魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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闇の魔法の脅威

 紫とピンク、黄色と白のプリキュアが並ぶと、ロキはゆっくりとした速度で上空から降りてきた。彼は腕を組み、プリキュアたちを侮る笑みを浮かべる。

 

「おまえたちを倒し、校長を亡き者にすれば、全ての闇の結晶が俺様の元に集まる。その時こそヨルムガンドが完全体となってこの世界に顕現するのだ!」

 

「何なのよ、ヨルムガンドって……」

 

 プリーステスにロキが牙を見せて笑う。

 

「せっかくだから教えてやるぜ、俺様の最高傑作だからな! ヨルムガンドは真の闇の魔法によって生み出された暗黒の竜、奴が持つ意志は破壊のみ。余りの凶暴さと強大な魔力ゆえに、この俺様でも制御することができず一度は封印した。あのときゃマジで焦ったぜ。何もかも破壊されちゃ、支配もくそもないからなぁ。そこで必要になるのが闇の結晶よ。こいつで俺様の魔力を最大限に引き上げればヨルムガンドの制御が可能になる。ヨルムガンドさえいれば、あのうざってぇマザーラパーパの分身もぶっ潰せるぜ」

 

 それを聞いたミラクルが目を吊り上げてすごく怖い顔になって、プリーステスは驚く。ミラクルがそんな表情になるなど思いもしなかった。

 

「そんなことさせない! 校長先生も、はーちゃんも、わたしたちが守る!」

「そうだよっ! ヨーレルガムなんて、絶対絶対ふっかつさせないよ!」

 

「ヨルムガンドよ……」

 マジカルがルーンに静かに突っ込みを入れた。

 

「吠えるな小娘ども。俺様は闇の結晶の氾濫を五千年以上も待っていたんだ。必ず手に入れるぜぇ!」

 

 その時であった、突如として予想外の人物が乱入してきた。空中に月と星の六芒星が浮かび、その上に金の錫杖を持つ黒いドレスの女神が現れたのだ。

 

「フレイア様!?」

「フレイア様だ~、おひさしです~」

 

 プリーステスが驚き、ルーンは嬉しそうに手を振る。

 

「あれが闇の女神フレイア様……」

 

 ミラクルがフレイアの持つ穏やかさと美しさに触れて見とれていた。そしてすぐにある事に気づいてマジカルに言った。

 

「フレイア様って、フェリーチェに少し似てない?」

「ええ、見た目よりも雰囲気がそっくりだわ」

 

 フレイアの登場に一番驚いているのはロキだった。

 

「てめぇ、こんな所に姿を現してどういうつもりだ?」

「おまえの最後を見届けにきました」

 

「なぁんだとぉーっ!? そんなクソ面白くもねぇ冗談を言うためにきたのかよ!」

 

「お前は4人の光の魔法つかいプリキュアに勝つことはできません。小百合とラナが闇から光へと生まれ変わったあの時点で勝負は決したのです」

 

 ロキの顔から笑みが消えて、牙をむき出す凶暴な表情がフレイアに向けられる。

 

「ほざいてろ! てめぇの可愛いプリキュアをぶっ潰して、そのにやけ顔を凍り付かせてやるぜ! その次は魔法学校の校長! そして最後はてめぇだ、フレイア!」

 

 ロキは獲物を順番に指しながら言った。フレイア微笑んだまま何も言わないと見るや、ロキはプリキュアたちと対峙する。

 

「かかってきな。この俺様を倒せなければ、魔法学校の校長もフレイアも終わりだ」

 

 ロキは剥ぎ取った黒い毛皮のマントを宙に投げて構えた。

 

「行くわよ!」

 

 プリーステスの合図でプリキュアたちは三日月型のフォーメーションになって三方向からロキに接近する。

 

 ミラクルとルーンが二人一体となってロキに目にもとまらぬ連続攻撃を加える。ロキは神がかった身のこなしで二人の蹴りや拳を避けてかすりもしない。そして、ロキがミラクルとルーンのお腹に手を当てる。

 

「はっ!」

 

『うあっ!?』ミラクルとルーンはお腹に衝撃を受けて同時に後ろに飛ばされた。

 

『はぁーっ!』マジカルとプリーステスが膝蹴りでロキを左右から挟撃する。

 

 ロキが右腕を左腕を交差させて、二人の膝蹴りを同時に手の平で受け止める。

「ふんっ!」ロキの魔力の衝撃でマジカルとプリーステスは左右に吹き飛んだ。

 

 マジカルは背中から校舎にぶち当たって壁を粉々にし、プリーステスは樹木に叩きつけられて太い幹をへし折る。

 

