魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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第22話 新ペア誕生!? ごめんなさいで友情の輪!
引き裂かれる二人


「ちっつくしょーっ! ダークナイトの奴余計なことしやがって! 光のプリキュアが4人にふえちまったじゃねぇかっ!!」

 

 ロキは石の玉座を蹴り壊して粉々にした。小百合とラナまで光のプリキュアとなった事で最も大きなダメージを受けるのはロキだった。彼はこんなことが起こるとは夢にも思っていなかったので、その衝撃たる凄まじいものだった。

 

「くそっ! くそっ! くそーっ!!」

 

 ロキは玉座を原型がなくなるまで蹴り続けた。しばらくは半狂乱の状態が続いていた。それから少しばかり落ち着いて、何がどうなったのかもう一度整理することにした。

 

「闇のプリキュアが光に転換するってのがあり得ねぇ。どうしてこんな事が起こった……」

 

 そんなことをいくら考えてもわかるはずもなくロキは奇声をあげた。その時に彼はふと思いいたった。

 

「まさかフレイアはこれを狙っていたのか? 奴が闇の結晶を集めていたのはブラフだったんじゃねぇのか……?」

 

 考えれば考えるほどそうと思えてきた。なぜならロキを倒したいと一番思っているのはフレイアだからだ。

 

「間違いねぇ。あの女は宵の魔法つかいが闇から光に転換できることを知っていたのだ。だとしたら、俺様は奴に踊らされていたってことじゃねぇか! うがあああぁーっ!!」

 

 ロキはもはや石くれになっている玉座をさらに踏みつけて粉みじんにしてしまうのだった。

 

 

 

 暖かな光降る早朝のリンゴ畑で小鳥がさえずる。小さな家から飛び出してきた魔法学校の制服姿のラナが笑顔で走り、その後ろを蝙蝠の翼をもつ黒猫のぬいぐるみがついていく。

 

「エリーお姉ちゃ~ん!」

 

 ラナが手を振ると、ずっと先の方のリンゴの木の下で作業していたお姉さんが手を振り返した。

 

「おはよう、ラナちゃん」

 

 エリーは走ってきたラナににこやかに言った。

 

「お姉ちゃんだいじょうぶ? 体とか痛くなあい?」

「どうしてそんなこと聞くの?」

 

「いや~、なんていうか~、黒い魔法陣につかまった夢とか見てたりしないかな~って」

「心配してくれてるのね。大丈夫よ、なんともないわ」

 

 エリーはラナのよくわからない質問にもちゃんと受け答えしてくれる。彼女にはロキにさらわれた後に記憶はないようだった。

 

「これから小百合と一緒に魔法学校にいってくるね!」

「あら、学校に行くのね。よかったわね、ラナちゃん」

 

 ラナがにぱっと満面の笑顔になった。エリーは小百合とラナが学校に行けなかった理由は知らないし、それをあえて聞くこともなかった。その上で二人の面倒をよく見てくれた。小百合とラナにとって彼女は今やかけがえのない存在になっていた。

 

「本当によかった」

 

 エリーは家に向かって走っていくラナを見つめて言った。ラナの楽しい気持ちが走っていく体の躍動にもよく表れていた。

 

「さゆり~、学校に行こ~っ」

 

 意気揚々に言うラナとは真逆の姿で小百合はパジャマ姿でベッドに座って膝を抱え込んでいた。膝の間に顔をうずめて表情も見えない。

 

「あれれ? 学校いかないの~?」

「行きたくないわ……」

 

「え~っ!? なんでぇ~っ!?」

「なんでって……」

 

 顔を上げた小百合が胡乱(うろん)な目でラナを見つめる。

 

「じゃあ逆に聞くけど、ラナは何とも思わないの? 平気な顔して学校にいけるのね?」

「え、楽勝だよ。なんでそんなこときくの?」

 

「あーっ! ほんっとにあんたが羨ましいっ!」

「えぇ……どしたの、きゅうに?」

 

 小百合の様子がころころ変わるのでラナはびっくりしてしまった。

 

「わたしがリコとみらいにどれだけ酷いことをしたのか考えてみなさいよ」

「ひどいこと~? う~ん……」

 

 ラナは腕を組み首をひねって考え出した。そして、

 

「ミラクルをだましてどついて闇の結晶をとったり~、みらいをいじめて泣かせたり~、ルビーのプリキュアの時はい~っぱい蹴ったり殴ったりしてたね!」

 

