塀の上に立ってサーヴァントの気配を探る。月明かりが少し眩しい。気配の方向を見やるとすぐに目に入る赤と赤。一人は黒髪ツインテールのスレンダーな体型の赤い服装の女。もう一人は赤い外套に身を包んだ白髪に色黒の男。
塀から飛び降りて彼女達の前に立つ。そして飛び降りた勢いを殺さぬように彼女たちに向かって鉄球を
「やめろ!!!レムッ!!!」
ふりかざすことが出来なかった。令呪によって体が止められる。
「何故です、
敵はここで排除しておくべきだ。
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バーサーカーもとい、レムに追いつく。彼女は何者かに攻撃しようとしており、思わず止めた。レムのもとに駆け寄ると、相手の姿がよく見えた。
赤いコートと、筋肉が浮かび上がる程、肌にピッタリと合う黒服を着る男。鷹のように鋭い視線で、俺たちを睨んでいる。手に持っている弓を四散させる。その姿は君たちの警戒心を解きたい、と語っている。俺には男の表情がそう言っているように見えた。
レムはしぶしぶ武器をおさめた。そこに、
「衛宮くん、こんばんは。」
門から現れたのは、夜でも見間違えないくらいに綺麗な黒髪、宝石のような碧眼を持ち、赤い服装に黒のミニスカートという…普段とは違う、見慣れない姿をした遠坂凛だった。
「と、遠坂……なのか?」
「ええ、そうよ。とりあえずオハナシしましょう?」
それが俺には普段見せる優等生としての笑みではなく、悪魔の笑みに見えた。
場所は庭から移り、衛宮邸の居間。遠坂が外では寒いからと、この家の主人である俺には御構い無しに上がり込んだのがきっかけだ。止める術も無かったので彼女に続こうとしたが、ランサーが豪快に暴れた跡が新しい。この惨状をどうしたものかと思っていると、何かを呟いた。すると、
「しかし驚いた。まさか、貴方がマスターなんて。」
廊下や庭に散乱した硝子片が、どんどん元の形に戻っていく。これが手品……じゃない、魔術なのか。
それを横で、
「すっげえ……!遠坂、本当に魔術師なんだな」
と、感動の声を上げた。心の中で感心していただけに、渾身の一言だ。
遠坂はこの感動を、呆れたように一喝。驚きの声と共に、自分の魔術師としてのステータスの低さを認識させられた。五大要素の扱いとか云々言っている。
刺々しい視線を背中に受けながら場所を移動する。
「派手に居間も荒らされたわね。ひゃ〜、寒い!いいわ、これくらいやったげる。だから熱いお茶をちょうだい」
「やってあげるって、この部屋全部、元に戻すっていうのか?」
「そうよ。だってそうでもしなきゃ、落ち着けないもの。ねえ、紅茶ってある?」
「落ち着けないってさ、これ全部元に直せるのか?…紅茶はない。お茶用意する」
「
「…ありがとう。」
レムがお茶の入れ方を知っているのか疑問には思ったが、やや落ち込んでいたのと、気分的にも下がっていたので小さくそう呟いて、有り難く用意してもらおうと思った。
遠坂はピクリと耳を動かすと、こちらを見てニコリと笑った。
……ゾワリと全身によろしくない悪寒が走る。
「むしろどうして出来ないのかしら」
と、言われた気がした。
あの笑顔はヤバイ。見た者を石にするレベルだ…
「さてと衛宮くん。まず、貴方は今、どんな状況にあるのか理解しているかしら?」
「……すみませんでした」
口から出てきたのは、感謝の言葉ではなく、謝罪だった。自分が情けない。
「お待たせ致しました、お客様。」
そこでレムが、イギリスのアフタヌーンティーに似合いそうなクッキーセットと紅茶を持ち、やってきた。
「あら、ありがと。」
「
「……ありがとう。」
だがしかし、家には紅茶の茶葉は勿論、クッキーなんてものはなかったはずだ。思わずレムをしげしげと見つめる。
「大変ですわ。今、
「なんで私!?」
「違う……ッ!」
言う気はないのだろう。とりあえず、一口レムが出した紅茶を飲んでみる。
う、うまい。紅茶に最適な温度、素人にもわかるくらい高級な茶葉を使っている。このクッキーも絶品だ。紅茶の間に食べることによって紅茶の味わいが一段も二段も深まってくる。
紅茶とクッキーに夢中になっていると、レムはやや呆れながら、
「
「ああ、悪い。それと、マスターっていうのやめてくれないか?なんか変な感じだ」
「…わかりました。
「衛宮士郎だ」
「……エミヤ・シロウ。では、
その呼ばれ方もなんだか気恥ずかしかったが、そこで遠坂が、
「それで?その様子だと聖杯戦争のこともサーヴァントのことも知らなさそうね。何が知りたい?」
「全部だな。さっき遠坂が言った聖杯戦争ってやつも、サーヴァントってやつも、全部だ」
俺がそういうと、遠坂が答えた。