魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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ミラクルとマジカルの苦闘

 闇の結晶の下に運命の歯車が回りだす。小百合とラナとリリン、みらいとリコとモフルン、種々の思惑と共に、各々が闇の結晶を求めていく。時にはみらいと小百合が道一本をへだてた路地で鉢合わせ寸前であったり、リコとラナが街中ですれ違ったり、ようやく見つけた闇の結晶を野良猫に横取りされたりしたが、不思議と双方が出会う事はなかった。まるで運命がそうさせてでもいるように、プリキュアとなった少女たちの衝突は避けられていた。

 

 

 孤高の白猫フェンリル、彼女は今、街の高層ビルの屋上に座って青空を見ていた。そのしなやかな右足で闇の結晶を踏みつけられている。

 

「そろそろいい頃合いだろう。闇の結晶の反応が強くなっている。たくさんの闇の結晶を持ったやつが街の中にいる。そして、そいつらはもうすぐここを通る」

 

 そしてフェンリルが思った通りに、箒に乗った少女たちが青い空を横断していく。二人は遥か上空、その姿は小さいが、フェンリルが確証を得るには箒で空を飛ぶ二人組というだけで十分だった。

 

「いたなプリキュアども! 今度こそ闇の結晶を渡してもらうよ!」

 

 フェンリルは足下の闇の結晶を口にくわえると、屋上をぐるりと囲む手すりに飛び乗り街を見下ろす。するとビルの間を飛んでいるカラスが目に入った。フェンリルは手すりを蹴り、カラスに向かって跳んだ。そしてフェンリルが空中へと躍り出た後に、その背中から白い光が広がって翼の形になる。フェンリルは光の翼を羽ばたかせて高速でカラスに迫り、それに気づいたカラスは慌てて鳴き声をあげた。

 

「クアーッ!?」

 フェンリルに背中を取られたカラスは四肢で押さえつけられて急降下。

 

「さあて、どれにするかねぇ」

 

 フェンリルはカラスと一緒に急降下しながら地上のものを物色していた。そして、カーショップに置いてある2tトラックに目をつけた。

 

「よし、あれだ」

 

 フェンリルは空中でカラスの背中を蹴ってトラックの空の荷台に叩き込み、続けてくわえていた闇の結晶も荷台に放り込んだ。目を回してひっくり返っているカラスの隣に闇の結晶が転がる。フェンリルは白い翼を大きく開き前屈みになって叫んだ。

 

「いでよ、ヨクバール!」

 

 フェンリルの首にあるタリスマンから浮き出た闇の魔法円が巨大化して空に張り付く。急激に暗い雲が広がり、荷台のカラスや闇の結晶と共に2トンもあるトラックが闇の魔法陣に吸い込まれていく。

 

「ヨクバールは融合する素材が多いほど強力になるが、そのぶん制御も難しくなる。わたしのタリスマンでは三つの素材を融合させるのが限度だ。まあ、やつらを倒すのにはこれで十分だろう」

 

 フェンリルは翼で飛んで元いたビルの屋上へともどっていく。

 

 空に張り付いた魔法陣から黒い闇があふれ出し、それが形になっていく。両腕、鳥の足、そして背後に黒い翼が開く。一気に闇が晴れて、トラックのボディーに黒い翼と鳥の足が生えた怪物が現れる。ちょうどトラックが垂直に立ち上がったような姿で、運転席の屋根の部分に竜の骸骨の仮面があり、前輪のあった部分から黒い腕が伸び、タイヤが肩になっている。手や腕の関節部は複雑な構造で、その部分だけはアニメのリアルロボットのようだ。後輪の部分から生えている鳥の足は巨大でそれぞれ(かかと)にタイヤが入っている。そして車体の背面に開いた大きな黒い翼はカラスそのものであった。ヨクバールの竜の骸骨のアイホールに赤く異様な光が現れる。

 

「ヨクバアァーーーールッ!!」

 その時、小百合たちは別の場所で遠くに突然広がった黒い雲の様子を見ていた。

 

「なあにあれ? 雨でもふるのかな~」

「雨雲はあんな風に急には広がらないわ。たぶん闇の魔法陣が現れたのよ」

 

「ヨクバールが襲ってくるデビ?」

 小百合のポシェットから顔を出しているリリンがいうと小百合は首を横に振る。

 

