魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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交わる二つのダイヤ! ハートシェイプ・スマッシュ!

 ロキはずっと高い場所で二手に分かれていくプリキュアたちを見下ろしていた。

 

「昨日まで敵だった奴らが組んだところでまともに戦えはしまい。どうなるか見ものだぜ」

 

 

 

 巨鳥のヨクバールはミラクルを枯れ果てた無人の地に放した。ミラクルが赤茶けた大地に着地すると休む間もなくヨクバールが攻撃してくる。

 

「ヨクッバァール!」

 

 急降下してきたヨクバールが木杭のように尖ったくちばしで突っ込んでくる。それをミラクルがジャンプしてかわすと、彼女がいた場所に巨大なくちばしが突き刺さって朽ちた樹木の破片が大量にはじけ飛んだ。

 

 魔法界の島々は海からせりあがった巨大な樹木なので、ここは文字通り枯れた樹木の大地なのだ。着地したミラクルの足に朽ちた樹の妙なやわさが伝わってくる。ミラクルはここで抱いていたモフルンを下におろした。モフルンは隠れる場所がなかったので、足音をならしながら走ってミラクルから離れていった。

 

「モフゥ、ミラクル……」

 

 モフルンが心配そうにミラクルを見つめていた。

 

 ヨクバールが巨大な翼を開いてはばたくと、強風と一緒に無数の鳥の羽が吹雪く。ミラクルがそれをバク転してよけると、羽が大地に刃物のように突き刺さる。ヨクバールは次々と強風に羽を乗せて放った。

 

「ヨクバァル!」

 

 鳥の頭になっている竜骸のアイホールの赤く燃えるような目が光を増して光線を放つ。ミラクルは羽吹雪に邪魔されて、それをまともに受けてしまう。

 

「キャアッ!?」

 

 ビームの衝撃で勢いよく跳ばされて背中から落ちたミラクルに、

 

「ヨクゥーッ!」怪鳥がいなないて巨大な鳥脚の鋭い爪がミラクルに上から襲いかかる。

 

「はっ!」ミラクルは後ろに手をついて地面を蹴りバックフリップで何とか回避、しかし抜けきっていないダメージが足に来てふらついてしまった。

 

「ヨクバアル!」

 

 鳥の翼を丸めた拳が迫る。ミラクルはもう避けられないと思った。

 

「ミラクル、危ないモフ!」

 

 モフルンの声が飛び、そして拳がミラクルの視界を覆って激突するかという瞬間に、ヨクバールの側面に白いものが飛び込んできた。

 

「てやぁーっ!!」

 

 ヨクバールは砲撃のような勢いで突っ込んできた白いプリキュアに頭を蹴っ飛ばされた。

 

「ヨグゥーッ!?」

 

 吹っ飛んだヨクバールが地面に落ちるのと同時に白いプリキュアがミラクルの前に降りる。

 

「ああっ、プリーステスモフ!」

 

 天から舞い降りし白いプリキュアを見てモフルンの心に希望に満ちる。

 

「ミラクル、無事ね」

「プリーステス! 助けに来てくれたんだね!」

 

「あなたとマジカルにどうしても言いたいことがあってね。まあ、それは後にして、あいつを倒しましょうサクッとね」

 

 プリーステスがウィンクすると、ミラクルは心の底から嬉しくて光輝くような笑顔になる。歓喜のあまり体の辛さなど忘れていた。

 

「うれしい。ずっと夢見てた光景だよ」

「夢なんかじゃないわ。でも、向こうのペアは悪夢になってるかもね……」

「え……それってどういう意味?」

 

「ヨクバァールッ!」

 

 二人の会話の隙をついてヨクバールがくちばしを突いてくる。二人はピッタリ並んで後ろに跳んでプリーステスが空中でミラクルに言った。

 

「マジカルが心配ということよ」

「マジカルにはルーンが付いてるんじゃ?」

「だから心配なのよね!」

 

 二人は同時に着地して同時にジャンプしてヨクバールに飛び込んでいく。ヨクバールは地面に深く突き刺したくちばしが抜けずに苦労していた。

 

『はああぁっ!』

 

 ヨクバールの顔面に二人のダブルパンチが炸裂、衝撃で竜の骸骨が変形し、地面からくちばしがすっぽ抜けて吹っ飛ぶ。

 

「ヨクゥーッ!?」

 

 ミラクルとプリーステスは示しを合わせたように同時に走り、墜落して翼をばたばたしてるヨクバールに接近する。起き上がったヨクバールが目の前で二人の姿を捉え、頭を上げてくちばしを振り上げてから、叫び声と一緒に勢いをつけて突き出した。二人は同時にヨクバールの懐に入り、裏側からくちばしを捉えた。ミラクルは右手で、プリーステスは左手でくちばしの先の方をつかみ、もう一方の手でくちばしの裏側に掌底を当てて二人で投げ飛ばした。

 

『はぁっ!』

 

「ヨクウゥーーーッ!?」

 

