魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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このお話を投稿した6月12日は、みらいちゃんのお誕生日です。おめでとうございます!


ルビーとアウィンの大魔法

 空で戦いを見ているロキは、笑いが止まらないという気分だった。

 

「終焉の時だ。止めをさせ! 豪ヨクバール!」

 

 竜の骸骨の赤い目が光り、大きく開いた竜の顎の奥に真紅の光が滞留する。

 

「ゴウヨクバアーーールッ!」

 

 豪ヨクバールが叫びながら真紅の光線を口から撃ち、自分が回って周囲を焼き溶かして円を刻む。そしてヨクバールを囲う真紅の円から炎が噴き出して暴力的な勢いで周囲に広がた。炎が迫り、モフルンとリリンとチクルンは身を縮めて大木の陰に隠れる。そして倒れていた4人のプリキュアたちも炎に飲み込まれていく。ロキは炎熱の地獄と化した妖精の里を見下ろして高らかと勝ち誇った笑い声をあげた。

 

「う、うそだろ……」

 

 隠れていたチクルンが顔をあげ、燃え上がる世界を見て絶望する。さすがの彼でも、プリキュアたちはもう駄目かと諦めかけた。モフルンとリリンは信じる心で周囲に燃え上がる炎に目を凝らす。そして二人のぬいぐるみに可愛らしい笑顔が浮かんだ。

 

「ミラクル! マジカル!」

「プリーステス! ルーン!」

 

 炎の中より現れし4人の乙女たち、ミラクルとマジカルのペアと、プリーステスとルーンのペアが別々の場所に立っていた。マジカルのリンクルステッキの先端とプリーステスの手の平からムーンストーンとブラックオパールのバリアが広がっていた。しかし、防御には間に合ったものの、完全に防ぐことはできずに、みんなドレスが少し焼け焦げていた。

 

「チッ、しぶとい奴らだぜ」

 

 プリキュアたちの姿を見たロキが不快そうに舌打ちした。

 

「どうしようプリーステスぅ。こんなの無理だよ~、勝てないよ~」

 ルーンがプリーステスの後ろで涙を浮かべる。

 

「大丈夫よルーン、わたしたちは負けない。わたしを信じなさい」

「わかった、信じる!」涙目だったルーンが急に本当に光って見えそうなくらいの笑顔になった。

 

 4人のプリキュアたちが同時に高く跳んで、強大で凶悪な豪ヨクバールの前に着地して横並びになる。その行動にロキは興味がわいて、彼女らに近づいて上から声をかけた。

 

「何の真似だ? 倒されるなら4人で仲良くってところか?」

 

「はあ? なに寝ぼけたこと言ってんのよ! チクルン見てなさいよ、今からそのでか物をぶっとばすからね!」

 

 プリーステスがロキを罵倒して豪ヨクバールを強く指さすと、他の少女たちの怒りも噴火のごとく爆発した。次にルーンが両手を拳にして怒りだす。

 

「わたし激おこなんだからね! 友達のチクルンをいっぱいいじめたの、絶対許せない!」

「大切な友達の故郷を、妖精の里をこんなふうにして、絶対に許せない!」

 

 ミラクルも激怒し、ロキはプリキュアたちの怒りの集中砲火を浴びて無意識のうちに身を引いていた。マジカルは他の3人とは違って、怒りを声には出さなかった。

 

「チクルンはわたし達にとって、かけがえのない友達よ。そして返しきれない程の恩があるわ。そのヨクバールを倒せば少しはその恩が返せるかしら」

 

 プリキュアたちの声を聴き、姿を見ていたチクルンは涙が溢れた。

 

「おまえら……」

 

 ロキには先程までの余裕がなくなり、忌々し気に顔をしかめていた。

 

「正気か貴様ら? 豪ヨクバールはてめえらのパワーを遥かに超えた存在だ。散々戦ってもまだ理解できねぇのかよ」

 

「それは理解しているわ。その上で倒すと宣言する!」

 

 プリーステスがはっきりと言った。するとロキの表情がさらに醜くゆがむ。

 

「なぁにぃーっ!?」

 

 プリーステスが手の平を前に豪ヨクバールに向ける。

「情熱に理性が加われば!」

 

 マジカルが豪ヨクバールを力強く指でさす。

「怖いものなど何もないわ!」

 

