魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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ことはの謝罪

 プリーステスはあっという間に2体のヨクバールを倒してしまったフェリーチェの強さに脱帽してしまう。

 

「これほどとはね、次元が違うわね……」

 

「ヨクバール!」

 

 倒れていた人型と獣型のヨクバールが起き上がってくる。その姿をプリーステスは余裕をもって見上げた。

 

「おっと、見とれている場合じゃないわね」

「わたしたちもフェリーチェに負けていられないよ!」

 

 ミラクルの言葉に他の3人のプリキュアが頷いた。獣型が踏みつけてくる足をミラクルとルーンが、人型が撃ってきた拳をマジカルとプリーステスが、うまく捉えて4人の気合が重なった。

 

『そりゃーっ!』

 

 2体のヨクバールの巨体が投げ飛ばされ、空中で衝突して2体が固まって落ちた。

 

「パートナーチェンジよ!」

 

 プリーステスの言葉を受けて、ルーンとマジカルがジャンプして、それぞれのパートナーの下に着地した。

 

「二つのダイヤの魔法を合わせよう!」

 

 ルーンがウィンクして人差し指で天を突くと、みんなの顔に微笑が生まれた。

 

 プリキュアたちはそれぞれ心安き相方と寄りそいあい、プリーステスとルーンの左手と右手が後方で繋がれ、前方で二人の手が重ねられる。ミラクルとマジカルも左手と右手を後ろ手に結び、前方で2本のリンクルステッキが合わさった。

 

『二つのダイヤの光よ!』

 

 プリーステスとルーンのブレスレッドのブルーダイヤが光り、

 

『二色のダイヤの輝きよ!』

 

 ミラクルとマジカルのリンクルステッキの星とハートのクリスタルが白き輝きを放つ。

 

『いま一つとなりて! 聖なる輝きの魔法となれ!』

 

 4人のプリキュアの声が一つになると、プリーステスとルーンはリンクルブレスレットの付いている手を前に出し、ミラクルとマジカルはリンクルステッキで前方を突く。

 

 プリキュアたちの後ろに控えていたモフルンとリリンのダイヤから二色の輝きが広がっていく。

 

 四人のプリキュアの前で二つの魔法陣が一つになり、宵の魔法つかいと伝説のまほうつかいの魔法陣が融合し、二つのダイヤの力が一に重なる。

 

『プリキュアッ!』

 

 二組のプリキュアの後方でつなぐ手に強い力でが込められる。そして融合した魔法陣の前に青き光のダイヤと、白き輝きのダイヤの姿が現れた。

 

『ダイヤモンドッ! スーパーファイアストリーム!』

 

 二つのダイヤの間に青と白の輝きが生まれ、二つの光の閃光が同時に放たれた。

 

『ヨクバールッ!』

 

 二色の光が螺旋に絡み合った波動に、黒い魔力に身を包んだ二体のヨクバールが飲み込まれた。そして二体のヨクバールが青白い輝きに乗って空へと打ち上げられ、さらに宇宙へと誘われる。

 

『……ヨクバール……』

 

 二体のヨクバールが光に包まれた青白い彗星となって闇の広がる果てへと消えて、強い光が闇に生まれた。爆裂して広がった無限の輝きの欠片が星雲を形作り、その内より淡い光に抱かれた二つの闇の結晶がいでて地上へと降った。

 

 上空に存在する竜の闇の魔法陣から嫌な気配が噴き出し、四体のヨクバールの元となっていた四つの闇の結晶を吸い込んで消えていった。

 

 プリキュアとヨクバールの戦いによって傷ついたものが元の姿に戻ると、学び舎の庭で5人のプリキュアが集まった。

 

 ミラクルとマジカルは語りつくせぬ情愛をもってフェリーチェを見つめる。近づいてきたモフルンがミラクルに飛び込み抱き止められる。リリンはプリーステスとルーンの間に飛んできた。

 

 ミラクルとマジカルとモフルンは、言葉なしにフェリーチェと抱き合った。この三人にもう言葉など必要なかった。

 

 親友たちの抱擁から離れた後のフェリーチェは少し様子が変だった。悲し気に目を伏せて、誰とも顔を合わせようとしない。ミラクルとマジカルはすぐに何かあると思った。そんな姿のフェリーチェを見るのは初めてだった。

