魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

114 / 141
理性と情熱のプリキュア

 小百合とラナも左手と右手をつないで後ろ手にして、小百合には輝く白のローブ、ラナは輝くレモン色のローブを身にまとい、もう一方の手を上に向けて呪文を唱える。

 

『キュアップ・ラパパ!』

 

 二人の少女の背後から、群青色の光が天上へと打ち上げられ、飛び上がったリリンがコウモリのような翼と両手を広げる。遥か上空へと至った群青の光が屈折し、リリンの青いリボンブローチに撃ち込まれる。そしてリリンの胸に群青の宝石が現れ、その周囲で無数の小さな氷の結晶が輝きを散らす。

 

『アウィン!』

 

 周囲が一瞬で凍てつき、青い氷に覆われた世界が現れる。花のような氷の結晶と、ふんわりとした綿雪が漂う氷の世界で、下から吹き上がる吹雪が氷の花と一緒に小百合とラナを上空へと運んでいく。そして、二人の下に大きな氷の結晶が現れると、その上で少女たちは手をつなぎ、そこへリリンが飛んできて二人と手と手をつないで輪になる。

 

『セイント・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 3人が氷の上をすべるように華麗に円を描き、舞い散る雪と氷の結晶の中、リリンの体に群青色のハートが現れる。リリンの手から二人の手へ青い光が伝わり、その光が二人のローブを群青色にかえていく。

 

 群青のローブ姿になった小百合とラナが左手と右手を放して手の平を上へ、辺りを漂っていたたくさんの綿雪が彼女らの頭上に集まって、綿を集めて作ったような白くてフワフワのハートになる。白雪のハートが弾けると、冷たい白薔薇の花吹雪が舞い上がる。

 

 小百合の首に白い花吹雪が円を描いてまとわり、それが消えると下に向かって尖った形の青いネックリボンが現れ、飛来した一枚の花弁がネックリボンの尖った先で消えて氷の結晶に変わる。無数の白い花びらが少女のしなやかな身体をめぐり、それが消えると雪のように白い光が小百合を包み込む。そして雪が吹き散らされるように白い輝きが散り散りになると全身にドレスが現れる。肩から胸元まで広く開く青味のある白のドレスの袖はツララのように鋭く尖ったフリルになっていて、胸の部分は青地に覆われ、右の腰から左の足元に向かって片側に長く垂れるスカート、その下に青いフレアスカートと白のミニスカートで二重になる。

 

 続いて白い花びらがプリーステスの腰回りに集まって円に舞うと、花弁が消えてライトブルーの帯に変化し、その右側に青、白、青の小さなストライプリボン、リボンから長く垂れる余りの部分の先はツララのように鋭く尖っている。そして、ストライプリボンの中央にある赤い月が輝く。

 

 白い花びらがラナの首を巻くように踊ると、青いフリル付きの中央に赤い星のついた黄色のネックリボン、たくさんの氷の結晶がクルクル回りながらラナの前を通り過ぎると、群青に輝く衣がドレスに早変わり、白いフリルの付いたパフスリーブ、スカートは短く内側にさらに水色のスカートが見える。ドレスはほぼ青色に統一されるが、胸の下からスカートまで青、黄、青の縦のストライプになっている。幅の広い黄色のフリル付きの青い帯リボンがスカートを一周していて、いて、その帯リボンにそってスカートの右端に青、黄、青の小さなストライプリボン、その中央には赤い星型が付いている。そして背中にはライトブルーの大きなリボン、そのリボンから長く垂れる余りの部分は先が鋭く氷柱をイメージさせる。

 

 プリーステスの両足が凍り付き、瞬間に氷が粉々になると、群青の宝石を飾った白いハイヒールと、足首から大腿部までを青みのある白色のレッグドレスにつつまれる。ルーンが氷におおわれた両足を合わせてキンと高い音をたてれば、砕けた氷が、履き口の周囲にツララのフリルがあるライトブルーのブーツに変わり、上からふってきた氷の結晶が足首で群青の宝石が光る黄色のリボンになった。

