魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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反撃

「見ろフレイア! これでも俺様が負けるというのか!」

「……」

 

 フレイアは微笑みを消して、ただ黙っていた。ロキにはフレイアが慄いているように見えた。

 

「プリキュアども! 最後に面白い話をしてやるからよ、よく聞いてろよ!」

 

 ロキは宙に浮いて、そこにいる全ての者に言葉を叩きつけた。

 

「古の魔法界に闇の魔法の時代を築いたのは、この俺様だ!」

「おぬしが闇の魔法の権化……。闇の魔法は人間が生み出したものではなかったのか……」

 

 校長先生はすべての憎しみがそこにあるという、そんな険しい表情をロキに向けていた。

 

「闇の魔法を人間が生み出したというのも間違いじゃねぇ。俺様はきっかけを与えてやったのよ。闇の魔法の教団を作り、人間どもに闇の魔法を与えてやった。あとは勝手に人間どもが広めていった。みんなこの俺様に感謝していたぜ、素晴らしい魔法をありがとうございますってなぁ」

 

「おぬし、許せぬ……」

 

 校長先生は親友クシィの命を闇の魔法によって奪われている。それだけに闇の魔法に対する怒りと憎しみは強かった。そんな校長先生に、ロキはさも楽しそうな笑みを浮かべる。

 

「まだ怒るところじゃないぜ、本当に面白い話はこれからだ。闇の魔法を手にした人間どもは例外なく自壊していった。面白かったんで、俺は教団の一人に特別強力な闇の魔法を与えた。その結果、そいつは魔法で闇の竜を生み出し、魔法界を長い戦いに導いた」

 

「だが、魔法つかいたちは光の竜で闇の竜を打倒し、闇の魔法を封印した。そして魔法の力を正しき方向へと導くために魔法学校が創設されたのじゃ。だからこそ、今の光り輝く魔法界がある。闇の魔法などに我々は二度と負けはせぬ!」

 

「よく言うぜ。お前は闇の魔法で世界を支配しようとしていた奴を知っているだろう。つい最近の話だぜ」

 

 校長が目を見開いてロキを見つめる。

 

「闇の魔法には全てこの俺様が関わっている。奴も例外じゃねぇ」

「おぬし、まさかクシィを!?」

 

「お前だっておかしいと思っただろ? 闇の魔法で混沌に対抗するなんてよぉ。混沌ってのは闇の親玉みてぇなもんだからなぁ」

 

「クシィに何をした!!?」

 

「別に大したことはしてねぇよ。夢の中に入って魔法で暗示をかけてやったんだ、混沌に対抗できるのは闇の魔法だけだってな!」

 

 それを聞いた校長先生は、怒りと悔しさのあまり言葉を紡ぐことができず、血が出る程に歯を食いしばってロキを睨んでいた。

 

 ロキは大きな声は出さないが、腹をかかえて笑っていた、まるで子供がバラエティーの番組でも見ているように。

 

「クシィは自らの意志で闇の魔法に染まったわけではなかったのか……」

 

「いや、半分は奴の意志だ。奴は混沌に対抗する力が欲しいと心の底から願っていた。だから俺様が後押ししてやったのよ」

 

「黙れいっ!!」

 

「あいつがドクロクシィになって闇の魔法をばらまいてくれたおかげで、闇の結晶の氾濫がだいぶ早まった。想定以上に役に立ってくれたぜ」

 

「そんなことのためにクシィをっ!」

 

 校長先生は苦痛の呻きとも怒りの叫びっとも取れる激しい声をあげ、近くに現れた魔法の杖を右手に握る。

 

「校長、いけません……」

 校長の傍らに浮く水晶が涙に震える声で言った。

 

「いいぜ、この俺様に怒りをぶつけてこい」

 

 校長先生が杖を握る手にあらん限りの力を込め、血を吐くような声をあげた。そして彼は、魔法の杖を地面に突き刺して手放した。

 

「なんだよ、撃ってこないのかよ、面白くもねぇ」

 

「……おぬしを倒すのはわしの役目ではない。わしの成すべきことは他にある」

 

 ロキは自分の思ったような展開にならずに、つまらなそうに舌打ちした。だが、彼の遊びはまだ終わりではなかった。

 

「もう一つ面白い話をしてやろう」

 

