魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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フェンリルの分断作戦

「2体同時に相手にする必要はないわ、一体ずつ素早く確固撃破しましょう」

「わかったよ!」

 

 マジカルにミラクルが頷く。二人は屋根から跳んで丸型ヨクバールに急接近する。

 

『とあーっ!』

 

 二人同時のパンチがヨクバールのボディーに炸裂する。ヨクバールは氷の破片を散らしながら街の中ほどから中央の広場まで吹っ飛んでいく。

 

「ヨクバール!?」

 

 氷に覆われた丸い体が広場の階段に激突し、破壊して地中にめり込む。上空から見ていたラナは驚いていた。

 

「うわっ、すっごい飛んだよ~」

「ダイヤスタイルにはないパワーだわ。あれがルビーの能力なのね」

 小百合は淡々とルビースタイルの能力を分析していた。一方別の場所では、ボルクスがルビーの力の前に愕然としていた。

 

「おい、どうなってんだ!? 俺のヨクバールがとんでいっちまったぞ!」

「こりゃあ驚いたね、とんでもないパワーだ」

 

 フェンリルはそう言いつつも冷静で余裕がある。それとは真逆なボルクスは頭に血を上らせた。

 

「こうなったら俺様が相手になってやる!」

「まあ、待ちなよ。まだお前のヨクバールはやられていないよ。それに、あんたが出るまでもないさ。2体のヨクバールをうまく使えば奴らを倒すのはそう難しいことじゃない」

 

「本当か?」

「以前の戦いで奴らの力の本質は見抜いている。プリキュアってのは協力することで、その力が何倍にもなる。逆を言えば分断しちまえばその力は何分の一かになるってことだ」

 

「お前の言っていることは難しくて全然わからんぞ」

「どんだけ阿呆なんだい! 仕方ない、分かりやすく言ってやる。お前はヨクバールにマジカルを攻撃させろ。わたしのヨクバールはミラクルを狙わせる。あの二人は一緒に戦おうとするだろうが、執拗(しつよう)に攻撃を繰り返して分断させるんだ、それで勝てる」

 

「マジカルを狙えばいいんだな、ようし!」

 ボルクスが街の中央広場に向かって走り出す。フェンリルは近くで暴れているヨクバールに命令した。

 

「ヨクバール、キュアミラクルを狙え!」

「ギョイィーーーッ!」

 

 ウサギ型のヨクバールがその強靭な脚力で大きく跳躍する。それを3度繰り返しただけで、ヨクバールは中央広場に到達した。新たなヨクバールが現れ、丸型ヨクバールと対峙していたミラクルとマジカルに緊張が走る。そこへ今度はボルクスが現れる。それを見たマジカルが怪訝な顔をした。

 

「なんでオーガがこんな所に?」

「オーガ?」

 

 ミラクルはオーガのことがすごく気になったが、今はそんなことを聞いている余裕はない。

 

「行け、俺のヨクバール! キュアマジカルを倒せ!」

 その命令を聞いて二人はそのオーガが敵であることを知る。

 

「ヨクバール!」

 

 丸型ヨクバールの氷の翼が開き、全身からツララが突き出す。氷の翼が羽ばたくとツララがミサイルのように発射されてマジカルに迫る。マジカルがその場から飛び退くと石床にツララが突き刺さった。

 

「このーっ!」

 

 ミラクルがマジカルをフォローしようと丸形ヨクバールに向かっていくと、唐突にウサギ型ヨクバールが割り込んできた。

 

「ええっ!?」

「ヨクバールッ!」

 

 ウサギ型が巨大な腕を振りかぶり、空中のミラクルに長い爪を叩きつける。虚を突かれたミラクルはその攻撃をまともに受けた。

 

「うあぁっ!?」

 

 吹っ飛ばされたミラクルは剛速球のような勢いで広場の外側に飛んで商店の建物に激突した。轟音と共に土煙が上がる。ミラクルは3軒先の店まで突き抜けて建物を倒壊させて瓦礫の中に埋もれてしまう。

 

「ミラクル!」

 

 マジカルがミラクルに向かって大きくジャンプすると、そこへ丸形ヨクバールが突進してくる。

 

