魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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デスヨクバールの恐怖

 デスヨクバールが鉛筆の黒い線で空中に数学の式を書いた。

 

3x+12=3 x=

 

「す、数学!?」

 

 ミラクルが絶望感に打ちひしがれると、プリーステスが力を込めて励ます。

 

「大丈夫よミラクル! 今のあなたなら、この程度の問題はなんてことないわ」

「ミラクル、落ち着いて考えて」

 

 マジカルの声が聞こえて、ミラクルが数学の問題とじっくりと向き合う。

 

「あ、これならできるよ」

「5秒前!」

「えっ!? ええ!?」

 

 デスヨクバールの無情のカウントダウンにミラクルが焦りまくる。

 

「4、3、2、1、ブブーーーッ! 時間切れデス」

 

「ちょっと! さっきは時間切れなんてなかったし!」

「汚いわよ! ルーンには考える時間をさんざん与えてたくせに!」

 

 マジカルとプリーステスが抗議すると、デスヨクバールがフンと鼻をならす。

 

「外野がピーチクパーチクとうるさいでデスね。じゃあなんデスか、お前たちはこの計算を5秒以内にできないとでもいうのデスか?」

 

「まあ、わたしは5秒もあれば十分だけどね」

「だ、だめよプリーステス!?」

 

 マジカルの声が校内に響き渡り、デスヨクバールが怒った目を少し細くして、してやったりという気持ちを表情にも浮かべた。

 

「やはり5秒で十分ではないデスか!」

「し、しまった!? まさか誘導されるなんて……不覚……」

 

 プリーステスが精神的ダメージを受けて肩を落とすと、デスヨクバールのターンが訪れる。

 

「キュアミラクルに罰ゲーム!」

 

 デスヨクバールがミラクルに鉛筆を向けると、再び上から白亜のミサイルが降ってくる。

 

「あわわわ!?」

 

 ミサイルの形をした白いチョークが次々とミラクルに当たって、石灰の煙の中から悲鳴が聞こえた。そして立ち上がったミラクルは、ドレスが石灰の白と混ざって薄ピンク色になっていた。

 

「真っ白だよぉ……」ミラクルが頭と体を叩い石灰を落とすと、隣のルーンが煙たそうな顔をしていた。

「ごめんごめん」

「いえいえ~」

 

 ミラクルとルーンにはまだまだ余裕がありそうだ。

 

「パートナーのキュアマジカルにも罰ゲームデス!」

「ちょっとぉっ! そんな話聞いてないわよ!?」

「今わたしが決めましたデス」

「ふざけないで! そんなの認められないから!」

「うるさいデス! このわたしがルールなんデス! くらえデス!」

 

 無数のチョークミサイルが空気を突き抜けてくる高音がマジカルに近づいてくる。

 

「い、い、いやぁーっ!!?」

 

 その身にチョークのミサイルを受けたマジカルが白い粉とチョークの破片に埋もれて倒れた。

 

「はぅ……屈辱だわ……」

「マジカル!? 寝ちゃダメよ! 気をしっかり持って!」

 

 ルーンが大騒ぎしているプリーステスを見ながら首をかしげると、隣のミラクルに言った。

 

「二人とも、どうしちゃったの?」

「頭のいい人程ダメージが大きいみたいだね……」

 

「変なの~」そんな何気ないルーンの言葉が、頭のいい二人に無情に響く。

 

 そんなプリキュアたちの様子をぬいぐるみ達がギャラリーとして見ていた。

 

「プリキュアが見るも無残な姿デビ」

「みんな真っ白モフ~」

 

 真っ白になったマジカルが息も絶え絶えに立ち上がって足をふらつかせる。

 

「あいつの狙いはミラクルとルーンじゃなく、わたしたちよ」

 

「間接的にこちらを狙ってくるなんて、なんて狡猾な奴なの。これ以上この攻撃を受けるのはまずいわ。わたしたちの精神がもたない……」

 

 そんなやり取りをしている二人を、ルーンがバカを見るような目で見つめてくる。

 

「こんなの大したことないじゃん。二人ともだいじょうぶ~? おかしくなったんじゃなあい?」

「この苦しみは、あんたには理解できないわよ!」

 

「プフッ! あたま真っ白で縛られて怒ってるプリーステスおもしろ~い」

「あんたがクイズに失敗するからこんな姿になってんの!」

 

「もうコントはそれくらいで終わりにするデス」

「コントじゃないわよ!」

 

 デスヨクバールはプリーステスをいじってから、プリキュアたちに鉛筆の先を突き付けて、その立ち居姿に勝利の確信が満ちる。

 

「次の問題でお前たちは終わりデス。パートナーの頭の悪さを呪いながら散ってゆくがいいデス!」

 

 鉛筆の先がルーンの方に向けられる。

 

「ジャジャーン! キュアルーンに問題デ~ス!」

 

「プリーステス、今度はがんばるからみてて!」

「未だかつてこれほどの絶望感を味わったことはないわ……」

 

