Marker   作:ワワ

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タイトルから判るように、以前書いた閑話(準本編)の続きです。
ちょくちょく書いていきます。

普段より少し長いです。


閑話 仕事/Marker②

 

 『先日。国立雄英高校の敷地内に(ヴィラン)複数名が侵入、生徒らを襲撃するという事件が起こりました。

事件は教員であるプロヒーローのオールマイトらにより鎮圧。容疑者の多くが通報を受けた警察によって逮捕されましたが、主犯とみられる容疑者ら二名が逃亡しました。

事件当時。ヒーロー科1年A組の生徒らとプロヒーロー二名がその場に居合わせており、軽傷者は三名、重傷者が二名。死者は居ませんでした。

今回の襲撃事件について雄英高校側は――』

 

 「くだらねぇ。あれから何日経ってると思ってんだ、いつまでも同じニュースばっか流してんじゃねぇよ」

 

 「それだけ世間は雄英襲撃(俺たちのやったこと)に衝撃を受けてんのさ」

 

愉快そうに話す男―死柄木 弔。今のニュースで言及してた主犯二名の片方。

 

 「ですが死柄木 弔、それも勢いを失いつつあります。世間はプロヒーローの―平和の象徴(オールマイト)の健在を再確認してしまいました」

 

グラスを拭きながら死柄木へ話しかけるのは黒霧。主犯二名のもう片方。

 

 「やっぱオールマイトかよ、邪魔なヤツだなぁ」

 

 「平和の象徴ってのは伊達じゃねぇっつー事だろう。衰えたとはいうが世間はそれを知らねぇんだ、そりゃこうなるさ」

 

 「じゃあお前が世間に報せろよ、Marker。そうすりゃ良いんだろ?」

 

 「俺はオールマイトになんざ興味はねぇし、発信力はねぇ。俺はただ気にくわないヤツか仕事内容を殺すだけだ」

 

 「じゃあオールマイトを殺せ」

 

 「今は無理だ、条件が整ってなさすぎる」

 

“先生”や親父の言った通り、精鋭を集めるところからだ。

 

 「それを済ませてからなら、取れる手もあるさ」

 

死柄木が普段身に付けている“手”の1つを持つ。コイツは確か――

 

 「父さんに勝手に触んな」

 

死柄木が五指(・・)で俺の手首を掴んだ。崩壊が始まる。

 

 「あぁ、顔のか」

 

悪いな。俺には見分けつかねぇんだ。

 

崩壊は完全に俺の手首から先だけ(・・)を崩し、掴んでいた“手”がテーブルに落ちる。

 

 「お前。崩壊がろくに効かねぇからって調子乗るなよ」

 

 「あーぁ、また付け直しかよ。めんどくせぇからお前こそ一々崩してくるな、バラすぞ」

 

 「死柄木 弔、Marker。落ち着いてください」

 

これで構いませんか?

 

そう言って黒霧が俺に手を差し出した。俺はそれを受け取って無くなった手首に合わせて付け直す。

 

 「何度見ても便利な“個性”ですね」

 

 「付けたり外したりするだけだ、そんなに便利じゃねぇよ」

 

それより。

 

 「そろそろ時間だ。死柄木、俺はしばらく出てくるぞ。黒霧、頼む」

 

 「そのまま二度と戻ってくんな」

 

 「そうなったら困るのは俺じゃねぇ、お前だ」

 

俺とお前は主従じゃねぇ、対等だっての忘れんなよ。

 

 「Marker、行きましょう」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 「らっしゃーせー。何名様ですかー」

 

 「3人です」

 

 「じゃあこのまま真っ直ぐ行って突き当たり左側の席どーぞー」

 

 

明らかにやる気無さそうな店員が指示した席に座る。窓際かつ店内が見渡せる席だった。

俺が今居るのは全国展開するファミレスの系列店。ただこの店自体は何を思って場所を決めたのか、人通りの多くなく寂れた店だ。潰れてないのがビックリだぜ。

 

 「ッハァー……さて。わざわざすまないな、Marker」

 

 「気にすんなよ義爛。アンタは俺にとってはお得意様だからな」

 

 「それを言うならこっちこそだよ」

 

