魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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第7話 届けこの思い! ラナの秘密と魔法の杖!
リズ先生の助力


 ラナは早朝から家の裏にある小さな物置小屋でがさごそやっていた。探しに来た小百合が物置の入り口に顔を出す。

 

「ラナ、わたしは絨毯のバスで行かなくちゃならないから先に出るからね」

「そんなに急がなくてもだいじょーぶだよ、いいもの見つけたから!」

 

 ラナが赤い柄の箒をもって物置から出てきた。魔法学校の生徒たちが乗っている箒よりも大型で柄の部分など倍くらい長く、穂の部分もかなり大きい。

 

「ずいぶん立派な箒ね」

「これ、おばあちゃんが使ってたリンゴを出荷する時に使う箒だよ。荷物をいっぱい運ぶのにつかってたんだけど、二人乗りもできるんだ」

 

「それは助かるわ!」

「だから~、ゆっくりお茶でも飲んで~」

「時間まで勉強するわ」

「え~、おしゃべりとかしようよぉ」

「今のわたしには遊んでいる暇なんてないの」

 

 小百合は家の中に戻ってしまった。ラナはつまらなそうにため息をついた。魔法界にきてからというもの、小百合にかまってもらえないのだ。

 

 

 

「ちょっと、速すぎるわよ!」

「大したことないよ~、わたしの箒に比べたら!」

 

 ラナが箒で雲の中に突っ込むと、小百合が悲鳴をあげる。

 

「やめなさいよ! 怖いっていってるでしょ!」

「全速力だけど、わたしの箒の五分の一くらいの速さだよ~」

「全速力の時点で危ないわよ! あんたの箒を基準にしないで!」

 

 小百合のポシェットに入っているリリンは気持ちよさそうに風を感じていた。

「お空を飛ぶのはとっても気持ちいいデビ」

 ラナは小百合に怒られて渋々スピードを半分くらいにしていた。

 

 この日から小百合の猛烈に勉強をする日々が始まった。学校で勉強、帰ったら闇の結晶を探して夜は勉強、早朝に起きては勉強という感じで、ラナは小百合に構ってもらえないのでとてもつまらない。学校ではみらいやモフルンと一緒に遊べるが、小百合がいないのは寂しかった。

 

 

 

「キュアップ・ラパパ! 葉っぱよ舞いなさい!」

 

 お昼休み、小百合がその辺で拾った棒を振って校庭の樹に向かって呪文を唱えていた。魔法界にきて何日かすると、小百合はできもしない魔法の訓練まで始めていた。当然、ただの棒ではいくら振っても魔法は使えない。

 

「小百合、なにやってるの~?」

 ラナが探しにきて、そんな様子の小百合を見つけた。

 

「イメージトレーニングよ」

「ふえぇ? イメージぃ?」

「魔法の杖がなくてもイメージトレーニングをすることで魔法の精度を上げたり、集中力を高めることができるのよ」

「へぇ~、そうなんだぁ」

 

 小百合が棒切れを下ろしてラナを見つめる。

「これ、魔法実技の教科書に書いてあるんだけど」

「教科書なんて、わたしほとんど読んでないし~」

「あんたねぇ……」

 

「でもぉ、魔法の杖もないのに魔法のイメージトレーニングなんて意味あるの?」

「意味はあるわ。魔法が使えなくても魔法つかいと同じ勉強をすることでその気持ちが分かる。わたしは魔法つかいとしてのラナの気持ちとか悩みとかちゃんと理解したいの」

「小百合……」

 

「キュアップ・ラパパ! 木の葉よ舞え!」

 小百合が力強く呪文を唱えると樹の葉が揺れて葉っぱが一枚舞い上がった。

「おお~」

 

 ラナは空高く舞う葉っぱを見上げた。辺りに強い風が吹いてきていた。小百合は微笑していった。

「魔法界の自然が魔法を与えてくれたようね」

 

 その時に近くを通り過ぎた数人の少女たちが小百合にはっきりと聞こえるようにあざ笑った。魔法の杖もないのに魔法の訓練をする小百合が、彼女たちにとっては滑稽なのだろう。ラナは頬を膨らませて怒った。

 

「むぅ、いま小百合のこと笑った!」

「放っておきなさい。笑いたい人は笑えばいいのよ、わたしは気にしないわ。それどころか、今は魔法の勉強をするのがとても楽しいの」

 

「勉強が楽しいなんて、わたしには一生かかっても理解できないね!」

「あんたはもうちょっと勉強頑張りなさいよ……」

 

 

 

 小百合は図書館ではひたすら勉強していた。どうしても必要は本がある時はラナに頼んで取ってきてもらう。みらいやリコに助けてもらおうとは思わなかった。二人が敵対する伝説の魔法つかいだと分かっている以上、これ以上近づくのは危険だった。でも本当は、リコに勉強を教えてもらえたらとも思っていた。

 