 そしてロキはフレイアを指し示して言った。

 

「そこにいるフレイアも、闇の魔法の時代に深い関りがある。こいつのせいで闇の魔法の時代が到来したと言っても過言じゃねぇ。そうだよなぁ、フレイア」

 

「……」

 

「まただんまりか。いいぜ、お前が黙ってるなら俺様が全部しゃべってやる。こいつはなぁ! 自分で招いた過去の汚点を消すために仲間の命を犠牲にしたんだ!」

 

 ロキの悪意にまみれた言葉が闇の結界の中で反響して隅々まで届いた。そして、フレイアが錫杖を持つ手が震えて、目を閉じる女神の目じりから涙が零れ落ちた。

 

「その口を閉じなさい」

 

 下から途方もない大きさの怒りを押し殺した、静かな声が聞こえた。瓦礫の中にプリーステスが立っていた。それに続いて他の3人のプリキュアたちも立ち上がってくる。

 

 ミラクルとマジカルが恩師の痛みを知り、怒りの炎を燃え上がらせる。

『校長先生を悲しませるなんて』

 

 プリーステスとルーンがフレイアの悲しみを知り、憤怒のマグマが煮えたぎる。

『フレイア様を泣かせるなんて』

 

 4人のプリキュアの大切な人を思う心とロキへの怒りが一つになる。

『絶対に許せない!!』

 

 4人のプリキュアの怒りが爆発した。

 

「ほう、まだそんな元気があるのか。楽しませてくれるじゃねぇか」

 

 ロキは腕組みして空中から地上に降るとプリキュアたちからの火花の散るような視線を浴びる。

 

「足掻け」

 

 ロキがにやけ顔を消してそう発すると、プリーステスが右手を横一文字に振り、ブレスレットにリンクルストーンを呼び出す。

 

「リンクル・スタールビー!」

 

 スタールビーが現れたリンクルブレスレットをプリーステスが高く上げると、深紅の輝石から生まれた四つの輝きが、4人のプリキュアの胸に吸い込まれる。

 

『はああぁーっ!』

 

 プリキュアたちの体が熱く燃え上がり、ロキへの怒りが更なるパワーを与えた。

 

「パワーを上げるリンクルストーンか。その程度の魔法で俺様に対抗できると思っているのか!」

 

 ミラクルとマジカルが正面からロキに向かっていく。

 

「やああぁっ!」

 

 二人で連携する連続攻撃をロキは回避していく。ミラクルのパンチが頬をかすめて、マジカルのキックが顎をかすめ、ロキに強い風圧を与える。ミラクルとマジカルの攻撃の切れが先程とは別世界で、ロキから余裕のにやけ顔が消えていた。

 

 周囲の空気が震えるような気合の声があり、ミラクルとマジカルが同時に拳を打ち込む。ロキが両手を合わせてそれを防ぐと、発生した衝撃が彼の周囲に土埃を爆発させる。

 

「ぬううぅっ!?」

 

 ロキは予想を超える衝撃を受けて顔をしかめ、防御の態勢のまま後方に弾き飛ばされる。

 

『でやあぁーっ!』

 

 プリーステスとルーンがロキの左右から同時に攻めてくる。白きプリキュアの蹴りと黄色いプリキュアの拳をロキは左右の二の腕を立てて防御する。その時にも闇の王は強い衝撃に顔をしかめた。

 

 そこへミラクルとマジカルが呼吸を合わせて突っ込んで、ロキの盛り上がった腹筋に気合一声のダブルパンチを叩きこんだ。

 

「ぐおっ!?」ロキの体がさらに後退する。

 

『はぁっ!』さらにミラクルとマジカルの左右の回し蹴りの連携、ロキはたまらず上に逃げて黒い翼を開いた。

 

『たぁーっ!』

 

 スターサファイアの魔法で飛翔したプリーステスとルーンがロキの真上から二人同時の急降下蹴りをおみまいする。

 

「ぐあっ!?」プリーステスとルーンの攻撃が見事に決まり、ロキは真っ逆さまに落ちた。

 

 重い振動と同時にロキが地面に大の字に叩きつけられた。怒りで目を血走らせ、歯を食いしばって立ち上がったロキに、プリキュアたちが殺到する。

 

「時間切れだぜ!」

 

