至るところに巨大なキノコが生えている無人島をみらいたちは歩き回り闇の結晶を探す。しかし、これがなかなか見つからなかった。途中で疲れてしまったみらいは腰かけるのに丁度いいキノコをみつけてリコと一緒に座った。
「ぜんぜん見つからないね、闇の結晶」
うんともすんとも言わないリコの横顔をみらいが見つめる。何だかぼーっとしていて精彩がない。いつものリコと比べるとまるで別人だった。
――どうしたらいいんだろう……。
「モフ、モフ」
悩んでいるみらいを他所に、モフルンは足音を鳴らしながらその辺を歩いていた。黄色いキノコの傘の下に黒光りするものを見つける。
「あったモフ! 闇の結晶モフ!」
「やったね、モフルン!」
モフルンがみらいの足元まで歩いてきて闇の結晶を渡した。
「これで6個目だね」
「闇の結晶は見つかったのかしら?」
みらいがその声に振り向くと、視線の先に小百合がいて、そのすぐ近くをリリンが翼を動かしながら飛んでいた。
「さ、小百合!?」
小百合の背後からラナの姿も現れる。小百合は初心者用の箒の先端で地面を軽く突いた。
「小百合、箒で飛べるようになったの?」
「おかげさまでね」
リコはみらいと会話する小百合が幻ででもあるかのように呆然と見つめていた。小百合が箒を一振りすると、それがギュッと小さくなった。その小さくなった箒を小百合は右手の中に隠した。それから左手を返すと、ラナが右手を重ね、結ばれた二人の手に力がこもった。
みらいとリコが立ち上がると、二人は小百合たちが変身する光に照らされた。次の瞬間に黒いプリキュアになった二人が現れていた。
「あなた達に戦う気力があるのなら変身しなさい」
ダークネスがいうと、みらいの身が強張る。
「今はリコが……」
「トパーズよ」
「え?」
みらいが見つめた先に見慣れた親友の姿があった。霧がかかったように曇っていたマゼンダの瞳には知的な輝きが戻り、凛々しい表情に負けたくない強い気持ちがあることが一目でわかる。みらいの胸に暗雲が晴れて光が差してくるように希望が湧いてきた。
「リコ!」
リコが頷くと、みらいの顔が少し曇る。
「でも、ダイヤ以外のスタイルには弱点が……」
「大丈夫よ、わたしを信じて」
心配そうなみらいの目が親友を信じるまっすぐな目に変わった。
みらいの左手とリコの右手が重なって互いの温もりが伝わると、その場所に黄色い輝きの尖がり帽子が現れる。強くつないだ手を後ろに引いた瞬間に二人は輝きのドレスに身を包む。そして残った方の手を同時に高く上げると魔法の呪文を唱えた。
『キュアップ・ラパパ!』
二人の背後で大地から突き出した4本の光の波動が天へと走り、大地が砕ける。みらいとリコがチャーミングな姿で甘いお菓子のただよう不思議な空間へと落ちていく。お菓子と金色の世界の中でモフルンが楽しそうに両手をあげると、青と水色のストライプでラッピングされた大きなキャンディがやってきた。モフルンがキャンディと一緒に空中でクルクルと可愛いダンスを踊り、最後にキャンディを捕まえる。
『トパーズ!』
青い包みから飛び出したハート型の黄色い輝石がモフルンのリボンの中央に嵌り、トパーズから眩い光が溢れて広がる。
みらいとリコがモフルンの手を取ると、3人は輪になって清流に流れる花のように優雅に回って金色に輝く空間をさらに降下していく。
『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』
モフルンの体に現れた黄色のハートが点滅すると、3人は金色の世界にとどまり光のリングに抱かれる。リングがハート型に変わって光を舞い上げながら回転すと、今のみらいに少し成長したみらいの姿が重なり、今の姿のリコにも少し大人びたリコの姿が重なった。
