『キュアップ・ラパパ! ダイヤ!』
みらいとリコのペンダントから出た白い閃光が同じ形のダイヤとなってモフルンの胸のブローチの上で重なって一つになる。みらいとリコがモフルンの手を取って三人で手をつなげば勇気あふれる希望の輪に、そして3人はメリーゴーランドのようにゆるりと回転する。
『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』
みらいとリコが伝説の魔法の言葉を唱えると、モフルンの体に白いハートが現れ同時にブローチのダイヤも光る。ダイヤからあふれた閃光が交錯し、次の瞬間に辺りに星とハートの形のクリスタルをちりばめたような不思議な光に満たされる。その輝きにあふれる世界で、みらいとリコの姿が変わっていく。
みらいの金髪は長く伸びてふわりと広がり、前髪の一部が伸長して頬へと流れる。上半身は白のパフスリーブ、下半身はホットピンク、ピンク、白の3重フリルスカートのドレスが現れ、胴回りに金の指輪を半分に切ったような半円に銀の鎖を繋げた円環のジュエリー、鎖の部分には赤、青、白の球形のクリスタルが数珠つなぎに付いている。足にピンクのハイヒール、縁が花弁のように開いている白のハイソックス、足首には金のリング、続いてブロンドに赤いリボンで結んだサイドテールとハートの飾りが可愛い小さなピンクのとんがり帽子が付いたカチューシャが現れる。
リコの髪は腰の下まで流れるほどに長くなり、前髪の一部が伸長して額から顔にかけて垂髪となる。胸のあたりに白い房飾りが付いたオフショルダーの紫のドレス、背中に白いマントがひらめく、スカートは紫と薄紫の二色の桔梗を重ねたように広がり、その下には白いプリーツスカート、足には黒いヒールのロングブーツ、菫色のロングヘアの上部には赤いリボンと鳥が翼を開いたようなウィングテール、側頭部に小さな星光る黒いミニサイズのとんがり帽子の髪飾りが現れる。二人が手を取りあえばその手が金の腕輪のついた白い手袋と黒いロンググローブに包まれ、そしてみらいの胸に大きな赤いリボン、リコの胸と腰の左側に小さな赤いリボンタイ、二人の胸のリボンの中央にあるダイヤが同時に輝きを放つ。
天からまばゆい光が降り注ぎ、二人は手をつないだままその光の中に吸い込まれていく。
地上に現れしペンタグラム、2重円の内に五芒星、その五芒星と円の間の隙間に五つハートが並び光を放つ。その上にプリキュアとなったみらいとリコが召喚された。みらいは魔法陣の右、リコは左側に、二人のプリキュアが魔法陣から跳躍して地上へと降臨する。
ブロンドの少女は右手を上に人差し指でくるりと円を描き、その手を右下へと振り下ろし、
「二人の奇跡、キュアミラクル!」
菫色の髪の少女は左手を上に人差し指で優雅に円を描き、その手を左下に振り下ろし、
「二人の魔法、キュアマジカル!」
ミラクルとマジカルが左手と右手を後ろ手につなぎ体を寄せ合い、もう一方の手を合わせてハートを紡げば、それは愛と友情の証し。二人が後ろでつないだ手を前に、熱く燃える上がる気持ちと力を声に。
『魔法つかい! プリキュア!』
突然、姿を変えて現れた少女たちに、フェンリルは美しい瞳を見開いて驚愕した。
「プリキュアだと!? これはどうしたことだい、ロキ様はプリキュアはもう現れないと言っていたのに……」
ミラクルとマジカル、そしてヨクバール、両雄はにらみ合い、お互いの間に見えない火花を散らしていた。
その頃、小百合とラナは公園を出たばかりで、屋敷へ帰ろうとしていたところだった。
「ラナ、3個は食べすぎよ」
「だって、イチゴメロンパンおいしいんだもん!」
そう言ってラナは3個目のイチゴメロンパンに食いつく。
「今からそんなに食べたら、夕食が入らなくなるわよ」
「大丈夫だよ、イチゴメロンパンは別腹っていうでしょ」
「そんな言葉は生まれて初めて聞いたわ。その別腹っていうのは、人間の都合のよさを象徴する言葉よね、牛じゃあるまいし」
「なんで牛?」
「なんでって、説明するのが面倒ね……」
二人がそんな他愛のない話をしていると、公園から大騒ぎしながら次々と人々が逃げ出してくる。
「なんだか騒々しいわね」