 ロキは前からきたミラクルとマジカルをまとめて蹴り飛ばし、上空からきたプリーステスとルーンのパンチを片腕一本で防いでからカウンターパンチの一撃で二人一緒に吹き飛ばした。ミラクルとマジカルは地上に叩きつけられ、プリーステスとルーンは空中に浮いている建物に壁を破壊して突っ込んだ。

 

「短い夢だったなぁ」

 

 浮遊建造物に突っ込んでいたプリーステスとルーンが飛び出し、まっすぐにロキに向かって同時の飛び蹴り。それはガードされるが、反撃の隙を与えずにミラクルとマジカルも同時に跳び蹴りを撃ち込んでくる。ロキは腕を組んでそれを防ぎ、反発力が生まれてプリキュアたちとロキの間に少し距離が開いた。

 

「諦めの悪い奴らだ! づあぁっ!」

 

 ロキは手のひらから爆風を起こしてミラクルとマジカルを吹き飛ばした。

 

『だぁーっ!』プリーステスとルーンがロキに肉薄して攻撃を始めると、最初は余裕のにやけ顔で回避していたが、すぐに嫌らしい笑みを消されて防御を交えるようになった。

 

「スタールビーの魔法はもう切れているはずだ! なのに何だ、この攻撃の切れは!?」

 

 ロキは苛ついて舌打ちすると、思い切り振りかぶった拳の一撃を二人に叩きつけた。二人で一緒に防御して、体の小さいルーンの方が遠くに飛ばされ、プリーステスは弾き出されて止まった場所で片膝をついた。

 

「いい加減にくたばれ!」

 

 ロキがプリーステスに向かって回し蹴りを放つと、俯いていた彼女が顔をあげて赤い瞳で鋭く敵を見つめる。

 

「はっ!」

 

 プリーステスは迫ってきたロキの足首をつかんで捻り、合気で打倒した。ロキの巨体が半回転して背中から痛烈に叩きつけられる。

 

「ぐほぉ!?」叩きつけられた衝撃で巨体が跳ね上がり、そこにルーンが突っ込んでくる。

 

「とりゃ~っ!」ロキはわき腹にルーンの蹴りを食らって吹っ飛んだ。

 

 落ちた先で起き上がったロキが瞳を飢えた獣のようにぎらつかせた。

 

「このガキどもがぁーっ!」

 

 続けてミラクルとマジカルがロキに迫り、同時攻撃を仕掛けた。マジカルがロキの顔面を狙って拳を打ち込み、それをガードさせる。その隙にミラクルがロキの懐に入り込んだ。

 

「だあああぁっ!」ミラクルのボディーブローの連打がロキの巨体を震わせる。

 

「ぐっ、調子にのるなぁーっ!」

 

 ロキが両手を組んで背中の後ろまで引き上げる。そして、それをミラクルに向かって打ち下ろす寸前に、ロキの組んだ両手の上にマジカルの手が置かれた。

 

「はっ!」

 

 マジカルが下に向かって力を入れるとロキの体が後ろに傾く。

 

「うおぉおっ!?」

 

 ロキは組んだ両手に込めた力を利用されて無様に仰向けにぶっ倒れた。虚を突かれた攻撃に焦ったロキは、起き上がりざまに重ねられたプリキュアたちの攻撃をまともにくらった。

 

『てやぁーーーっ!!』

 

 プリキュア四人一体の蹴りがロキの胸に炸裂する。

 

「うおおぉーーーっ!?」

 

 巨体が校舎に叩きつけられて建物が音を立てて崩れていく。ロキはすぐさま唸り声をあげてのしかかっていた石の壁や瓦礫を押しのけて立ち上がった。

 

「なぜだ!? なぜ俺様がこんな奴らに追い込まれている!?」

 

 プリキュアたちが4人揃い立ちしてロキに怒りを直にぶつけるような視線を集中させている。そんな少女たちに対してロキは際限のない憎しみが沸き上がる。

 

「小娘どもが! 生意気だあぁーーーっ!!」

 

 ロキが組んだ両手を地面に向かって打ちつけた。そこから粉塵を瓦礫を巻き上げる衝撃の高波が立って、地面を捲り上げながらプリキュアたちに迫り、呑みこんでいく。

 

