青山はそもそも知らないし。
俺たちの担任―相澤先生はプロヒーローだ。その実力は高く、また見ただけで相手の個性を消すその類い稀な個性を生かせばどんな相手にもみすみすやられはしない。 かなり強者の部類に当たる。 しかし、それは誰にも負けない訳じゃない。
それは例えば、素の圧倒的なパワー。その前にはどんな搦め手ですらあまりにも脆いことを、他ならぬ平和の象徴が示している。
ベキッ、という音が聞こえた気がした。
「“個性”を消せる。 素敵だけどなんてことはないね。 圧倒的な力の前ではつまり、ただの“無個性”だもの」
「あれは…何者だ!?」
「分からねぇ……分からねぇけど、あまりに圧倒的だ」
相澤先生…大丈夫かな。
「危ういだろうな。 しかし今、この場から現れるのも危険だろう」
「……だな」
「ぐぁ…!!」
今度はしっかりと聞こえた呻き声。
そして先ほど、おそらく俺たちを飛ばした
「死柄木 弔」
「黒霧。 13号はやったのか」
どうやら全身に手を着けたヤツが死柄木、黒い靄が黒霧という名らしい。
「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして…」
一名、逃げられました。
つまり、誰かは先生方へ助けを求めに行くことができた訳か……。
黒霧というヤツの言葉に不機嫌になる死柄木。ソイツは顔をかきむしり始める。
「さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ、あーあ…」
「帰ろっか」
帰る。帰るってことは、これでもう大丈夫って事だね!
「そうらしいな」
「しかしコイツら……理解できないヤツだな」
「けどもその前に、平和の象徴としての矜恃を少しでも…」
へし折って帰ろう!
―――あれは、緑谷たちじゃねぇか!
死柄木が蛙吹の顔を五指で触れる。
「…………本っ当かっこいいぜ。 イレイザーヘッド」
その時、相澤先生が個性を発動していた。しかし大男が先生の頭を地面に押し込む。
「手っ…離せぇ!!」」
ガチか緑谷!?
すぐに急加速の準備をし、更に掌を合わせる。
「脳無」
「
土煙が晴れれば、見えたのは緑谷の腕を受け止める脳無と呼ばれた大男。
―――くっそヤベぇ!!
「…記田、何を!?」
「悪い!」
「やれ、脳無」
大男が腕を緑谷に向けていて――
―――
「…なんだお前」
「記田くん!?」
「ッ
辛うじて間に合った。
「このガキ、脳無の腕を止めやがった」
青の衝撃放出を白で逆転させた衝撃吸収。ギリ反動の無い5つ青を重ねるも、しかし殺しきれずに右腕に激痛が走る。だが立ち止まってはいられない。すぐに緑谷の手を引いて距離を取り、今の隙に手を離した死柄木から蛙吹が峰田と共に離れる。
「しかしどうやらダメージが無い訳ではなさそうです。どうしますか」
「決まってんだろ。 脳無、殺せ」
―――ヤベッ、またかよっ!
後方へ再度の
「…! 記田くん!」
「ッぐぁ!!」
一撃。幸い緑谷は巻き込まれなかったが、腹を殴られた衝撃が重すぎて気が付けば水中にいた。
―――…広場の噴水か…だいぶ、吹き飛ばされたな…。
◇◆◇◆
「俺たちは飛ばされてきた
「…その死柄木、黒霧、脳無ってのはどいつの事だ?」
「死柄木さんは全身に手を着けた人で、黒霧はお前らを飛ばしたヤツだ。脳無ってのは脳の出た大男で、オールマイトと同じくらいの力があるらしい。 どうだ全部言ったぞ! これで良いんだよな!?」
なるほどな…。
「…そうだな、それでいい」
「お、おい! 言ったら止めてくれるんじゃないのか!?」
「…その前にヒーローが来る。 そうなれば逮捕はされるが、きっと助かるさ」
土砂ゾーンの出口へ向かう。まずはセントラル広場へ行かないとな。
「このガキ、脳無の腕を止めやがった」
彼処に居るのが死柄木、黒霧、脳無か……脳無の腕を受け止めてるのは…記田か。
「しかしどうやらダメージが無い訳ではなさそうです。どうしますか」
「決まってんだろ。脳無、殺せ」
記田が緑谷と共に脳無から距離をとるが、脳無が一撃、二擊と攻撃を繰り返す。一撃は避けたが二擊目を避けられなかった記田は吹き飛ばされ、噴水へ落下していく。
「…! 記田くん!」
「ッぐぁ!!」
―――これは、記田が危ねぇな。
氷を放つ。その氷は噴水の直前まで来ていた脳無の右半身を凍らせ、突進の勢いを食い止める。
「緑谷。 どういう状況だ?」
「轟くん! 実は相澤先生が――」
「――なるほどな」
つまり誰かが先生を呼びに言ったから、その前に生徒を少しでも殺して雄英の名に傷をつけて帰ろうって魂胆か…。
「…何やってんだよ脳無。
「…っ!?」
脳無を凍らせてた氷が割れていく…。 だがそんなの自分の体を砕くだけだ、何をしようと…再生!? そういう個性か!
