魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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ヨクバールとクイズで勝負!?

 魔法学校よりもはるか上にある魔法の樹の、厚く茂った枝葉の上に、ロキが寝そべって空中に映っている少女たちの姿を見上げていた。

 

「プリキュア共め、部屋に閉じこもって何をやってやがるんだ?」

 

 彼はテーブルの端の方に重ねてあるテスト用紙を見つけると、口角を引き上げて邪悪な笑みを浮かべる。

 

「今回は趣向を変えてみるか」

 

 

 

「遅い! いくら何でも時間がかかりすぎよ!」

 

 リコが怒るような調子で言った。ラナがトイレに行くといってから、もう結構な時間が過ぎていた。リコは嫌な予感がして見に行こうかなと思っていると、みらいの隣で勉強を教えていた小百合がいきなり立って、バンと勢いよく窓を開ける。

 

「キュアップ・ラパパ! ロープよ、ラナを捕まえなさい!」

 

 小百合が魔法の杖を振って魔法のロープの先端が外に出ていくと、何重にも厚く巻いてある縄がほどけてどんどん小さくなっていく。そして、ある瞬間に縄がぴんと張る。

 

「捕まえた! ロープよ戻ってきなさい!」

「うわ~~~」ラナの叫び声がだんだん近づいてきた。

 

 ラナが箒に乗った状態で逆再生しているみたいに後ろ向きで窓から寮の部屋に入ってきて着地した。箒の筆の根元の方に魔法のロープが巻き付いていた。それを見たリコはやれやれとため息をつく。

 

「やっぱり逃げ出していたのね」

「このためのロープだったんだね……」

 

 みらいはロープの用途が分かって少しすっきりすると同時に、これからラナを襲う災難を思うと少し心配になる。

 

 小百合が腕を組んで仁王立ちでラナを見つめる。ラナはぎこちない動きで周囲を見ながら言った。

 

「いやぁ、みなさんおそろいで……」

「あんたのやる事なんて全部お見通しなのよ! さっさと机に戻って勉強しなさい!」

「もう疲れたっ! 休みたいのっ!」

 

 ラナが開き直って騒ぎ出すと、小百合は怒りを通り越してため息が出てくる。

 

「休みたいならそこのテーブルで休みなさい。いい、次に逃げ出したら2度とおやつ作ってあげないからね!」

「あう~、それはやだ……」

 

 ラナは乗っていた箒を小さくしてポシェットに入れると、観念してリコの机に戻るのだった。

 

 

 

「このまっすぐな方は簡単なんだけど、こっちのにゅーんて曲がってる方は苦手なんだよねぇ」

「みらい、それは二次関数っていうのよ」

「むうう、よくわかんないなぁ……」

 

 二次関数に苦戦するみらい、しかも小百合の教えるペースはかなり早かった。すぐにみらいは頭がパンクしてしまった。

 

「うああ! なんでこんな変な計算するの!?」

「平方完成ね。そんなに難しくないわよ。一つずつ落ち着いて計算すればできるわ」

「うう、本当にできるのかな……」

 

 その後、みらいは計算と格闘して本当に頭から湯気が出そうなほど疲弊してしまった。小百合もさすがに見かねて勉強を一旦中止にした。

 

「少し休みましょうか」

「うん……」

 

 同じタイミグでリコとラナも来て、リコが全員にお茶を淹れてくれる。ソファーに並んで座っているみらいとラナは、すっかり元気をなくしていた。

 

「みらい、二次関数の前に因数分解の復習をしましょうか」

「はい……。ああ、なんで数学ってこんなにワクワクしないんだろ……」

「ワクワクすればいいのね」

 

 小百合は手近にあったラナのテストの裏面の白紙に16の2分の1乗という数字を書いた。

 

「数学にはこんな数もあるのよ。どう、ワクワクしない? これの答えはすぐに分かると思うけれど4ね」

 

「な、なにそれ!? 何乗なんて2とか3だけで十分だよ……」

「うわ~、みらいの元気がどんどんなくなってく~」

 