俺の斜め前に座り、煙草を吸っている男―義爛。“先生”や親父を除けば、たった二人しかいない俺の友人(・・)だ。同時に俺に依頼人を紹介してくれているお得意様でもある。

 

 

 「なぁ…アンタ……もしかしてあのバラバラ殺人の…Markerなのか…?」

 

パーカーを着、フードを被って顔を隠したヤツが口を開く。俺がそうだと答えると、ソイツは堰を切ったように捲し立てる。

 

 「なら! アンタに消してほしいヤツがいる! 俺はソイツに彼女を殺されたんだ―」

 

 「おいおい、お前落ち着けよ…」

 

義爛にアイコンタクトを送ると、義爛が席を立って近くに居たヤツらの下へ歩いていった。

彼の“個性”は混濁。頭に触れることで前後5分にわたり、記憶を朧気にするというものだ。この個性で目撃者の記憶を朧気にする事で、俺たちは安心して会合できる。

 

 「おい。今から幾つか質問するから、それについてだけを答えろよ。無駄なことは話すな」

 

 「あ、あぁ。 分かったよ…」

 

 「相手の名前。顔写真。容姿の特徴。個性。住所もしくはよく行く場所」

 

分かる限りで良い。

 

 「あ、あぁ。名前は――」

 

 

 

 「Marker、時間だぞ」

 

 「大丈夫だ、用は済んだ。後は頼む」

 

戻ってきた義爛に返事をして席を立つ。

 

 「金はいつも通りだ。この後はこっちも忙しいんで、電話は俺からかけるよ」

 

 「了解した」

 

それを最後に店を出る。

後に残されたのは依頼人に触れる義爛、そしてぼんやりとした様子の隻腕の依頼人。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

既に日は暮れるも街はネオンライト等で昼間以上に明るく、呼び込みや人々の声が織り成す街の喧騒もまた昼間以上に騒がしい。

その中、一人の男が背後を振り替えることもせず走っていた。

 

 

走っているその男、名を割田 分太という。顔はパッとしないし学生時代の成績もパッとしなかった。既に成人し、職にも就いてはいるが給料はよくない。中々上手くいかずにムシャクシャする日々を送っている。

しかし一月前のこと、男は宝くじで高額当選をした。それが生活に余裕をもたらし、男は酒を飲み歩く事を繰り返していた。ただ酒に酔ってその間の記憶をなくすことはしばしばあり、事件はそんなある夜に起こってしまった。

どうやら男、偶然ぶつかったカップルとイザコザを起こし、その果てに女の方を殺害してしまったのだ。当然男はその場で通報され、その酔いが醒めて気が付く頃には警察署に居た。

 

―――お、俺が人を殺してしまった…だって!? そんな、まさか!

 

男は信じられなかった。酒に酔って記憶をとばし、その間に人を殺めてしまうという過ち故に―ではない。いくら最近までパッとしない人生を送ってきたとはいえ、犯罪者に成り果ててしまうなんて―という驚き故にである。

 

男は信じられずにいるものの、証拠は充分、犯した罪も罪だ。決して日の目を浴びることは(しばらく)赦されない。ただそうなればどうなるかを男は考えた。考えてしまった。

 

勿論親には叱られるだろう。いや、今までが今までだ。むしろ勘当すらされかねない。ただでさえ少なく、付き合いも浅い友人たちは皆離れていくだろう。犯罪者と好んで付き合おうなんてヤツ、どうかしてると男は思うから。男に彼女や妻なんて居ないから、そうなれば独り、孤独だ。男は孤独であることが嫌だった、怖かった。そして。

 

 

―――ここから一先ず逃げよう。それからなんとかしよう。

 

アルコールは完全には抜けきっていなかったのだろう。男は平時なら思わない決断をしてしまった。

男の“個性”は分割。触れた物を2つに割る能力だ。ただしその限度は安っぽいルービックキューブサイズまでとこれまたパッとしない。しかし男は薬を飲んだ。個性増強薬(ブースター)。きっと酔っている間に手に入れたのだろう。

 

 

そうして逃げて数日が経ち、数週が経ち、今に至る。

男は全力で逃げていた。

 

