魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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赤い命の輝き

 その時だった、島に胎動する狂気を打ち破るようにヨルムガンドの左側の首に劇的な変化が起こった。

 

「ぐああぁーっ!? なんだ、これは!?」

 

 途端にロキが苦し気な叫び声をあげ、ヨルムガンドの左側の長い首の中間点に激しく赤い光がが現れていた。闇そのものであるヨルムガンドの体の中から、真紅の光が夜空に現れた一等星のように小さくとも強く輝いていた。

 

 ヨルムガンドの右側と中央の首が上に伸び切って、巨大な竜の頭が雄叫びをあげた。そして内に赤い光をもった左側の首は勢いよく下がり、地面に頭を叩きつけて苦しみのたうち回る。

 

「く、苦しい……ヨルムガンドの中に、俺様の中に、何かいやがるっ!」

 

 突然ヨルムガンドの中に現れた光は、寄生するロキまで苦しめていた。

 

「めっちゃ苦しんでる~、これってチャンス?」

 

 ルーンが言うと、他のプリキュアたちが顔を見合わせる。

 

「あの光は……助けを求めています」

「どういうことなの?」

 

 何かを感じているフェリーチェにマジカルが問う。

 

「何が起こっているのかはわかりません。ただ、微かな声のようなものが聞こえるのです。ヨルムガンドの中からあの光を助けます。みなさんの力を貸して下さい!」

 

「わかったわ!」

「まかせてよ、フェリーチェ!」

 

 プリーステスとミラクルが答えて、4人のプリキュアがそろって身構え、フェリーチェは赤い花のワンドを構える。

 

「フラワーエコーワンド!」

 

「キュアフェリーチェ! てめぇ、何をするつもりだ!」

 

 ロキが中央の頭を操って、大きく開いた竜の口の中に黒いエネルギーが生まれて大きくなってく。エコーワンドを構えるフェリーチェに狙いを定めていた。

 

 ミラクルとマジカルがリンクルステッキでヨルムガンドを指して魔法を呼び出す。

 

「リンクル・アクアマリン!」

「リンクル・アメジスト!」

 

 プリーステスとルーンがリンクルブレスレットが飾る手をロキが操る中央の首に向ける。

 

「リンクル・ジェダイト!」

「リンクル・スタールビ~!」

 

 ヨルムガンドの頭上に五つハートを抱く氷の五芒星魔法陣が現れる。

 

『プリキュア! アイシクル・カルテット!』

 

 アクアマリンの氷の魔法がジェダイトの風とスタールビーの力の魔法で飛躍的に強化され、絶対零度の凍てつく竜巻が、氷の五芒星から下に向かって吹き荒れた。常識の次元を超えた長さと巨大さの竜の頭と首が、寸秒の下に氷漬けになった。当然、ロキも一緒に氷漬けである。

 

「ながががっ!? ヨルムガンドの力が落ちてやがる! くそおっ、あの光のせいかよ!」

 

 その時、フェリーチェのワンドにエメラルドがセットされた。

 

「エメラルド!」

 

 フェリーチェはエメラルドの宿ったワンドを野の花でも触るように両手で優しく持った。

 

「キュアーアップ!」

 

 フェリーチェが段階的にエコーワンドを上げるごとに、先端の赤い花のオブジェから生命の魔力が広がり、枯れた花園が輝きを放つ大地に変わっていく。そして、光の大地に現れた無数の種が芽吹いてたちまち成長し、ヨルムガンドの周囲に花の海が広がっていく。

 

 そのフェリーチェを狙って右側の竜頭が大口を開けて迫る。そこへ上空より4人のプリキュアが飛来した。

 

「リンクル・スタールビ~!」

 

 ウィッチのブレスレットにセットされていた赤い宝石から、ピンポン玉大の赤い光が次々と出てプリキュアたちの胸の中心に吸い込まれ、焔の如き真紅の光が乙女たちの体から燃え上がった。

 

『だあぁーーーっ!!』

 

 パワーアップした4人のプリキュアの拳が巨竜の脳天に炸裂した。フェリーチェに向かっていた竜の頭が、上から受けた痛烈な一撃で地面に叩き落とされ、プリキュアたちの拳と地面に挟まれて開いていた大口が強制的に閉じられる。

 

「グオォアアァーッ!!」

 

 怒ったヨルムガンドの右の頭が力任せに首を振り上げ、上に乗っていたプリキュアちを振り落とした。4人のプリキュアが着地して横に並ぶと、ヨルムガンドの赤い双眸が彼女らに向けられ、フェリーチェから狙いを逸らすことに成功した。

 

 その時、フェリーチェの花のワンドに、咲き乱れる花々から集められた生命の光が流れ込み、ワンドの先端で蕾となっている赤い花が咲き開いた。赤い花の中央で生命の光を放つクリスタルで、フェリーチェが無限を表す文字を書く。桃色の光の線で文字が浮き出ると、それが二つに分かれて光のリングとなり、フェリーチェの左右に止まった。そして光の円環が、蔦が絡み合う緑の円環に変化し、それに複数の花が咲いていく。

 

「プリキュア! エメラルドリンカネーション!」

 

 フェリーチェがワンドを前に出すと、その先にあるチューリップの花より、桃色の生命の波動が放たれる。それに合わせて左右の花のリングが回転し、命の波動を間に挟んでヨクバールに向かって空中を走っていく。そして緑と花の円環の回転が高速になると緑光を放った。

 

