ダンジョンにイヴァリース一の剣豪がいるのは間違っているだろうか 作:ZANTETSU
「むぅん...ここはどこだ」
確か自分はエクスデスに次元の狭間へと飛ばされたはずなんだが、次元の狭間とは違うどこかの洞窟に飛ばされてしまったようだ。
「グルルルル...」
なにやら狼型のモンスターが唸りを上げてこちらに近付いてきている。全く穏やかではない。
「話し合いは出来そうもない..か。いや、それでも俺は名乗らせてもらう!!」
愛用の薙刀をぐるんと回して地面を突く。
「イヴァリース一の剣豪、ギルガメッシュここに推s...って名乗りあげてる途中に攻撃してくるのは御法度だぞぉ」
飛び掛ってきた狼を蹴りで壁に叩きつけると狼は霧のように霧散し、黒い石をその場に落として消えた。
「なんだこりゃ」
手に取ってみてみると微かに魔力を感じるが中にある魔力を取り出すことは出来そうもない。やがて興味を失い、適当に投げ捨てた。
「しかし、一体ここはどこなんだ。こんな所に人が来るとも思えんが、取り敢えず探して...ムム?誰かの話し声が聞こえるぞぉ」
すり足さし足忍び足で岩陰に隠れつつ盗み聞きする。
ーーー
「何を焦ってるのアイズ。さっきからすごい勢いでモンスター倒してるけど、何かあったの?私達ダンジョンに入ってから1匹もモンスター倒してないよ」
「ごめん...ただ早く強くなりたくて」
「今のアイズでも十分強いと思うんだけどなー」
「まぁ、気持ちはわかるよアイズ。僕も新米冒険者の時はそうだったからね。君を新米というのは気が引けるが、冒険者歴は僕達よりもずっと短い。好きにするといいよ、アイズ。今は僕達がいる1人でダンジョンに篭もりきりなんて事になるよりはずっとマシさ」
「はぁ...あまり甘やかすなよフィン。悪い癖がついてしまう」
「分かってるよリヴェリア」
私たちはレベルアップに行き詰まった私のためにティオナ、ティオネ、フィン、リヴェリアまで来てくれた。本当に優しい人達いい人達。でも私はもっと強くなりたい。もっともっとただ只管に強くなりたい。
なにかきっかけがあればレベルアップできるはずなのだ。ステイタスはもう頭打ちになっているレベルアップはいつしてもおかしくないというのになかなか出来ない。レベルアップの要因の一つに強敵の撃破、格上の撃破がある。下層のボスを私一人で撃破すれば或いは何かが変わるかもしれない。
そんな思いを打ち明けたらみんなが着いてきてくれたのだ。
「アイズ、少し休憩を...待て。みんな止まれ」
リヴェリアが杖を構える。敵だ。それもまだ上層だと言うのにリヴェリアが警戒するほどの敵。私も咄嗟に武器を構える。集中すると岩陰に誰かの気配を感じる。モンスターではないようだがこちらの様子を伺っているのがわかる。
奇襲でもするつもりだったのだろうか。
「何者だ。そこに隠れていないで姿を現せ」
すると、岩陰からは2mはあろうかという大男が姿を現した。赤い外套に背中に巨大な薙刀と槍が見える。このフロアではどちらも使いにくい武器だ。
「ほう、この俺様に勘づいていたか。お前たちなかなかやるな」
「...何者だ貴様。貴様のような男、1度見れば忘れようもない。最近冒険者になった新米かそれともモンスターか。どちらにせよ名を名乗れ」
「これは失礼、俺としたことがすっかり忘れちまってた。んんっ」
するといきなり大男が構えをとる。右手を前に左手を後ろに首をくるりと回して名乗りをあげる。
「異世界彷徨い西へ東へ、ダンジョンへ。イヴァリース一の剣豪とは俺の事!ギルガメッシュ〜ここに推参!!」
ドーン。と音が聞こえてきそうなくらいの決めポーズだった。
「この人は何をしているの?リヴェリア」
「....すまん私にもわからん」
リヴェリアにも分からないことがあるんだ。
「それで、君はなんで僕達を物陰から見ていたのかな。何か用でもあるのかい」