 今度は前からミラクルとルーンが向かってきて、同時の回し蹴り、ロキはミラクルの右足とルーンの左足を受け止めてつかんだ。

 

「そぉーら!」

『うわあぁーっ!?』

 

 ロキがミラクルとルーンを頭上に振り上げて投げ捨てる。二人同時に地面に叩きつけられ、地面に長い傷跡をつけて校門の壁に痛烈にぶつかる。見上げるように高い壁に下から天辺にまで大きな亀裂がいくつも入った。ミラクルとルーンは苦し気に壁の近くに倒れていた。

 

『たあぁーっ!』

 

 ロキがその声に振り向くと、マジカルとプリーステスが接近していた。同時に繰り出される二人一体の拳をロキが手の平に黒いバリアを出して防ぐ。二人は腹の底から気合の声を出して、黒いバリアに押し付けた拳に力を入れた。

 

「そんなもんかよ!」

 

 ロキのバリアから衝撃波が広がって、吹っ飛ばされたマジカルとルーンは近くの建物に激突し、さらにそれを貫通して、建物の向こうにある清水の沸く池に突っ込んで水しぶきを上げ、池のふちを破壊して対岸の渡り廊下の支柱にぶつかって止まった。その衝撃で二人が激突した2本の支柱が崩れかける。マジカルが片膝をつき、苦痛で片目を閉じたまま言う。

 

「っつう……このままじゃ学校なくなるわ……」

「そうはいっても、あの結界がある限り外には出られないわね……」

 

 塔上の杖の樹の森でも水晶が、マジカルと同じような懸念を校長に伝えていた。

「校長、あの男の力は魔法学校を崩壊させますわ」

 

「それは一時的なものじゃ。プリキュアは負けぬよ。幸い今は夏休みで生徒はおらぬ。むしろ魔法学校があの子らの足枷になる方が問題じゃ」

 

 校長が広場の縁から下を見下ろしていると、腕組みするロキの前に4人のプリキュアが集まってくる。校長が大声で叫んだ。

 

「君たち! 今はその男を倒すことだけを考えるのじゃ! 全力で戦え!!」

 

『はい!』一つに重なった4人の乙女の声が校長に届いた。

 

 その様子も見ている者がもう一人いた。戦いの音に気づいて食堂から外に出てきたフェンリルだった。

 

「あれはロキ様……」

 フェンリルのオッドアイに映るロキが腕組みを解いた。

 

「プリキュア共よ、一気に勝負をつけようぜ。お前たちの最強の魔法を撃ってこい。俺様がよけずに受け止めてやるよ」

 

「なんですって? バカにしてるの!」

 

「ごたくはいらねぇ。さっさと撃ってこい」

 

 くってかかるプリーステスをロキが真顔で挑発する。

 

「そんなにいうんだから見せてあげようよ!」

 ルーンの言葉に他の三人が頷いた。

 

 4人のプリキュアがそれぞれのパートナーと手をつないで跳躍する。

 

『聖なる光よ!』

 

 プリーステスとルーンの声が重なり、

 

『奇跡の光よ!』

 

 ミラクルとマジカルも同時に叫ぶ。

 

 二組のプリキュアが降りると4人のプリキュアから輝きが広がり、それぞれのペアがパートナーに寄りそう。

 

『二つのダイヤの光よ!』

 

 プリーステスとルーンの腕輪にある青いダイヤが光を放ち、

 

『二色のダイヤの輝きよ!』

 

 ミラクルとマジカルのリンクルステッキの先端が白銀の輝きを放つ。

 

『いま一つとなりて! 聖なる輝きの魔法となれ!』

 

 4人のプリキュアの声が一つになると、モフルンとリリンのダイヤから二色の光が広がっていく。二組のプリキュアの前に宵の魔法つかいと伝説のまほうつかいの魔法陣が融合した巨大な魔法陣が広がる。そして二つのダイヤの魔法が一つになった。

 

『プリキュアッ!』

 

 二組のプリキュアの後方でつなぐ手がに力が籠められる。そして巨大な魔法陣の前に青い輝きと白い輝きの巨大なダイヤが召喚される。

 

『ダイヤモンドッ! スーパーファイアストリームッ!!』

 

 二つのダイヤに輝きが収束し、白と青の波動が撃たれる。二色の光が絡み合い、らせん状になってロキに向かっていく。その光の波動はロキ一人など優に呑みこむ大きさだった。ロキは交差させた腕を固く組んでダイヤの聖なる光を迎え討つ。

 

