美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい! 作:紅葉煉瓦
「うーっす。じゃやるわ」
..うーっす
..やるわよ
..うすうす
..よろたの~
「えー、なんか今日は俺がいつもやってる
..旭くんのバテ楽しみー
..案件感謝~
..前に案件で紹介してからバーテックスハマってるね!
「本来なら相葉先輩とやる予定だったんだけど、なんか幼馴染に刺されたとかで今日は来れなくなったから代わりの人呼んでみた。ってことで自己紹介どぞーぅ」
「こ、こんばんにゃー。あるてま二期生の黒猫燦です。なんか呼ばれたから来てみました。相葉京介はそろそろ身辺整理したほうが良いと思う」
..こんばんにゃー
..京介くん;;
..いつか刺されると思ってました
..このあと死んじゃったんだよね…
..※風邪でダウンしてるだけです
..ハーレムキングってやっぱり裸でいる時間長いから風邪引きやすいのかな
この場にいれば速攻でツッコミを入れる本人も、今頃は夢の中なので言いたい放題である。
まあ、たとえ心配して配信を見ていたとしても、病欠した負い目からこのくらいの弄りは甘んじて受け入れそうな気がする。
「プレイする前にリスナーには言っておくけど、私はFPSに関してはドが付くくらい下手だから変なプレイしても怒らないでね。フリじゃないから!」
「相葉先輩のプロ級のプレイに期待してた人は今のうちに回れ右してくれ。今日はあくまで新モードの紹介ってことでゆるくやっから」
..はーい
..ド下手って認めるだけ成長したね黒猫さん
..前にFPSやったとき台パンひどかったからな…主に黒猫の手が腫れ上がるって意味で
..今日はまたーり案件了解
さすがは旭くんの配信だ。
うちの如何に黒猫燦をいじめるかに命を賭けているリスナーと違って配信者の言葉に聴き分けが良い。これが自枠だったら「甘えるな」とか「コーチング配信しよう」とか言うやつで溢れていただろう。
急な出演者交代にも好意的なリスナーに安心しながら、わたしは今日プレイするゲームに意識を移した。
Vertex Legendsは最近流行りのFPSゲームだ。
小隊を組みポイントを奪い合う陣地取りや爆弾解除をする従来のFPSとは違い、Vertexは3人1組のチームで広大なフィールドを駆けながら60チームのチャンピオンを目指すサバイバル型のFPSだ。
PCゲームやスマートフォンの普及で増えつつあったサバイバルFPSの中でも、Vertexはその高クオリティのグラフィックとスキルを組み合わせたアクション要素でカジュアルなゲーマーからも人気を博している。
今やプロのストリーマーのみならず、VTuberにも人気のタイトルで多くの配信者が毎日このゲームをプレイしてる。
あと、配信者同士が裏で遊ぶコミュニケーションツール? みたいな側面もあるらしい。実際、相葉京介などはこのゲームをキッカケに箱外のVTuberやストリーマーとも交流しているらしい。
「えっと、まずは待機画面でDUOのチェックを押して、それからReadyを押して……」
..黒猫さんの画面ないから分かんないけどめっちゃ覚束なさそう
..カーソルがぐるぐる迷ってるのが目に浮かぶ浮かぶ
..がんばれー
..旭くん教えてあげてw
「あー、はい。問題ないっす。それでマッチするの待ってください」
「よ、よし。やるぞやるぞ、やってやるぞー」
何度も言うように、わたしはFPSが苦手である。特にこのVertexはことさら苦手な部類だ。
まず広大なフィールドを駆けながらスキルを組み合わせたアクション要素、これがネックだね。
従来のFPSに比べてもアクション要素が強すぎるせいでぴょんぴょん跳ね回るから銃の照準が定まらないし、HPが他のゲームに比べて多めに設定されているせいでせっかく弾を当ててもすぐに避けられて反撃で負けてしまう。
しかも時間経過でリスポーンするFPSとは違い、Vertexは味方に復活させてもらうまでは観戦モードに移行するせいで暇な時間が発生する。いわゆる初動落ちをすればそれ以降の試合はすべて観戦なんてこともザラにある。
これが友達と一緒に遊んでるならワチャワチャしながら観戦モードでもお喋り出来るから楽しいんだろうけど、やる相手のいないぼっちからすればひたすら無言の時間は虚無なんてもんじゃない。
このゲームで友達を作るために、ある程度迷惑をかけないくらい上手になろうとして、そのたびに挫折してアンインストールするわたしの気持ちがリスナーに分かるか?
