魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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第26話 ついに決戦!! 闇の王と魔法つかいプリキュア!!
闇の王降臨


 闇の中でロキはボロの木製の椅子に座り腕組みしていた。玉座は自分で壊してしまったので、こんな椅子に座っているのだ。

 

「あの4人のプリキュアに下手な攻撃を仕掛けるのはまずい。理由はよくわからねぇが、あいつら4人で戦う程に強くなっていやがる。全く意味がわからねぇ。元は敵対してやりあっていたっていうのによ……」

 

 ロキがどんなに頭をひねっても、それを理解することはできない。そして彼にはその必要もなかった。

 

「遊びは終わりにするか」

 ロキは立ち上がると、指を鳴らしその姿を消失させた。

 

 

 

 ロキは転移先で口角を上げて牙を見せる。そして邪悪な笑みのまま薄暗い通を歩き出した。やがて開けた場所に出ていくと、彼の前に黒いマントの闇の魔法使いと漆黒の鎧の騎士が立ちはだかった。

 

「よう、フレイア、闇の結晶をもらいにきたぜ」

 

 ロキの視線はバッティとダークナイトを越えて、玉座にいる闇の女神を見ていた。

 

「無礼者め!」

「フレイア様には指一本触れさせませんよ!」

「どけ、雑魚どもが!」

 

 ロキが手を一振りした衝撃で、バッティとダークナイトが吹き飛ばされ、二人とも近くの石柱に叩きつけられる。闇色の騎士と魔法つかいが、石の破片と共に崩れ落ちる。

 

 ロキは悠々と歩き階段の上の玉座にいるフレイアを見上げる。彼の笑みが口が裂けたかと思うくらい大きく歪んだ。それを見下ろす目を閉ざした闇の女神からはいつもの笑顔が消えていた。

 

「フレイア、おまえの闇の結晶はいつでも奪うことができた。けどよ、面白そうだから泳がせておいたんだ」

 

「……」

 

「だんまりかよ。まあ、俺様と話したくないのは当然か。だがよ、あのプリキュアたちの命を奪ったのは俺様じゃねぇ、お前自身だ。そこのところは分かってるよなぁ!」

 

 フレイアは膝の上にある手を握り締め、唇を固く引き結んで辛い気持ちに耐えていた。

 

「渡せ、闇の結晶」

 

 ロキがフレイアに向かって右手をかざすと、フレイアの目の前に強制的に六芒星の黒い魔法陣が開く。

 

「っく、あああっ!」

 

 フレイアが苦痛の呻きと一緒に、黒き魔法陣に刻まれた中央の赤い三日月と周囲の赤い六つ星が光る。そして魔法陣から無数の闇の結晶が次々と引き出されてロキの手の中に消えていく。

 

 フレイアの前から魔法陣が消えると、ロキはにやけた顔のまま言った。

 

「おまえの命など簡単に消せるが、そんなことをしても面白くもねぇ。だから見せてやるぜ、お前の可愛い可愛い宵の魔法つかいが滅んでゆく姿をなぁ!」

 

 ロキは指を弾きフレイアの前から消えていった。

 

 倒れていたバッティとダークナイトがフレイアの前に来て跪く。

 

「本当にこれでよろしかったのですか? 奴に全ての闇の結晶をくれてしまうなど……」

 

 バッティが失礼を承知で主への疑いを吐露(とろ)すると、フレイアがいつもの微笑に戻っていった。

 

「いいのです、これで」

「奴は次に闇の結晶を所持している魔法学校の校長を狙うでしょうな」

 

 ダークナイトの意見にフレイアは頷いた。

 

「そこには4人のプリキュアもいます。ロキが校長から闇の結晶を奪うことは叶いません」

 

 そう言い切るフレイアに、二人の従者はもう何も言わなかった。

 

 

 

 魔法学校では相変わらず4人の勉強会が続けられていた。

「68点」

「おしいっ!」

 

 小百合がひっくり返して見せたテストの点数を見て、みらいが両手をグーにして悔しがる。でも心の中では数学ができるようになってきて嬉しかった。

 

「三週間でここまで点数を上げるなんて大したものね」

「小百合の教え方がいいだよ、ちょっと厳しいけど」

「みらいのことを思って厳しくしてるんでしょう」

 

「うそつき~、いつも怒りんぼのくせに~」

 

 ラナが、ぬっと二人の間に顔を出してくる。予想外のことにみらいは少しびっくりして、小百合は顔が引きつる。

 

「それはあんたが怒らせるようなことばっかり言うからでしょ! っていうか、自分の勉強はどうしたの!?」

 

「何やってるのよ! 目を離すとすぐにさぼるんだから!」

 

 リコがやってきて、ラナの首根っこをつかんで自分の机の方に引きずっていく。

 

「ぶぅ~っ」とラナは不満いっぱいの表情だった。

 

「……向こうは大変そうね」

「でもリコ、勉強を教えるのは自分のためになるし、楽しいっていってたよ」

「頭が下がるわね。ラナ相手に勉強を教えるのが楽しいなんて……」

 

