DQ11の世界でテリーになってました。いやマジでどうしよう。   作:こだわり和栗

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第二話

 そして、一ヶ月の時が流れた。

 

 

 

 ▽

 

 

 

 干し肉を水で戻しながら木皿に盛られたサラダをもっしゃもっしゃと頬張る。金属製のスプーンとフォークを使用して吸い込むような勢いで食事を掻き込む。子供の体にとって栄養は大事なのだ。

 俺は誰も居ない小屋で、一人で寂しく朝食を取っていた。

 

 ユグノアが壊滅してから俺は――濡れ鼠で冷える体を震わせながらとぼとぼ歩いていたら、埃塗れの放置された旅小屋を発見した。大量に備蓄されていた薪を暖炉に放り込み、震える指で火打ち石をカチカチ鳴らして火をつけ、暖を取り生き延びる事が出来た。あの時の火の暖かさを俺は一生忘れないだろう。

 

 DQ11。

 ロトゼタシアと名付けられたこの肥沃な大地には、誰でも利用できるような旅小屋や野営用のちょっとした設備が各地に点在している。そういった場所は大抵、命の大樹の加護がある場所と言われ、不思議と魔物が現れない特性がある。

 俺が住み着いた小屋もその類なのだろう、本当にありがたい限りだった。

 

 もそもそサラダを頬張りつつ、喉が渇いたので、満々と水を湛えた桶にコップを浸して水を掬い上げる。

 

 小さな手で前髪を軽くつまみ目の前まで伸ばせば、日に透けるようなキラキラとした銀髪が。桶を覗き込んでやれば、小さく揺らめく水には子供ながらに鋭利な印象を覗かせる整った容姿があった。

 どうあがいてもテリーである。DQMのパッケージに写るテリー少年がそこには居た。

 

 そもそもテリーとはどういう人物なのか。

 

 本編と派生作品で彼の立ち居地は大きく変わる。

 派生作品では強キャラの名に相応しいかっこよさと力強さを兼ね備えたクールキャラ。モンスターズでは主役の座に抜擢されている。

 

 

 打って変わって、DQ6本編での扱いは非常に悪い。

 

 

 シナリオ中盤と終盤の境目に仲間になるのだが、旅の途中で何度も相対することになる。

 ここでテリーの発言を見てみよう。

 

 * オレの名はテリー。世界中をまわって 剣の修業をしている者だ。

 * フン…おまえたちも 王にカンオケをもらってきたのか。

   だが おそかったな! こいつは オレのエモノだ。ひっこんでいろ!

 * よけいなお世話かもしれないが ひとこといっておくよ。魔王は 強いぜ。

   あんたたち そんな剣にたよっているようじゃ まだまだってことだ。

 * あんたたちの命が無事だったら また 会うときもあるかもな。

   あばよ。 

 

 痺れるような風格を醸し出している。している、のだが。……弱い、のだ。

 

 まず、あれだけ大見得きって主人公たちに豪語したものの、最終的には力を求めるあまりに魔物の支配を受け入れて、主人公たちに倒されるという落ちぶれっぷりを発揮する。

 イベントを経て仲間になるのだが、シナリオ中で強者扱いされていたのにも関わらず、覚えている特技や職業は他の仲間に劣る。順当に進んでいればレベルだって10以上差が付いているだろう。そして、覚えている特技は全て職業システムのもので、自力で覚えられる特技は一つもない。

 テリーを仲間にすることが切欠で仲間になるバトルレックスのドランゴが、テリーを余裕でぶち抜きメインパーティー入り可能レベルで強い。

 テリーはそのバトルレックスを一人で打ち倒しているのだが……。

 ちなみにドランゴとの戦闘では専用ムービーが流れ、演出にも愛されていた。ただし、ムービーではライデイン、ドラゴン斬り、イオラ(のような攻撃)を使うのだが、蓋を開けてみればそれらを一切覚えていない。

 これらから八百長試合だのと比喩され、テリーさんマジテリー伝説に拍車をかけることになる。

 最終ステータスが後衛回復キャラのチャモロよりも弱い。優っているのは力とかっこよさの二つだけ。そのチャモロですら装備のゲントの杖が本体扱いされるのだから、現実は非常である。

 

 誰が言ったか、プレイヤーの間で付けられたあだ名はドランゴ引換券。

 

 あだ名と言えば、ゲーム中でもバトルレックスとの戦闘で二つ名が付けられ戦闘っぷりを称えられることになる。

 ……青い閃光、だ。

 聞いてる俺が恥ずかしくなる。短剣符とかつけたくなってしまう……これ以上はいけない、やめだやめだ二つ名について考えるの。

 

 散々言ったがテリーは好きなキャラだった。ただの二枚目最強キャラではなくて、愛嬌を感じる隙があるのが人間らしいというか。強さのみを良しとする理由になった悲劇は、ゲームをプレイしていてコントローラーを握る手を強くさせられた。

 シナリオでの出番に恵まれただけに、弱キャラなのが尚更物悲しい。

 

 そんなテリーに in 俺だ。

 俺の実力は俺が一番知っている、前世では戦闘なんて一度もしたことがない。仮に俺が原作テリーと同じ年になったとしても、何もできずにボコボコにされる自信がある。

 つまり、相当ヤバい。

 

 何故ならDQ11というゲーム、勇者が魔王に敗北する。

 

 世界には異変が起こり、滅亡への片道切符を切ることになる。大地は荒れ果て、絶える事のない戦火で地は焦げ付き、沢山の人が犠牲になり、魔王の影響によって凶暴化した魔物が蔓延る。

 そこからの大逆転は本当に胸が熱くなったが、いざ自分がそこで生きるとなると話は変わる。

 

 強くなる必要がある。そんな決意も程々に、だけど。

 DQ6でテリーは”強さ”に固執した結果魔物の手先になってしまった。強さのみを求めることになんとなく嫌なフラグを感じてしまう。俺の現状にも近しいものがあって……人間何事もバランスが大事だろう、うん。深く頷いた。

 

 水でふやけて程よい硬さになった干し肉を噛み締める。

 

 この小屋にたどり着いた頃は明日の生活すら危うい状況だった。

 グゥグゥと俺を責め立てる腹をどうにか誤魔化しながら、思い出した記憶とユグノア壊滅によりささくれだった心の折り合いをつけるために膝を抱える毎日。

 それが今や未来の話をする余裕があるのだから、人生何があるかわからないというか、感謝の気持ちで一杯というか。

 転機は、小屋に辿り着いてから5日後の夜に訪れた。

 

 ――干し肉の欠片を飲み込む。美味しかった。

 

「っし! ごちそうさま!」

 

 両手を合わせて大きな声で言い放つ。朝食も終わり、次は訓練の時間である。

 気合も活力も十分、新鮮な空気を全身に取り込むように大きく伸びをすれば、筋肉痛による心地よい鈍痛が全身に広がった。

 椅子から立ち上がり、ベッド脇に立てかけられたひのきの棒を握り締める。

 

 勢い良く扉を開けた。

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