「数学はナシマホウ界と大して変わらないわね。まあ、魔法に関する数式は謎だらけだけど……」

 

 いくら勉強が得意だといっても、異世界の学問が相手では限界がある。小百合は分からないところは飛ばして勉強を進めていたが、そんなやり方をしているとどうしても行き詰る。

 

「魔法力学はこれ以上は無理そうね。あーっ! いっそのこと校長先生に聞きに行こうかしら。でも、さすがに校長先生にいきなり聞くのはねぇ。ラナじゃ相手にならないし、リコには聞けないし……」

「どう、勉強は進んでる?」

 

 勉強に集中していた小百合は、その人が近づいていたことにまったく気づいていなかった。びっくりして見上げると女の人が見つめていた。小百合はその人がリコにどことなく似ていると思った。

 

「あなたはもしかして、先生ですか?」

「ええ、そうよ。校長先生から図書館で一人で勉強している子がいると聞いて来てみたのよ」

 

 これこそ渡りに船と、小百合は慌てて立ち上がって頭を下げた。

 

「お願いします、わたしに勉強を教えてください。もしお暇だったらでいいんですけど……」

「そのつもりでここに来たのよ」

 

 小百合が珍しく満面の笑みを浮かべる。今の状況で先生に勉強を教えてもらえることはそれ程嬉しく価値のある事だった。

 

「わたしは聖沢小百合と申します」

「あなたのことは校長先生から聞いています。ナシマホウ界から来たのですってね。わたしはリズです」

「よろしくお願いします、リズ先生!」

 

 小百合はリズに対する深い感謝を込めて頭を下げた。その時にリズは机の上に置いてある帽子を見て言った。

「あら? それはエリーの帽子じゃないの? そのリンゴのブローチもそうよね?」

 

「あ、はい、そうです。この制服はエリーさんからお借りしたものです。リズ先生はエリーさんと知り合いなんですね」

「知り合いも何も、彼女は同級生よ」

 

 リズはそういって、急に口元を押さえて失笑する。小百合は訳がわからず小首を傾げた。

「ごめんなさいね、ちょっと思い出してしまって。エリーは校則違反のアップリケとブローチを入学してから卒業するまで付け続けていたの。彼女、魔法学校で有名だったのよ」

 

「そう言えば、教頭先生がこの帽子を見て変な顔をしていました。あの教頭先生が校則違反を見逃すとは思えませんけど……」

「そこが面白いところなのよ。当然だけれど、教頭先生は注意したわ。そしたらエリーがどうしてもアップリケとブローチを付けていたいって引き下がらなくて大騒ぎになってね。今度は校長先生が現れて、エリーが教頭先生の納得する成績を取れたら許してあげようって」

 

「あの教頭先生が納得する成績って、トップクラスじゃないと無理じゃないんですか?」

「そうよ。そしてエリーは次のテストで一番を取ってしまったの。それで教頭先生は何も言えなくなってしまったのよ」

 

 それを聞いた小百合は少し目を大きくして驚き、それから考え込んでいた。

「……あの人、やっぱりすごい人だったんだ」

「エリーの魔法を見たのね」

 

「はい! あの人の魔法はとても優雅で、なんて言ったらいいのか、口で説明するのは難しいんですけど……」

「あの魔法はちょっと真似できないわね。エリーは魔法の実技がいつも一番だったのよ。わたしは勉強の方が得意で、彼女とはいつも首席争いをしていたのよね、懐かしいわ」

 

 何となく昔話をしているリズの横顔を見て小百合は心の中でガッツポーズしていた。

 ――リズ先生もすごいじゃない! 休みの日はエリーさんに勉強を教えてもらえばいいし、勉強するのに最高の環境を手に入れたわ!

 

「少し話しすぎたわね、始めましょうか」

「実は、ここのところが分からなくて」

 

 リズは小百合の分からない部分を丁寧に分かりやすく教えてくれた。リズには担当の授業があるので合間に小百合の勉強を見てくれることになった。小百合がリズと一緒に勉強できる時間は長くはないが、それでも小百合にとってリズは救世主になった。

 

 

 

 水晶を見ている校長の目の前にリズが現れる。校長は水晶からリズに視線を移して言った。

「どうであった?」

「小百合さんは優秀な生徒です。よく勉強していて、魔法界にきて間もないとはとても思えませんでした。あの一生懸命に勉強に打ち込む姿はリコによく似ています」

「そうか」

 

 校長は席を離れて後ろの窓から外の景色を眺める。

 

「わしの見立てでは、あの子には魔法の才能がある」

「校長先生がそう言うのでしたら間違いないでしょう。でも、魔法の杖がなければ……」

「うむ、惜しいのう」

 

 校長はもう黒いプリキュアの正体が小百合たちだと知っている。しかし、それを誰にも明かしてはいなかった。今はただ魔法学校の校長として、一人の教育者として、生徒たちを見守ることに徹していた。

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