「そうだ。俺様は用があって貴様達を盗み見み、盗み聞きしていたのだ。諸事情あってこの世界には疎いがお前達はなかなかの強者とみた。ギルガメッシュが強者と相見えた。即ちそれは...」
突如私の体は武器を構えてギルガメッシュと名乗るその男から距離をとっていた。そしてそこには男の槍が突き刺さっていた。
全員が戦闘態勢に入る。
「お前達、いい武器持ってるなぁ。俺様の前に現れたが運の尽きよ。その武器頂くぜ!!」
ギルガメッシュは虚空に手を伸ばし、空間に現れた波紋から武器を取り出していた。
「空間魔法の使い手だと!?馬鹿な」
希少中の希少の魔法を目にし驚くリヴェリア。無理もない。私も見たのは初めてなのだから。
「さあ、行くぞ!!」
こうして突如ダンジョン上層にて予期せぬ戦いが始まってしまった。
リヴェリアが牽制の炎の魔法を無詠唱で放つ。
その炎はギルガメッシュに直撃するも微塵もダメージを与えられず、剣で炎を振り払った。いくら無詠唱とはいえ一線級の冒険者の魔法を歯牙にもかけない人間がいるなんて。
そして驚愕したのがギルガメッシュも魔法を使ってきたことだ。筋肉が隆起するほど鍛え上げられた体から近接専門の戦士かと思っていたが上級魔法に匹敵する威力の雷魔法が私たちを襲う。
リヴェリアの守りの魔法で事なき得たがこのまま遠距離で戦い続けたら分が悪い。団長もそう思ったのか、私と一緒にギルガメッシュとの距離を詰める。少し遅れてティオネ、ティオナも追いかけてくる。
「ムラマサ。お前達には敬意を表してこれで相手をしてやる」
一瞬でわかった。あの細身の剣がどれだけの業物なのか。まともに打ち合えばデュランダルの属性のない武器は両断されてしまうだろう。
かなり長い刀身の武器をこの狭い場所で振り回しているのにもかかわらず、刃が岩や壁に当たることが全くない。少ししか見ていないが槍も薙刀も長剣も達人級の技巧。隙がなくなかなか間合いを詰めることが出来ない。それどころか相手の攻撃を捌ききれず団長以外の私たちの体にはあちこちに血が滲んでいる。
団長がギルガメッシュに鋭い突きを放つ。ギルガメッシュはその突き出された槍に乗り、長剣を薙ぎ払う。団長が最低限のバックステップでそれを避け空中にいるギルガメッシュに再度突きを放つも振り切った長剣の遠心力でそのまま槍を上から叩きつけ、背中の薙刀を振り下ろす。
団長は槍を長剣で叩きつけられる前に手放し、近くにあったギルガメッシュが地面に突き刺した槍で薙刀を受け止める。
「全く、君は一体何者だい。様々な武器をそのレベルで使いこなすなんて普通じゃないよ。それにこの槍も一級品。僕が持ってるものには及ばないけれど、かなりの品質だ。これだけの武器に武芸。その風貌も相まって名が知られていないはずがない。...君が冒険者ではないのは確かだね。君が冒険者になったらと思うとゾッとするよ」
「冒険者じゃないだと!?そんな馬鹿な...」
魔法も武器の扱いも一線級冒険者に劣らない実力を持っている神の恩恵を授かっていない一般人。全く持って笑えない。
「神の恩恵?冒険者?なんだそれは。だがいい響きだ。冒険者ならいい武器たくさん持ってんだろ?俺にみせてくれよその武器をよ!」
ギルガメッシュは団長の槍を手に掴み取る。
「そら、返してやる。お前たちを倒して手に入れるまでは奪う気はねえ」
「それはどうも」
団長もギルガメッシュに槍を返す。
「ありがとよ。だが、手加減はしないぜえ?」
これだ。この敵を打ち倒すことができれば今度こそ、私はレベルアップができる。だからこそ、私は。
「フィン。私にやらせて」
「アイズ?本気で言っているのかい。この強さだ。1人で立ち向かうにはあまりにも無謀すぎる。...わかりやすく言おうか、今の君では勝てない」
「そんなことはわかってる。でも、戦いたい。なにか掴めそうな気がする」