「公園でなにかあったんじゃなあい?」
ラナがそう言うと、小百合は気になって逃げてくる一人を呼び止めた。
「ちょっと、何があったの?」
「公園に化け物が現れたんだよ!」
若い男性の言葉を聞いた二人は公園で何が起こったのかすぐに理解する。
「きっとヨクバールが現れたんだわ。ラナ、行くわよ!」
「うん!」
小百合が走って公園に逆戻りすると、ラナは食べかけのイチゴメロンパンを口にくわえながら付いていった。
二人のプリキュアとヨクバールがにらみ合っている間に、フェンリルはヨクバールの体を駆け下りて地上に立った。相手がプリキュアでは一方的な展開は望めそうにない。戦いが激しくなれば、ヨクバールの近くにいるのは危険だと判断したのだ。
「プリキュアが現れたのにはちょいと驚いたが、ここで倒しちまえばいいだけのこと。行けヨクバール! プリキュアどもを叩き潰しな!」
「ヨクバァーーールッ!」
獣の
「なんなのよあのヨクバールは、今までのとはぜんぜん違うわ」
「ちょっと怖いよね……」
ミラクルは竜頭の骸骨に睨まれて少しばかり怯んでいた。それから二人は表情を引き締めると同時に地を蹴ってヨクバールに迫っていく。
『たあーーーっ!』
「ヨクーッ!」
突っ込んでくるマジカルに対して、ヨクバールは樹木で創成された体を軋ませながら、歪な節のある大きな拳を振りかぶる。そして、マジカルのしなやかな拳とヨクバールの
「ヨクバールッ!」
雄叫びと共に、ヨクバールはマジカルを力でねじ伏せて拳を振り抜く。一方的に力負けしたマジカルは簡単に吹き飛ばされた。
「キャァーッ!?」
地上に墜落したマジカルは、その身で地面を削りながら蛇を思わせるように長い埃の道を生み出す。
「マジカル!?」
ミラクルはマジカルを心配しつつも、怯まずにヨクバールに向かっていく。
「このーっ!」
ミラクルの飛び蹴りがヨクバールの腹部にめり込むが、それだけでヨクバールは意にも介していなかった。
「ええっ!?」
ミラクルが驚いてまごついている間にヨクバールの巨大な手が迫り、ミラクルを捕まえてしまう。ミラクルは脱出しようともがくが締め付けてくるヨクバールの手はびくともしない。異様な浮遊感と激しい重力の変化の末にミラクルは地面に叩きつけられた。ミラクルのか細い体の下で地面が砕け、粉塵が巻き上がる。
「くうぅっ……」
もうもうと吹き上がる土埃の中でミラクルが苦しそうにうめいた。
小百合たちは、まさにこの瞬間に戦いの場へと駆けつけていた。叩きつけてくる暴風と土埃を桜の木の陰に隠れてやりすごし、小百合とラナは太い幹から顔を出し、リリンも小百合の鞄から体半分はい出してくる。
「怖そうなヨクバールデビ」
「誰かが戦っているようね」
「うそ!? だれだれ!?」
と言った後に、ラナはパフっと残り半分のイチゴメロンパンにかぶりつく。それを見て小百合は呆れ顔になった。
「あんた、まったく緊張感がないわね……」
ヨクバールが樹木の体から奇妙な音をたてながら足を上げる。その影が倒れているミラクルにかぶる。ヨクバールがミラクルを踏みつぶそうとすると、風を切り花びらを巻いて走ってきたマジカルが跳んだ。
「たあーっ!」
マジカルの跳び蹴りがヨクバールの骸骨の眉間に炸裂、これは少し効いた。片足を上げていたヨクバールはよろけて後退し、上げ足を引いた。だが引いた足を地面に付き、踏ん張りを効かせて平手を打つ。空中にいて無防備なマジカルは腕を十字にして防御の態勢をとるのがやっとであった。ヨクバールの平手で叩き落とされたマジカルは近くの桜の樹に激突し、樹齢数十年の太い樹の幹を真っ二つにへし折った。
マジカルは全身を痺れさせるような衝撃を受けて、折れた樹の幹に体を預けながら辛そうに片目を閉じていた。マジカルは体の痛みを押してミラクルに駆け寄って助け起こす。
「ミラクル、大丈夫?」
「ありがとう、マジカル」
ミラクルはマジカルの手を取り立ち上がる。そして二人のプリキュアが再びヨクバールと対峙する。
「以前のヨクバールとは段違いの強さだわ」
「攻撃が全然効かないよ、マジカル、どうしよう……」
「アッハハハハ! わたしのヨクバールを倒すにはパワー不足だねぇ」
遠巻きに
