カジュアルに殺される   作:くろはすみ

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 かくして、遂に夜になった。東風谷早苗です、から十分程で時間稼ぎは破られ、魔法陣で塞がれていた代わりの口が体中からばかばかと開いた。そこから夜に至るまでの壮絶な戦いの引き伸ばしは面倒なのでいちいち描写しない。一番厄介なのは、三匹同時に逃さないようにする立ち回りだった。二人だからまだなんとかなっているが、どちらか一人でも居なかったらまず間違いなく辺りに被害を撒き散らす結果になっていた。レミリアは早苗から血を少し貰いながら戦うというあんまり過ぎる戦法を取って尚、右腕を再生させるのが億劫という、底辺すれすれの不死力をなんとか維持している状態だった。早苗はとにかく貧血と眠気との戦いで、疲れたし意識が飛びそうだった。ちょっと触手に撫でられたら爆散するような憐れな耐久力しか持たない種族がこの集中力で戦っているので、レミリアの被弾も増えるという悪循環だった。

 

 その地獄の様な時間もいよいよ終わる。日が沈み切り、もう良いぞとレミリアが叫ぶと早苗は一際大きな旋風を起こし、烏賊共を遥か上空まで吹き飛ばした。早苗からは、直ぐに烏賊共の高度まで追いついたレミリアが無数の鎖を放射状に射出したのが見えた。早苗は「結ばれた紙」を吹雪と見紛う様な量でもって、烏賊に向かって撃ち込んだ。烏賊共は、そんな事が出来るなら最初からやっとけよと思うが、二十体程に小さく分裂してレミリアに群がった。

 

「なぁっ!?」

 

 直ぐに食い尽くされて生首を残すのみとなったレミリアに、早苗は呻いた。口が増えた件といい、どんどん新しくなっている。肝心のレミリアに能力発動の力が残ってなければ彼女は死ぬ。ここまでやっておいて下らない犠牲の下に勝利などという結果に終われば早苗の今後に暗い影が落ちる事は間違いない。しかし、早苗の心配を他所に、彼女は唯只管不敵だった。無数にまで分かれた烏賊達は突如、全てひしゃげた。

 

「勘弁してほしい。そりゃ、私は泥仕合の方が得手だがね。運命の見えない相手とはあまり戦いたくない。我が妹の真似事をして諸君らに使ったのは単純な存在の拒絶だ。致命的破壊。どんな相手にでも覿面の効果を発揮する筈なのだが、私の矮小な魔力量と諸君らの異質さを加味して、これだけでは不十分な事は理解している。守矢のがアホみたいに投げまくってるのが何なのかはまったく知らん。一つ言えるのはこういった場合、私は操りたい相手以外の全てを操って結果を思い通りにする手法を使うという事だ。演算型能力の最高峰故可能なゴリ押しと言えるな。ああくたびれた。案山子相手に労せず勝ちたいと、いつも願っているものだよ。ともあれ―

 

 運命『ミゼラブルフェイト』。怪物の代名詞の運命を決定した。諸君らの運命は―『大凶』だ」

 

 早苗が空を埋め尽くさんばかりに召還した、「結ばれた紙」はその全てが大凶を示し、空間を捻じ切るようにして距離感すらない黒共に、哀れな白達はかき消された。正常な人生の下を歩みたいのであれば決して一生の内一度でも聞くべきではない大きな、何かが歪み割れる音がすると星空だった。須臾を抜けるように当然に無事だったレミリアの生首が落ちてくるのを、早苗は出来うる限りの慈しみをもって優しく捕球した。少し遅れて血の雨が降って来て二人は濡れた。レミリアはにかりと笑った。

 

「やったな、守矢の」

 

「東風谷早苗ですっ。共に一つのヤマを越えて認め合い、やっと最後に私の名前を呼ぶっていう場面じゃないんですか、ここは!」

 

「ふふ、何の話か分からんな」

 

「もうっ」

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