 ヨクバールはくちばしを突いた勢いを利用されて速球のごとく飛んで叩き落されて地面に頭が埋まってしまった。

 

「二人ともすごいモフーッ!」

 

 モフルンの声が聞こえると、ミラクルとプリーステスは微笑の顔を合わせた。そしてミラクルが学校の休み時間に他愛のない話をするような調子で言った。

 

「前にペリドットとオレンジサファイアで新しい魔法ができたでしょ。あれってプリーステスが何かしたの?」

 

「ええ、宵の魔法つかいには魔法を合成する能力があるのよ」

「他のリンクルストーンでもできないかな?」

「面白そうね、やってみましょうか」

 

 戦っている最中だというのに二人の会話はなにやら楽し気なものになっていた。

 

「じゃあ~、アクアマリンにする!」

「なら、わたしはこれでいくわ」

 

 ミラクルは目の前に現れたリンクルステッキを手にしてリンクルストーンを呼び出す。

 

「リンクル・アクアマリン!」

「リンクル・ジェダイト!」

 

 ミラクルのステッキに穢れなき海色の宝石が輝き、プリーステスの腕輪には草原で風に吹かれる青草のように鮮烈な緑の宝石が光る。二人はステッキとブレスレッドをまっすぐ前にかざして魔法を発動した。そして二人の前に青緑に輝く魔法陣が現れて、二つの魔法が一つの力となった。

 

『プリキュア! アイシクルインパクト!』

 

 強烈な冷気を含んだ烈風が地面から頭を抜いて立ち上がったヨクバールを翻弄する。吹き付ける風がヨクバールの巨体を少しずつ後退させて、強風によって冷気の威力が増す。ヨクバールの足元から体の半分までが厚い氷に覆われていく。

 

「ヨヨッ!!?」

 

 凍り付いたヨクバールは動けなくなって翼をばたつかせていた。その時にプリーステスは理解した。

 

「ミラクル、今の魔法を見てわたしは確信したわ」

 

 ミラクルもプリーステスの得た天啓を肌で感じていた。

 

「伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいが出会ったとき新たな魔法の扉が開かれる! 二つのダイヤの力を合わせましょう!」

 

「うん!」ミラクルは強く頷いて大切な友達を呼んだ。

「モフルン!」モフルンが走っきてミラクルとプリーステスの足元に立った。

 

 ミラクルは右に、プリーステスは左に二人で寄り添うように並んで立ち、そしてリンクルステッキとリンクルブレスレッドに聖なる光が宿る。

 

『ダイヤ!』

 

 光に満ちる世界が広がり、ステッキの白いダイヤとブレスレッドの青いダイヤから上に向かって光線が放たれた。流れ星のように尾を引く白と青の輝きが重なり合って一つになる。

 

 プリーステスが右手のブレスレッドを天上に向けて叫ぶ。

「降りそそげ! 奇跡の光よ!」

 

 そしてミラクルがステッキで光の線を描いて魔法の言葉を唱えた。

「フル、フル、リンクルーッ!」

 

 ミラクルが光の線でハート型を創造し、その中心に二つのダイヤが一つとなった光が落ちてくる。青白い光で満ちたハートが巨大化し、その背後にさらに巨大な青白い魔法陣が広がった。そしてモフルンのリボンに輝くダイヤが強い光を放って魔法を完成させる。

 

 魔法陣の前に巨大なハート形のダイヤが召喚された。ミラクルが左手をプリーステスが右手を同時に突き出して魔法を発動させた。

 

『プリキュア! ハートシェイプ! スマーッシュ!』

 

 爆発するような衝撃波と共にハート形のダイヤが打ち出されヨクバールに衝突する。瞬間にヨクバールを中に閉じ込めたダイヤがその場に止まり高速で回転を始めた。

 

「ヨ…ヨクバァール……」

 

 ハート形のダイヤが回転しながら真上に打ち上げられた。そして光の雫を散らしながら天上に消えると、光の粒が空いっぱいに花火のように広がった。そして3人はその美しさと新たな魔法を創造した感動に浸るのだった。

 

 空から淡い光に包まれた巨鳥ロックと闇の結晶が落ちてくる。巨鳥は途中で翼を開いていずこかへと去り、闇の結晶だけがミラクルとプリーステスの足元に落ちた。

 

「やったね!」とミラクルがプリーステスに抱きついた。

「ミラクルのおかげよ」

 

「二人とも息ピッタリだったモフ」

「ほんと、マジカルが隣にいるみたいだったよ」

 

「わたしはマジカルと似たところがあるからね。ミラクルとだったらうまくやれると思っていたわ。問題は向こうのペアよ。急いで向かいましょう」

 

 それから箒に乗って飛んでいく二人のプリキュアを遠くからロキが苦い顔で見下ろしていた。

 

「昨日まで敵同士だった奴らが、なぜあれほどのコンビネーションを生み出せる? まったくどうなってやがるんだ……」

 

 

 

 