無数の黄色い光のリボンがみらいの足を包み込んで、光が足首の部分にキャンディ―の形をした黄色のリボンと、トゥシューズのように甲にクロスのリボンが付いたオレンジ色のブーツになった。さらに次々と黄色の光が集まってみらいとリコの姿が変わってゆく。
一番上に黄色いキャンディリボンが付いた、ガーター付きのクリーム色のロングソックスがみらいの足に現れ、上部がレモン色で下部が黄色の、お辞儀をした月見草のように可愛らしいスカート、その正面に一枚の花びらに当たる部分があり、その花びらの境目にあたる2か所に青と紫のキャンディリボン、スカートの下には両端にオレンジ色のツインリボンの付いたクリーム色のパンプキンスカート、背中に2本の長いリボンがなびく黄色のキャンディリボン、胸に赤いリボンのある半袖のフリルの付いたパフスリーブの黄色のドレス、その腹部にはオレンジ色のハート型のボタンが一つ、首に黄色のネックリボンと手首には白いフリルのレースカフスが。
リコの体に袖がオレンジ色のランタンスリーブの黄色のドレス、胴部にはストラップの付いたブラッドオレンジの帯、中央上部に綿飾りのついた胸を覆う大きな赤いリボン、オレンジの中指止めのリボングローブの指元には小さく絞ったメレンゲのような可愛らしい飾りがある。背中にはオレンジ色のリボン、揚羽蝶の翅に似た型の黄色のスカートにはホイップデコレーションのようなレースのウェーブが飾られ、2枚の翅の間隙から中央に星のマークの入った薄紫のスカート、さらにその下に可愛らしい黄色いパンプキンスカートが現れ、ゆっくりと伸ばした美脚に光のリボンが巻き付く。ひざの辺りに星飾りのあるオレンジのロングソックス、足首にレモン色のふわふわリング、一点に多めに絞って付けたようなメレンゲの飾りのある真っ赤なヒール、光はそれらに刹那的に変化した。
二人はメルヘンのお姫様のように可愛らしいドレスをまとうと、繋いでいた右手と左手を放すし周囲で回転していたハートの囲いが弾けて消えて、モフルンがとても楽しそうな笑顔を浮かべた。その瞬間に髪型も変化する。
ミラクルは黄色のカチューシャに、頭の左右にはドーナツのフレンチクルーラーのように巻いた三つ編み、そして二つのフレンチクルーラーからリング状の三つ編みが肩の辺りまで垂れていた。マジカルはオレンジのカチューシャに長い髪の左右で作った三つ編みを後頭部の星の髪留めで円を編み、重なった二つ円が無限を現す形を成し、残りのストレートヘアは腰を越えて流れる。二人は可愛らしくも不思議な髪型になった。
ミラクルの胸のリボンとネックリボンの下に黄色い輝きが集まって弾けると、胸に菱形の黄色い輝石、首元のネックリボンにピンクのハートの奇跡が輝く。続いてマジカルの胸の綿飾りに光が宿って菱形の黄色い輝石が姿を現す。
ミラクルとマジカルが離していた右手と左手をつないでモフルンと再び輪の形になると、二人の手首に金の腕輪が現れ、続いてミラクルの頭部の左のフレンチクルーラーの髪の下に丸い光が現れ、そこに青い光の帯が集まって青いキャンディリボンと、カチューシャの上にはミニサイズのピンクのとんがり帽子が乗り、左のフレンチクルーラーの髪の下に現れた丸い光は赤い帯の光でラッピングされて赤いキャンディリボンに変化した。
マジカルのカチューシャの左側に小さな黒い魔女の帽子が現れ、右側には淡い青の花形のリボンが現れる。そこに小さな卵型の光がやってきて、それが二つに割れ消えて産み落とされた黄色い光が花のリボンの上で形を変えて、上にホイップクリームと苺をデコレーションしたプリンの髪飾りになった。
ミラクルとモフルンとマジカルは手をつないで、前からくる色とりどりのキャンディの流れに逆らって飛んでいく。三人はクッキーやカップケーキを背景に映し出す金色の世界をただよい、そして後ろから飛んできた大きな大きな青いキャンディに乗って心から楽しんでいる笑顔を浮かべつつ、現実の世界につながる黄色いハートの五芒星に向かって降下した。