 

 

 

 『お前が割田 分太か』

 

 『…そうだけど何か?』

 

見知らぬ男だった。自分より高い身長につい気後れする。ただ声はなんとか震えずに発せた。

 

 『俺自身は何の恨みもないんだが、まぁ――』

 

―死んでくれ。

 

男が手を伸ばしてきた。言葉とその動作に死を予感した。殺されるのだと、そう思った。

 

だからそれは偶然の事。

突然後方を歩いていた誰かが男の背に思い切りぶつかって男がよろけた。その手は首の僅か横を過ぎ、触れることはなかった。

 

 

―――やべ、逃げなきゃ!

 

なんとか走り出す。男はすぐ人混みに紛れて見えなくなったけど、どうも不安は拭いきれなくて走り続けた。

 

 

 

 

 「……流石に、もう撒いたかな…」

 

走り続けてどれくらいかは知らないが、もう体力の限界だった。立ち止まると足は力が抜けてその場にへたりこむ形になり、そのまま荒い息で息をした。

このまま逃げ続けてもキリがない。これはもう――

 

 

 「ったく……時間()ぇんだっての、手間かけさせんなよ」

 

現れたのはやはりさっき自分を殺そうとしてきた男。男は自分に向けて再び手を伸ばし、自分はそれを――。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

俺の仕事は殺し屋のようなモノだ。義爛経由で依頼人から仕事を請け、その相手を依頼人の代わりに俺が殺害する。その時も普段と同じ手口で行うことで警察は俺だけをマークする―Marker()は元々、動機とか関係なく殺っちゃう事があるから誰が被害者でもおかしくないのだ、とかなんか(ヴィラン)犯罪特集番組でやってた。都合が良いのは確かだが、なんか俺も有名になったな…とか思う。

ともかく。報酬は基本的に依頼人から義爛に支払われ、義爛が紹介料を差し引いた額を俺に渡す仕組みだ。たまに依頼人の手足に気に入った部分(パーツ)があると、俺はそれを戴くこともある。

 

ま、要は俺が殺ったのだと警察に(・・・)判るような手口で行わなければならないのだ。

故に今、俺の足下に転がる遺体は左腕と首を失いながらも血は流さず、心臓にナイフを突き立てられた事のみによる失血死をしている。

 

―――右腕、貰っとくか…?

 

この遺体がまだ生きていた間、俺に抵抗するようにコイツは俺の右腕を掴んだ。それが“個性”発動条件だったようで、俺の右腕は肩から外れてしまった―だけでなく、外れた上に賽子(サイコロ)サイズまで分割されてしまった。

俺の“個性”はある条件下で物を付けたり外したりできる。これに有機物のみ、人体除くみたいな例外はなく、あらゆる(・・・・)物を付けたり外したりできるのだ。俺はそれを利用して自分の体を付け替えたりできるのだが、こうも分割されてしまっては再び付けることはできない。条件を満たせなくなるために。

 

俺は遺体の右肩に手を伸ばし、俺の肩の切断面と同じ辺りに五指で触れる。すると肩から先が取れ、俺はそれを自分の肩の切断面に当てた。すると手を離せど遺体の右腕は俺の肩に付き、俺は自らの意思で右腕を動かせるようになる。

俺のはそういう“個性”だ。

 

―――やっぱ動きが(わり)ぃな。

 

右手を開いては閉じ、開いては閉じて感じる。これだから死体のは嫌なんだ、早いとこ取り替えたいモンだ。

スマホを取り出して着歴を見る。しかし義爛からの電話はない。

 

―――どーするかな…。

 

義爛からの電話が掛かってきたら忙しくなるが、それまでは特にやることもない。そして俺は路地裏を出て、夜の街へ繰り出すことにした。何か暇潰しをするために。

 

 

 

 

 




一応書いておきますと、このMarker(①,②)はそれぞれ投稿時の時系列に完全に沿っているわけではありません。①は(ヴィラン)連合がUSJを襲撃する直前の話では無いですし、また①~②の間にも多少空白があります。

二次創作ならヒーロー側よりもヴィラン側のが書きやすいってか書いてて楽しいんですよね。多分。
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