 

 プリーステスとルーンが左手と右手を触れるか触れないかの感覚でふんわりとつなぐと二人の腕が同時に氷におおわれて、それが粉々に砕けた。するとプリーステスの手甲から肘にかけて裾がツララのように鋭いフリルになっている青いサテングローブ、手首には銀色の腕輪が現れる。ルーンの手に現れた黄色のフィンガーレスグローブの裾は、先が鋭くなっている白と青の2重フリル、手首には中心に群青の宝石が輝く小さな青いリボンがある。

 

 二人の髪型が同時に変化する。プリーステスの長い黒髪は左側で青いリボンに結わえられてサラリと流れるサイドテールになり、続いて頭の左側に赤い三日月のアピンが現れる。ルーンのレモンブロンドは水色のリボンで結わえられたふんわりサイドテールになり、テールからは何本かツララのように先の尖ったくせ毛が飛び出す。頭の左側にミドルサイズの黒いトンガリ帽子も現れて、帽子の真ん中に赤い星型が出現した。

 

 回転する氷の結晶がプリーステスとルーンの胸に飛来する。プリーステスの肩回りを白い光が包み込んで、シクルの布のように薄く広がった光が、縁が青いファーになっている白いショートマント変わる。マントの合わせ目になっている左胸に飛んできた氷の結晶が砕けて消えて、氷の結晶を模した六枚の青いリボンが開き、中央にある群青のアウィンが光を放つ。もう一つの氷の結晶はルーンの胸で弾けて消えて、中央に群青の宝石が宿る大きなライトブルーのリボンになった。

 

 プリーステスとルーンは氷の世界でリリンと再び手をつないで輪になると、左足を上げて流麗に右足のつま先で立って、きらめく冷気をまとって円舞し、青き氷の世界の底に消えていく。

 

 現れた群青色の月と星の六芒星が回転して高く舞い上がり、垂直の状態で落ちてくると、魔法陣の前にプリーステスとルーンとリリン召喚される。二人は後ろで壁になっている魔法陣を蹴って飛翔し、二人の間にいたリリンは魔法陣から現れた氷の架け橋を滑って離脱、そして青き乙女たちが舞い降りる。

 

右側のプリーステスが低温で凍った空気をまとう右手をゆっくり動かして、顔をなでるような軌道を描いて緩やかに、そしてしなやかに美しく手を高く上げ、きらめく氷の粒を散らしながら高く上げた手を右下へと振りおろし、

 

「光さす慈愛の聖女、キュアプリーステス!」

 プリーステスの周囲に無数の氷の結晶が舞い上がる。

 

 左側のルーンは左手に輝く冷気をまといながら、その手で大きな円を描くと同じ形の輝く円が宙に残る。彼女はその手を頭の上にかざし、右手を前に愛らしくウィンク、

 

「メラメラの黄昏の魔法、キュアルーン!」

 ルーンの斜め上から回転する氷の結晶がたくさんふってくる。

 

 プリーステスとルーンは左手と右手をつないで後ろ手にし、寄りそいあって、もう一方の手は中に凍った薔薇でもあるかのよう柔く触れ合いながら両目を閉じる。そして背後でつないでいた手を前に、返した手のひらを重ねた可憐な姿で、

 

『魔法つかいプリキュア!』

 二人の背後で大きな氷の花が開いた。

 

「ルビーと」

「アウィンのプリキュアデビ!」

 

 モフルンとリリンの声により、焼き捨てられた大地に理性と情熱のプリキュアが顕現したことが知らされた。

 

 色も性質も対極のプリキュアが四人そろう。そしたらルーンは心配になった

 

「ちょっと思ったんだけどさあ。炎と氷って合わないんじゃなあい?」

 

 それにマジカルが安心させるような微笑を交えて答える。

 

