魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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黒きダイヤの煌めき! ブラック・ファイアストリーム!

 ダークネスとウィッチが勝負をかけてリンクルストーンを腕輪に呼び出す。

 

「リンクル・ローズクウォーツ!」

「リンクル・オレンジサファイア~!」

 

 二人は左手と右手をつないで後ろへ。体をくっつけてリンクルブレスレットを頭上で重ねる。

 

『二つの魔法を一つに!』

 

 二人の手が半円を描いて腕輪の宝石が発する線が重なって円になり、その中に薄ピンクとオレンジの二つの光線で月と星の六芒星が現れていく。そして二人は2色で描かれた鮮やかな魔法陣の前に手を置いて、後ろにつないでいる手に力を込めた。

 

「プリキュア! クリムゾンローズフレア!」

 

 二色の魔法陣から吹き出た無数の燃え上がる花びらが、横薙ぎの竜巻に乗って舞う。ルークスが光の盾を前に構えると、彼に向かって燃える花びらが収束してゆく。そして、爆発の瞬間に白騎士の聖剣が閃いた。

 

 凄まじい爆裂音と赤炎が広がり、周囲の花々を焼き尽くしていく。ダークネスとウィッチが炎のうねりを見つめていると、突然、炎が横に裂けて二人を衝撃が突き上げてくる。

 

「キャアァッ!?」

「うあぁっ!?」

 

 三日月型の白い閃光が二人の胴を横薙ぎに打って、宙へと吹き飛ばしていた。二人は同時に墜落したが、地面に片手をついてバク転して態勢を立て直す。

 

 炎をかき消して現れたルークスは、また中段の構えで左に剣を引いた。再びの斬撃を警戒してダークネスとウィッチが寄りそって左と右の手をつなぐ。そして、それぞれのブレスレットにブラックオパールとスタールビーを宿らせ、ルークスの攻撃の瞬間に合成魔法を発動させた。

 

『プリキュア! ブレイオブハートシールド!』

 

 ダークネスとウィッチの前に7色の輝きを秘める黒いハートのバリアが現れるのと同時にルークスが動く。彼は斬撃を放つのではなく、跳躍して迫ってきた。

 

 魂を震わせるような大喝の下に放たれた一刀が、黒いハートの盾を真っ二つにした。

 

「わたしたちの合成魔法をこうも簡単に!!?」

 

 ダークネスは驚愕しながらも、間近にいる敵の挙動を見逃さないように細心の注意を払う。するとルークスは剣が役に立たない近接にまで突っ込んで、ダークネスもウィッチも虚を突かれた。彼の盾と剣の柄がプリキュアたちの腹部を打って、華奢な乙女の体を左右に吹き飛ばした。ダークネスもウィッチも近くに岩に叩きつけられ跳ね返って花園に没する。

 

「ダークネス!? ウィッチ!?」

 

 二人が倒れる姿にリリンが胸を痛めて赤い星の宿る瞳を濡らしていた。ダークネスとウィッチは残り少ない力を尽くし、歯を食いしばって立ち上がった。二人とも息が早くなっていて辛そうだった。

 

『リンクル・スターサファイア!』

 

 ダークネスとウィッチは別々の場所で同時に同じリンクルストーンを呼び出して飛翔する。そして、空中で手をつなぎ共に急降下してルークスに向かっていく。

 

『うああぁーっ!』

「愚かな。不用意だぞその攻撃は!」

 

 ルークスの剣が閃き、瞬間的に光の線が現れ、白光の十字架が放たれて空を裂く。

 

「クロスエンド・ディバインスラッシュ!」

 

 ルークスに迫っていたダークネスとウィッチが二人で十字架の斬撃を受けて、耳をつんざくような悲鳴をあげる。二人は十字の輝きを身に受けながら吹き飛んで、大きな岩に背中から激突し、同時に二人の背後にある岩が十字に裂けて崩れ落ちた。

 

 それを見ていたリリンの目には、ダークネスとウィッチがひどくゆっくりと落ちていくように思えた。二人が一緒に落ちると花びらが舞い上がる。攻撃を受け倒れてもなお、二人は手をつないだままだった。

 

「ダークネス、ウィッチ!!?」

 

 リリンが二人に向かって飛んでいく。

 

「二人とも、しっかりするデビ!」

 

 リリンが呼んでも、草花の中に沈んでいるダークネスとウィッチはピクリとも動かなかった。そして、リリンの涙が零れた。

 

「二人とも起きるデビ! みらいとリコだってがんばってるデビ! フレイア様だって待ってるデビ。ここで負けたら、もうフレイア様には二度と会えないデビ!」

 

「残念だが、もう戦う力は残されてはいまい。相反エレメントの攻撃を連続で受けたのだからな」

 

 その時、ダークネスとウィッチがつなぐ手に思いが宿り、より強くつながった。二人はもう片方の手をついて徐々に起き上がってくる。

 

「これは、なんという気力だ!? それに、お前たちのその眼は……」

 

『うあああぁーーーっ!!』

 

 魂を揺さぶるような叫び声をあげながら、ダークネスとウィッチはついに立ち上がった。その姿を目の当たりにしてルークスは目を見開いた。

 

「お前たちはフレイア様に何を見ているのだ……」

 

 ダークネスはルークスをきつく見据えて言った。

 