 ロキの前で強烈なダイヤの魔法が拡散し、彼に魔性を押しつぶす衝撃を与えてくる。

 

「くおおぉっ!」

 

 魔法の衝撃でロキの衣服が少しずつ千切れ、踏ん張る足の靴が地面に埋め込まれていく。

 

「ぬおおおおぉっ!!」

『はあぁーーーっ!』

 

 大地に轟くようなロキの叫びと勇猛な乙女たちの声が重なる。

 

 ロキの体に変化が起こり始める。徐々に全身の筋肉が膨張して体全体が大きくなっていく。ダイヤの光に耐える肉体が急速に肥大し、強靭な背中に黒い翼が生えて広がる。それはドラゴンの翼に酷似していた。

 

 彼の赤い頭髪は逆立って凶暴性を際立たせ、頭に猛牛のような黒い角が出てくる。手と足の黒い爪も伸びて鋭くなった。

 

「でぃやあああああぁっ!!」

 

 魔法学校そのものを震わせるような雄叫びがあがり、二つのダイヤから放たれた魔法がかき消されていく。逆流した衝撃が二つのダイヤと巨大な魔法陣まで粉砕した。プリキュアたちは息の止まるような爆風を受けて身を護る態勢で徐々に押されていく。

 

 呆然とするプリキュアたちの前でロキが両手の拳を握ると腕の筋肉が盛り上がり、上腕、胸、額の4か所に、まるでそこに縦型の目があって開いたかのような気味の悪い文様が浮き出た。これがロキの闇の王としての真の姿だった。

 

「お返しだぜ!」

 

 ロキが両手を前に出すと、手のひらから闇の魔法が放たれ、暗黒の波動がプリキュアたちを飲み込んだ。闇の塊が悲鳴と苦痛を包み込み、プリキュアたちを吹き飛ばして爆発した。

 

 その爆発で無数の破片が飛び、食堂の入り口に立って戦いを見ていたフェンリルが腕輪をしている右手を前に出してバリアを出現させる。

 

「あれがロキ様の真の姿か。何という力だ!」

 

 食堂を守っているフェンリルの姿にロキが気づく。

「フェンリルじゃねぇか。魔法学校なんぞで何をしてやがる?」

 

 今や巨躯とも言っても差し支えない筋肉隆々のロキが彼女に近づいていく。フェンリルはいつも通りの調子で言った。

 

「ロキ様、わたしは始末されると思っていたんですがね」

「力を失ったお前を始末する理由なんてねぇ。労力の無駄だ」

 

 ロキは二重の円環と細い瞳孔のある恐ろしい目でフェンリルを見下ろした。

 

「お前、力を失ってなかったら、今ここでどう行動する?」

「もちろん、ロキ様に加勢いたしますとも」

 

「嘘ではなさそうだな。おめぇはいい部下だよ、これ以上ないってくらいにな。なんでこんなちんけなもんを守っているのかは知らねぇが。大事なもんならしっかり守るんだな。プリキュア共を倒す頃には、この辺りには何もなくなるぜ」

 

 そしてロキは4人で固まって倒れているプリキュアに向かっていく。

 

「あう……まけたぁ……」

「4人の魔法が効かないなんて……」

 

 ルーンとプリーステスが絶望的な気持ちになっていると、ミラクルが立ち上がって闘志を燃え上がらせる。

 

「みんな、諦めちゃだめ!」

「そうね、これくらいのピンチなら前にもあったし」

 

 マジカルも立ち上がると、プリーステスの負けじ魂が燃えてくる。

 

「さすが、経験者は違うわね」

 

 プリーステスも立って、まだ寝ているルーンの手を引っ張って起き上がらせた。

 

 傷ついたプリキュアたちに近づいたロキが腕を組み歯を見せて勝ち誇った気持ちを笑みに表す。

 

「立ってどうする? お前たちの最強の魔法は敗れたのだ。もう勝負はついた、大人しくして楽に消えろ」

 

「わたしたちは負けない!」

 

 ミラクルに睨まれると、ロキが痛快に笑って、その声が魔法学校中に響き渡った。

 

「いいねぇ! せいぜい悪あがきして俺様を楽しませてくれよ!」

 

 ロキがプリキュアたちに襲い掛かり、何度も拳を打ち込んでくる。身を砕かれるような衝撃を全員で身を固めて防御して耐え忍ぶ。そしてロキが思い切り振りかぶって打ち込んできた拳は、4人で上にジャンプして逃げた。ロキの拳は地面に叩きつけられ、そこを中心に地面が波立って亀裂が広がる。

 

「上に逃げたら狙い撃ちだぜ!」

 