「わたしたちを狙っているのなら、もっと近くでヨクバールを召喚するわよ。狙われているのはもう一方の魔法つかいプリキュアね。ラナ、箒だして」

 

「うん、助けにいくんだね!」

 

 小百合はそれに対してなにも答えない。それでもラナは、嬉々として箒を出してそれに跨った。

 

「早くいこうよ!」

 

 一方、みらいとリコは急に空が暗くなったので空中で止まっていた。二人で振り返ると、間近に黒い魔法陣が広がっているのが見える。そこから現れた巨大な怪物が黒い翼を広げて赤い双眸で二人を睨む。

 

『よ、ヨクバール!?』

 

 二人が驚いている隙にヨクバールは翼の羽ばたき一つで一気にみらいとリコの目前に迫る。

 

『うわあぁぁっ!?』

 

 二人で同時に声を上げて二人で同時に方向転換、ここまでヨクバールに接近されては変身する余裕がない。みらいとリコは、全速力で箒を飛ばしてとにかくヨクバールと距離を取ろうと考えた。

 

「ヨクバァールッ!」

 

 ヨクバールが黒翼で何度も羽ばたくと、逃げようと背中を見せた二人に豪風があびせられる。

 

「きゃっ!」

 

 みらいの方が風をまともに受けてしまい箒から投げ出される。その時に、闇の結晶を詰め込んだ巾着バッグがみらいの体から離れて落ちていく。そしてそれは街路樹の枝に引っかかり、みらいの箒は歩道に落ちて転がった。

 

「みらいっ!」

 リコが伸ばした手が間一髪でみらいの手をつかむ。みらいの右腕に抱かれていたモフルンは、びっくりして目をパチパチさせていた。

 

「リコ、ありがとう」

 

 中学生の少女のリコでは、みらいを片手で引き上げるのは不可能なので、急降下してすぐ近くのビルの屋上に不時着した。みらいは屋上のフェンスから街路樹を見下ろしていった。

 

「闇の結晶が……」

「まずはあれを何とかしましょう」

 

 二人の頭上に現れたヨクバールが黒い翼を広げる。みらいとリコは目と目を合わせて頷き、左手を右手を重ねた。その瞬間に輝くとんがり帽子のエンブレムが現れ少女たちが輝く衣を身にまとう。そして二人はもう一方の手をあげて呪文を唱えた。

 

『キュアップ・ラパパ、ダイヤ!』

 

 みらいとリコのペンダントに現れたダイヤが光になって移動し、モフルンの胸のブローチの上で重なって一つのダイヤとなる。モフルンがハートの手のひらを上げると、みらいとリコがその手を取って三人で手をつなぎ、光を放ちながらゆるりと回転する。

 

『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 みらいとリコが伝説の魔法の呪文を唱えると、モフルンの胸に白いハートがやどり同時にブローチのダイヤから光が走る。二つのダイヤの光が交わると、二人を包む世界に星とハートの光あふれる。頭上にハートのペンタグラムが現れて二人の姿が強い光の中に消えていく。

 

 地上に現れしハートのペンタグラム、その上にプリキュアとなったみらいとリコが召喚される。二人のプリキュアが魔法陣の上から飛んで地上へと降り立つ。

 

「二人の奇跡、キュアミラクル!」

「二人の魔法、キュアマジカル!」

 

 ミラクルとマジカルが左手と右手を後ろ手に体を寄せ合い、もう一方の手と手を合わせてハートを描けば、それは平和を守る魔法つかいの象徴。二人は後ろでつないだ手を前に叫ぶ。

 

『魔法つかい! プリキュア!』

 

 二人が変身している間にモフルンは街路樹の下へ。まずは小さくなっているみらいの箒を回収し、つぎに見上げると枝に引っ掛かっているみらいのバッグに手を伸ばしてみる。

 

「高いモフ、届かないモフ」

 

 モフルンは闇の結晶の入ったバッグは諦めて大樹の陰から二人のプリキュアを見守った。

 

 一方で白い翼のフェンリルはヨクバールの更に上空から地上を見おろしていた。

 

「出たねプリキュア! ヨクバール、そいつらを潰せ!」

「ギョイィーーーッ!」

 