 箒ヨクバールに連れていかれたマジカルは、しばらく緑の蔦で手足を縛られた状態で空の散歩をすることになった。

 

「おおい、大丈夫か!」

「えっ!? チ、チクルン!?」

 

 チクルンがマジカルのマントにしがみついていた。

 

「そんなところにいたら危ないわよ!」

 

 水平飛行から急降下が始まってマジカルの体に奇妙な重力の変化が起こる。鮮やかな緑の苔と背の低い羊歯類(しだるい)に覆われた無人島に向かってヨクバールが接近していく。

 

「ヨクバール!」

 

 マジカルを捉えている蔦が鞭のようにしなる。

 

「ふああぁっ!?」

 

 マジカルの景色がぐるぐる回って変な声をあげてしまう。そしてヨクバールがマジカルを捉えた蔦を島に叩きつけた。その衝撃でチクルンは吹き飛ばされてしまう。

 

「うわぁっ!!?」チクルンは柔らかい苔の大地に落ちて転がっていく。

 

「いたっ……よくもやったわね!」

 

 マジカルが叩き落された場所は苔や羊歯が吹き飛んで黒土がむき出しになっていた。マジカルは立ち上がって苦い表情を浮かべた。

 

「早くあいつを何とかしてミラクルのところに行かないと」

「おいらも手伝うぜ!」

「手伝うって言われても……」

 

 飛んできたチクルンが息巻いて言うとマジカルは少し困ってしまった。強大なヨクバールに対して小さな妖精のチクルンに何をさせればいいのかわからない。

 

「ヨクバァール!」

 

 箒の胴体から生えている無数の蔦がうなりをあげて叩きつけられる。マジカルがそれを横に跳んで避ける。息つく間もない連続の鞭打にチクルンがたまらず逃げだし、マジカルはヨクバールに近づけずにいた。マジカルが攻撃をよけるたびに蔦を打ちつけられた緑の大地が裂かれ黒い傷となって残る。

 

「こんなことしてたら、いつまでたってもミラクルのところに行けないわ」

 

 マジカルは多少のダメージを覚悟してヨクバールに突っ込み、次々と襲ってくる蔦を防御しながら突き進む。

 

「あのフォルムだとボディが弱そうね!」

 

「ヨクバァーーー」

 

 箒の柄の先に飾りみたいについている竜の骸骨が口を開いて炎を吐き出す。

 

「キャア!?」

 

 いきなり炎を吐きかけられてマジカルの足が止まってしまった。マジカルは思ったよりやっかりな能力のヨクバールに苛立ち、ミラクルを助けに行きたい思いから焦りもでてくる。そんな時にヨクバールに急接近してくる黄色い物体があった。

 

「ひっさぁつ! ホウキジェットキーック!」

 

 音速で飛んできたルーンが箒に乗ったままヨクバールの顔面にキックを炸裂させた。

 

「ヨクバァールッ!!?」

 

 不意打ちをくらったヨクバールが悲鳴を上げてぶっ倒れる。ウィッチは丸くなってくるくる回転しながらマジカルの隣にしゅたっと両腕を広げて着地した。

 

「決まったぁ!」

「ルーンかっこいいデビー」

 

 いつの間にか近くにいたリリンがぬいぐるみの手でパフパフ拍手していた。

 

「あ、あなたたち!?」

「おおぉっ!?」

 

 マジカルもチクルンも意外な救援の登場に驚いてしまった。

 

「マジカル~、助けにきたよ~。わたしが来たからには~、もう大丈夫!」

「助けてくれてありがとう。まあ、来てくれたのはありがたいんだけど……」

 

 マジカルはルーンが目の前にいることで大きな希望に思い当たる。

 

「もしかして、プリーステスはミラクルを助けにいってくれてるの?」

「そうだよ~」

 

「よかった……」マジカルは今一番の心配事がきれいさっぱりなくなって心が軽くなった。けれど、ルーンを見ていると新たに心配の種が植えられていくように感じてしまう。

 

「プリーステスに言われてわたしの方に来たの?」

「ちがうよ~、何となくこっちにきたの」

「ああ、そういうこと……」

 

 マジカルの中で一気に嫌な予感が膨らむ。それも仕方のないことで、マジカルはルーンと一緒に戦うイメージがまったくつかめなかった。さらに火に油を注ぐようにリリンが笑顔で言った。

 

「こっちの方が面白そうだからついて来たデビ」

「それどういう意味よ!?」

 

「リリンはチクルンと一緒に応援してるデビ、せいぜいがんばるデビ」

「お、おう、がんばれよ」

 

 マジカルは黒猫のぬいぐるみにひきつった笑みを浮かべる。

 

「この子っていつもこんな感じなの?」

「うん、そうだね~。悪魔ですから!」

 

 ルーンが元気よく言うと、マジカルはどんよりしてしまう。

 

「モフルンとはずいぶん違うのね……」

 

 マジカルの中では動くぬいぐるみというのは、可愛くて素直でその実はしっかり者で、という至高の存在だったのでショックを受けてしまったのだった。

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