アーチャー
「アーチャー、狙撃の準備。こっちは出遅れちゃったけど、今すぐにレムの援護をお願い」
坂の下、アーチャーは凛の指示を聞く。そして、
「凛、君に死なれては困る。付いて来い」
「…どういうこと、きゃっ、ちょっとアーチャー!?」
凛の身体を持ち上げるなり、戦いの場とは反対方向へ跳躍していた。
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「レムッ‼︎」
声を上げて粉塵に紛れて見えないであろう、彼女の名前を呼んだ。レムの背中が消えて行った林の入り口に立つと、現実では滅多に見ないであろう荒れ方に息をのんだ。
木々が何本も倒されている。千切れている箇所は、何かがぶつかった後だとハッキリと理解出来る。これは多分、セイバーが吹き飛ばされた先にあった木だ。これらがクッション代わりになったのだろうか。そこまでは分からないが、木々が倒れている跡を追えば、レムに追いつける。そうと決まれば、レムに追いつかなければならないと、不安をのみ込んで走り出す為の一歩を前に出す。
「待て」
「うわあっ!?」
駆け出した瞬間に、足に何かが引っかかって転けた。情けない声と共に、ドカッという鈍い音が出た。他人事ではない。これ、かなり痛い。
「静かにしたらどうだ。マスターがそれでは彼女も落ち着いていられないだろう?」
「いって……アーチャー、何しやがる?いや、それより今まで何をしていた。遠坂はどうした?」
焦る俺の後ろから、アーチャーが腕組みをしながらそう言った。転ばされた事に不満を感じつつ、アーチャーの行動に疑問を持つ。どうして彼は、ここにいるのだ。遠坂は、どこだ。
「答える時間はない。それよりも、今の君が、セイバーと交戦中の彼女の元へ行って何になる?」
「それは……」
おめでとうの疑問は一蹴される。もう、ここで聞いても無駄らしい。
アーチャーはサーヴァント。英雄として現界した者だ。特別、彼にその疑問を投げかけられなくても判る。今の俺が、レムの元へ行く事の意味。
鼻を鳴らすと、鍛え甲斐がありそうなポンコツマスターだ、と言い満悦そうに笑う。
彼が笑うと、こちらはとても良い感じがしない。
「お前はマスターとして何も成っていない。今から向かう場所が、本当に死地だという事を理解していない」
「どういう、意味だ」
「凛は、君を未だ殺す気がない。だから此処は、貴様に現実を叩き込んでやる事にしようと思ってね。私からの貴重な好意だ、受け取りたくばついて来い」
そう言いアーチャーは足に力を込める。そしてボッという音を置いて、跳躍した。
とても嫌な、許されない事が起きるような気がして。
「おい、何をする気だ!?くそっ、待てよアーチャー!」
必死に、視野も足場も悪い中を走り出す。
アーチャーが何をやろうとしているのかを、考える余裕は無かった。