機嫌は上向きにはならなかった。レムはサーヴァントは食事がいらないという理由で、最初は一緒に食べようとしなかったが、藤ねえや桜にそれを伝えるわけにはいかず、黙々と食べていた。
「士郎~~~~~~~この海老、ぷりっぷりで美味しいなんてもんじゃないわよー」
「ん~~~~~~、このじゃがいもしっかり味が染みてホックホクだわあ」
「このお肉も、熱々のジューシーでいくらでも食べられちゃうじゃない!ソースとの相性もばっちりだよ!」
とまあ、藤ねえがとても喜んでいるからいいか。しかし藤ねえ、それを作ったのはほとんどレムだぞ?そう言うと藤ねえはとても驚いていたようだった。
「うん、美味い。」
顔を上げて感想を言うと、レムが食べる手を止めて、指で狐を作る。意味がわからないが、もしかするとレムの母国のVサイン的なものかもしれない。
…だが紅茶とクッキーのときは勿論だが、これらの食材はどこから出したんだ?食器もこの家で見たことがないものばかりだ。しかし聞いても答えてくれないんだろうな。