美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい!   作:紅葉煉瓦

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#136 12月のミーティング

「うわ、バズってる……」

 

 定期ミーティングで本社へとやってきたわたしは、会議室で九条さんを待っている間に昨日出来なかったエゴサと切り抜き動画の巡回をしていた。

 というのもコラボ明けの昨日は寝不足や疲労から日中はずっと寝ていて、夜は夜で月末に纏めなきゃいけない提出物を用意していて忙しかったのだ。

 

 そんなわけでロクにコラボの反響を追えていない一日遅れの今日。

 待ち合わせ時間に余裕を持ってやってきたわたしは、空き時間を利用してコラボの反応を見て回ることにした。

 まずは黒猫燦専門の切り抜きチャンネルやあるてま全般を切り抜いているチャンネル、次にTwitterに上がっている感想や切り抜き。果ては企業所属のVTuberは見ないほうが良いとされているまとめサイト。

 色々なサイトで巡回を終えたわたしが出した結論は、最初に言った通り「バズっている」だった。

 

 切り抜き動画は全編をぎゅぎゅっと圧縮したまとめ動画や、黒猫燦のリアクションだけをまとめた動画、中には質問ごとに動画を全部別けて露骨に再生回数を稼いでいるチャンネルなど多種多様にアップロードされている。

 特に再生回数は多いものだとアップロードされてから一日足らずで三十万を超えているものもあって、コメントも盛んだった。

 

 個人の感想では黒猫燦と天猫にゃんの相性の良さについて言及されていたり、今まで企業VTuberしか見ていなかった人たちが個人VTuberのポテンシャルの高さについて再評価をしているようだった。

 これをキッカケにTwitterでは個人VTuberのアピール合戦も行われていて、一過性のものだとは思うが中々に界隈は混沌としている。まあアピールの機会が訪れるというのは良いものだ。

 

 反面、まとめサイトの負の面として黒猫燦は結局リアクションしているだけと言われたり、天猫にゃんが配信を回しているだけで黒猫燦は呼び込みくんと言われたり、個人VTuberが企業VTuberの配信で出しゃばり過ぎと叩いている人もいた。

 好き勝手言われて何も思わない訳では無いが、とはいえアンチコメントが多いということはそれだけ反響が大きかったという証拠だろう。人が居なければ話題にもならないというやつである。

 

 この結果を見て思うのは、やっぱり自分が司会進行をしていればここまで切り抜きが盛んになることはなかっただろうし、そうなればここまで天猫にゃんや個人VTuberが注目されることもなかっただろうということだ。

 やはり配信を盛り上げるためにドッキリという手段で司会と回答者の立場を逆転させた天猫にゃんの機転は結果的に見事と言わざるを得ない。

 もしかしたら彼女自身、質問企画で天猫にゃんのことを少しでも知ってもらうよりも、ドッキリで天猫にゃんという存在をより深くリスナーに刻み込もうと意図していた節もある。

 反省会で天猫にゃんが代わりに目立たなくなってしまったのではと危惧していたが、バズってしまえば目立つ目立たないに関係なく話題になるのだから余計な気遣いだったのだろう。

 

 そんなこんなでひとしきり天猫にゃんとのコラボの顛末を調べ尽くしたわたしは、会議室の扉がノックされる音で意識を現実へと戻した。

 どうやらわたしが没頭しているうちに約束の時間になっていたようだ。

 

「お待たせして申し訳ありません」

「あ、いえ。早めに来たのはこっちなんで」

 

 向こうも時間通りに仕事をしているのに、勝手に早く来たわたしのために他の仕事を切り上げてミーティングをしろというのはワガママだろう。というかコラボのアレコレを調べるために早めに来たのだから、むしろ時間通りで助かった。

 九条さんは相変わらず見ているこっちが惚れ惚れするようなテキパキとした動きで机に資料を広げると、早速先月の反省会、そして今月のスケジュールと事細かに分かりやすく説明してくれた。

 

「先日も説明した通り黒猫燦は炎上の件もあるので年末の大型企画は欠席となります。箱内で完結する企画なら問題はないですが、年末の企画は他事務所も参加するものなので自粛という形です」

「はい……」

 

 案件や他の事務所と絡んでいくのは少なくとも来年からの出来事になりそうだ。

 