「小賢しいっ! 叩き潰せ! 豪ヨクバール!!」

「ゴウヨクバアァァーーールッ!!」

 

 その瞬間にマジカルがプリーステスと言葉を交わす。

 

「それぞれのスタイルで得意なことだけに集中しましょう!」

「それがベストね! 行くわよルーン! まずはわたしたちの出番よ!」

「よ~し、がんばるよ~」

 

 プリーステスとルーンが左手と右手を合わせると前に突出していく。豪ヨクバールは羽音をたてて低空を飛び、巨大なクワガタのハサミを突き出して向かってきていた。プリーステスとルーンはリンクルストーンを呼び出す。

 

「リンクル・ブラックオパール!」

「リンクル・スタールビ~」

 

 迫りくる怪物の前で二人は寄りそい結んだ手に力を込める。

 

『二つの魔法を一つに! 堅牢なる黒き盾よ!』

 

 目前のヨクバールを止めるとでもいうように、二人一緒にブレスレットのある手を前に出す。

 

『プリキュア! ブレイオブハートシールド!』

 

 神秘的な7色の輝きを宿す黒いハート形の盾がプリーステスとルーンの手から広がり、豪ヨクバールの凶悪なハサミを受け止めた。瞬間、強い圧力があって二人の両足が地面にめり込んだ。

 

 後方に控えているミラクルとマジカルはパワーを集中させていた。

 

「二人を信じて、わたしたちは全力で攻撃する!」

「ええ!」マジカルはミラクルと目を合わせて言った。

 

 こんな時にルーンが泣き言をいいだす。

「うう、無理だよ~、壊されちゃう~っ!」

 

 ハート形の黒いシールドに亀裂が入っていく。

 

「完全に止める必要はないわ! できるだけ敵の勢いを削いだらタイミングを見計らって逃げるの! わたしが合図したら横に跳びなさいね!」

「わ、わかった~」

 

 ヨクバールがさらに翅を早く動かして推進力をあげてくる。黒いハートのバリアにさらに圧力がかかり、プラスチックの下敷きを折り曲げるように変形し、ハサミの先端を止めている場所から亀裂が一気に広がる。

 

「ミラクル、マジカル、後は任せるわ! 今よルーン、跳びなさい!」

「とお~っ!」

 

 右側にいたプリーステスがヨクバールを避けて右に跳び、ルーンもそれに釣られて右に跳んだ。その一瞬、プリーステスの目にヨクバールの前に飛び込んでいくルーンの姿が見えて凍り付いた。

 

 ルーンは横っ飛びの態勢でベシッと前に出てきたヨクバールの両目に張り付いた。

 

『ええぇーっ!!?』

「なにやってるのよ!!? バカーッ!!」

 

 ミラクルとマジカルが同時に驚愕する声と、プリーステスの罵声が混じりあった。ルーンはヨクバールの顔面に張り付いて涙目になっていた。

 

「だってぇっ! よこにとべって言ったもん!」

「わたしと同じ方向に跳んだらぶつかるでしょうがっ!」

 

「ヨ、ヨクッ!?」

 いきなり視界を遮られたヨクバールの勢いが止まる。

 

「マジカル、どうしよう!?」

「構わず攻撃よ! ここでやらなければ、反撃の機会がなくなるわ!」

 

 ミラクルとマジカルはルビーに秘められたパワーを最大限にまで高める。

 

『はぁーーーっ!』

 

 二人は足元で炎を爆裂させ、ヨクバールの向かって跳躍した。

 

『だあぁーっ!!』

 

 ミラクルとマジカルのダブルパンチが竜の骸骨の鼻面にめり込み、突き出た鼻がひしゃげる。そして衝撃が怪物の後頭部に突き抜けて頭から後ろに向かって吹っ飛んだ。

 

「ヨクバァールッ!?」

 

 ルーンは張り付いていた態勢のまま空中にとり残されていた。落ちてきたルーンをミラクルが受け止める。

 

「ルーン、大丈夫?」

「あ~、びっくりした~」

 

「びっくりしたのはこっちよ!」

「まあまあ、おかげでヨクバールに攻撃の隙ができたんだし」

 

 マジカルが激おこのプリーステスをなだめた。それに、いまはルーンを叱っている暇なんてない。プリーステスはすぐに気持ちを切り替えた。

 