「ヨクーッ!」

「キャアッ!?」

 

 固い氷の体に弾き飛ばされたマジカルは広場の石階段に叩きつけられ、その身で階段を粉みじんにして埋没する。

 

「くぅっ、片方ずつ狙っているの!?」

 

 マジカルは片目をつぶって全身の痛みに耐えながらいった。それから立ち上がり、空中からこちらを睨む竜骸骨の真紅の瞳を見つめていった。

 

「このままじゃまずいわ、何とかしてミラクルと合流しないと」

 

 ウサギ型ヨクバールが一跳びでミラクルの目前に移動して地響きと共に降り立つ。ミラクルは瓦礫を押しのけて立ち上がっていた。

 

「このままじゃ街が……」

「ヨク!」

 

 ヨクバールが長大な爪の付いた手を伸ばしてくる。ミラクルが跳んで避けると同時に道路の方に出ていくと、中央広場の方で爆発のように煙が上がり、マジカルの悲鳴が聞こえてくる。ミラクルは前屈みになって目の前の敵に向かってまっすぐに飛んでいく。

 

「どいてーっ!」

 

 ヨクバールの腹部に飛び込んできたミラクルのパンチが沈み、その衝撃で巨体が後退する。

 

「リンクルステッキ!」

 虚空に現れたリンクルステッキをミラクルは手に取り、高く上げる。

「リンクル・アメジスト!」

 

 ステッキにハート型の紫色の宝石が現れると同時にミラクルの背後に魔法陣が開く。ミラクルが後ろに跳んで魔法陣の中に入ると、一瞬後にヨクバールの上に魔法陣が開きミラクルが飛び出してくる。

 

「たあーっ!」ワープしてきたミラクルの飛び蹴りがヨクバールの顔面に決まった。

 

「ヨクッ!?」ヨクバールの巨体がぐらついて後ろに倒れていく。高い建物の屋根からの様子を見ていたフェンリルは言った。

 

「一人でもヨクバールを圧倒するパワーか。二人一緒になったら2体のヨクバールでも負けるね」

 

 ヨクバールが倒れて石畳の道路にヒビが入る。ミラクルはヨクバールを跳び越え、マジカルのところへ向かおうとした。しかし、ヨクバールの巨大な手が伸びてきてミラクルの足をつかんでしまう。

 

「ああっ!?」

「ヨクッバールッ!」

 

 恐ろしいかけ声と共にヨクバールが腕を振ってミラクルを道路に投げつける。

 

「キャアアァッ!!」

 

 ミラクルは道路の石畳を破壊してバウンドし、再び道路に接触した後は何度も転げまわってから止まった。それを見ていたフェンリルは痛快に笑った。

 

「いいぞヨクバール! ミラクルとマジカルの距離をもっと開けろ! 絶対に一緒にさせるな!」

 

 埃だらけでうつ伏せに倒れているミラクルが前を見ると、立ち上がったヨクバールが周りの店を破壊しながら近づいてきていた。

 

「や、止めて! 街を壊さないで!」

 

 ヨクバールに向かっていくミラクルを見ながら、フェンリルはさっきとは違い神妙な顔をしていた。

 

「このまま伝説の魔法つかいを倒せればそれに越したことはないが、本当の目的は違う。奴らも闇の結晶を集めていたんだから魔法界にきているはずだ。出てこないのか、黒いプリキュア」

 

 

 

 小百合とラナはまだ空から街を見おろしている。ラナはミラクルとマジカルの戦いを何度も交互に見て死ぬほど心配していた。

 

「小百合、このままじゃ二人ともやられちゃうよ!」

「プリキュアの力を発揮できないように分断しているようね。敵は考えているわね」

「さゆりぃーっ!」

 

 ラナがそわそわしながら叫ぶ。もう我慢できないという感じだが、小百合は黙って目下で繰り広げられているマジカルの戦いを見ていた。

 

 

 

「いけーっ、ヨクバール!」

「ギョイーッ!」

 

 丸型ヨクバールが超低空を飛び、氷漬けのミカンの体で突進する。マジカルは両手を前にヨクバールを受け止める。衝撃で受け止めた態勢のまま後退していく。

 