この時に、小百合とラナはヨクバールと戦っている者の姿をはっきりと見た。ラナは驚いて声もないという様子だったが、小百合は特に何も感じていないような無表情である。
「あれは……」
「プリキュアデビ」
「そうだよ、プリキュアだよ! わたしたち以外にもプリキュアがいたんだよ! やられてるみたいだから助けてあげようよ!」
「ダメよ! 敵か味方かも分からないのに助ける事なんてできないわ」
小百合がラナに何かの規律にでものっとっているかのように、きっぱりと切り落とす言い方をする。
「そんな、どうして!? 味方に決まってるよ、わたしたちと同じプリキュアなんだよ!」
「はっきりとしたことが分かるまでは軽率な行動をするべきではないわ。それに、わたしたちが助けるまでもないわよ」
「ええ~、だって、やられてるじゃん。あの二人って、わたしたちより弱いんじゃなあい?」
「そんなことはないと思うわ。一対一で戦ってるから負けてるだけよ。ヨクバールは一人でどうにかなる相手じゃないの」
「え? そうだったの? わたしぜんぜん知らなかった!」
「……あんたもヨクバールとガチンコ勝負してぶっ飛ばされてたじゃないの」
「あ~、前にそんなことがあった気がするね」
「それがあったのは昨日よ!」
小百合はすっかりラナにペースを乱されてしまったが、とにかく気を取り直して見知らぬプリキュア達を見守る。
ミラクルとマジカルは顔を見合わせて頷く。それで十分だった。この二人は互いに何を考えているのか手に取るようにわかる。
ミラクルとマジカルが同時に走り出し、二人は大きく弧を描き交差して、そして跳ぶ。
「何度やっても結果は同じさ」
フェンリルが余裕しゃくしゃくで尻尾をやんわり動かしていると、同時に跳躍した二人の拳が気合の一声と共に同時に骸骨の眉間にめり込み、後頭部に衝撃が突き抜けると同時にヨクバールの仮面にひびが入る。
「ヨク、バール!?」
ヨクバールの巨体が
「なにぃ!?」
ヨクバールが起き上ってくると、ミラクルの目の前に不思議なステッキが現れる。それは柄の部分がピンク、ステッキの部分が白、先端にハート型のクリスタルが付いていて、中央にはダイヤのリンクルストーンが入っていた。
「リンクルステッキ!」
ミラクルはステッキを手に取り、それを高く頭上に。
「リンクル・ガーネット!」
ミラクルの魔法の言葉に反応して、中央のリンクルストーンがダイヤからオレンジ色の宝石に入れ替わる。すると、立ち上がったヨクバールの足元が歪んでまるで海上の波のように揺らいだ。バランスを崩されてその場から動けないヨクバールにマジカルが突進し、腹部に拳を叩きつける。しかし、この一発では効果がない。
「これならどう!」
マジカルのラッシュ、拳の連撃で衝撃を与える。最後に一度着地して跳躍。
「はあっ!」
マジカルは敵に美しい態勢の飛び蹴りをくらわせ、その時の反動を利用して空中で一回転して着地、ヨクバールは倒れそうになるが、数歩後退しながら何とか踏みとどまる。
戦いを見ていた小百合は、リンクルステッキとガーネットの出現で、その顔により一層真剣さが増した。あまりに真剣なので、ラナには小百合が怒っているように見える。
「リンクルストーンを使うということは、あれも魔法つかいプリキュアよね。フレイア様はわたしたちを伝説の魔法つかいとは別の存在だと言っていたわ。つまりあれが」
「そうだよ、伝説の魔法つかいだよ! 伝説のリンクルステッキを使ってるから間違いないよ! すっごいよ、ファンタジックだよ!」
大騒ぎするラナを無視して小百合は鞄から手帳とシャープペンを出し、素早く手帳に何かを書き込んでいく。
「なにしてるの?」
ラナが手帳をのぞき込むと、リンクルステッキとガーネットの形状や特徴が簡単に書き記してあった。
「うわ、小百合、絵うまいね~」
「同じ魔法つかいプリキュアのことだから、なにかの参考になるかもしれないでしょ」
戦いは続いている。ヨクバールの態勢が整う前に、再びマジカルが接近して跳び、ヨクバールの眼前へ。ヨクバールがマジカルに向かって手を伸ばしてくる。
「リンクルステッキ!」