「いちいち言わなくていいからね……」

 

 小百合はラナから打撃をもらってまた膝の間に顔を埋めてしまった。

 

「行きたければ一人で行って」

 

 飛び上がったリリンがさゆりを見下ろして顔を怒らせる。

 

「過去の自分の行いから逃げるなんて意気地なしデビ、ふがいないデビ」

 

「なんとでも言いなさいよ……」

 

「ここまで言っても小百合が怒らないなんて、これは重症デビ」

 

「早くいかないと遅刻しちゃうよ~」

「勉強する気なんてないくせに」

 

 小百合に冷たく返されるとラナはぷっと頬を膨らませて、それから小百合の隣に同じように膝をかかえて座った。

 

「行けばいいじゃない、学校……」

「小百合と一緒じゃなきゃやだっ!」

 

 それからしばらく無言が続いて、学校が始まる時間になってラナが珍しくため息をついた。

 

「みらいとリコに会って、ごめんなさいしたいな~」

 

 ラナが言ったとたんに小百合が立ち上がってベッドを降りた。そして壁にかかっている魔法学校の制服を手に取る。ラナがたちまち笑顔になった。

 

「学校いくの!?」

「ラナのいう通りだわ。わたしのしたことは許されることじゃないけれど、けじめはつけないとね」

 

「やった~、もう遅刻だけど~」

「……今日はみらいとリコに会って話ができればいいわ」

 

 少し遅い登校になってしまったが、二人は箒に乗って魔法学校を目指すのだった。

 

 

 

 魔法学校ではリコが空いている隣の席を時々気にしながら授業を受けていてた。

 

 みらいは寮の部屋のベッドで寝ていて、だいぶ回復してきたがまだ体がだるかった。暇だなと思って窓から外を見たりしていると、

 

「みらい、ちゃんと寝てなきゃだめモフ」

 

 モフルンが怖い顔で注意してくる。

 

「そんなに心配しなくても、もう大丈夫だよ」

「だめモフッ!」

「心配性だなぁ、モフルンは」

 

 みらいは素直に言うことを聞いてベッドに入って天井を眺めると思い出す。

 

「小百合とラナはどうしてるかな」

「さっき教室を見に行ったけどきてなかったぜ」

 

 リコのベッドの上であぐらをかいているチクルンが言った。みらいはそれを聞くと少し悲しい気持ちになった。

 

「二人が来たら、ちゃんとお話ししたいな」

 

 みらいはまだ疲れが残っているので急に眠くなって目を閉じた。

 

 

 

 魔法学校を見下ろす怪しき影があった。その男は背中に悪魔のごとき翼を開いて校舎を見下ろしていた。ロキであった。

 

「今思うと、フェンリルが何だかんだうるさく言ってきたことが身に染みるぜ……」

 

 ロキにとって事態は以前フェンリルが危惧していたよりもさらに深刻だった。小百合とラナがロキには決してかなわない闇のプリキュアから、ロキの天敵ともいえる光のプリキュアになってしまったのだ。

 

「まあ恐れるには値しねぇ。光エレメントのプリキュアとはいえ4人程度いつでも捻りつぶせる。だが、もう少し遊んでやろう」

 

 ロキの手のひらに二つの闇の結晶が現れる。彼はそれを上に放り投げてから、右手を上に左手を下に向けた。すると上空を通りかかっていた巨鳥ロックの動きはピタリと止まる。

 「クアァ……」巨鳥が苦しそうに呻き、ロキが右手を下げると引き寄せられていく。同時に左手は学校の庭に転がっていた蔦が絡まっている掃除用の箒を捕捉し、それを魔法の力で浮遊させる。

 

「大盤振る舞いだぜ!」

 

 ロキが軽快に指を鳴らすと、上空に竜の骸骨が刻まれた黒い魔法陣が現れて、その中心に巨鳥 と蔦の絡まった箒、最後に二つの闇の結晶が吸い込まれていく。

 

「いでよ! ヨクバァールッ!」

 

 黒い魔法陣から二つの黒い塊が出現する。二つの形を成した黒い塊が闇の表皮を吹き飛ばしてその姿を現す。一体は頭に竜の骸骨をかぶった暗褐色の巨鳥で竜の骸骨の口腔から長いくちばしが出ている姿が異様だった。もう一体は巨大な箒の柄の先端に竜の骸骨を付けた異様な姿をしている。太い蔦が柄に複雑に絡まっていて、外側に飛び出ている複数の蔦のうねりが蛸の足を連想させた。

