美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい!   作:紅葉煉瓦

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#166 【Vertex】このプロモーションは配信を含みます【旭/黒猫燦】③

 そんなこんなで、続けて3戦、4戦とやってみるが結果はどれも同じ。

 なんとか最初の戦闘で勝つことは出来ても、消耗したところに漁夫がやって来て対応が出来ずに負けている。これが実力者同士で組んでいれば話は別なんだろうけど、わたしという足手まといがいるせいで漁夫を返せていないのは明らかだ。

 流石に三連続で同じような負け方をしてしまうと案件配信として少々気まずくなってくる。チャット欄を見ればリスナーも「もしかしてこの新モード、なかなかアレなんじゃないか?」と薄々感じ始めている様子だ。

 そして5戦目の準備をしながら、とうとう旭くんが口を開いた。

 

「Vertexの新モード『DUO』は現代人が抱えるストレスに耐性を作ってくれる! 初動ファイト! クソ物資! 漁夫! これらを連続して体験すれば実生活のストレスにだって耐えれちまうんだ!」

「わ、わーすごーい」

「そんなVertex Legendsは目の前のPC設定ボタンのアプリからアンインストールが出来るぞ! 君も今すぐこんなゲームはゴミ箱に放り込もう!」

「ちょっと待てぇ! 流石にアウトぉ!」

「はっ、夢見てたわ。変な電波受信して寝言言ってたからアルミホイル巻くか」

「その言い訳は無理がある……!」

 

 ゆるい雰囲気とはいえこれは案件である。

 案件先のゲームをアンインストールしようとかゴミ箱へポイとか言うのは流石にライン超えが過ぎる。

 しかし、

 

.

..まあVertexだからなぁ…

..Vertexの楽しみ方を教えるぜ!アンインストールしてその容量で別ゲーをインストール!以上だ!

..このゲームの案件してる人最後は全員微妙そうな顔するの草なんだが

..面白いゲームなんだけど問題も多いんだよね…

..チーの者とゴースティングに遭遇してないだけマシよ。アイツら案件でも湧いてくるから

 

 ……このゲームの世間からの評判はよく理解できた。

 とはいえ、いくらリスナーがそう思っていたとしても、わたしたちは企業所属の配信者なので不用意な発言は控えるべきである。

 早々に話題を変えるべきだろう。

 

「あー、そろそろ終わる時間だよね。あと一戦くらいかな? 次こそチャンピオン取りたいね」

 

 基本的に案件配信は一時間から二時間くらいで行われる。

 通常配信なら朝までかかっても勝つまでやる! なんてことが出来るけど、いちおうお仕事としてやっている案件は時間が決められているのだ。ほら、取引先の人がチェックのために配信見てるからいつまでも拘束させるわけにもいかないし……。

 

「やっぱ勝って終わりてぇー。ってか30チームいるせいで上位に食い込むのもキツイな……」

「1チームの人数が減って戦闘は楽になっても敵の数は増えてるもんね……。戦闘してもまた戦闘ってシーンが多いね」

「……これチャンピオン取るだけなら戦闘避けながら終盤で漁夫すんのが一番楽か」

「げ、ゲーム性の否定……」

 

.

..でも実際それが正解

..勝つだけならそれでいいけどカジュアルモードでやることか感がな

..楽しければOKよ!

..勝つから楽しいんだよなぁ…

 

 そしてやって来た五戦目。落下地点はマップの端ではなく中心から少し逸れた場所だった。

 戦闘を避けて物資の少ないところへ降りるよりも多少のリスクを取ってでも物資を潤沢にして、早々に安置内へ入って拠点を固める作戦だ。

 ……それはそれとして、流石に一時間もマウスとキーボードでゲームをやると指が痛くなってきた。特にこういうアクション性が求められるゲームは普段使わない筋を何度も伸ばすせいで、こう、ピキッと来るね。

 

「先輩、そろそろ敵が来るかもなんでここまで移動してください。俺先行くんで」

「あ、うん」

 

 マップを確認すれば次の安置はわたしたちが着地した建物の近くだった。

 機動力のある旭くんに先導してもらいながら移動を開始する。先ほどまでとは違い、ここは激戦区なので付かず離れずの距離ではなく、偵察してもらう必要があるのだ。

 

「あの二階建ての建物入りたいっすね、周りの射線いい感じに切れるんで。でも一階に敵いるんで強引に取りに行くしかないか……」

「他の建物は?」

「別のチームが入ってる割に獲っても弱いか、モタモタしてるうちに漁夫られて終わるとこしかない。唯一取れて強いのがあれなんで」

 

.