「おい、おまえら! こっちにこい!」

 

 フェンリルが近くに隠れていたモフルンとリリンを呼ぶ。二人は急いで走ってきてフェンリルの後ろに隠れた。

 

 凄まじい威力が杖の樹のある塔を破壊し、食堂を崩壊させる。校長やフェンリルは自分たちを魔法のバリアで守るのが精いっぱいだった。

 

 様々なものが壊され、暗い結界の中は土埃で満たされた。校長が壊れかけた塔の上から見下ろすと、次第に落ち着いてきた土埃の中からプリキュアたちの姿を認める。同じくその姿を見たロキは、牙をむいて憎しみと恐れを狭間で額や頬に汗をたらした。プリーステスとルーンの手から広がる黒くて大きなハート形のバリアによって、ミラクルとマジカルは守られていた。

 

「いい加減にして!」マジカルの怒りが更に大きくなり、

 

「学校がなくなっちゃうでしょ!」ミラクルの怒りが更に燃え上がる。

 

 ミラクルとルーン、マジカルとプリーステスでコンビになり、ミラクルの左手とルーンの右手がつながり、リンクルステッキとリンクルブレスレットが前に向けられる。

 

 プリーステスの左手とマジカルの右手が後ろで結ばれ、リンクルステッキとリンクルブレスレットを前にかざす。

 

「また合成魔法か! さっき跳ね返されたってのに、懲りない奴らだ!」

 

 ミラクルとルーンが呼びかける。

 

「リンクル・アメジスト」

「リンクル・インディコライト~」

 

 ロキの頭上に五芒星の魔法陣が現れる。

 

『プリキュア! ディメンションライトニング!』

 

 ロキの真上の魔法陣から地面に向かって雷電が降り注ぎ、電撃の嵐がロキを襲う。

 

「ぐおおおおぉっ!?」

 

 マジカルとプリーステスが魔法の呪文を紡ぐ。

 

「リンクル・ガーネット」

「リンクル・オレンジサファイア」

 

 ロキの足元の地面が赤く熱を発して波立ち始める。

 

『プリキュア! スカーレットウェイブ!』

 

 地面から真紅に煮え立つ溶岩と炎が吹き上がりロキの身を焦がし、さらなる苦痛の悲鳴を与えた。

 

「ばっ、バカな!? 新たな魔法だとぉっ!? なぜ対極であるはずの貴様らの魔法が、こうもやすやすと合成できる!!?」

 

 ロキは魔法学校を覆いつくす闇の結界を震わせるような声を上げる。

 

「ぬうおあああああああぁっ!!」

 

 ロキの周囲に嵐のように空気が逆巻いて、プリキュアたちの合成魔法はかき消された。ロキは肩で息をしていて、確実にダメージを受けていた。

 

「伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいは対極ではなく表裏一体なのです」

 

 フレイアの声が降ってきてロキが彼女を見上げる。

 

「なんだと? そんなはずはねぇ! 俺様は宵の魔法つかいを知っている! 俺様はてめぇと同じ時代を生きているんだぞ!」

 

「わたくしたちの魔法でも、強大な力を持つお前の記憶を書き換える事は不可能でした。ですから、ほんの一部だけの記憶を消しました。伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいが表裏一体である事実だけを、お前の中から消し去ったのです」

 

「それが何だってんだ!? そんなの俺様には何の影響もねぇ! 無意味だ!」

 

 この時、ずっと真顔だったフレイアにいつもの微笑が戻る。それを見たロキの体に薄ら寒いような感覚が走る。

 

「お前は伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいを対極と決めつけて、何度も卑劣な罠を仕掛けてきました。それが彼女たちの絆を強くし、成長させたのです。そして、お前が小百合とラナを闇から光へと導いたのです。もしお前に伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいが表裏一体の認識があったのなら、もっと慎重に行動したことでしょう。そうであれば、新たな光の魔法つかいプリキュアが生まれるのは困難だったでしょうね」

 

 それを聞いたロキが目を見開き脱力して肩を落とす。

 

「何を言っているんだお前は、意味が分からねぇ!? 戦いで生まれるのは怒りだろう! 憎しみだろう! 絆だの成長だの胸糞わりぃ言葉を使うじゃねぇっ!」

 

「その答えはプリキュアたちに聞きなさい」

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