「くうぅ!」

 

 次第にヨクバールの勢いが衰え、マジカルの踵が階段の際に接触した時にヨクバールを受け止めた状態で完全に止まった。それを見てボルクスは赤い目を見開く。

 

「げげっ、一人で止めやがった!?」

 

 しかし、マジカルはヨクバールを止めるのがやっとで反撃に転じることができないでいた。

 

「ええい、押し込めヨクバール!」

 

「ギョイ!」ヨクバールが氷の翼を広げて羽ばたく。マジカルにさらなる重圧が加えられ、ついに耐え切れずにヨクバールの体の下敷きになってしまう。ヨクバールが飛び上がって離れると、マジカルは段が砕けてほとんど平坦になった階段の中に埋もれてしまっていた。

 

「ううっ……」

 

 ダメージが大きいのか、マジカルが苦しそうにうめく。ボルクスは好機と見るやヨクバールに命令する。

 

「これでとどめだ! ヨクバールッ!」

 

 ヨクバールが高度を上げてからミラクルに向かって急降下、その時にマジカルが目を開けて素早く起き上る。

 

「まだまだなんだから!」

 

 マジカルは目の前に出たリンクルステッキを左手に取り、剣で敵を切るように強く横に振る。

「リンクル・ペリドット!」

 

 マジカルの呼びかけに乗じてリンクルステッキに若葉色のドーム型の宝石がセットされる。マジカルがリンクルステッキをヨクバールに向けると、無数の葉が螺旋の竜巻になってヨクバールに襲いかかる。まともに食らったヨクバールは、あっという間に葉っぱに全身を包まれて身動きが取れなくなった。マジカルは墜落してくるヨクバールに向かって思い切りジャンプ、

 

「はあーーーっ!」

 

 マジカルの渾身のパンチでヨクバールは葉っぱをまき散らしながら吹っ飛び、弧を描いて墜落する。とどめを刺せると思っていたボルクスはマジカルのパワーにまた驚かされる。

 

「何て奴だ!?」

 

 着地したマジカルは広場の外に向かって疾走した。

「今のうちにミラクルのところに!」

 

「ヨクバール!」

 マジカルの頭上からツララの雨が降ってくる。

「キャァーッ!?」

 

 マジカルに大したダメージはなかったが、地面に突き刺さったツララが目の前に壁を作っていた。

 

「ミラクルのところには行かせんぞ」

 ボルクスが腕を組んでマジカルの前方に仁王立ちしていた。空からはヨクバールが近づいてくる。

 

「どうしたらいいの……」

 ミラクルもマジカルも、たった一人で敵と戦う苦しさに心が疲弊していった。

 

 

 

 箒の上のラナが握った両手を胸に当てて、息が苦しいような変な声を出しながらウサギ型ヨクバールとミラクルの戦いを見おろしていた。ミラクルは懸命に攻撃を加えるが、ヨクバールの爪の一撃を受けて近くの建物に叩きつけられてしまう。その建物が崩壊して煙が舞い上がるとラナは叫んだ。

 

「もう我慢できない! わたし一人でも助けにいくから!」

「あんた一人じゃ何にもならないわ。3人そろわないと変身できないんだからね」

 

「それでも助けにいく~っ! わたしが魔法を使いまくれば、ヨクバールを倒せる魔法がでるかもしれない!」

 ラナそういうと途端に小百合は慌てた。

 

「そ、それはやめなさい! 今より恐ろしい状況になるわ!」

「このままじゃミラクルとマジカルがやられちゃうよぅ……」

 

「もう観察は十分よ、わたしたちも行きましょう」

 泣きそうなラナの顔がたちまち笑顔に変わる。

「二人を助けるんだね!」

 

「勘違いしないで、あの二人はどうでもいいわ。ただ、このままだと人的被害が出る、さっさと片付けてしまいましょう」

「そんな、どうでもいいだなんて、友達なのに……」

「あの二人は敵よ。友達だなんて気持ちは捨てなさい」

 

 小百合に言われるとラナは目伏せて黙っていた。

 

「変身するわよ、街に降りて」

「うん……」

 ラナは言われた通りに箒を降下させた。

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