..ファイトかぁ

..取れたら強い。でも負けたら終わり。むずいね

..どっちにしろどっか建物取れないと後ろから来るのに撃たれて終わりだよ

..建物側の影のほうが強くない?そこ真上以外射線切れるはず

..迷ってる時間がもったいない。今なら向こうの警戒も薄いからドームで詰めれる

..ポータルとドームでやれ。外は空爆撃って牽制しろ

 

「中入ったら目の前にドーム投げてもらっていいっすか。俺が二人落とすんで先輩は後ろから投げ物とか援護してもらう感じで」

「あ、うん。私が前じゃなくていいの? ほら、見るからにタンクキャラだし」

「ぁー、大丈夫っす」

 

 前衛しても役に立たなさそーとか思っただろ。そのとおりだよ。

 軽く打ち合わせをしてから目的の建物に近づく。幸い他チームから狙われることもなく扉の前に張り付くことが出来た。

 

「相手まだ気づいてないんで、扉開けたらすぐドームで」

「了解」

 

 旭くんが扉を開いて中に押し入る。

 わたしはすぐにスキルが割り振られているキーを押してドームと呼ばれる半球状の無敵フィールドを展開した。展開位置はプレイヤーの操作によって決まるのだが、今回は旭くんが望んだ場所に展開することが出来た。

 

「俺手前の敵まず狙うから!」

「は、はい!」

「そこ弾ドームに弾かれるから投げ物奥に向かって適当に投げて!」

「投げた!」

「手前割った! 奥の敵注意! 手前やった! ドーム切れるから奥撃って!」

「あわ、あわわわわ」

 

.

..黒猫さんがんばれー

..めっちゃあわあわしてて草

..ちゃんとサポートできてるよ!

..なにが起きてるかわからないけど旭くんすごい!

..漁夫警戒してね

 

 言われるがまま、必死に旭くんの要望に答えるようにキーとマウスを押し続ける。

 そして、

 

「全員やった! 回復巻くから外見て! 漁夫注意してね!」

「敵いない! 大丈夫!」

 

 今回は漁夫に襲われずにいいポジションをキープできた。

 

.

..ないすぅ!

..いいよぉ!つよいよぉ!

..時間かかり過ぎ後ろからもっと援護したほうがいい

..今日もコメデター多いですと

 

 これで一安心、そう思ったのも束の間。

 

「やべ、上から敵来てる! ドームあと何秒!?」

「な、七秒!」

「じゃあこのままファイトするファイト! 全員やっちゃうよ俺! 先輩は援護!」

 

.

..旭くんシールドないよ!

..回復中に敵来ちゃったか~

..ウルトとスキルあるから逃げれるだろ

..もう安置から敵来るから今更外出ても遅い。黒猫見捨てて逃げても1欠けならどっちにしろキツイ

..ここは漁夫弾きやすいポジと遮蔽だから全然ワンチャンあるよ

 

 階段から次の敵がやって来る。どうやら外からよじ登って二階へ入り、戦闘が終わるのを待っていたようだ。

 旭くんが懸命に遮蔽と回避を織り交ぜながら応戦するが、先の戦闘で削られた耐久を回復出来なかったせいでそのままダウンしてしまった。

 そして敵のフォーカスがわたしへと向く。

 

「どっちもマジで肉! 先輩でも勝てる! 最速で足元ドーム炊いて壁から出たり入ったり横移動しながら適当に撃って!」

「で、出たり入ったり? こ、こう?」

 

 言われた通り、そして以前見た配信の記憶を頼りに見様見真似でドームファイトをする。

 これ、WASDのキーを小まめに切り替えるせいでめっちゃ指キツイぞ! 旭くんってこんな指に負荷掛かることずっとやってんの!?