「あぁ...俺もだ。俺も掴めそうな気がする。お前を相手にすると....」
ギルガメッシュも?一体どういうこt
「いい武器を手に入れられる予感しかしねえぜ!!」
さっき持っていた長剣とは別の青くしなった死を連想させる剣で襲いかかって来た。
「まともに打ち合えば押し切られる。なら、こうする!」
テンペストを発動させ、壁や天井を飛び回り相手を撹乱する。牽制を入れつつ、隙を見せたところにラッシュをかける。
その巨体からは予想もつかないほど機敏に私の攻撃に反応してくる。何よりあの剣から感じる死の気配が、1度でも攻撃を受ければ死ぬと直感が告げている。
正面から打ち合えば死。隙を見せれば死。今度ばかりはダメージを負うわけには行かない。
「なかなかやるな嬢ちゃん」
キンキンキンと剣どうしがぶつかり合う音が聞こえる。介入すれば邪魔になってしまうほどの激闘でフィンもリヴェリアも援護することが出来ない。ティオネやティオナに関しては動きを追うのに精一杯である。
そして、その時は訪れた。
アイズがギルガメッシュの首を狙った突きに対して少し大振りにギルガメッシュは剣を振り対応してしまった。アイズの速さで正面に回られ攻撃を受ければ振り切った剣を戻して受けることは出来ないだろう。
「これは万事休すか。負けを認めるしかないか....とでと言うと思ったか!」
ギルガメッシュは剣で対応するのではなくアイズの腹部を蹴りあげることで対応してみせたのだ。
「ぐっ...」
強烈な蹴りだ。のどの奥にまでせり上がってきた血を地面に吐き捨てる。肋骨が何本か折れてしまっているだろう。1度目を瞑れば意識を失ってしまう自信がある。
だから、最後のラッシュをかけここで決める。
残り僅かな魔力を絞り切り全力全開でギルガメッシュに突撃する。
自分の目にすら見えきれていない超速度の剣撃のラッシュ。自分にも見えていないというのにギルガメッシュはそれにすら対応している。そして、
「勝負あった!!」
私の剣をはじき飛ばし、掌底を私の体に打ち込む。
「ぐぁ...」
ダンジョンの壁に叩きつけられそのまま血を吐き出しながら崩れ落ちる。意識が保てない。ただ、死んでいないことだけわかった。リヴェリアが駆け寄ってきたところで私の意識は途切れた。
ーーー
「勝負あったぜ。お前の武器頂いていく」
少女が使っていた細身の剣を手に取り蔵へと仕舞う。またひとつ強者の武器を手に入れた。
「よくもアイズを...絶対許さない!」
アマゾネス、というのか。褐色の肌に寒そうな服装で俺に殺気を向けてくる。
「はっはっはっは。敗者に情けなど不要!負ければ獲物を失い全てを失う。当然のことよ」
「...フィン致命傷ではない。手持ちのポーションで十分に治癒できる。あとは寝ていれば時期に目を覚ますだろう」
「そうか。ありがとうリヴェリア。」
「君が奪うのは武器だけって所なのかな」
「その通りだ少年。武器は奪うが命にまでは興味はない。俺が求めるのは強者の武器のみ。だから少年、お前の武器も貰うぞ」
「まだ戦い続けるのかい、キミは」
「当然だ。この場にいる全ての猛者から武器を奪うまで俺様は戦い続ける」
「分かったよ。なら武器を渡そう。ここにいる全員分ね」
「....なんだと?自分の獲物を抵抗するでもなく明け渡すというのか。」
「そうだとも。だから僕達を見逃して欲しい。君を倒しても僕たちにはなんのメリットもないんだ。だからこれ以上被害を出したくないのさ」
「クックックックックハハハハハハハハ。いいだろう。そこの少女の健闘に敬意を表してここは武器を貰い受けて引き下がろう。だが、覚えておけよお前達。次に出会ったらまたその時持っている武器を頂くぜ!じゃあな」
投げ捨てられた武器を回収し、俺は下層へと落ちていく穴に飛び込んだ。
書き溜め、ストーリー展開とか一切考えてないし推敲もしてないんですんませんんっ