 項垂れるみらいをラナが本当に心配そうに見ていた。リコが思わず苦笑いを浮かべて小百合に言った。

 

「それって、高校生の修学範囲でしょう」

「そうだけど、面白いと思ったんだけどね……」

 

「そんなのでワクワクできるの小百合だけだよ。まったくどうかしてるね~」

「あんたにそんなこと言われたくないわよ!」

 

 小百合はラナに突き刺さるような鋭い突っ込みを入れて、ついでに手元にあった終末的な点数のテストのを見せつけた。すると、それを合図にでもするようにいきなり窓が全開に空いて、部屋の中に暴風が吹き荒れる。

 

「いきなり、何なのよ!?」

「敵の攻撃じゃないの!?」

 

 そう言うリコと小百合の声がかき消されるほどの暴風だった。

 

 モフルンとリリンが飛ばされないようにベッドにしがみついて窓の外を見る。

 

「なんか怪しい奴がいるデビ!」

「なんか飛んでいくモフ!」

 

 窓からラナのテストが次々と出ていって、最後に小百合が持っていた答案用紙もすごい力で引っ張られ、小百合の手から離れて窓の外に飛んでいく。そして部屋に吹き荒れていた風が嘘のように収まった。

 

「わたしのテストとんでっちゃった」

 

 少女たちが窓辺に駆け寄ると、空中に浮かぶ怪しい男の姿が見える。

 

「ロキ!」小百合が眼光鋭くかの男を見据える。

 

 彼の前で8枚のテストが円形に並んで回っていた。

「よう、小娘ども。これは俺様からのサプライズだぜ! 十分に楽しめ!」

 

 ロキが黒い結晶を上に投げて指音を響かせる。

「いでよ! ヨクバーーールッ!」

 

 空に暗黒の雲が一気に広がり、その雲の下に真円の黒い魔法陣が現れて、円の中央に刻まれた竜の顎が口を開く。そこに闇の結晶とラナの8枚のテストが吸い込まれると、魔法陣から暗黒を全身にまとった存在が引き出されていく。テスト用紙と同じ四角の体に丸い頭らしきものと細い手足が付いている。その右手には長細くて先が尖っているものを持っていた。

 

 それが地上に降りて全身を染めていた暗黒の衣装が引きはがされると、少女たちが今までに見たことがない怪物が現れる。

 

「デスヨクバール!」

 

 少女たちが魔法学校の校庭に降りたその姿を見つめる。

 

「え? なんかいつもと様子が違うわね……」

「ちょっとかわいいかも~」

 

 ラナがそんなことを言うと、小百合は少し拍子抜けしてしまう。

 

 デスヨクバールは8枚のテスト用紙を重ねた極薄の体に、丸い骸骨の頭を持ち、妙に細い腕と足の先に丸っこい手と靴が付いていてコミカルか感じだった。右手には自分の体よりも長い鉛筆を持ち、アイホールには子供が落書きしたような愛嬌のある怒る目があった。

 

 それを見たリコとみらいが言った。

 

「わたしたちは見慣れた感じだけど……」

「あんまり強くなさそうだね。4人で戦うのが可哀そうになるくらいに……」

 

「油断は禁物よ!」

 

 小百合がみんなに喝を入れるとモフルンが言った。

 

「みんな変身モフ!」

 

 みらいとリコ、小百合とラナがそれぞれ手をつないで心を一つに唱える。

 

『キュアップ・ラパパ!』

 

 4人の少女が光の衣をまとい、モフルンとリリンのブローチに輝く二つのダイヤが現れる。

 

『ダイヤ!』

 

 みらいとリコがモフルンと手をつないでゆるやかな輪舞を踊る。

『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 小百合とラナがリリンと手と手を取って、たおやかに人の輪を回転させる。

『セイント・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 モフルンとリリンのダイヤが同時に強く輝き氾濫した光の中に少女たちの姿が消えていく。

 

 二つ同時に顕現せし五芒星と六芒星の魔法陣、その上に4人のプリキュアが召喚されて、魔法陣の上から4人同時に跳んで校庭へと降り立ち、

 