 小百合はもし自分がラナに勉強を教えたら、しょっちゅう怒ってしまいそうだと思う。そして、さっきラナがいった怒りんぼうというのも、あながち間違いじゃないと感じて、もう少しラナに優しくしてあげようと思うのだった。

 

 お昼を知らせるチャイムが閑散とした魔法学校内に鳴り響く。

 

「もうお昼休みなのね」

「やった~! ごは~ん!」

 

 リコとラナが席を立つのに合わせて、みらいと小百合も立つと、ぬいぐるみたちも合わせて6人で寮の部屋を出て食堂に向かった。

 

 普段は休み中に食堂は開いていないのだが、この夏休みの間だけリリアの弟子が修行のために厨房に入り、リコたちに食事を作ってくれていた。食事の時は妙なルールがあって、厨房は絶対に覗かないようにとコックからお達しが出ていた。

 

 みんなこのお昼時をとても楽しみにしている。料理を提供するのが小人数ということもあって、リクエストしたものなら何でも作ってくれるのだ。

 

 食堂に入った少女たちは厨房の前に並んで注文を言っていく。その時、コックさんは厨房の奥に隠れて絶対に姿を見せなかった。

 

「わたしはオムライスにするわ」

「わたしはパスタね」

「わたしもパスタにしようかなー」

 

 リコ、小百合、みらいの順に注文を言っていくと厨房の奥から声がする。

 

「はい、オムライスにパスタ二つね」

 

「わたしはホットケ~キ~! 大きくてふわふわで2段のやつ~」

「いいね! ワクワクもんのホットケーキだね! パスタ止めて、わたしもそれにしよう!」

 

 ラナの注文にみらいが惹かれて、また奥から声がする。

 

「パスタ一人前止めにして、ホットケーキ二人前ね。そっちのぬいぐるみのお二人は、いつものでいいね」

 

「よろしくモフ」

「さすが、わかっているデビ」

 

 6人で近くの長いテーブルに向かい合って座ると、やがて料理が魔法で宙に浮いて運ばれてくる。

 

『おいしそ~っ!?』

 

 みらいとラナは昼食のたびにこの台詞を繰り返していた。コックは二人が大食いなのを理解していて、大皿にいっぱいの大きさの、スポンジケーキみたいにふわふわのホットケーキが2段に積み重なっている。ラナはカスタードクリームとチョコレートのデコレーションで、みらいは生クリームとイチゴのデコレーションになっていた。

 

「どっちもおいしそ~」

「半分ずつにしようよ」

「いいね~、そうしよ~」

 

 ラナが大喜びでみらいに賛成した。

 

「あんたたち、本当に仲がいいわね」

 小百合がほほえましい気持ちになると、

 

「二人して勉強で苦しめられてるからね~、だから仲良しなんだ~」

 

 イチゴのホットケーキを食べながら言うラナに、隣のみらいが何とも言い難い笑みを浮かべる。

 

「それじゃ、わたしとリコが悪者みたいじゃない」

 

 少し不機嫌になった小百合がナポリタンを口に運ぶと、その美味しさに声も出なくなって、口の辺りを押さえた。隣でリコもまったく同じことをしていた。

 

「美味しい! 厚切りのベーコンの旨味にたっぷり入った玉ねぎの甘さ、そしてトマトソースの絶妙なマッチング……」

 

「口の中でケチャップライスと卵が溶けあうわ。ケチャップライスにはブロックのデリシャス牛のお肉が入ってて、食べ応えも抜群よ」

 

「さすがはリコのお母様の弟子ね」

 

「料理の中にワイルドさがあって、お母様の作る料理とは少し感じが違うわね。これも好きだわ」

 

「わたしたちも半分こにしない?」

「賛成」とリコは小百合に笑顔で答えた。

 

 ぬいぐるみたちはみらいの横で、いつもお気に入りのフワリンクッキーを食べていた。

 

 リコと小百合が味わって食べている時に、みらいとラナはもう食べ終わっていた。

 

「おいしかった~」

 

「あんたたち、食べるの早すぎるでしょ。量にしたら、わたしたちの3倍はあったわよ」

 

 小百合が言うと、ラナが今リコと交換したばかりのオムライスを食べたそうに見つめてくるので、自分の方にオムライスを引き寄せて、絶対にあげないという意思を見せつけた。

 

 悲しそうな眼のラナの横で、みらいが立ち上がる。

「わたしコックさんにお礼いってくるね」

 

「厨房は絶対に覗いちゃいけないって言われてるでしょ」

「毎日こんなに美味しいお料理作ってくれるんだもん、感謝の気持ちは伝えなきゃ」

 

 リコはそれ以上は咎めはしなかった。コックが厨房を見られたくないのは、料理を邪魔されたくないからだと思っていた。だから礼をいうくらい問題ないと思ったのだ。

 

「あのー」

「ひぃっ!!?」

 

 みらいが声をかけると、料理の後かたずけをしていたコックさんがびくりと体を震わせる。背中を見せていたので、みらいに顔は分からない。長いコック帽の下から銀髪のポニーテールの先の方が見えていた。

 

「なっ、な、なんでしょう?」

「一言お礼がいいたくて、いつも美味しいお料理作ってくれて、ありがとうございます!」

 