「わたしたちは徹底的にサポートするからね」

「よろしく頼むわ。わたしとミラクルは攻撃する事だけを考えるから」

 

「ルーン、先行するからね! ついてきなさい!」

「は~い!」

 

 プリーステスとルーンが先に走り、その後をミラクルとマジカルが疾走した。並走するミラクルとマジカルを中心にして、その左右にルーンとプリーステスが走るⅤ字型のフォーメーションで豪ヨクバールに向かっていく。

 

「ヨクバールッ!」吹っ飛ばされて大地に打ち倒れていたヨクバールが立ち上がろうとする。

 

 プリーステスとルーンが手の平に乗せた群青色に輝く球体を同時に前に飛ばす。そして光り輝く二つの群青色の球はヨクバールの周囲で大きな円を描き、そして描いた円の内側の範囲が瞬時に氷の大地に変わった。立ち上がろうとしていたヨクバールの巨体が氷に足を取られて傾ぐ。

 

「ヨッ!? ヨヨヨッ!?」

 

 ルーンが左手をあげると、そこにあるブレスレットのスタールビーが燃え上がるように赤く輝いた。

 

「ミラクル、マジカル、受け取って~!」

 

 スタールビーが生み出した真紅に輝く光が二つに分かれて、ミラクルとマジカルの胸の中心にすっと入っていくと、二人の周囲に真紅の炎が燃え広がる。

 

『はああぁーっ!!』

 

 氷で滑って倒れそうになった豪ヨクバールの翅が高速で動き出して羽音が広がる。そして怪物の巨体が少し浮き上がったところにミラクルとマジカルが滑り込んでくる。二人が氷の上でしゃがんだまま手を強くつなぐと、周囲に炎が広がって一瞬で氷が蒸発した。そしてミラクルとマジカルは思いっきり大地を蹴って、真上で飛び立とうとする豪ヨクバールに向かって突撃する。

 

『いやああぁーーーっ!!』

 

 ミラクルとマジカルがつないでいない方の手を硬く握ると、二人で同時に怪物の腹に拳を叩きこんだ。少女の華奢な体から放たれた鬼神の拳が豪ヨクバールの腹に深々とめりこみ、次の瞬間に激烈な衝撃がヨクバールの背中から突き抜けて、腹部と背面の岩の鎧を同時に粉砕した。

 

「ヨグバァルゥーーーッ!!?」

 怪物の巨体が真上に吹っ飛んでいく。

 

「ミラクル~!」

「マジカル!」

 

 プリーステスとルーンが手から放った群青の光の玉が真上に飛ばされたヨクバールを追って舞い上がり、その途上に円盤型の氷の足場を作っていく。ミラクルとマジカルがそれに次々飛び移ってヨクバールを追跡する。そして群青の光の球がヨクバールを追い抜いてさらに高く上がり、二つの光で大きな円を描いて氷の天井を作る。次にヨクバールを追い抜いてきたミラクルとマジカルが宙返りし、円形の氷の天井に並んで足を付いて屈むと、再び左手と右手をつなぐ。

 

『だああぁーっ!』

 

 二人が氷の天井を蹴って下に向かって突出すると、炎が広がって氷が一気に蒸発した。

 

『やあぁーーーっ!!』

 

 ミラクルとマジカルのダブルパンチが今度は岩の鎧を失った怪物の背中にめり込んだ。

 

「ヨグゥーーーーーーッ!!?」

 

 豪ヨクバールの悲鳴が長い尾を引き、巨体が地面に叩きつけられる。爆発した大地から土と灰と火の粉が空高くにまで舞い上がった。

 

「い~やったぁ~っ! 二人ともさいっこうにファンタジックだよ~!」

「ルビースタイルにスタールビーの魔法、力だけならこれ以上のものはないわね」

 

 プリーステスとルーンが高揚するのとは真逆に、ロキは空中で青ざめていた。

「バカな! こんなバカな! なぜこんなことが起こる!?」

 

 ミラクルとマジカルが地上に降りてくると、4人のプリキュアたちは豪ヨクバールを囲むように再びⅤ字型フォーメーションを組む。そこにリリンがモフルンを抱えて飛んできて、モフルンをミラクルとマジカルの前に放した。

 

「行くわよルーン!」

「ほいさ~」

 

