【完結】ドクター「オペレーターと仲良くなりたいけどどうすれば良い!?ミッドナイト!」 作:塊ロック
でも、
……気配を感じる。
感じるけど、姿が見えない。
見られている。
ここ一週間ずっと誰かに見られている気がする。
「………………」
スペクターではない。
では……誰?
「マンティコアだろう」
隣で歩いていたエンカクが呟いた。
「……どの辺に居るとか、分かるか?」
「分からんな。流石だな」
「関心してる場合かっての。声かけても出てきてくれないし」
「……見られてるんじゃないのか?」
「何を……いや、まさか」
「そのまさかかも知れん」
「うわ……」
「いつ襲われても不思議ではないな」
「やめてくれよ……」
「……覚悟を決めろ」
助け舟は無し。
やる事は一つ、か。
「……話をしてみる」
「結果は見えてるけどな」
「辞めてくれよ……」
―――――――――
自室に戻る。
自分の物は極端に少ない。
……が、机の上に自分の物ではない小物が増えてきている。
エフイーターのマグカップと、スペクターの……何だろうこれ。
呪いの人形?
俺は、部屋のドアのカギを締めた。
息を呑む音がした。
呼吸の変化を感じ取る。
暗殺者としては致命的なミス。
「……マンティコア」
「何……」
振り返ると、彼女は部屋の真ん中に立っていた。
「何か、俺にあるんだろう?」
「………………」
「あ、おい!」
彼女は、無言で俺の傍に寄り……スッと俺の懐から「切り札」を抜き取った。
「マンティコア、それは駄目だ。返してくれ」
「………………」
彼女は、無言だ。
じっと手にした銃を眺めてから、こう言った。
「危ないから」
彼女は切り札を机の上にそっと置いた。
「いや、別に今は……うぉっ」
ぐるん、と彼女の尻尾が俺の首に巻き付いた。
甲殻の様な感触。
これはビビって発砲し兼ねないと判断されたんだろうか。
「ねぇ」
「なん、だ?」
「ドクター、誰が好きなの」
「それ、は」
「ねぇ」
好き。
今この瞬間問われているのは間違いなく、愛。
「……分からない」
「それで、二人と寝たの?」
「……ああ」
ぎゅ、と首に掛かる圧も増えた。
「どうして」
「拒絶出来なかった」
「破裂するよ」
「分かってる」
「分かってない」
「どうしてそう思う?」
「私の事を……分かってないから」
「人となりは知ってるつもりだ」
「今、こうされてることは……分かってるの?」
「分かっては……」
「分かって、無いよね」
……本当は分かってる。
嫌って程思い知っている。
言葉が届かない。
今まで学んできた技術が、ここにきてこんなにも無力なのか。
「私がどう思ってるか。どう変えたのか」
「………………」
「どうすれば良いか。ドクターには分かる?」
「それは……」
後ずさる。
尾の拘束が解けた。
その代わり、マンティコアに胸を押され、足が引っかかって俺はひっくり返る。
「うわ、っ」
床に倒れない。
背に感じたのは、いつものベッドの感触。
「お、おい」
「1番じゃなくても良い」
「マンティコア、やめろ」
「わたしを、見て」
いまだけは、私を見て欲しい。
私だけを見て欲しい。