上空に現れた黄色い魔法陣からミラクル、モフルン、マジカルが飛び出してくる。モフルンは大きなプリンの上にお尻から落ちて、ポヨンと跳ね返されてプリンが揺れる。そしてミラクルとマジカルが同時に地上に降りた。右側のミラクルが右手を上げて人差し指でクルリと小さな円を描き、バックフリップしてから右手を横に弾く。
「二人の奇跡、キュアミラクル!」
瞬間にミラクルの周りに色とりどりのキャンディーが現れ、瞬間に消えていく。
左側のマジカルが右手を上に人差し指で小さな円を描き、その手を右下に勢いをつけて高速スピン、着地と同時に左手を横に振る。
「二人の魔法、キュアマジカル!」
瞬間にマジカルの周りにメレンゲのイリュージョンが現れ消えていく。
ミラクルとマジカルは右手と左手をやんわりとつなぎ、頬を寄せて目を閉じる乙女たちの姿は眠り姫のように可憐だ。二人は右手と左手を放し、楽しい笑顔でずっとつながっている方の手を同時に上げて、バレリーナのような片足立ちになる。それから互いに背を向け合って足を高く上げ、手を放して地上に足を揃えると、二人は離した左手を右手を前にして再び手を握る。
『魔法つかい! プリキュア!』
「トパーズのプリキュアモフ!」
モフルンが黄色い斑点のあるキノコの上で両手をあげて言うや否や、ミラクルとマジカルの姿に感動したウィッチが叫ぶ。
「うわぁ、かわいい!!」
ミラクルとマジカルの周りに二つの黄色い球体が現れると、さらにウィッチの目が輝いた。
「なにそれ!? なんでそんなのついてるの!? いいなぁ、それ!」
騒いているウィッチの隣ではダークネスが怪訝な表情を浮かべていた。
――ダイヤ以外のスタイルを選んでくるですって?
ダークネスは以前ミラクルとマジカルに、はっきりとダイヤ以外のスタイルには弱点があると明言している。サファイヤやトパーズのプリキュアとは戦ったことはないが、ダークネスはそれを確信していた。少なくとも、マジカルはそれをはっきり認識しているはずだと思った。考えられることは二つ、我を忘れて愚かな選択をしているか、勝てる確信があって選択しているか。
ダークネスは真意を確かめるためにマジカルの目をまっすぐに見つめた。マゼンダの瞳の輝きは強く敵の影に怯えている気配などみじんもない。
「わたしたちの力を見せてあげるんだから!」
マジカルの声から絶対の自信を感じる。ダークネスは後者だと思った。それに気づいたダークネスが笑みを浮かべる。
「面白いわ。トパーズの力、見せてもらいましょう」
「かかってきなさい!」
「ウィッチはミラクルの相手をしなさい!」
ウィッチの返事を待たずにダークネスが足に力を込め、地面の土を削り飛ばしてダッシュする。
「とあぁーっ!」
ダークネスの右の拳を直前で避けたマジカルの髪が拳圧で巻き上がる。さらに左の拳、回し蹴りの連撃でマジカルが押しまれる。そして、回し蹴りをよけた瞬間にマジカルが反撃した。
「はあぁーっ!」
ダークネスに向かって突き出したパンチはあっさりと手の平で受け止められてしまった。ダークネスの手がマジカルの拳を包み込み、先の戦いの場面が再現される。
「攻撃が軽いわ」
余裕な表情を浮かべていたダークネスが、上空から来るものを察知してはっと見上げる。槍先のように細く尖った黄色の物体が迫っていた。ダークネスがバク転し地面に片手を付いたときに、数舜前に彼女がいた場所に黄色い槍が突き刺さった。
ダークネスが少し距離をとって着地すると、マジカルが黄色い槍を両手に持ち、それが中ほどで別れた。二つに分裂したそれが、マジカルの手の中でブーメランの形になった。
「はっ!」