「こんなところで負けてたまるものですか! みらいとリコは必ず試練を越える! だから、わたしたちも勝ってフレイア様のところに行く!」

 

 ダークネスとウィッチは手をつないだ状態で跳躍して舞い上がった。

 

『生命の母なる闇よ! わたしたちの手に!』

 

 ダークネスとウィッチが舞い降りた場所から黒い炎が昇り、波紋の如く円の形に広がっていく。 ダークネスが右手を上げ、その腕輪の黒いダイヤが輝き、ウィッチが左手を上げ、同じ腕輪のダイヤが輝く。

 

 二人にめがけて飛んできたリリンが空中でクルリと回って二人のプリキュアの間に入った。

 

 ダークネスとウィッチはブラックダイヤの輝く腕輪を前に出してその手を広げる。彼女らの手から赤い月と星が輝く闇色の六芒星魔法陣が広がり、同時にリリンの胸のブラックダイヤから鮮烈な輝きが放たれた。リリンがプリキュア達と同じように右手を前に出すと、六芒星の前に巨大な黒いダイヤが召喚され、後ろで繋がるダークネスとウィッチの手がより固く結ばれる。

 

『プリキュア! ブラック・ファイアストリーム!』

 

 ダークネスとウィッチの完成した魔法が放たれる。六芒星から撃たれた闇色の波動は星のような無数の輝きを内包しつつルークスに迫っていく。

 

「はぁっ!」ルークスの気合の下に十字の剣閃が放たれた。

 

 白き十字の刃が闇の波動を引き裂いていく。その威力は衰えぬように見えたが、

 

『フレイア様ぁーーーっ!!』

 

 ダークネスのウィッチの思いが秘めたる力を呼び起こす。闇の波動の勢いが一気に高まり、十字の輝きを粉砕した。ルークスは咄嗟に光の盾を展開して襲い来る闇から身を守った。

 

「これはプリキュアの! いや、人の思いの成せる業か!」

 

 闇の流れに逆らう光の盾に亀裂が入っていく。ルークスは目を閉じて潔く敗北を受け入れた。黒い波動が彼を飲み込み、宙へと打ち上げられる。ルークスを取り込んだ黒い流星が宇宙の果てへと飛んでいく。

 

 闇の彼方へと消えた流星が爆発し、無数の白い輝きが拡散していく。その背後に現れた宇宙の闇よりも深い空間が、外に広がる光を引き寄せて全てを呑み込んでいった。そこから唯一、傷ついた白騎士だけが吐き出されて地上へと落ちていった。

 

 ダークネスとウィッチは力を使い果たして二人で両ひざをついてその場に座り込んだ。ウィッチはまだ心配そうな顔をしていた。

 

「か、勝ったんだよね?」

「ええ、何とかね……」

「二人とも、本当によくがんばったデビ」

 

 リリンが二人の前で涙を浮かべていた。

 

「ありがとうリリン。あんたが喝を入れてくれたおかげで立ち上がることができたからね」

 

 戦いによって傷ついた花園や破壊された岩山が元通りになっていく。花の中に埋もれていた白い騎士が剣を突いて起き上がる。彼はようやく片膝をつき、プリキュアたちと同じ低い姿勢のままで言った。

 

「お前たちの勝ちだ。よくぞ最終試練を乗り越えた」

 

 ルークスのその言葉を合図にするように二人の変身が解けて、リリンのブローチにあるブラックダイヤと、ラナの腰のポシェットに入っているリンクルストーンの全てが小百合たちから離れて宙に浮いた。

 

「リンクルストーンが!」

「うわぁっ!? とんで行っちゃう~!?」

 

 小百合とラナが見上げていた無数のリンクルストーンが、神殿の方に飛んでいった。二人がそれを追おうとすると階段の前に障害が現れた。

 

「……わたしたちが勝ったのに、まだ扉が開かない」

 

 小百合が神殿への階段の入り口を封印している魔法陣を見つめて言った。

 

「言ったはずだ、伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいの双方が試練を越えなければ扉は開かんと」

 

「みらいとリコはまだ戦っているっていうの……?」

 

 遠くの方から爆裂音が響く。小百合たちが音の聞こえた方向を見ると、空に向かって蠢く黒煙が黒い大蛇を思わせた。不吉な予感が駆け抜けて、小百合もラナもリリンも声が出なかった。

 

「伝説の魔法つかいに試練を与えているバッティ殿の強さは、私よりも一段上だ」

 

「何ですって!? あなたよりもバッティさんの方が強いっていうの!?」

「そんなぁ……わたしたちだってやっとの思いで勝ったのに……」

 

 ルークスは立ち上がり、階段を封印する魔法陣の前で地面に剣を突くと言った。

 

「可哀そうだが、これは試練だ。もし伝説の魔法つかいが負けるようなら、お前たちも潔く諦めよ」

 

 ラナが両手を拳にして全身に力を込めて言った。

 

「みらいとリコは絶対に負けないよ!」

 

「そうよ、負けるはずがない! わたしたちは4人でフレイア様に会わなければならない。ことはの悲しい目を見た時に、わたしはそれをはっきりと悟ったわ。わたしたちが勝ったのなら、みらいとリコも必ず勝つ!」

 

 小百合の強い思いの言葉を聞いた聖なる騎士は微笑を浮かべた。

 

 少女たちは花の香りが立つ中で、共に戦う友達を信じて待ち続けた。

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