 ミラクルとマジカルは同時にジャンプして二人並んで空飛ぶ箒の上に立つ。向かってくるヨクバールに対し、二人のプリキュアは箒を蹴って敵に向かっていく。

 

『たあーっ!』

 二人の拳がヨクバールのボディにめり込む。

 

「ヨクッバール!」

 ヨクバールが体を反り返すと、ミラクルとマジカルははじき返されてしまった。

 

「うわっ!?」

「はね返されたし!?」

 

 二人が同時にアスファルトの道路の真ん中に着地すると、そのすぐ後にヨクバールも地上へ、トラックの重量を支える巨大な鳥の足がアスファルトにめり込み道路に亀裂が入った。突然、化け物が現れて街の人々は大混乱、近くを走っていた車なども急停車して運転手が外にとびだし、みんな逃げだした。そんな人々と入れ替わるようにして、小百合とラナが姿を現す。二人はビルの陰から様子を見た

 

「伝説の魔法つかいだよ~、何度見てもファンタジック!」

 

 隣で興奮気味のラナを置いて、小百合は伝説の魔法つかいが相手をしているヨクバールに目を向けていた。

 

「あのヨクバール、前に戦ったやつよりも大きいわ」

「羽なんかもあって、なんか強そうだね~」

 

 ヨクバールの足に付いているタイヤが高速回転し、地上を滑るように走りながら二人に迫る。ヨクバールの予想外の速さに二人は少し驚くが、左右に跳んで体当たりをかわし、同時に地面を蹴ってヨクバールに接近、跳び蹴りの態勢へ。

 

『てあぁーっ!』

 

 二人一体の蹴りがヨクバールの顔面に炸裂するが、少々よろけた程度であった。二人の連携はまだ続く。ミラクルがヨクバールの懐に飛び込み、ボディへのパンチの連打、そしてマジカルがジャンプして側頭への回し蹴り、それが見事に決まるが、ヨクバールはびくともしなかった。ヨクバールは空中のマジカルにパンチを叩き込む。

 

「きゃあぁーーーっ!」

 

 ぶっ飛んだマジカルは、近くのビルに叩きつけられ、凄まじい衝撃が建物の一部を崩壊させる。

 

「マジカル!?」

 

 相方がやられて隙を見せたミラクルに、黒い翼を広げたヨクバールから弾丸のように無数の羽が撃ちだされる。それらがミラクルの周囲に突き刺さり、次々に爆発した。ミラクルの悲鳴は爆音によってかき消された。噴煙が消えると、アスファルトが吹き飛ばされて穿たれた穴の中心で傷ついたミラクルが片膝をついて座り込んでいた。

 

「うぅ、前よりもパワーアップしてる……」

 

 二人のプリキュアがやられているのを、ラナはハラハラしながら見ている。

 

「大変だよ、伝説の魔法つかいがやられそうだよぅ」

「あれは今まで戦ったヨクバールよりも明らかに強いわ。一筋縄ではいかない相手ね」

「小百合、助けてあげようよぅ、ね、ね」

 

 そう言うラナの必死さが小百合に伝わった。

「そんなに助けたいの?」

「うん、うん! そりゃもう!」

 

 何度も頷いたラナに、小百合は少し考えてからいった。

「確かに、あのヨクバールを二人で倒すのは厳しいわ。今回は助けてあげましょうか」

「やった~」

 

「ただし、条件があるわ。リンクルストーンは絶対に使わないこと」

「え? なんで?」

 

「なんでもよ。もし約束を破ったら、巴にいって毎週のプリンアラモードはなしにしてもらうからね」

「うえぇっ!? それはやだやだっ!」

「じゃあいう通りにしてね」

 

 ラナは必要以上に何度も頷いていた。

 

「それじゃあ」

 小百合が左手を返して出すと、それにラナが右手を近づける。

「レッツ、ゴー!」

 

 二人の手がつながると黒いとんがり帽子と赤い三日月のエンブレムが現れる。瞬間に二人が闇色の衣に包まれる。二人はつないだ手を後ろへ、もう片方の手を高く上げ魔法の言葉を高らかと。

 

『キュアップ・ラパパ、ブラックダイヤ!』

 

 リリンが飛んできて小百合とラナの間に入って手を繋ぎ輪になると、三人は暗い世界へと誘われていく。

 次の瞬間に地上に現れた月と星のヘキサグラムの上に、宵の魔法つかい二人が召喚される。地上に降りたウィッチは、拳を突き上げていった。

 

