Fate/stay night Left   作:夜はねこ

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聖杯戦争

 凡そ三分経つ。彼女から聞いた話をまとめてみる。

 

 俺が巻き込まれたのは、聖杯戦争といわれるもの。七人のマスターが、七騎のサーヴァントを従えて開幕する大儀式。

 参加したのなら他の六人を排除しなければならないデスマッチ。過去にもこの儀式は行われていて、聖杯という宝具を巡り冬木の土地で魔術師達は技を競い合っていた。

 サーヴァントは、マスターの代わりに戦ってもらうために呼び出した、世界中の英雄の、幽霊みたいなもの。

 聖杯は伝説級に凄い。曰く、あらゆる願いを叶える願望機…。

 参加の証である令呪は、俺の右手甲に刻まれている。既に、引き返せない立場にある。

 後は、サーヴァントは霊体化していなければ、マスターでも倒せるらしい。……ランサーも、もしかすると頑張れば……

 

 腰を下ろし初めこそユッタリと紅茶を啜っていた遠坂。彼女がゆっくりと語る事一つ一つに息をのみ、聞いているだけだったが、

 

「それにしても、こんなに美味しい紅茶とクッキーを用意してくれる有能なサーヴァントのマスターは強化しか使えない素人ってどういう事よ!っていうかメイドの英霊って何よ!?真名も名乗ってるし!!」

 

 だん、と机を思い切り叩く。湯のみがやや宙に浮いて、カタンと元の形に落ち着く。奇跡的に、中の熱い紅茶は一滴すら溢れなかった。しかし、紅茶とクッキーは関係ないのではないか。余程、遠坂の口に合ったのだろうか。

 確かに遠坂の話を聞いた時、レムなんて英雄聞いたこともないぞとは思った。

 

「レムの名前なんて、取るに足らないことですので。」

 

 それにしても、深夜テンションとでも言うのか。少しだけこの遠坂凛は、おかしい。その日、遠坂の優等生像が崩れつつあった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 ようやく落ち着いた。

 遠坂をなだめるのは面倒だと理解したので、これから先はなるべく波風を立てないようにしなければならない。

 

「さて。それじゃ、そろそろ行きましょうか」

「行くってどこにだよ、こんな時間だぞ?」

「時間は関係ないでしょ、とにかく行くの。この聖杯戦争をよく知ってるヤツのところに」

 

 女の子がこの時間、外を出歩くのは危ない。なんて言おうとしたのだが、ソレはやめておけと本能が信号を送ってきた。

 

「名前は言峰綺礼。父さんの教え子でね、私の後継人にして兄弟子っていう腐れ縁よ」

「…へえ」

「ついてきて。聖杯戦争については粗方言ったし。最後の一押しは彼に任せるべきと判断しただけなんだから」

「…はい」

 

 立ち上がる遠坂。今からまた出掛けるらしい。それに釣られて俺も立ち上がり、玄関へ向かう遠坂の後を追う。レムがその後ろに付き添う…が、

 

「メイド服か…。」

 

 暗いとはいえ、メイド服で外に行かせるのは少し戸惑いが出る。レムは何故か霊体化ができないらしい。しかし家には、女物の服なんてものはなく、仕方なく黄色のレインコートを着てもらった。

 先に玄関で待っていた遠坂がそんな状態のレムを見て、

 

「……いくら着せるものがないからって、それはないでしょ」

 

 思わずムッとしたが、

 

「レムもどうかと思います。」

 

 と言われてしまってはどうすることもできなかった。

 先程から姿が見えない赤い男ーーーアーチャーがなんだかニヒルな笑みを浮かべているようでならなかった。

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