マジカルが同時に黄色いブーメランを放つと、それが高速回転しつつ左右に弧を描いてダークネスに向かっていく。ダークネスは一つ目を蹴り上げ、二つ目を踵落としで真っ二つに割っていなした。ダークネスがブーメランに気をとられていると、マジカルが彼女の斜め上方向に跳躍してくる。すると、吹っ飛ばされて空中に漂っていたブーメランと割れて地上に転がっていた黄色の欠片が球体に変化して高速でマジカルの背後に集まり扁平の円になる。マジカルはそれを踏み台にして突出した。
「たあっ!」
ダークネスはマジカルの予想外の動きに虚を突かれて、空中で回転を加えてのマジカルの蹴りに対応できずまともに食らった。
「ぐうっ!?」
衝撃を受けて後方にはじけ飛んだダークネスがえびぞりに地に手を付き、バク転して態勢を直してマジカルを見つめた。その時にマジカルの肩の上あたりに二つの黄色い球体が浮んできた。
「これがトパーズの能力。あの球体、やっかいだわ」
マジカルが高く跳んでダークネスの頭上へ。
「上から来る気? なら、狙い撃ちよ」
ダークネスが右手を腕輪と共に上げて呼びかける。
「リンクル・オレンジサファイア!」
ダークネスが向かってくるマジカルに手のひらで狙いをつけると、その手の周囲に次々と火の玉が表れて連続で撃ちだされた。するとマジカルは黄色の球体を合わせて平らにし、空中でそれを足場にして巧みに火の玉を避けた。マジカルが移動する先に黄色のクッションが先回りして足場になる。それを繰り返して次々に襲ってくる火の玉を避けていく。そして、ダークネスが間近で放った一発を今度は黄色のオプションを硬質化し盾に変えて防いだ。ダークネスの目の前で爆発が起こり目くらましになる。
「はあっ!」
炎を突き破ってきたマジカルの急降下蹴りを前腕でガード、衝撃で後退する。ダークネスがマジカルと再び対峙すると言った。
「これじゃ敵が二人いるようなものだわ。けれど、ダイヤスタイルに比べると本体のパワーが落ちているわね。そしてもう一つ、恐らくその黄色い物体の能力はそれほど高くはない」
ダークネスが右手を横に叫ぶ。
「リンクル・スタールビー!」
ダークネスの腕輪のブラックダイヤがスタールビーに入れ替わり、深紅の輝石から生まれた赤い輝きがダークネスの胸に吸い込まれる。そして爆走、彼女はマジカルに迫る。それに対してマジカルが黄色い盾を前に出した。ダークネスはかまわずに思い切りパンチを盾に叩き込む。するとそれが粉々に砕けて黄色い欠片が散った。マジカルはさして驚きもせずに後方に跳び、ダークネスがそれを追う。
「逃がしはしない!」
マジカルが着地すると、ダークネスはもう目の前に迫っていた。彼女の前に黄色い破片が集まって丸い形になる。
「何度やっても同じよ!」
ダークネスが拳を後ろに引いて力を込めると、黄色い球体が平面に大きく広がった。ダークネスは瞬間的にまずいと思ったが、もう攻撃の勢いは止められなかった。ダークネスの拳が柔らかな黄色い物にめり込む。すると黄色の物体はダークネスの勢いを受け止めてぐっと長く引き伸ばされて円錐に近い形になり、ダークネスの視界が黄色に阻まれる。間もなく膜状になった黄色い物がダークネスの攻撃に耐えきれずに突き破られた。ダークネスが一瞬視界を失った隙に、マジカルの姿は消えていた。
「上ね!」ダークネスの勘は当たったが、マジカルが既に次なる攻撃への手を打っていた。
「リンクルステッキ! リンクル・ガーネット!」
マジカルが地上に向けたリンクルステッキの先にオレンジ色に輝く蝶が現れ、それが羽ばたくとダークネスの足元がうねる。
「しまった!?」
マジカルはうねっている大地にまっすぐに降りてくる。そして、地上すれすれで黄色い球体が足場を作ってマジカルを受け止めた。マジカルはそこから前に向かって跳び、ダークネスに迫る。
「はあ――っ!!」
今までやられた分のお返しとばかりに、マジカルの思い切りのいい拳がダークネスにヒットした。ダークネスが悲鳴をあげて吹っ飛び、大きなキノコの茎に背中から激突してそれを押し倒した。