 

『ヨクバアァールッ!』

 

「ヨクバール、全てを破壊しろ!」

 

『ギョイィーッ!』

 

 ロキの命令に従って2体のヨクバールが魔法学校の校舎に向かっていった。

 

 

 

 教室では授業中にいきなり大きな振動が起こって蜂の巣をつついたような騒ぎになった。リコは嫌な予感しかしなかった。

 

「みなさん落ち着いてください。順序良く教室を出て避難してください」

 

 アイザック先生の落ち着いた声が聞こえた。リコは騒ぎに乗じて一足先に教室を出ていく。同じ時にみらいも振動に起こされてパジャマ姿のままモフルンを抱いて外に出ていた。

 

「ヨクバァール!」

 

 巨鳥のヨクバールが長いくちばしで校舎を突き壊す。校舎内では壁や天井が崩れて生徒たちの悲鳴が上がる。このままでは危険な状態だ。

 

 リコはみらいが心配で寮に向かって走っていた。そして寮に続く渡り廊下でみらいと出会って二人で校舎を攻撃するヨクバールを目の当たりにした。

 

「ちょっとくらいは休ませてよ!」

 

 リコは忌々しそうにヨクバールに向かって叫ぶ。回復しきっていないみらいを心配する気持ちがヨクバールに対する怒りに変わっていた。

 

「リコ、わたしなら大丈夫だから」

「でも……」

「みんなを助けなきゃ!」

 

 他に選択肢はない。この事態を解決できるのはプリキュアしかいないのだ。リコはみらいを心配する気持ちを抱えながら頷いた。

 

 二人は手をつなぎ白き光のとんがり帽子の刻印が現れる。合わせた手を後ろに引くのと一緒にリコが紫の光のローブを、みらいが桃色の光のローブを身にまとう。

 

『キュアップ・ラパパ!』

 

 二人で一緒に手を高く上げれば、二人の胸のペンダントからダイヤの聖なる光が放たれる。白き2条の閃光がモフルンのリボンに集まってリンクルストーンダイヤになる。

 

『ダイヤ!』

 

 モフルンと二人が手を取って輪になって、

『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 モフルンのお腹に銀色に輝くハートが現れると、ダイヤの白い輝きが満ちていく。次の瞬間には白い輝きの魔法陣が現れ、その上にミラクルとマジカルが召喚された。

 

「二人の奇跡、キュアミラクル!」

「二人の魔法、キュアマジカル!」

 

『魔法つかい、プリキュア!』

 

 ダイヤスタイルに変身したミラクルとマジカルがジャンプしてヨクバールに向かっていった。

 

 

 

「何としても生徒だけは守らねば!」

 

 校長先生が校舎を背にして箒ヨクバールと見上げていた。彼の後ろでは逃げ惑う生徒たちの声が聞こえる。

 

「ヨクバール!」

 

 先の尖った無数の蔦がしなって校舎に向かっていく。

 

「キュアップ・ラパパ! 光よ護りたまえ!」

 

 校長が魔法の杖を振って出現した白き光の壁に巨大な蔦が突き当たって跳ね返る。すぐに光の壁が突き破られ校長が倒れてしまった。そして蔦が次々と校舎の壁に突き刺さっていく。

 

「校長先生!」

 

 リズが駆け寄って校長を助け起こすと、彼は老人の姿になっていた。

 

「ぬう、不甲斐なし……」

「生徒達ならもう大丈夫です。校長先生もお早く!」

 

 校舎の壁が崩れ落ちて大きな破片がリズたちの頭上をおおった。

 

「たあーっ!」

 

 跳んできたマジカルが破片を蹴り飛ばしてリズと校長先生の前に着地する。

 

「お姉ちゃん、校長先生、早く逃げて!」

「ありがとう」

 

 リズは校長先生の体を支えてそこから離れていった。マジカルは一安心してヨクバールと対峙する。

 

「ヨクバールが2体もいるなんて、ミラクルが本調子じゃないっていうのに……」

 

 マジカルはもう一体のヨクバールとにらみ合うミラクルを心配そうに見つめた。

 

 

 

 突然学校に襲い掛かった2体のヨクバールを小百合たちも空から目撃していた。

 