……コミュ力のある人はそもそもゲームで迷惑云々とか考えずにまずは誘う? それはそう。だからわたしのゲームはいつもぼっちなんだなぁ……。
そんなことを考えているうちに試合がマッチした。
キャラクター選択画面へと移行して、わたしは足の遅そうなずんぐりむっくりしたキャラクターを選択する。可愛げの欠片もない、普段のわたしなら選ばないようなキャラクターだ。
しかし今日は案件ということもあって、まずは死なないことを第一優先にした結果、耐久力に優れたキャラクターを使おうということでこの選択になった。
機動力のなさそうなわたしの代わりに、旭くんは細身の女性キャラクターを選択する。
海外ゲーム特有の無駄に
「案件っつても普通にプレイして良いって言われてっから、まあプレイはいつも通りでやるわ。説明とかは最後にまとめてやるから視聴者は最後まで見てくれよな」
「あ!!! 船から降りちゃった!!!」
「は?」
..www
..早速ww
..まだ旭くんが喋ってる途中なのにw
..はい1ぽか
..旭くんの「は?」いただきましたー!
試合が始まるとまずプレイキャラクターはバトルシップに乗せられてフィールド上空を横断する。
そして横断中に好きなタイミングで船から降りることで、自分のお気に入りの落下地点へ着地することが出来るのだが……、降りるタイミングを決めるジャンプマスター機能を旭くんに譲渡しようとしたら、間違えてその場で降りてしまった。いわゆる直下降りとか即降りと呼ばれる、野良なら
なぜ直下降りが嫌われるのかというと、開始早々真下に降りるとこのゲームの特性上絶対にファイトが発生するからだ。
それはファイト練習がしたい人や、カジュアルに遊びたい人や、真下に命を賭けている人が集うから当然の結果であり、その集団の中で生き残るのはプロでもなかなか至難の業と言われている。だって、複数チームが入り乱れるせいで横から急に撃たれるとか当たり前にあるからね。
まあ、そんなわけで直下降りをすると初動ファイトが絶対に起きるんだけど……、何度も言うようにわたしはFPSが苦手である。そしてVertexは特に苦手だ。
そんなわたしが初動ファイトをしようものなら五秒と持たずに死ねる。
そしてこれは案件である。どこの世界に案件で新モードを紹介するはずが、初動ファイトを仕掛けて即落ちする案件があるんだろうか。
「曲げろ曲げろ曲げろ! 極力遠目の場所に着地しろ!」
「曲がらない曲がらない曲がらない! ちょ、これ操作むずっ! か、カメラがぐるぐるするっ! 酔う!」
「だぁあああ! 真下に加速すんなぁ!?」
『やってやろうぜぇ』『問題ないわ』
「問題しかねぇよ! しかも物資がねぇ! ちょ、先輩! 敵来てる敵!」
..ww
..キャラボイスにキレるなw
..黒猫戦場のど真ん中でぼったちで草
..旭くん逃げてww
着地と同時に旭くんの操作するキャラクターが敵のいない方向へスライディングを織り交ぜながらダッシュする。え、わたしそんなテクニックできないんですけど。
とりあえず辺りを見渡そうとマウスを左右に振ろうとするが、そうしている間にガガガッという発砲音と共にHPゲージが大きく削られた。
「走れ! んでスキル! シールド出るから眼の前に展開して、物陰に隠れろ!」
「えぇぇ!? ちょ、要求多い! いきなり無理!」
「とりあえず走れぇええええ!」
叫び声も虚しく、次の瞬間にはわたしは死んでいた。
画面が赤く染まり、気がつけば旭くんが操作する視点へと移動する。
しかし味方を欠いた状態では旭くんも長くは持たず、乱戦に巻き込まれる形で早々にHPを削られてゲームオーバーとなった。
「………」
「………」
..gg
..どんまい!
..ないふぁい?
..面白かったよw
..※案件です
「えー、っと。ご、ごめんね」
「いや、大丈夫っす。俺も叫び過ぎたんで。……とりあえず次からはちゃんと確認してからキー押してください」
「はい……」
手持ち無沙汰だからって適当にマウスをクリックしたりキーボード押すのはやめようと決意した瞬間である。