今回の回は短めです。何故かって?眠いんすよ。(現在深夜12:41)
本編をどうぞ。
第三話
今更なから俺ことデマンティー・ルージュはアニメ?というものの知識が多少なりともある。
例えば神の使いを人型決戦兵器で戦闘したり、物のベクトル操る敵を右手でぶん殴ったり、卍解したり、強い言葉を使うやつに弱く見えると言ってみたり、そんなアニメの知識が俺の脳にはあるわけだ。
かの異世界だったら実現は不可能だろう。神の不可侵領域を張ろうにもそんな絶対に壊れない盾なんて原理的に意味不明すぎて。科学が進歩したあの世界では再現できない。
だがしかし、この魔法が進歩した世界なら、あの摩訶不思議な現象たちを再現できるのではないか、と不詳この俺が思うのである。
そんなことを思い始めて早3年、現在8歳のデマンティー・ルージュの研究はいまだに続いていた。
「円」
いつもの森の中で、俺は自分の魔力を周りに円状に満たす。
その中では木葉の一つだろうが落ちてくる物、侵入してくる物全てを感知できる。そして俺は目を閉じ、左足を引き下げ、腰を落とし、左手で持っている木刀の柄を右手に沿わせる。
いつでも切れる。いつでも斬り殺せる。
その意思を持って、その円に入り込んでくるものを両断する準備を整える。
俺の右の背筋側に木の枝がえげつない速度で飛んでくる。
「シッッ!!」
右足を前に出しその勢いを持って腰を回してその枝を真っ二つに切る。
少し右から殺到してくる3本の枝に対処するために、即座にその構えのまま両手に持ち替え右に手を脇に引いて掛け声と共に貯めていた圧縮魔力と共に突き出す。
「ストライク・エア!!」
木の枝がその圧倒的な魔力の風に負けてしまい塵となってしまう。それはある国を統治し、円卓の騎士たちと共に戦った騎士王の技であった。いやアニメだけど。
木の枝を飛ばしていた狼、カゲロウがトコトコと俺に歩いているところを目視すると、俺も構えと警戒状態を下げる。
『いや〜いいんじゃないかな今の。円とストライク・エア、あれは前回もやったけど魔力変化効率が良くなったんじゃないかな。効果自体も満遍なく発揮してるし、後は使い手次第かな?』
「よかった〜。これでダメって言われてたらくじけてたわうん。正直俺居合の達人じゃないし、最強の聖剣なんて持ってないし無理かなーなんて思ってたけど、やってみたらできるもんだな」
俺念能力者でもないし、最優の騎士(笑)でもないし、そもそも俺赤王派だし、半信半疑ではあったものの研究の末完成したオリジナル(模倣)の魔法。
特にストライク・エアは風魔法の風圧とベクトル操作が圧倒的に難しく、一回暴発して自分の体が上空に晒されるという事があった。あの時は「あ、死んだ」と思ったけど、咄嗟にもう一発打ったら勢いが上手い具合に軽減され無事に着地した。生きてるってすごい。
しかし、今の俺の魔力量ではそこまでの数は打てないのが問題であった。ストライク・エア五発で空っぽになる。そんな貧弱な量しかない。カゲロウは何発撃っても空っぽにならないぐらいはある。まぁ、魔物を比較対象にするのは間違っているだろうけど。
「でも魔法面はよくても、問題は剣術の方なんだよなぁ」
そう、本当の問題は剣術のほうであった。
生憎村に剣術を教えてくれるところはあるのだが金はかかるし、俺の財力は雀の涙ほどだし、カゲロウは魔物だから教えられないし。うん、絶望的だ。
しかし、そんな状況から救い出してくれるのがカゲロウだった。
『あぁその件なんだけど、僕の友人が剣術っていうか武術に詳しい奴がいてさ、頼りになってくれるかもしれないから解決するかも」
「まじか!?」
よっしゃー!!っと言いながら俺ははしゃぎ出す。うん。いやさ。しゃあないじゃん。ずっと見つからなかったんだからさ。
『ちなみにそいつはあの女神みたいな奴じゃないから安心してね。いたって普通な感性の持ち主だよ。戦闘以外は』
「普通のやつかー。よかっtうん?戦闘以外は?」
『うん、戦闘以外は。あいつはさ、常に戦闘では最善を選び続けようとするんだよ。妥協なんて許さない。失敗なんて尚更。戦闘面では変態的な思考回路の持ち主なんだ』
「あぁ、まぁ、それぐらいなら。出会って初めてのやつに気絶の魔法ぶっこむやつじゃなきゃいいや」
『その度はどうもすみませんでした...』
「ごめん。言いすぎた」
そんな感じで俺の修行がレベルアップした。
嫌な夢を見た。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
その夢は俺が両親を殺す夢で実際にあったもの、だと思う。
夢の中では住んでいる家が血塗れで、まるでそこにはトマトを炸裂させた残状なのではないかと見間違うぐらいだった。
「はぁ、はぁ、はぁ、くそ」
目覚めの悪さに悪態を吐きながらベッドから降りて、自室のドアを開けてリビングに出る。外は雨が降っているらしく、窓からは曇った景色とザァザァという雨音が聞こえた。
「...雨降ってるのか」
窓から外を見ると激しい雨が降っていて、少し向こう側の景色が見えないぐらいだった。窓側に設置してあるテーブルと4脚の椅子の内窓側の椅子に座り、もたれかかるようにして天井を見上げる。
「誰が殺したんだ?」
俺には家族がいなかった。
というより、物心がつく前、俺が3歳のときに殺された。
両親は滅多刺しにされて、リビングの中央で手を繋いで血の池を作っていたらしい。この平和な村には一切起きない殺人事件で、3歳にして俺は一人ぼっちになったわけだ。
親の顔すら俺は見たこともなく、家の家事などはたまに近所のおばさんがしてくれるものの、現8歳の子供にはこの生活は辛すぎることこの上ない。領主からの税金、おばさんが居ないときの家事、そして何より、喋り相手だった。
「家族...か...」
普通の子供が居るような家庭だったら、ありふれたどこにでもあるような環境だったら、なんて思ってしまう。
しかし、この世界は、というより現実は悲観すれば願いが叶うような甘いもんじゃない。だからこそ俺は思考を冷静にして、表には出さず、感情を心の海の中に沈めておく。
「...水飲んで寝よ」
そんなことを吐き出して、コップ一杯の水を煽ってから寝床についた。
犯人探しは今やるべきではない。今は精一杯生きることに専念しよう。
やるべきことをはっきりさせて、目蓋を閉じた。
今度こそ悪夢を見ませんように。