「二人の奇跡、キュアミラクル!」

「二人の魔法、キュアマジカル!」

 

「光さす慈愛の聖女、キュアプリーステス!」

「メラメラの黄昏の魔法! キュアルーン!」

 

 4人のプリキュアはそれぞれのパートナーと繋がって、強く可憐な乙女の姿を見せる。

 

『魔法つかい、プリキュア!』

 

 デスヨクバールは鉛筆を地面に立てて以外に可愛い怒った目でプリキュアたちをにらむ。

 

「でましたデスね、プリキュア!」

 

「しゃ、しゃべった!!?」

『ええぇーっ!!?』

 

 マジカルが仰天し、ミラクルとルーンがうるさいくらいの声を上げた。プリーステスはこの奇妙なヨクバールを胡散臭そうに見ていた。

 

「みんな惑わされてはダメよ!」

「そうね。ここは慎重に、わたしとプリーステスで仕掛けてみましょう」

「マジカル、了解したわ」

 

「じゃあ、わたしはミラクルと一緒だね~」

「がんばろうね、ルーン」

 

 ルーンは小さな子供みたいにその場で跳ねて嬉しさを表現した。そしてマジカルとプリーステスが同時に走り、一緒に跳躍する。

 

『はぁっ!』

 

「それはルール違反デス!」

 

 デスヨクバールが空中のマジカルとプリーステスに鉛筆の先を向けると、二人の周囲に黒いリングが現れて、それが縮んで締まって両腕が拘束されてしまう。

 

「な、なによこれ!?」

「ちょっと、どうなってるの!?」

 

 二人は情けない声をあげながら急転直下に落下して、ミラクルとルーンの前で無様に地面に転がった。

 

「あ、おちた~」

「落ちてないし!」

 

 ルーンの言葉にマジカルが地面に寝たまま条件反射みたいに反応すると、ルーンは口を半分あけたままで固まってしまう。

 

「……いやぁ、それは無理がありますよ~、おねいさん」

「落ちてないから!」

 

 あくまでも落ちたことを認めないマジカルに、隣で同じように転がっているプリーステスが残念な物を見る目を向けていた。

 

「フッフッフ、そっちの二人にはこれデス!」

 

 デスヨクバールがミラクルとマジカルに鉛筆の先を向けると、二人の前にピンク色とレモン色の立机が出てきた。机の上には変なボタンが置いてある。

 

「なにこれ~?」

 ルーンがボタンを押すと、ピンポーンと軽快な音が鳴った。

 

「アハハ~、おもしろ~い」

 ウィッチは何度もボタンを押して何度も音を鳴らした。

 

「こら! いたずらするんじゃないデス!」

 

 一方、この趣向に気づいたミラクルが言った。

「これってもしかして、クイズ?」

 

「フフッ、その通りデスっ! このわたしを倒すには、クイズで勝負しなければならないデス。これが7枚の赤点テストと一枚の微妙なテストから生まれしデスヨクバールの能力デス!」

 

「おお~っ! すっごいね、わたしのテスト」

「すごくないわよ! 最低よっ!」

 

 喜んでいるルーンにまだ地面に転がっているプリーステスから突っ込みが飛んできた。

 

 しかし、こんなおかしな状況でもマジカルとプリーステスは慌てなかった。二人は両腕を縛られたまま立ち上がり、決して得意になりすぎずに、その内に秘めた深き知性を醸しながら言った。

 

「まあ、いいでしょう。この勝負受けましょう」

 

「わたしたちにクイズで挑んできた事を後悔させてあげるわ」

 

 マジカルは瞳を閉じ、微笑を浮かべ、その台詞には彼女の知性が光っていた。けれど縛られている状態なのであまり格好よくない。

 

「ダメデス、お前たちはそのままデス」

 

『なんでよーっ!!?』縛られた二人が一緒になって憤然と叫んだ。

 

「なんデスお前たちは? クイズに参加してそんなに自分たちの頭のよさを見せびらかしたいんデスか? まったくあさましい奴らデスね」

 