 花びらを散らせる生命の波動がヨルムガンドの左首の中心、ちょうど赤い輝きが現れている部分に撃ち込まれる。すると、赤の輝きがより強くなり、同時にワンドにセットされているエメラルドも反応して輝きを強くした。その瞬間、桃色の生命の光が一気に広がって、余りにも長大なるヨルムガンドの左の頭から首までを覆いつくした。これには魔法を放ったフェリーチェ自身も驚いてしまった。

 

 下から無数の蔦が伸びてきて葉が開き、芽吹いた花の蕾が刹那的に雄大に成長して、その中にヨルムガンドの首の一本を封じた。そして蕾の中に穏やかな光が灯り、花が開くと命の誕生を象徴するように、巨大な桃色の光の球体が現れる。重なった二つの花と緑の円環が、光の球体を囲んだ。勇壮に広がった赤い花の上で、花と緑の二つの円環が左右に転がり、ヨルムガンドの左の頭から首の付け根までが形を亡くして煙のように消え去った。そして、左の円環の中心に赤く強い光が、右の円環の中心には今にも消えてしまいそうな小さな光が入ってた。

 

 二つの光は空中を漂い、赤く強く輝く光が明確な意思を持って動き、弱った蝶のように危なげな動きの小さな光を中に取り込み、次の瞬間にはフェリーチェのウェストに付いているポーチに燕のように飛び込んできた。

 

「スマホンの中に!?」

 

 

 

 フェリーチェの戦いと同時進行で、4人のプリキュアたちも右側の頭と戦っていた。

 

 黒く巨大な竜の頭が低く(いなな)き空気から振動が伝達する。ヨルムガンドの右の首に付いている竜頭が、4人の乙女など一飲みにしてしまう巨大な顎を開けて向かってくる。

 

 プリキュアたちは互いに目で合図をして頷いた。

 

「モフルン!」

「リリン!」

 

 ミラクルとプリーステスの呼びかけで、リリンがモフルンを抱えて飛んでくる。

 

「モフ~ッ」

「デビ~ッ」

 

 二人がプリキュアたちの間に飛び込んでいく。そして、モフルンとリリンのダイヤが強く輝いて、花園の島に聖なる輝きをもたらす。プリキュアたちが跳躍し、二人のぬいぐるみも交えて6人で輪になって回転し上昇していく。

 

 ミラクルとマジカルの魔法を込めた声が輝きの世界に広がる。

 

『永遠の輝きよ!』

 

 プリーステスとルーンの魔法を込めた声が光の世界に澄み渡る。

 

『聖心なる輝きよ!』

 

 空中でプリキュアたちは二組に分かれ、3人で手を取り合って降下していく。そして魔法を紡ぐ4人の乙女の言葉が一つに重なる。

 

『わたしたちの手に!』

 

 プリキュアたちが舞い降りると、白い輝きの波と青い光の波が同時に立って融合し、青銀に輝く高波が波紋を広げていく。

 

 ミラクルとマジカル、プリーステスとルーンが後ろに手をつなぐ。そしてミラクルとマジカルがリンクルステッキを頭上に構え、プリーステスとルーンは頭上で手を交差させ、リンクルブレスレッドを一つに合わせた。

 

『二つの魔法を一つに!』

 

 プリーステスとルーンの手が外側に向かって半円を描いていくと、中心に三日月、周囲に六つの星が宿る六芒星の魔法陣が現れる。

 

 ミラクルとマジカルはリンクルステッキの先端で光の線を引いていく。

 

『フル、フル、リンクルーッ!』

 

 光の線で描かれた二つの三角形が合体してリンクルストーンダイヤと同じ形の光の壁になり、ダイヤの壁から白く輝く五つのハートを宿す五芒星の魔法陣が出現して大きく広がる。

 

 プリーステスとルーンがブレスレットを天上にかざすと、二人が描いた月と星の六芒星が突出して大きくなり、ハートの五芒星をその内の六角形の中に納め、伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいの魔法陣が融合した。

 

「グウルオオオォーーーッ!!」

 

 ヨルムガンドの途方もなく巨大な頭が、伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいの力を結集した魔法陣にぶち当たった。魔法陣を通してプリキュアたちの体に強大な圧力と衝撃がのしかかってくる。それでも彼女らは臆せず一歩も引かずに魔法の力を高めていく。

 

 巨竜の頭部がまといし闇と魔法陣から広がる光がぶつかり合い、ミラクルとマジカル、プリーステスとルーン、それぞれのペアが後ろでつないだ手にぎゅっと力を込める。

 

『プリキュア!』

 

 魔法陣の前に巨大なダイヤが召喚され、ヨルムガンドの右側の首から頭までを中に封じる。その途端に、ヨルムガンドの頭から首まで溶けるように崩れてダイヤの中で闇の塊になった。

 

『ダイヤモンドーッ! エターナル・クロス!!』

 

 プリキュアたちは後ろ手につないだ手を放し、目の前のダイヤを押し出すように手のひらを前方に突き出した。

 

 巨大なダイヤが回転して、それが放たれた瞬間の衝撃波が花びらの嵐を巻き起こす。ヨルムガンドの一部であった闇がダイヤに乗って宇宙の果てまで飛んでいき、爆発と同時に無限の闇に遠大なる星雲が広がった。

 

「やったぁ!」

「やったねっ!」

 

 ルーンがミラクルに飛びついてきて抱き合い、マジカルとプリーステスは微笑のままにか手当を打ち合わせて軽快な音を鳴らしていた。

 

 左右二つの首と頭まで失ったヨルムガンドはどうにも情けない姿になっていた。

 

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