 プリーステスとルーンの足元から凍てついて氷の世界が広がっていく。リリンはリボンの中心で輝くアウィンから群青色に燃える球体を取り出し地面に置いて転がして雪玉のように大きくしていく。

 

「デビーッ!」

 

 リリンは大きくなった群青の光の玉を、頭の上に持ち上げてプリーステスとルーンに向かって投げた。それが途中で二つに分かれて、二人が高く上げた腕輪の中心に吸い込まれるとアウィンのリンクルストーンが輝きを放つ。

 

『アウィン! 冷厳なる理性よ、わたしたちの手に!』

 

 二人の足元から氷の柱が突き上げられ、二人同時に高い場所へと誘われていく。そして二人で一緒に氷の柱の上から跳んで、さらに高みへと昇華する。

 

 プリーステスとルーンは空中で出会うと後ろで左手と右手をつないで体で触れ合い、もう片方の手を真下のヨクバールに向ける。

 

『プリキュア! アウィンレクイエム!』

 

 プリーステスとルーンの手から敵に向かって放たれた群青の光が途中で五条の光線に分かれる。同時にヨクバールの上に五つの魔法陣が開き、それらの魔法陣の中心に光線が撃ち込まれた。五つの魔法陣が凍てつく群青色の炎で燃え上がり、豪ヨクバールに向かって魔法陣から無数の氷の結晶が渦を巻く五つの冷たい波動が撃ち込まれた。

 

「ヨ……ヨクッ……」

 

 豪ヨクバールは立ち上がった状態で完全な氷漬けになって動けなくなった。

 

「二人とも、今よ!」

 

 ミラクルとマジカルが目と目を合わせて頷いた。

 虚空に現れしリンクルステッキがクロスすると、ミラクルとマジカルがそれぞれのリンクルステッキを手にして構える。

 

『リンクルステッキ!』

 

 モフルンのリボンの中心にある真紅の宝石から強烈な輝きがあふれ出す。

 

「モッフーーーッ!」

 

 モフルンのルビーから放たれた赤い波動がミラクルとマジカルの背後から迫る。二人は振り向き、交差した二本のリンクルステッキで波動を受け止めると、強い衝撃がプリキュアのパワーを凌駕する。二人ともステッキごとに倒れそうな程に体を弾き出される。その瞬間に、ステッキにセットされているダイヤがルビーに変わり、ステッキの先端にある星とハートのクリスタルが真紅に輝く。

 

『ルビー! 紅の情熱よ! わたしたちの手に!』

 

 ミラクルとマジカルは左手と右手をつないで高く上げ、リンクルステッキはそろえてまっすぐ前にかざす。モフルンのルビーから真紅の光が広がって、二人にさらなる力を与える。

 

『フル、フル、リンクルーッ!』 

 

 二人がステッキの輝きで描いたハートが一つに重なり、そこに真紅の輝きが渦を巻くように集まって、ハートが真紅に燃え上がる。二人がリンクルステッキを天に向けると、真紅に燃えるハートが打ち上げられて爆風が起り、ミラクルとマジカルも上空へと跳躍する。

 

 真紅のハートは五つに分裂し、五つのハートを内に宿す真紅の五芒星へと変化する。垂直に立っている五芒星の魔法陣に、ミラクルとマジカルた着地して身を屈め、ずっとつないでいる手を上へ、リンクルステッキは目の前でクロスさせる。

 

『プリキュアッ! ルビーパッショナーレ!!』

 

 赤い魔法陣から爆炎が吹き出し、そして火炎の中より真紅のルビーの輝きをまとった乙女たちが躍り出る。赤き二人のプリキュアが氷漬けの豪ヨクバールと衝突し、通り過ぎていくと、彼女らの軌跡に残った真紅の光の帯が渦を巻いてヨクバールを上へと持ち上げていく。そして怪物が真紅の光の帯で織り上げられたリボンの結び目に封印される。

 

「ヨクバール……」

 

 光のリボンから垂れる2本の帯が同時に引かれ、結び目が小さくなり、豪ヨクバールが強靭な魔力で圧縮され、光のリボンが解けると同時に浄化された。

 

 怪物の元となった四つのものが、淡く輝きながら降りてくる。マジカルがその中から闇の結晶だけをその手に収めた。

 