「べ、別にそういうわけじゃないし!」

「そうよ、そんなこと……」

 

 プリーステスがはっと気づいてマジカルを諭す。

 

「ダメよマジカル、向こうのペースに乗せられては!」

「そうね! だいたい、ミラクルとルーンにだけクイズで勝負させるなんて卑怯よ! 正々堂々、わたしたち4人と勝負しなさい!」

 

「なに言ってるデスか! そっちは四人! こっちは一人! これでもまだ二対一でハンデがあるデス!」

 

 それを聞いたマジカルとプリーステスが衝撃を受けた。

 

「そんな……わたしたちは今まで卑怯な戦いをしていたっていうことなの……?」

「しっかりしてマジカル! ヨクバールは一人じゃ絶対倒せないからね!」

 

「そ、そうよね!? 騙されるところだったわ……」

「理攻めでくるなんて新しいわね、このヨクバール……」

 

「ジャジャーン! キュアルーンに問題デ~ス!」

「うえぇ!? いきなりぃ!?」

 

 マジカルとプリーステスが混乱している間にクイズが始まってしまった。

 

『しまった!』と二人で後悔しても時すでに遅し。

 

「キュアルーンは頭悪そうだから、簡単なのにしてやるデス。猿も木から落ちると同義のことわざを答えなさいデス。弘法も~なんデスか?」

 

「え~? えっとぉ……」

 ルーンがレモン色の立机の前で一生懸命に考える。

 

「どうぎって確か、ナシマホウ界で戦う人が着る服だよねぇ?」

「そっ、そこから分からないの!!? いい加減にしてよ!」

 

 プリーステスが怒り出すとルーンが涙目になってしまう。

 

「うえぇ、だって分からないんだもん……」

「わ、悪かったわ! もう怒らないから、弘法もから後の言葉を考えなさい、ね!」

 

 またルーンが考え出した。そして数分が過ぎてから、

 

「こうぼうって、お菓子とか作るところだよねぇ? だから工房もクッキーとチョコレートとぉ」

「何なのよそれ!? 弘法も筆の誤りよ!」

 

 プリーステスが我慢できずに答えを言ってしまった。

 

「ブブーーーッ!! 外野が答えたらアウトデス! キュアルーンに罰ゲーム!」

 

 デスヨクバールが手に持っている巨大な鉛筆で天を突くと、無数の爆弾でも投下されたかのような空気を裂く高音が空から降りてくる。そして、無数の白いミサイルがウィッチに降りそそいだ。

 

「ウキャーッ!?」

 

 ミラクルの隣で白い煙がもくもくと上がり、彼女は開いた口が塞がらない状態で見つめていた。

 

「ふうぅ、いたぁい……」

 

 白い煙の中から全身真っ白のルーンが痛めた頭を触りながら立ち上がる。そして彼女は頭と体を思いっきり振って白い粉を飛ばし、隣のミラクルに少し迷惑をかけた。

 

「ま、まさかそれ……チョーク……?」

 

 プリーステスが怯えた瞳でまだ少し粉をかぶっているルーンを見つめた。

 

「その通りデス。必殺チョークミサイル! 勝手に答えたお前も罰ゲームデス!」

 

 デスヨクバールは鉛筆でプリーステスを指した。

 

「や、やめてーっ!?」悲鳴をあげるプリーステスにもチョークの洗礼が訪れる。

 

「うう……先生にほめられたことしかないのに……」

 

 隣で真っ白になって倒れたプリーステスをマジカルも怯えた瞳で見つめる。

 

「な、なんて恐ろしい攻撃なの……」

 

「へぇ? そうかなぁ? ま、けっこう痛かったけどさぁ」

 異常に怯えるマジカルをルーンがチョークの当たった頭をなでながら見ていた。

 

「ジャジャーン、キュアミラクルに問題デス」

「は、はい!」ミラクルは思わず背筋を正す。

 

「この式を計算して答えよ、デス!」

 デスヨクバールが鉛筆の黒い線で空中に数学の式を書いた。

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