「よーし、伝説の魔法つかいを助けにいこ~」

「待ってウィッチ、ヨクバールはわたしたちの存在に気づいていないわ。奇襲をかければ打撃をあたえられるかもしれない」

 

「早くしないと二人がやられちゃうよ~」

「このままただ突っ込んでいったら、4人まとめてやられるわよ。とにかく、わたしに動きを合わせなさい」

 

「うん、わかった!」

「二人とも、がんばるデビ」

 

 リリンの応援にダークネスとウィッチが頷く。二人が今立っている場所は通りを挟んで高層ビルが向かい合っていた。ダークネスがジャンプすると、ウィッチも同じように跳ぶ。二人は鋭い角度でビルに接近し、壁を蹴ってさらに反対側のビルに向かって跳ぶ。それを何度も繰り返し、ジグザグに跳んでやがて片方のビルの屋上へ至る。二人は着地すると風を切って全速力で走り、向こうに見えるさらに高いビルに向かって跳ぶ。空中で態勢を変え、まるで地上へでも着地するようにビルの壁に足を付け、膝を曲げて力をためる。二人が見下ろす先には伝説の魔法つかいと戦うヨクバールの姿が見えていた。

 

『はあぁーーーっ!!』

 

 二人がビルの壁を思いっきり蹴り、ミサイルが発射されるような勢いで急降下すると同時に衝撃波が起こり、ビルの窓ガラスを激しく震えさせた。

 

 ミラクルとマジカルの戦いは続いていた。

『ヨクバール!』

 

 ミラクルを踏みつぶそうと、巨大な鳥の足が上がる。かかとに付いているタイヤが高速回転しているのが何とも恐ろしい。ミラクルが後ろに跳ぶと、いまさっきいた場所に鳥の足が踏みつけられてアスファルトが砕けてめくれ上がる。そこへマジカルが突っ込んできて顔面にパンチを打ち込む。ヨクバールの動きが止まる。

 

「はあっ!」

 

 続けてヨクバールの顔面にマジカルの蹴りが叩き込まれる。この二段攻撃でヨクバールは少し怯んだ。ここで押し込んで勝負を決めなければ、かなり厳しい状況になる。二人ともそれが分かっていたので、攻撃の手は休めない。ミラクルの前にリンクルステッキが出現する。それを手に取りミラクルは呼びかけた。

 

「リンクル・ガーネット!」

 ヨクバールの足元が歪んで波が起る。

 

「ヨクッ!?」

 ヨクバールがバランスを失ったその隙をついて、ミラクルとマジカルは二人は同時にジャンプ。

 

『たあーっ!』

 

 二人の渾身のパンチがヨクバールのボディに衝撃を与える。それでヨクバールはたまらず後退するが、倒れずに踏みとどまった。このヨクバール、二人の大魔法が決まれば倒せない相手ではないが、魔法を使うための隙を作ることができない。

 

 ヨクバールの黒い翼が広がる。そして羽ばたくと、強烈な風が二人を襲った。近くに放置されている車が吹き飛ばされ、樹の陰に隠れているモフルンやビルの陰で見ていたリリンも飛ばされそうになって、必死に枝やガードレールにしがみ付いていた。何とかしたいがどうにもできない状況に、ミラクルとマジカルは苦しんでいた。その時、ヨクバールの背後にヒューンと何かが空気を裂いて迫ってくる。その音に気付いてヨクバールが振り向いた瞬間、

 

『はぁーっ!』ウィッチとダークネスのパンチが骸骨の眉間にめり込んだ。

 

「ヨグーッ!?」

 

 ヨクバールが悲鳴を上げながら派手に吹っ飛び、地響きと共にミラクルとマジカルの背後に沈んだ。ダークネスとウィッチは着地すると、それぞれポーズを決め、

 

「穏やかなる深淵の闇、キュアダークネス!」

「可憐な黒の魔法、キュアウィッチ!」

 

 ダークネスとウィッチが後ろで左手と右手を繋ぎ、体を合わせて互いの温もりを感じると、もう一方のても重ねて悩まし気に目を閉じる。二人は離れ後ろ手につないだ手を放して前へ。

 

『魔法つかいプリキュア!』

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