「そんなことないわよ」

「真逆だからこそいいんじゃない」

 

 プリーステスが言うとルーンは無条件に安心できた。

 

 ヨクバールの近くで腕組みして宙に直立していたロキがプリキュアを見下ろし、憎しみの色に染まっている異様な目を見開き命令する。

 

「ようやくお出ましか、プリキュア! 行け、豪ヨクバール! 奴らを八つ裂きにしろ!!」

 

「ゴウヨクバアァァーーールッ!!」

 

 虫の翅を激しく動かして耳障りなおとを立てながら、巨大な怪物がプリキュアたちに向かって急降下していく。

 

「くるわよ!」プリーステスが叫び、乙女たちは二組に分かれて散開する。

 

 プリキュアたちが飛びし去った後に、ヨクバールの竜の骸骨の口から飛び出しているクワガタのハサミが地面に深々と突き刺さる。そして尋常ならざるパワーでハサミが地面を深く切り裂くと、そこから縦に亀裂が走り、地面が大きく口を開けて大きな岩や焼け焦げた倒木を飲み込んでいく。

 

 後ろに跳んだミラクルとマジカルは着地した状態で灰と化している地面を少し滑りながら前かがみになり、踏み込みと同時に地面の灰と土を爆発させて突出する。空中に逃げたプリーステスとルーンは、空中に咲かせた氷の結晶の上に乗り、その上から二人で同時に跳んでヨクバールに接近する。ヨクバールの岩に覆われたごつい腹にミラクルの右ストレートとマジカルの左ストレートが一部の狂いもなく同時に叩きこまれ、二人の拳から炎が噴き出る。プリーステスとルーンは空中で縦回転して、プリーステスが右からの回し蹴りを、ルーンが左からの回し蹴りを、同時の蹴りでヨクバールの竜の骸骨を左右から挟撃する。そしてヨクバールの顔が瞬時に凍り付いていく。

 

「ヨクバールッ!」

 

 豪ヨクバールが胸を張るように体を沿ってすべての攻撃を一気に跳ね返した。ミラクルとマジカルは後方に押し返され、プリーステスとルーンは骸骨から剥がれて砕けた氷の破片を浴びて後退する。

 

「なんて硬い体なの!? ルビーのパワーが全く通用しないなんて!?」

「ゴウヨクッバール!」

 

 ミラクルと一緒に踏みとどまった場所でマジカルが言うと、豪ヨクバールの岩そのもののような拳が襲ってくる。ミラクルとマジカルは腕を固くクロスに組んで防御すると、全身を砕かれるような途轍もない衝撃を受け、二人で一緒に悲鳴をあげながら吹っ飛んだ。

 

 空中で円形の氷の上に立っていたプリーステスとルーンには、鱗の代わりに岩を張り付けたような巨大なトカゲのしっぽが叩きつけられる。二人で協力して目の前に大きな氷の盾を作るが、粉々に砕かれて尻尾の一撃で叩き伏せられた。

 

 地上に沿って吹っ飛ばされたミラクルとマジカルは、焦げた大地に落ちると水面を跳ねる飛び石のように何度も地面に叩きつけられ、最後はその身で破壊した地面の土を波立たせる。尻尾に叩き落されたプリーステスとルーンは、即座に地面に叩きつけられて、まるで噴火でも起こっているように粉塵が高く吹き上がった。それを地上で見ていたモフルンとリリンは青ざめるような心持になった。

 

「ミラクル、マジカル!?」

「あわわ、あれはやばい奴デビ」

 

 危険を感じたリリンがモフルンを背中からつかんで飛び上がり、上空からプリキュアたちがいるはずの場所を見下ろした。

 

 同じく上空から戦いを傍観していたロキは会心の笑みを浮かべる。

 

「フハハハ! 俺様の豪ヨクバールに勝てるはずがねぇ。あいつはプリキュアの力を遥かに凌駕している! プリキュア共はここで終わりだ!」

 

