バイオハザード -約束のサムライエッジ-   作:オリーブドラブ

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-前編からの登場人物-

-カイル・グリーンホーク(Kyle Greenhawk)-
 22歳。R.P.D.の新人警官ながら射撃の腕は抜群であり、S.T.A.R.S.志望だったことからフォレスト・スパイヤーに見込まれていた。仲間達と共に市民を救出しつつ、ラクーンシティからの脱出を目指していた、情に厚い熱血漢。
 使用武器は彼から餞別として預かっていたM92F。

-ノエル・スプレイグ(Noel Sprague)-
 20歳。ラクーン大学に通っていた女子大生であり、日系の血を引くスタイル抜群の勝気な美女。民間人でありながら、他の生存者達を救出するべくカイル達と行動を共にしていた。
 使用武器はM1911A1。

-エドガー・ロジャース(Edgar Rogers)-
 23歳。カイルの同僚であり、彼の良き理解者だった人物。皮肉屋ながら、彼に劣らず情に厚い一面もある。射撃の腕は確かであり、カイルやノエルと共に生存者達を救出するべく動いていたのだが……。
 使用武器はM92F。



前編 ATTACK OF TYRANT

 1998年、9月下旬。

 猛火に包まれ、阿鼻叫喚の煉獄と化した街に、銃声が轟く。理性なき暴徒が斃れ、人が死ぬ。今となっては、よくあることでしかない。

 ラクーンシティに発生したT-ウィルスの感染による大混乱は、留まることなく拡大し続けている。もはやこの街に安全な場所などなく、今生きている人々は絶え間なく屍達の脅威に晒され続けていた。

 

「カイ、ル……逃、げろっ……」

「エドガーッ……!」

 

 それは。闇夜を照らすように燃え盛る街道の中で、市民を守らんと戦い続けていたラクーン市警――R.P.D.の警官達も、例外ではない。鮮血と煤に汚れた手で横たわる同僚を抱く、カイル・グリーンホークもその1人だった。

 艶やかな銀髪を靡かせる彼は、友の金髪を撫でるようにその頭を抱え、力無く声を掛ける。誰が見ても、同僚――エドガー・ロジャースはもはや、手の施しようのない状態だった。

 

 こんな事態にさえ、なっていなければ。今頃は、晴れて自分達の後輩としてやって来るレオン・S・ケネディを、快く迎えていたはずなのに。今となってはもう、彼の安否すら分からない。

 

「エドガー、しっかりして! あなた、もうすぐ彼女と一緒になるって……!」

「……だからこれから、一緒になる(・・・・・)のさ……ノエル。俺の彼女ならもう、とっくに……」

「そんなっ……!」

 

 そんな2人の警官と行動を共にして、他の生存者達を守るために戦い続けてきた、ラクーン大学の女学生――ノエル・スプレイグ。

 黒のトップスとホットパンツという大胆な格好ながら、ショートボブに切り揃えたブラウンの髪を靡かせ、亡者達と渡り合ってきた彼女だが。その活躍は、カイルとエドガーの支えがあってのもの。

 愛用のM1911A1(ガバメント)を握る白い手を震わせて、彼女はただ死にゆく仲間を看取ることしかできずにいる。

 

「……けどな、困ったことにこのままじゃあ、向こう(・・・)でも彼女とは一緒になれねぇんだ。なぁ、カイル」

「……あぁ、分かってる」

 

 血みどろの警官は最後の力を振り絞るように、震える拳を友の胸に当てる。ラクーン警察署から拝借してきた、S.T.A.R.S.(スターズ)の装備である緑色のベストを纏うカイルは、その拳を握りながら頷くと――手にしたM92F(ベレッタ)の銃口を、エドガーの額に向けた。

 

 それは、ただのM92Fではない。S.T.A.R.S.への入隊を希望していたカイルは、その射撃の腕をS.T.A.R.S.隊員のフォレスト・スパイヤーに見込まれていた。

 その彼から餞別として預かっていたのが、今ここにある「サムライエッジ」なのだ。カイルは先の洋館事件で殉職した彼に代わり、この銃に相応しい警官になると誓っていたのである。

 

「……約束したんだろ、あの人と。だったら……これ以上、イタズラにゾンビを増やすようなマネはしないよな」

「あぁ……もちろんだ」

 

 エドガーは戦いの中ですでにゾンビに噛まれ、T-ウィルスに2次感染している。その知識がなくとも、彼はとうに理解しているのだ。

 もはや自分は、あの屍達の仲間になるしかないのだと。ならばもう、警官として、友として。カイルに付けられる「ケリ」は、一つしかない。

 

「あばよ、親友。S.T.A.R.S.以上の、ヒーローになれ」

 

 それが、最期に残された言葉であり。カイルにとって決して違えてはならない、もう一つの「約束」となっていた。

 次の瞬間には乾いた銃声と共に、血飛沫が噴き上がり。エドガーはゾンビになることなく、この事件の犠牲となった恋人の元へと旅立っていた。

 

「カイル……」

「……行こう、ノエル。俺達まで死ぬわけには……!?」

 

 親友を自らの手に掛けたカイルの背に、ノエルは掛ける言葉を見つけられずにいる。

 そんな彼女を勇気付けるように、エドガーの目蓋を閉じさせたカイルが勢いよく立ち上がった――その時。

 

 後方からコンクリートが砕け散るかのような、凄まじい衝撃音が響き渡ったのである。その轟音に思わず振り返った2人は、戦慄した。

 

「なッ……!?」

 

 一見すれば、暗緑色のコートを着た巨漢。だが、その眼はゾンビ達と同様に、理性の光がまるで感じられない――「怪物」の色を湛えているのである。

 何より、コンクリート壁を体当たりで破るその膂力。明らかに人間ではないし、自分達に友好的な存在であるとも思えない。

 

 その疑念を確信に変えるように――トレンチコートの巨漢は、カイル達と視線を交わした瞬間に突っ込んで来た。

 

「ノエルッ!」

「くッ……なんなのコイツッ!」

 

 エドガーの死を悼む暇すらなく、戦いの幕が上がる。カイルとノエルは同時にM92FとM1911A1を構え、発砲を開始した。

 ――が、やはり今までのゾンビとは訳が違う。何発もの弾丸を叩き込まれながらも、トレンチコートの巨漢は怯む気配すらなく突進し続けていたのだ。

 

「くッ!」

「うッ……!?」

 

 その巨躯に物を言わせた体当たりをかわし、背後に転がり込んだ2人は再び銃口を向ける。

 だが、その引き金を引くよりも先に。振り向きざまに振るわれた裏拳が、彼らを容易く吹っ飛ばしてしまうのだった。

 

「ぐぁっ……! ノ、ノエルッ!」

「きゃあっ! だっ、大丈夫……まだ、いけるッ!」

 

 アスファルトの上を転がりながらも、なんとか立ち上がった2人は諦めることなく銃を取る。だが、戦力の差は歴然であった。

 

 T-103――「タイラント」。アンブレラ社によって開発された究極のB.O.W.にして、「暴君」の名に相応しい破壊力を持つ強力な個体。

 その圧倒的な力の前には、ハンドガンを構えた新人警官と女子大生など、取るに足らない存在でしかない。だが、自らに敵意を向ける生存者をみすみす逃すような温情などないのだ。

 

 じりじりと近づき、今度こそ確実に殺すと言わんばかりの眼光を放つ巨漢。その暴力の体現者に、カイルとノエルは死を覚悟する。

 

 ――その時だった。

 

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