 

「その……」

 

 彼女は意を決したようにようやく顔を上げると、何故かミラクルとプリーステスを順に見て、その美しい顔の眉根が下がり悲し気なる。言いようのない重苦しい空気が流れ始めて、みんなが不安な気持ちになった。

 

 その時、フェリーチェの腰に付いているスマホンからエメラルドが出てきて、命のプリキュアの姿が桃色の光に覆われると、縮んで元の少女のシルエットになり、光が弾けて桃色の花びらのような輝きを飛ばすと、ことはが現れた。

 

 モフルンとリリンのブローチからも白と青のダイヤが離れて四人のプリキュアたちも元の姿に戻る。

 

「おーい! 朝飯できたぞ!」

 

 食堂からその場の空気を無視するようなフェンリルの声が飛んでくる。

 

「は~! はーちゃんお腹すいた!」

「わたしも~!」

 

 ことはが笑顔になって両手をあげて言うと、それにラナも合わせて両手をあげた。その姿に小百合が激しい違和感を覚える。

 

「ことは、あなた」

「よーし! みんなで朝ご飯にしよう!」

 

 小百合の言を遮って、みらいが大きな声を出す。むっとした小百合に、みらいが微笑と共に気持ちの入った短い言葉を伝える。

 

「ね、そうしよう」

 

 みらいのその姿を見て小百合は気づいた。みらいは小百合の邪魔をしたのではなく、そうする必要があるから遮ったのだ。ことはとみらいの間に、二人にしかわからない以心伝心がある。小百合はそれを悟って開きかけた口を閉ざした。

 

 少女たちはそれぞれに色んな気持ちを抱えて食堂に向かった。歩き出してから、みらいの耳にことはの小さな声が聞こえてきた。

 

「まだ……時間がある」

 みらいだけがその声を聞いた。

 

 

 

 食道のテーブルには豪勢な朝食が並んでいた。少女たちはいつものように楽しく食事をした。ことはは、まるでラナと小百合とも旧知の仲のように溶け込んでいた。ただ、少女たちは、ことはの出現に重大な意味がある事を何となく分かっていて、少し空気が緊張していた。

 

 

 

 校長先生はリズ先生と校庭に出て黒い空を見上げていた。その時、校長が右手に浮かせている水晶に魔女の影が現れた。

 

「校長、お告げですわ。古の時よりありし、聖なる神殿を抱きし花園が邪悪の闇に堕ちると……」

 

「何が起ころうとしているの……」

 

 途方もないことが起ころうとしている。リズははっきりとそう分かる空気の震えのようなものを感じる。校長先生はただ黙って暗雲に覆われた空を見上げていた。

 

 朝食を終えてから一休みした少女たちが、校庭に出てきて校長とリズに近づき、真ん中で一番前の、ことはが校長先生を見上げた。

 

「……ことは君、これから何が起こるのか、君には分かるのだろう?」

 

 校長が言うと、ことはが黙って頷いた。そして振り返り、みらいと小百合に視線を向けて、緑色の瞳に涙を浮かべた。

 

「はーちゃん!?」

「急にどうしたのよ……」

 

「二人とも、ごめんなさい」

 

 ことはにいきなり頭を下げられて、二人とも面食らった。うまく言葉の出ない二人に、ことはが胸に申し訳ない気持ちをいっぱいにして言った。

 

「わたしがここに来たせいで、二人はナシマホウ界に帰れなくなってしまったの」

 

「はーちゃん……」

「そうなのね……」

 

 二人ともあっさりした態度だった。ことはは、二人とも驚いたり悲しんだりすると思って覚悟していたので、きょとんとしてしまった。

 

「何となくそんな気がしてたよ」

 

「ことはは、フレイア様に代わって大切な役目を負っていたんでしょう。そのせいで、わたしたちと一緒に戦うことができなかった。そのことはが、ここに来たということは、フレイア様から託された役目を放棄しなければならない重大な理由がある」

 

 小百合がことはに迫り、華奢な肩を両手で掴んだ。彼女の表情は恐ろしく険しかった。

 

「フレイア様に何があったの、教えなさい!」

 