「緑谷! 記田を頼んだ。脳無とやらは俺が引き止めとく」
「ありがとう轟くん!」
緑谷が噴水に走って向かうと同時に、脳無の再生を待たずに氷を再度放つ。あんなのを待つ道理はない。 むしろオールマイトと同じくらいの力があるらしいヤツに自由を許すなんて愚策も良いところだ。
「何度も凍らされやがって…。 黒霧」
黒霧―先ほど俺たちを飛ばしたヤツだ、さしずめワープゲートってとこか。 そいつの靄が渦巻き始めたかと思えば、脳無が再び体の氷を無理に割り砕いて再生を始める。
そして死柄木が靄に腕を突っ込んだ直後、気配を感じ横に避けたと同時に死柄木の腕が現れる。
「ちっ…厄介なヤツだ」
しかしこれは面倒だな…。死柄木はおそらく手で触れる事で発動する“個性”だろう。ただそれ単体なら近づかなければ良い問題だが、黒霧ってワープゲートが厄介だ。 更に何より再生能力のある圧倒的パワーの脳無がいる。
その時緑谷が噴水の中から顔を出す。傍らには記田の姿があるが、あの様子だと気を失っていそうだ。
「…やれ」
急速に距離を詰めてくる脳無。途中氷結で少しでも勢いを殺そうとするも無理矢理に走り来る勢いを完全に止めることはできず――
―――切島っ!
「ッてぇな!! 大丈夫かよ轟!?」
「…あぁ悪い。 助かった」
「っ死ねぇ!!」
切島が脳無の前に出るのとほぼ同時に爆豪が死柄木、黒霧へ攻撃する。
「…また厄介なヤツが来たな」
「切島!」
脳無が追撃を仕掛ける前に切島の手を握り、脳無への攻撃を兼ねた氷結の勢いで大きく後退する。
「ナイス轟。 しかしなんだアイツ、めちゃくちゃ痛ぇな」
「脳無と呼ばれてた。 オールマイト並みのパワーすらあるらしい…一応勢いはだいぶ殺してたつもりなんだが、大丈夫か?」
「若干痛みはするが…まぁ大丈夫だ。 おかげでケガってほどじゃねぇよ」
「くそ、避けやがったか」
爆豪と切島のおかげで一応は助かったが、しかし結局手詰まりだな…。 あの脳無ってのが邪魔すぎる…。
「あー…本当に面倒だ。 次から次へと厄介な
頭をかきむしる死柄木。俺や爆豪らの登場に徐々に機嫌が悪くなっていたのだろう。
「死柄木 弔。どうしますか? 」
「そんなの決まってるだろ。 せめて平和の象徴の矜恃を折ってから帰るんだよ」
黒霧の言葉に、先ほどの言葉を再び返す。
―――…まだやるかよ。
その時だった。轟音と共に開くUSJ入り口。
「校長のお話を振りきるのに時間がかかってしまったが…」
来る途中で飯田少年に会って、何があったのかあらましは聞いたよ。
「もう大丈夫。 私が来た!」
「「オールマイトォォ!!!!!」」
そこに居たのは、不動のNo.1ヒーロー。平和の象徴、オールマイト。
「あーー、コンティニューだ…」
急加速にアクセルってルビ振った訳なんですけど、オリ主って今のところ何も必殺技的な見栄え要素ないなって思いまして。
……という作者的な都合は置いといて。
ほら、アクセルって踏み込むじゃないですか。 あ、そこら辺の感覚は別に人それぞれだと思います。
で、オリ主の用いる急加速ってのもまた踏み込む事をトリガーに発動する訳で。 まぁ後方に跳ぶなんて使い方も今回から登場してますが、それはいいんです。