 ロキが両手に黒いエネルギー弾を作り出し、上空のプリキュアたちに向かって投げつけると、プリーステスとルーンがブレスレットを上に唱える。

 

『リンクル・スターサファイア!』

 

 ブレスレットに3条の白い線が交錯するドーム型のサファイアが現れると、プリーステスはマジカルを、ルーンはミラクルを脇に抱えて飛翔して、黒いエネルギー弾を回避した。

 

「チィッ、空飛ぶリンクルストーンか、こざかしい」

 

 ロキが距離を取って着地したプリキュアたちを睨んで舌打ちした。そしてプリキュアたちを狙い、両手から暗黒の魔法の波動を撃ちだす。

 

「リンクル・ムーンストーン!」

「リンクル・ブラックオパール!」

 

 ミラクルとプリーステスが白と黒のバリアでロキの魔法を防ぐ。

 

「そんなちんけなバリアで止められると思ってるのかよ!」

 

 ロキの両手に更なる魔力が込められ、闇色の光線の体積が増し、ミラクルとプリーステスのバリアにひびが入り始める。

 

「はっ!」マジカルが跳躍し、

「とうっ!」ルーンも跳ぶ。

 

 二人は空中で出会うと、ルーンがマジカルの手を取って、スターサファイアの魔法で飛翔してロキに接近する。

 

「だあーっ!」

 

 ルーンがまるで背負い投げでもするようにしてマジカルをロキに向かって振り落とす。

 

「はあぁーっ!」

 

 上空からの、ルーンがぶん投げる速力を加えたマジカルの踵落とし、ロキは魔法を止めて丸太のような腕でそれを止める。周囲に風圧が広がってその威力の凄まじさを物語った。

 

「ぬうぅ」

 

 マジカルが踵落としの態勢からバク転すると、ルーンがマジカルをつかんでいた手を放してロキに突っ込んでくる。

 

「たあぁーっ!」

 

 ロキが胸の前で組んだ腕にルーンの靴底が押し付けられ、それとほぼ同時に着地したマジカルがロキに向かって突出、この流れるような連帯が活路を開く。

 

「はぁっ!!」

 

 マジカルの拳がロキのボディーにクリーンヒットし巨体が震えた。

 

「ぬぅ、効くかよ! この程度の攻撃!」

 

 ロキが全身に力を込めて組んでいた腕を開くと、爆風が起こってマジカルとルーンを押し戻した。

 

「くそ、なんだこいつら!? 最強の魔法を破られたってのに、諦めないどころか、戦意を増してやがる!」

 

 マジカルとプリーステス、ミラクルとルーン、それぞれのペアで顔を見合わせて頷き、寄り添うように並んでリンクルステッキとリンクルブレスレットを前に出す。そしてマジカルとプリーステスがリンクルストーンを呼び出す。

 

「リンクル・ペリドット」

「リンクル・オレンジサファイア」

 

 ミラクルとルーンも呼びかける。

 

「リンクル・アクアマリン!」

「リンクル・ジェダイト~」

 

 二つの力が一つの魔法となりマジカルのステッキとプリーステスの手から放たれる。

 

『プリキュア! メイプルリーフブレイズ!』

 

 二つのリンクルストーンの力を合わせて、ミラクルとルーンが魔法の呪文を唱える。

 

『プリキュア! アイシクルインパクト!』

 

 燃え上がる木の葉の渦と、凍てつく烈風がロキに迫る。

 

「合成魔法か」

 

 ロキがそれぞれの魔法を片方ずつの手で受け止めた。

 

「伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいの魔法を合成したことはちと驚いたが、所詮はこの程度よ!」

 

 魔法を止めるロキの手のひらから黒い魔力が噴出し、プリキュアたちの魔法を押し戻していく。そして互いを結ぶ中間の距離でロキの二つ黒い波動と、プリキュアたちの炎と氷の魔法が衝突しながら停滞する。

 

「づああぁーーーっ!」

 

 ロキが雄叫びを上げると、黒い波動が威力を増してプリキュアたちの魔法を一気に押し込んだ。乙女たちの無残な悲鳴があがり、4人のプリキュアたちは黒い波動の衝撃に呑まれながら後方の校舎に激突し、黒い炎が爆裂して校舎を吹き飛ばした。その衝撃は校長がいる塔の天辺にまで突き上げて、塔の壁に亀裂が入っていく。

 

 傷ついたプリキュアたちは瓦礫の中に倒れて動く気配がなかった。それを見たロキが笑い声をあげてから叫んだ。

 

「見ろフレイア! これでも俺様が負けるというのか!」

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