「いやあ、そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいなぁ。愛情を込めて料理を作ったかいがあるってもんですよ。これは先生が与えてくれた修行の一環なんで、これからも好きなものをジャンジャン注文してくださいね!」

 

 そう言う彼女の後姿からでも、心の底から嬉しいと思っているのが伝わってきた。みらいが満足して席に戻っていくと。フェンリルが振り向いて、ほっとするのと同時に眉を下げてオッドアイを少し細くした。

 

「はぁ~、心臓に悪いな。まさかプリキュアたちの飯を作ることになるとはな……」

 

 そうは言いつつも、フェンリルはみんなが喜んで料理を食べてくれることは嬉しかった。

 

 

 

 校長先生は机の前で黒の書を開いて何度も目を通していた。そこに書かれている内容があまりにも信じ難く、彼は何度も見直して、どうするべきなのか考えていた。そんな時に魔法の水晶に魔女の影が現れる。

 

「校長、お告げですわ」

「なに?」

 

「災厄の魔王が魔法界に現れし時、かの世界は闇に沈むであろう。交わりし二つの伝説と、それに連なる言霊のみが闇を打ち砕く。二つの伝説に言霊なくば、双子の世界もまた闇に呑まれるであろう」

 

「ついにそのようなお告げが現れたか……」

「なにか途方もない、あのデウスマストにも匹敵する邪悪が迫っていますわ……」

 

「魔法界と双子の世界、ナシマホウ界までもが闇に呑まれるとはっきりを示唆されておるとは……。それはつまり、二つの伝説、あの4人の少女たちが負ける可能性があることを示している。二つの伝説に連なる言霊(ことだま)が闇を砕く。この言霊の正体を知る必要がある。これは、わしがやらねばならぬことだ。必ず突き止めてみせよう」

 

 

 

 リコたちが食堂から寮の部屋に帰る途中、急に影がさした。みんなで見上げると上空に黒い壁が広がっていた。

 

「リコ、あれって!?」

「あの時と同じだわ……」

 

 みらいとリコには見覚えのある光景だった。闇の壁がどんどん広がってドームになり、魔法学校全体を完全に覆ってしまう。

 

「何なのよこれ!? 知っているなら教えなさいよ!」

 

 小百合に迫られたリコは上空に広がる暗黒を見て恐怖を感じていた。

 

「あれはデウスマストの眷属が使う結界よ。ただ、前に見たのはこんなに大規模じゃなかった。結界が張られたのは、あそこに見える杖の樹のある尖塔だけだったわ」

 

 リコの指さす方向をみて小百合が言葉をなくす。そして、異変に気付いた校長が杖の樹のある尖塔の広場に姿を現していた。

 

「これは……」

「なんという邪悪な気配……」

 

 水晶から聞こえる声が震えていた。校長が見下ろすと、校庭に少女たちの姿があった。

 

 空中に暗黒の球体が現れ、それを内側から粉々に砕いてロキが姿を現す。その瞬間の衝撃が魔法学校全体に広がり、草木や校長、少女たちに強風を叩きつけた。

 

「よう、今日こそプリキュアを終焉の炎で焼き尽くしてやるぜ」

 

 少女たちが強い視線でロキを見上げると、モフルンとリリンが前に出てきた。

 

「二人とも変身モフ!」

「二人とも変身デビ!」

 

 みらいとリコが手をつなぐと金色のとんがり帽子に小さな星とハートをそえた刻印が現れ、小百合とラナがそれぞれ手をつなぐと赤い三日月と背にした黒いとんがり帽子の刻印が現れる。そして四人で一緒に魔法の呪文を唱えた。

 

『キュアップ・ラパパ!』

 

 みらいは桃色の輝きのローブに、リコは紫色に輝くローブに身を包む。そして小百合は白く光るローブに、ラナはレモン色の光のローブに身を包む。同時にモフルンのブローチには白い輝きのダイヤ、リリンのブローチには青い輝きのダイヤが顕現した。

 

『ダイヤ!』

 

 みらいとリコがモフルンと手をつないでゆるやかに回り、平和を愛する人の輪になり、

『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 小百合とラナがリリンと手と手を取って穏やかに回り、希望をもたらす人の輪となり、

『セイント・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 モフルンとリリンのダイヤからあふれた光が広がっていく。輝きに包まれた少女たちはプリキュアの姿にかわっていった。

 

 白きハートの五芒星が現れて、その上にミラクルとマジカルが召喚される。二人は魔法陣の上から跳んで着地してそれぞれポーズを決める。

 

「二人の奇跡、キュアミラクル!」

「二人の魔法、キュアマジカル!」

 

 青白い月と星の六芒星が現れて、その上にプリーステスとルーンが召喚される。二人は魔法陣の上からクロスを描いて地上に降りる。

 

「光さす慈愛の聖女、キュアプリーステス!」

「メラメラの黄昏の魔法! キュアルーン!」

 

 4人のプリキュアはそれぞれの相方と手と手をつなぎ、寄りそいあって、輝くように強く美しい姿になり、勇気と正義を胸に叫んだ。

 

『魔法つかい、プリキュア!』

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