 

「当たんない当たんない! このキャラデカすぎ! めっちゃ敵の弾当たる!」

「デブぅ! ちゃんと狙えぇ!」

「適当って言ったじゃん!」

「キャラに言ってんだよ! 先輩の操作についてこいデブ!」

「そうだそうだ! キャラがわたしに従え!」

 

.

..www

..旭くん視点だから黒猫さんが変なステップしてるようにしか見えないww

..なんか天井撃ってんだけどw

..ちゃんと狙えww

 

 くっ、このっ。照準を合わせても向こうも同じようにドームの壁を行き来するからことごとく回避されてしまう。なんだこの狭い通路で右に避けたら向こうも右に避けるみたいな状態! いやこの場合逆か!?

 

「もう身体ごと擦り付けるようにして突っ込め! マジでミリだから、カス当たりでも終わるって!」

「えぇい! ぱーんち!」

「格闘しろって意味じゃねぇよ!?」

 

 しかしこの格闘が功を奏して敵を一体撃破した。

 

「うおおぉ! そのまま殺せ殺せぇえ!!」

「キーック!」

「キックはねぇよ!」

 

 向こうもまさか突っ込んできて格闘ボタンを押してくるとは思わなかったのか、動揺しているうちに隣の敵にも続けて二撃目を叩き込む。

 どうやら本当に瀕死だったようでわたしのパンチ二発で相手チームは全滅してしまった。足元に転がるのはわたしが撲殺した敵のデスボックスが二つ。

 

.

..うおおおおおおお

..デストロイ!デストロイ!

..っぱ最後は拳なんだよなぁ!

..敵は全部拳で破壊にゃ!

..弾は当たらないが拳は当たる。そして敵は死ぬ

 

「ナイス! マジでナイス! 漁夫返したのデカい! とりあえずアーマー着替えて蘇生して!」

「あーまーを着替える……?」

「デスボックスから新品のやつに交換しろって意味!」

「ああ!」

 

 慌てて足元のデスボックスを開く。

 そしてキーをシールドアーマーのところに合わせて、わたしの空っぽのアーマーと交換を、

 

 ──ぱしゅっ

 

「あ」

「は?」

 

 一瞬の出来事だった。

 開けっ放しの扉から新しい敵がやって来て、彼らが放った弾丸一発でわたしのキャラクターが死んでしまった。画面にはゲームオーバーの文字。

 

「ぎょ、漁夫の漁夫ぅううう!!!」

「わたしの初勝利がぁああ!!」

 

.

..wwww

..どんまいwww

..惜しかったねー

..gg

..良いパンチだったぞ!

..三連戦は流石にえぐいてー

 

「はぁ……。まあ、最後は漁夫に勝って先輩も初キル取れたから、配信的にはよかったんじゃね? しらねーけど」

「チャンピオン取れたら最高だったけどそう上手くいかないよね……。最後はちゃんと漁夫に勝てたから雪辱を果たせたってことで」

 

.

..漁夫に勝ったらまた漁夫来ただけなんだよなぁ…

..こうやって業は廻るんやなって

..漁夫ゲー了解

..このゲームの本質ではあるけどいいのかこれで

..初キルおめ!

 

 うぅ、それにしても指が痛い……。

 最後はメチャクチャにキーを連打していたから、爪の先までじんじんしている。毎日FPSをやっている人は尊敬するよ本当に。

 とはいえこれである程度配信的には満足する形となった。あとは旭くんがいい感じに締めて終わりだ。

 

「ぇーっと。Vertex LegendsのDUOモードは新感覚! 今まではあとちょっとで倒しきれなかった敵も二人だから倒しきれる! そして味方も二人だからこそ連携が取りやすくて初心者にも安心! 上手い人はソロでチャレンジだって可能!」

「たしかに、これが三人モードなら最後のファイトとか一瞬で溶かされてパンチも出来なかったねー」

「気になった人は概要欄から今すぐチェック! さっきゴミ箱へ放り込んだ人も、もう一度ダウンロードだ!」

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