帰り道、今後の予定や、各サーヴァントの説明などを遠坂はしてくれた。
セイバーは剣を使う。
アーチャーは弓を使い、
ランサーは槍を使って戦う。
ライダーは乗り物に乗って戦い、
キャスターは魔術を使い、
アサシンは暗殺を得意とする。
そして、バーサーカー。
レムのクラスがバーサーカーだということを伝えると、
「ありえない!」
と返された。
なんでも本来、バーサーカーというクラスはクラス特性「狂化」によって、理性または正常な判断能力を失っているそうだ。しかし、レムはそんな様子はない。その狂化の影響により、他のクラスのサーヴァント以上にマスターの魔力消費が激しいのだ。生半な魔術師では、バーサーカーと言うクラスを十全に活用出来ないどころか、最悪の場合、魔力のみならず、その命すら吸い取られてしまうと言われている。
二人が分かれるところまでいくと、学校でのことを話した。
「そういえば、学校にはだれかマスターいないのか?」
「うんいないわ。魔術師の家系はうちの他に一つだけだし、その家系も今はほぼ一般人だから、衛宮君みたいな異例イレギュラーがいなかったら大丈夫よ」
「なるほど。ありがとうな、遠坂。色々と」
遠坂は、少し照れた風に顔を背けると、
「さてと衛宮くん。私たちはここまでよ」
どう返事をすればいいのか、一瞬迷う。
遠坂と戦う、殺し合うなんて考えたくない。向こうが本気で殺しに来たとしてもだ。自分はそうでありたい。今この感情を忘れる時が来るかもしれない。追い込まれたり、危険な状況に陥ってしまったら多分、なり振り構っていられなくなるかもしれない。とても複雑で、筋を通すには限りなく困難な世界に踏み入ってしまったのだ。とても複雑だ。
いや、割り切らないといけないのか。
彼女は、遠坂はマスターになってしまった俺に、塩を送る事を承知でここまで付き合ってくれたのだと。こんな贅沢を、何も見返りなくやってくれる彼女を、俺は果たして敵として見れるのだろうか。
「…そう、だな。ありがとう、遠坂。聖杯戦争に参加した以上、俺は俺に出来る事を見つけていくよ」
教会で、言峰綺礼というカソック姿の神父から親父の話を聞いた。正直驚いたけど、なるほど、頷く節もあった。
そこで俺の決意は、決まった。聖杯戦争に参加して、十年前の惨劇を起こさないと。
もう一つ、後押しをしたのはレムだ。死の淵から救い上げてくれた。レムを裏切るなんて、俺にはどう考えても出来る筈がない。助けられてばっかりなんだ。ならせめて、レムに迷惑は掛けない。
「凛、君はやはり甘いな」
「…何よ。ヘッポコマスターを見てたら戦意が無くなっただけなんだから。」
あはは、と苦笑いが出る。この二人は余程相性が悪いらしい。遠坂が合ってまだ間もない相手に、ここまで捻くれた態度を見せるくらいなのだから。
「でもまぁ、もし、アンタの場合本当にもしものことだけど、サーヴァントがやられたらさっきの教会に逃げ込みなさい。とりあえず命だけは助けてもらえるから。」
「ああ。」
しかし、このままではキリがない。それに、長引いても良くない…
一先ず決心したのだ、今は整理する時間が欲しい。だから、レムに声を掛けて別れようとした時、幼い声が夜の街路に響いた。
「ーーーーねえ、お話は終わった?」
その声に、俺も遠坂も、アーチャーも止まった。唯一レムだけが坂の上を見上げている。
この場にいない者の声。それはーーーー
レムの目線の先に目を向ける。
そこにいたのは、凄まじいまでの筋肉と申し訳程度の鎧と長剣を携えた長身の男。男と共にいるのは、白髪に赤い目の、冷たい氷のような雰囲気をまとった幼い少女。
間違いない。アレは、サーヴァントとマスターだ。
そのあまりにも強大な雰囲気に、だれも動けずにいた。そんな中、少女は語りかける。
「こんばんはお兄ちゃん。それとも初めましてだから自己紹介したほうがいいよね。私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えば、わかるよね」
イリヤと名乗った少女が、行儀よくスカートを持ち上げて挨拶をすると、遠坂がピクリと動いた。
その反応を見たイリヤは、少し嬉しそうにして、
「———じゃあ、殺すね。やっちゃえセイバー」