「とはいえ黒音さんは一応受験生ですので、ある程度は活動を縮小する必要がありますからむしろ渡りに船と思いましょう」

 

 真面目で冗談が通じない九条さんに一応受験生と言われるわたしは、端から見れば全然受験生らしくないということだろうか。

 リスナーもわたしが本当に受験生か疑っている人が大半だし、残りの信じている人たちも受験に落ちるとかニートになるとか思ってるやつばっかりだからな……。

 ここで見返せるぐらいわたしの受験勉強の成果が発揮できれば話は別なのだが、生憎と世界に向かって知力を披露するほどの自信はまだない。

 どうやらこれから先も黒音今宵の半信半疑限界ギリギリ受験生活は続くようだ……。

 

 それから、クリスマス前後の予定を聞かれたり来年やりたいことを聞かれたりして、

 

「──以上になりますね。黒音さんからは何かありますか?」

 

 来た! 質問タイムだ!

 実は今日のミーティングに際して、わたしは一つだけ質問を投げようと思っていた。

 というのも、コラボ相手を探そうにも親交があって誘えそうな相手は既に予定が詰まっているので、マネージャー権限を使って箱内の暇そうな人を炙り出そうと考えたのだ。

 マネージャーなら他のライバーのスケジュールを共有できるだろうし、何なら九条さんなら全員分のスケジュール把握してそうだしね。

 

「あ、あの、直近で暇そうなライバーっていますか!?」

「暇そう、ですか……」

「あ、いや、ちがくて」

 

 そんな他の人たちはお前みたいに年がら年中暇じゃないんだよって胡乱な目で見ないで!

 しかしそこは察しの良い九条さんである。

 

「コラボ相手を探しているのでしたらそうですね……」

 

 すぐにわたしの意図を理解すると手元のタブレットを操作して、

 

「十六夜さんなら明日明後日とフリーですが」

「あ、それ以外で」

 

 コラボ相手を探しているわたしにも選り好みをする権利はあると思うんだ。

 

「神々廻さん……はコラボをするにはまだ早いですね」

「まあ、はい」

 

 巻き込まれた立場とはいえ、あんなことがあったから少し距離を置いたほうがいいだろう。

 

「箱庭さんはいつもの行方不明、ヴェンデットさんもいつも通り音信不通、園崎さんは12月は毎日残業でデスマーチ……」

 

 この事務所大丈夫???

 

「となると後は我王さんしか空いてませんね」

「我王、かぁ……」

「はい、我王さんです」

 

 我王神太刀、何気にわたしの二番目のコラボ相手でその時の配信は今回と同じく特訓を目的としたものだった。

 それ以降も度々絡みはあるものの、最近は人が増えてお互い男女ということもあってそこまで表立った絡みのない相手である。

 何より本人の癖が強すぎるので一度絡むだけでお腹いっぱいになるから、出来れば十六夜とは別の意味で遠慮したい相手である。

 でもなぁ、個人的な感情を抜きにすればコラボ相手としてはこれ以上不足ない相手でもあるんだよな……。

 

「えーっと、いつ空いてる感じですか?」

 

 明日とかなら都合が合わないということでお断りしよう。

 

「来週いっぱいはどこでも空いてますね」

「ぅ、うーん」

 

 これは断ろうにも断れない雰囲気。

 いや、別に本人に話は言ってないんだから内々で終わらせればいい話なんだけど、我王しか空いてない上にスケジュールまで聞いちゃったら退くに退けないでしょこれ……。

 

「はぁ……、じゃあ、我王で」

「……黒音さんが気乗りしないようでしたら先程の会話は聞かなかったことにしますが」

 

 うっ、その優しさについ甘えてしまいそうになる。

 でも、

 

「自分から聞いておいて個人的な感情で無かったことにするのはなんか気持ち悪いんで……。苦手なことも挑戦するのが企業VTuberってやつかなって思うし」

 

 それに我王個人に対して苦手意識がある訳ではない。

 疲れるから嫌だなぁ、ぐらいの気持ちだ。

 九条さんはわたしの言葉に小さく笑みを浮かべると、

 

「わかりました。では私の方から我王さんの担当マネージャーの方に連絡をしておきます。打ち合わせの時間についてはまた決まり次第黒音さんに連絡致します」

「よろしくお願いします」

 

 そんなわけで、我王とのコラボが決まった。

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