マジカルが近くに現れたステッキを取った。形状はミラクルの使ったステッキとほとんど変わらないが、先端のクリスタルは星形になっている。
マジカルはヨクバールに見せつけるようにして右手と左手の間でステッキを橋渡す。
「リンクル・タンザナイト!」
中央のダイヤが宵闇を思わせる深い青紫色の星型と月型の双子石と入れ替わる。するとリンクルストーンタンザナイトから強烈な光が放たれた。この時にも小百合のペンが素早く動く。
「ヨク!?」
タンザナイトの光をまともに見たヨクバールは、目暗になってミラクルとマジカルを見失った。
「今よミラクル!」
「うん!」
二人のプリキュアがそれぞれのリンクルステッキを手に叫ぶ。
『ダイヤ!』
ミラクルとマジカルは同時に高く跳躍し、右手と左手をつないで
『永遠の輝きよ! わたしたちの手に!』
二人が舞い降りると同時に光の波が起こり周りに広がっていく。
光の中心に立つ3人、ミラクルが右に、マジカルが左に、そして中央後方にはモフルンが。マジカルが高く掲げたリンクルステッキを鋭角に斜に構えると、モフルンが左手でブローチのダイヤに触れる。そしてミラクルがリンクルステッキを頭上に掲げると、モフルンの右手がダイヤに触れる。次の瞬間、ブローチのダイヤが強く輝き、光が巨大なダイヤの形となり、さらに広がって聖なる光の世界を創る。その輝く世界でミラクルとマジカルは手を繋いだまま、二人で一緒にリンクルステッキで三角形を描く。
『フル、フル、リンクル!』
二人の描いた三角が光を帯びて合体すると、瞬間に七色に輝くダイヤの形になる。その時に視力を取り戻したヨクバールが向かってきて拳を振り下ろした。七色のダイヤに樹木の巨大な拳が衝突して衝撃波が広がり、闇と光の魔法がせめぎ合うと、七色のダイヤが光り輝くハートのペンタグラムに変化する。そして、二人のプリキュアがリンクルステッキを高く上げ、繋いだ後ろ手に力を込めて魔法の言葉を。
『プリキュア! ダイヤモンドーッ! エターナル!』
瞬間、ヨクバールが巨大なダイヤに封印される。二人が繋いでいた手を放して力強く前に押し出すと、それに呼応してヨクバールを封じ込めたダイヤが途方もない勢いで吹き飛んだ。その時に起こった爆風で隠れて見ていた小百合たちは危うく吹き飛ばされるところだった。
ダイヤに封印されたヨクバールは地球外へと誘われていく。
「ヨクバール……」
巨大なダイヤがヨクバールと共に白い彗星となり、宇宙の果てまで吹き飛んで爆ぜる。白い輝きが星雲のように広がり、その中から淡い光に包まれた桜の樹と闇の結晶が現れ出る。
天から降ってきた黒い結晶をマジカルは手にして眉をひそめた。
「これがヨクバールに力を与えていたの?」
プリキュアとヨクバールとの戦いによって刻まれた戦闘の跡が次々と修復されていく。ヨクバールを倒されてしまったフェンリルは悔しくて牙をむいたが、すぐに冷静になっていった。
「あいつら、わたしのヨクバールに最初は苦戦していたのに、すぐに戦略を変えて対応してきた。戦いなれているね。どうする、ここでやっちまうか……」
フェンリルは少し考えて結論を出す。
「いや、あのプリキュア共の力がどれ程のものか分からない。いま戦いを挑むのは早計というものだね。今日のところは撤退だ」
フェンリルは素早く走って近くの茂みに飛び込み姿を消した。
一方、隠れて見ていたラナとリリンは、ミラクルとマジカルが放った必殺の魔法に度肝を抜かれていた。
「すっごい魔法だったね~、ヨクバール飛んでっちゃったよ~」
「こっちまで飛ばされそうだったデビ」
「ダイヤモンド・エターナル……。わたしたちの合成魔法よりも強力かもしれないわね。さすがに伝説の魔法つかいといわれるだけはあるわ」
「ねぇねぇ、出ていって自己紹介しようよ。同じプリキュアなんだし、きっと仲良くなれるよ」
「それはさっきもダメって言ったでしょ。同じプリキュアだからって仲間になれるとは限らないわ」
「そんなぁ、絶対仲良くなれるのに……」
「ダメと言ったらダメよ!」
小百合が厳しい表情を崩さないので、ラナは自己紹介を渋々諦めるしかなかった。
ミラクルとマジカルは再会を喜び抱き合って、それから二人で手を繋いで一跳びで遠く離れてどこかへ消えてしまった。