 プリーステスが落ち武者のような姿になっていうと、ルーンは何も気にしないで握り拳に力をいれた。

 

「キュアルーンよ、お前は超レア魔獣スカイホースを知ってるデスか~?」

 

 デスヨクバールがバカにした口調で言うと、ルーンが即答した。

 

「知ってる~。空色のとってもファンタジックなお馬さんだよ~」

「なあにそれ? どんなお馬さんなの?」

 

「魔法界の草原に住んでてね、空色で見ると幸せになれるって言われてるんだ~。あと、めっちゃ足が速すぎて、絶対に人は乗れないの!」

「すごい! そんなお馬さんいるんだ! ワクワクもんだね!」

 

「こら! お前たち勝手に二人で盛り上がるんじゃないデス! わかってるんデスかキュアルーン、お前がこの問題を間違えたらプリーステスは終わりなんデスよ!」

 

「へ? そうなの?」

 

「では問題! 魔法界の草原を駆け抜けるスカイホース! そして魔法界の空を駆け抜けるペガサス! このふたつの生物には大きな違いが二つあるデス。一つは翼の有無! もう一つはなんデスかね~」

 

 出題が終わるや否や、ルーンはすごい勢いで目の前のボタンを連打する。そしてピンポーンと景気のいい音が鳴った。

 

「ずいぶん勇んでボタンを押したデスね。答えられるものなら答えてみるがいいデス」

「は~い! スカイホースとペガサスは(ひづめ)がちがいま~す。スカイホースは奇蹄類(きているい)でペガサスは魔蹄類(まているい)です~」

 

 その答えを聞いたプリーステスの心の闇を裂いて光のごとき希望が射しこんでくる。

 

「まているいって、魔法の魔に蹄?」

 

「そうだよ~。ペガサスの蹄には魔法がかかってて、森のしゃめんとか、岩場とかを普通に歩けるの」

 

「へえ、そうなんだ!」

 

 ミラクルの目が興味で輝きだすと、ルーンが楽しそうお話しする。

 

「ついでに~、ペガサスの翼にも魔法がかかってるんだよ~。ペガサスは翼の力じゃなくて翼の魔力で飛んでるの!」

 

「すごい! ルーンて物知りなんだね!」

「生物好きだから図鑑とかいつも読んでるの~」

 

 呆然としていたデスヨクバールが、信じがたい現実の前にコミカルな瞳を大きく開き。

 

「バ、バカな!? おバカキャラのルーンがこの難問に正解したデスとぉっ!?」

 

「やったねルーン!」

「いえ~い!」ミラクルとルーンが両手を合わせて喜んでいた。

 

 さっきまで魂が抜けたようになっていたプリーステスは安堵のあまり長い溜息をはいた。

 

「ありがとうねルーン。わたしあなたを全然信じてなかった、謝るわ」

「プリーステス、気にしないで~」

 

「ぬぬ、正解者にはこのわたしを攻撃する権利が与えられるデス。さあ、いつでも来るがいいデス!」

 

「わたし攻撃ためる!」

 

「はあ? お前はなにを言ってるデスか?」

 

「ためてミラクルと一緒にパンチする~」

 

「勝手に変なルールを作るなデス! しかし、こっちも好き勝手やってる手前ダメとは言えないデスね……」

 

 そしてデスヨクバールが巨大鉛筆でミラクルを指す。

 

「愚かなりキュアルーン、デス! ミラクルがこの問題を外したら、お前の攻撃権は失われるデス! 頭の悪いお前たちに、まぐれなど二度も続かないデス!」

 

「ミラクルがんばって! あなたならできるわ!」

「まかせてマジカル! 数学以外だったら……」

 

「ほほう、数学以外なら出来るとでもいうのデスか? ならば希望に答えてやるデスよ。正し、難易度はあげあげデス!」

 

 そして運命のお題が出される。

 

「江戸の無血開城を行った人物とその理由を述べよ、デス!」

 

 マジカルもプリーステスも理由までなんて酷いと思ったが、ミラクルはすぐにボタンを押した。

 

「フン、玉砕覚悟であてずっぽうに答える気デスね。そんなに甘い問題じゃないデスよ」

 

「江戸の無血開城をしたのは勝海舟(かつかいしゅう)だよ。理由は確か……江戸の民の命を守りたかったのと他国に侵略されないためだよ。幕府はすごい海軍の戦力を温存していたんだけど、それでも勝海舟は戦わない道を選んだんだよね。戦争なんてして日本が疲れたら他の国に攻められちゃうもんね」

 

「な、なぁにぃーーーっ!? 正解などありえないデス!?」

 

「わたし歴史大好きなんだ! 歴史上の有名人ってワクワクするよね!」

 

 ルーンがミラクルの正解を喜んでぴょんぴょん跳ねる。

 

「やった! やった!」

「いえ~い!」ミラクルとルーンはまた二人で両手を合わせた。

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