「やったぁ~」

 バンザイしているルーンにミラクルが両手を合わせ、マジカルとプリーステスも笑顔で右手同士を合わせて軽快な音を鳴らした。

 

「やった~モフ!」

「やった~デビ!」

 モフルンとリリンもプリキュアたちの足元で両手を合わせていた。

 

 ロキは歓喜するプリキュアたちを見下ろして汗を垂らしていた。

「ありえねぇ! 豪ヨクバールはプリキュア共の力を間違いなく超えていた! それなのになぜ倒される!? 何がどうなってやがるんだ!?」

 

 混乱するロキの脳裏にフェンリルの姿が浮かぶ。

「フェンリルの奴が何だかんだ言っていたのはこれか? あいつはプリキュアが何らかの方法でパワーを上げることを知っていたんだ。今となっちゃあ、それを知る術はねぇが……」

 

 4人のプリキュアの突き刺さるような視線がロキに集まった。彼は指を弾くと逃げるようにその姿を消した。

 

 4人のプリキュアたちの足元から、焼けて消失した森や花々が元の姿を取り戻して広がっていく。無残に焼け落ちた妖精たちの住処の大樹も、元の美しい姿を取り戻していった。

 

 

 

 草花の咲き乱れる森には色とりどりの無数の蝶が飛び、穏やかな風が花の香を運んでくる。

 

「助けてくれて、ありがとよ」 

 

 4人のプリキュアの前に妖精たちが集まっていた。チクルンが一番前に出て彼女らを見上げていた。

 

「助けに来るのが遅くなってしまったわ」

「ごめんね、チクルン」

 

 プリーステスとルーンが済まなそうに言うと、チクルンの見上げる顔に笑みが浮かぶ。

 

「なにいってんだよ! みんなも無事! 妖精の里も無事だい! 謝ることなんて何もねえって!」

 

 するとマジカルが両目を閉じてツンとした感じになる。

「それじゃ、わたしたちの気が済まないわ。恩返しはまだまだこれからよ」

「チクルンも一緒に魔法商店街の感謝祭に行こう!」

 

 ミラクルとマジカルの言葉を聞いて、チクルンは半ば呆然としてプリキュアたちを見上げていた。

 

「チクルンや、よき友を持ちましたね」

「女王様……」

 

 チクルンはプリキュアたちの前に飛び上がると、笑顔と涙を浮かべて言った。

「しょうがねぇな、そこまで言うなら行ってやるぜ」

 

 彼のそんな軽口に、強く優しく美しい乙女たちは笑顔で答えた。

 

 

 

 魔法界に夜の帳が降りる頃に、氷の大樹の近くにたくさんの人々が集まっていた。リコたちも用意されたベンチに座って闇の中に居座る冷たいツリーを見つめている。

 

「チクルン、クラーケンの足焼き美味しいよ!」

 みらいが差し出した足焼きをチクルンが一口食べて、

「うめぇ!」

 

「ドラゴンの卵入りの鈴カステラもおいしいよ~」

 ラナが差し出したそれを食べてチクルンはまた「うめぇ!」と言い、さらにモフルンが小さなりんご飴を出してくる。

 

「これも美味しいモフ~」

「ありがたいけどよ、そんなに一気に食えねぇって」

 

 その時、会場のざわめきが小さくなっていった。氷のツリーに飾られた魔法のランタンの一つに明かりが灯されていた。これがイベント開催の合図だった。

 

「みんなちゅうもーく!」

 箒店のグスタフの大声が闇の中から聞こえてくる。

「ライトアーップ!」

 

 氷の大樹に飾られた無数の魔法のランタンが一気に点灯する。途端に感動と感嘆の声が沸き上がった。色とりどりのランタンの光が氷の樹木の枝や幹に反射して複雑で優美な光彩が地上に落ちる。集まった人々はまるで万華鏡の中にでも迷い込んだような幻想的な景色の中で、透き通るような輝きの大樹を見上げていた。

 

 チクルンは幻想の中で、ふと今思っていることを素直に口にした。

 

「おいら魔法界に生まれて本当に良かった。おまえらみたいな最高の友達に出会えたからな」

「わたしたちも同じ気持ちよ」

 

 神秘の輝きの中でリコが言った。チクルンは四人の少女と二人のぬいぐるみの姿を見て、笑顔の内に涙を零した。心の現れる輝きと共に魔法商店街の夜は過ぎていった。

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