 その頃、避難して離れていたチクルンにもヨクバールが何者かと戦っているのが見えていた。

 

「あいつらだ、プリキュアが来てくれたんだ!」

 

 彼は居ても立ってもいられずに、プリキュアたちがいる戦場へと飛んでいった。

 

 えぐれた大地に埋もれていたミラクルとマジカルが負けじと立ち上がり、二人で同時に風を切って走り、途中で別れて弧を描いてヨクバールの左右から近づく。

 

『リンクルステッキ!』

 

 別々の場所で二人で同時にステッキを手に持って構える。

 

「リンクル・ペリドット!」

「リンクル・アクアマリン!」

 

 ミラクルの緑葉の魔法とマジカルの氷の魔法がヨクバールに同時に向けられる。

 

 大きく陥没した地の底に倒れていたプリーステスとルーンも高く跳躍し、二人で並んで氷の足場に乗るとリンクルストーンに呼びかける。

 

「リンクル・ローズクォーツ!」

「リンクル・インディコライト~!」

 

 プリーステスの手から水晶の花びらが舞い、ルーンの手から青い電流がほとばしる。

 

 4人のプリキュアの魔法が同時に豪ヨクバールを捉えた。怪物の巨体を木の葉と水晶の花びらが覆っていく。そして冷気が一気にそれらを凍らせて、最後に身動きの取れなくなったヨクバールに電流が撃ち込まれる。

 

「ヨ、ヨ、ヨッ……ゴウヨクバアァールッ!!」

 

 強烈な咆哮と共に4人のプリキュアの魔法が全てかき消された。麗しき乙女たちの顔に暗い驚愕が満ちる。

 

「なんて奴なの!? これに比べたら、今まで戦ったヨクバールなんて物の数ではないわ!」

 そう言うプリーステスにいつもの余裕がなく、ルーンは怖くなってきた。

 

 上空から心配そうに見ているぬいぐるみ達の前にチクルンが現れる。

 

「おい、おまえら!」

「チクルン! 大丈夫だったモフ?」

「ああ、この通りピンピンしてるぜい」

 

「おお、勇者チクルンよ! 今こそ汝の力が必要な時デビ。あの怪物と戦うデビ」

「無茶言うなって……」

 

 この瞬間、ミラクルとマジカルの気合一斉と共に小さな者たちに衝撃が襲ってくる。赤きプリキュアたちが怪物に攻撃しただけで、上空まで衝撃波が飛んできたのだ。彼らの目下ではミラクルとマジカルが接近戦で豪ヨクバールに執拗に攻撃を加え、プリーステスとルーンは遠距離から氷柱のミサイルを飛ばして攻撃していた。

 

「ここにいるのはあぶねぇ! あそこに隠れろ!」

 

 チクルンが巨大な倒木を指さし、3人で倒木の陰に移動すと、3人で倒木の後ろから頭だけ出してプリキュアたちの戦いを見つめた。

 

 マジカルが豪ヨクバールの足に蹴りを打ち込み、ミラクルは骸骨の側頭部に跳び蹴りを決めるがびくともしない。

 

「ヨクバァールッ!」

 

 ミラクルが豪ヨクバールの手で叩き落され、マジカルは蹴り上げられる。

 

「うああぁっ!?」

「キャアァーッ!?」

 

 二人とも地面に叩きつけられて焼かれた大地の灰と火の粉が舞い散る。

 

「ヨクッバアァーーールッ!」

 

 ヨクバールが竜骸骨の口から吐き出した火炎がプリーステスとルーンを巻き込み、二人の足場になっていた氷の花が蒸発し、氷の乙女たちが煙をあげながら墜落した。

 

 隠れてみているぬいぐるみたちは、圧倒的な豪ヨクバールの強さに震えてしまう。

 

「ミラクル、マジカル……」

「プリーステス、ルーン……」

「やべぇ、まじでやべぇよ……」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。