 ことはが頷くと、小百合は少し離れて、ことはの顔を下に見つめた。小百合の隣にリリンを抱いているラナも来て、いつでも明るい少女が不安のあまり表情をなくしていた。

 

 ことはが俯き加減で話し始めた。

 

「わたしとフレイアで協力して、魔法界からナシマホウ界まで魔法のトンネルをつなげたの。わたしがそれを維持して、みらいと小百合にナシマホウ界へ帰ってもらうつもりだった。でも……」

 

 顔を上げたことはの悲しい目を見ると、小百合に言いようのない苦しい気持ちが溢れて瞳が熱くなった。

 

「フレイア様に何かあったのね……」

 

「フレイアは最後の魔法で全ての闇の結晶を浄化するつもりだったの。それをロキが邪魔したの」

 

 それを聞いた瞬間に、他の少女たちの間に底の見えない悲愴感が広がっていく。

 

「そんな……わたしたちが倒したはずなのに……」

 リコが呆然としてしまう。

 

「ロキはわたしたちが考えているよりも、ずっとずる賢い人だった。リコたちの魔法を受けた時に人間の体を捨てて、実態のない闇の魂になってフレイアから闇の結晶を奪う機会を狙っていたの。そして神殿でフレイアから全部の闇の結晶を奪ってヨルムガンドと一体になって、命が消えかけていたフレイアまで吸収してしまった」

 

 その話を聞いたラナが泣いてしまう。隣の小百合は歯を食いしばり、拳を震わせながら憎い相手が目の前にいるような怖い表情になっていた。

 

「ロキッ! あいつがっ!」

 

「小百合、ラナ、わたしがもっとしっかりしていれば」

 

「謝らないで! ことはは一つも悪くない!」

 

 小百合は、ことはをびっくりさせるほど強く言い放った。その後に小百合は目を固く閉じて涙を流し始めた。

 

「なんでっ……こんな酷いことになるのよ! フレイア様は……何千年も友達を亡くした悲しみと思いを背負って生きてきた! この世界の平和のために苦しみの中を生き続けてきた! それなのに……あんまりだわ……」

 

「うああぁ……」ラナが泣き崩れてその場に座り込んで泣いた。抱かれていたリリンが心配そうにその顔を見上げると、零れてきたラナの涙がリリンの顔に落ちた。

 

「ロキ! 絶対に許さないっ!!」

 小百合は涙しながら怒りの炎を燃え上がらせた。

 

「フレイアの思いも苦しみも絶対に無駄なんかじゃない。わたしたちでそれを証明するの」

 

「はーちゃんがいれば、どんな敵がきても怖くないよね!」

 

 みらいがその場を明るくしようとして言うと、ことはが首を横に振ってリコとみらいが氷ついたように固まってしまった。

 

「ロキと全ての闇の結晶を取り込んで力を増したヨルムガンドはデウスマストに匹敵する」

 

「でも、はーちゃんのすごい力でデウスマストだって倒せたじゃん!」

 

「あの力は使えないの。ロキはデウスマストに対抗する闇の魔法を完成させていた。それはわたしの受け継いだマザーラパーパの力も抑え込んでしまうって、フレイアが言っていたから……」

 

「そんな……」

 

 みらいが不安感を露わにするとリコが微笑していつもの自信を見せた。

 

「いいじゃない。その代わり、今はプリキュアが5人もいるんだし、力を合わせればどんな敵だって楽勝よ」

 

 リコが言うとラナが立ち上がって涙を拭いた。そして5人の少女と二人のぬいぐるみが、お互いの顔を見て強く頷いた。

 

 ことはは、もう一度振り返り、校長先生の前で丁寧に頭を下げる。それはみらいとリコでも見たことがない、ことはの大人びた姿だった。

 

「校長先生、この戦いはプリキュアだけでは勝てません。どうか、よろしくお願いします」

 

「うむ、心得た。こちらは気にせずに、心おきなく戦ってくれたまえ」

 

「リコ、みんな、気を付けて」

 リズが不安の拭えない表情のままに言葉を送った。

 

 ことはが仲間に頷いて歩き出すと、他の少女たちが後に続く。彼女らは校門の扉を越えて並んで立った。右からリコ、モフルンを抱いたみらい、ことは、リリンを抱いたラナ、小百合、少女たちは邪悪の蠢く黒い空を見上げた。

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