「大変だわ!」

「うわ~、2匹もいるよ」

「昨日の今日じゃ、みらいはまだ寝込んでいるはずよ、すぐに助けにいかないと!」

 

 小百合とラナは校門の前に降りて箒を置くと即座に手をつないだ。そして赤い三日月にそえられた黒いとんがり帽子の刻印が現れる。つないだ手を後ろ手に小百合が白い光のローブ、ラナがレモン色に輝くローブに身を包む。

 

『キュアップ・ラパパ!』

 

 二人が高く上げた手にあるブレスレッドの青いダイヤから一条の光が打ち上げられる。二つの光の流れがリリンの青いリボンに集まってリンクルストーンブルーダイヤが現れる。

 

『ダイヤ!』

 

 リリンを加えて3人で手をつないで、

『セイント・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 リリンのお腹に青銀のハートが現れると、ブルーダイヤの聖なる光がすべてを照らす。そして青白い魔法陣が現れて白と黄色の二人のプリキュアが召喚された。

 

「光さす慈愛の聖女、キュアプリーステス!」

「メラメラの黄昏の魔法! キュアルーン!」

 

『魔法つかい、プリキュア!』

 

「二人とも急ぐデビ!」

 

 リリンが先に飛んで、二人はそれを追う形で魔法学校に向かっていく。

 

 ミラクルは思うように力が出せずに苦戦していた。ダメージが残っている上にマジカルなしでヨクバールと戦うのは厳しかった。

 

「ヨクバァァールッ!」

 

 甲高い獣のような声といっしょに強靭なくちばしでミラクルを狙って素早く突いてくる。ミラクルはそれを避けながら徐々に後退していく。そして、ヨクバールが鳥の翼を丸めて拳のようにして殴ってくる。ミラクルはそれに対抗して拳を突き出した。

 

「やあーっ!」

 拳が激突してミラクルが力負けして飛ばされてしまう。

「ああぁっ!?」

 

 ミラクルが倒れると巨鳥のヨクバールが周囲に爆風を散らして低空を飛び、ミラクルに巨大な鳥の足が迫る。

 

「!?」ミラクルは一瞬何が起こったのかわからなかった。

「モフッ!? ミラクルーッ!」

 

 気づけば鳥の足につかまって目下の魔法学校の姿がどんどん小さくなっていた。そしてモフルンがすぐ目の前で鳥の爪の先に捕まってぶら下がっていた。

 

「モフルン!?」

 

 ミラクルがモフルンの手をつかんで抱き寄せる。

 

「ミラクル!」

 

 マジカルがヨクバールに捕まったミラクルを助けにいこうとして駆け出すと、後ろからのびてきた蔦が胴にぐるりと巻き付いてくる。

 

「あっ、しまった!」

 

 そして箒ヨクバールがマジカルを捕まえたまま勢いよく飛び出して飛翔した。

 

「わたしとミラクルを分断するつもりなの!? まずいわ! この、放しなさい!」

 

 マジカルは蔦が引き千切ろうとすると、さらに別の蔦が来て体をぐるぐる巻きにされて動けなくなってしまった。

 

 ミラクルとマジカルわ別れ別れにされたこの時にプリーステスとルーンが駆け付ける。

 

「二人を分断するなんて、相変わらず汚い真似をするわね」

「どうしよう、プリーステスぅ……」

 

 プリーステスは考えながら口にした。

 

「ここは別れて助けに行きましょう。ルーンはミラクルと相性がいいと思うから、ミラクルの方に」

 

「わたしあっちいくね~」

 

 ルーンのその声は妙に遠かった。

 

「えっ!?」とプリーステスが見上げれば、ルーンはマジカルが連れ去られた方向に箒でぶっ飛んでいく。

 

「ちょっとあんたーっ! 勝手に行くんじゃないわよ!」

 

 プリーステスが怒って大声を出した時には、もうルーンの姿はほとんど見えなくなっていた。

 

「……仕方ないわね。今は一刻を争う時だし、こっちはミラクルを助けに行きましょう」

 

 プリーステスは箒に乗って少し考えて思いとどまった。

 

「わたしの場合こっちの方が早いわね。リンクル・スターサファイア!」

 

 プリーステスの右手の腕輪のブルーダイヤがスターサファイアに変わる。彼女は飛翔してミラクルを追いかけた。

 

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