魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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この話はミラクルとマジカルがひどく傷つきます。
なので随分悩んで、書き終わるまでに長い時間がかかりました。
自分は本当に魔法つかいプリキュアを愛しているのか、それとも自己満足のためにこの小説を書いているのか、未だにはっきりしていないところがあります。


第18話 驚愕! 脅威! ダイヤと白き魔法の戦士!
驚愕のコピーリンクルストーン


 みらいとリコは魔法の箒に乗って、水晶さんがリンクルストーンの出現を預言したひゃっこい島に向かっていた。目的は小百合とラナを助けることだ。みらいはどんなに小百合に邪険にされても、助けたいという気持ちは変わらない。そういう自分の気持に正直に行動していた。

 

「だいぶ寒くなってきたわね。ひゃっこい島はもうすぐよ」

「うん!」

 

 みらいがリコに答えたその時だった。リコが魔法の気配を感じて空を見上げると、昼間に星が降りてきたような無数の光が視界に入ってきた。

 

「危ない!!」

 

 突然に白い輝きを放つ光の矢が上から降り注ぐ。

 

「キャッ!?」

「うわっ!?」

「モフ―ッ!?」

 

 3人の驚きが一つの悲鳴になって空に響く。リコたちが焦っていると、その前に光り輝く翼をはためかせつつ白猫が現れた。

 

「覚悟しな、プリキュアども!」

「あなたはフェンリル!?」

 

 みらいが眉尻を上げて言うと、フェンリルはにやりと笑った。

 

「落ちな!」

 

 フェンリルが白く輝く翼を開くと、その周りに無数の光の矢が現れ、その鋭い切っ先がリコとみらいを狙う。フェンリルがかっと輝石のようなオッドアイを見開くと一斉に放たれた光の矢が二人に襲いかかる。

 

『うわあぁぁっ!?』

 

 二人が同じように叫び、次々にふってくる白い矢を辛くも避け続ける。その中の一矢がみらいの箒の筆に突き刺さってしまう。すると魔法の箒のコントロールが失われ、みらいの体がふらつく。

 

「ああっ!? 箒が!?」

「落ちるモフ―っ!?」

「みらい、モフルン!?」

 

 箒に乗ったまま落ちてゆくみらいにリコが追いすがって手を伸ばす。相変わらず嫌な笑いを浮かべているフェンリルがさらにその後を追って下降した。

 

 空中でリコとみらいの手がつながる。下の方には若葉色の無人島が見えていた。リコは下降の速度を速めてみらいの横に並ぶと、親友の体を引き寄せて自分の箒へと誘う。急降下中に一人乗り用の箒に急に二人分の重量が加わり、なかなか箒の制御が利かない。

 

「くううっ!」

「リコ、わたしが箒を操作するから!」

「お願い!」

 

 箒の制御をみらいに任せて、リコは箒を浮かせる事に魔力を集中する。緑に覆われた無人島の地面がどんどん迫り、前にいるみらいが箒の柄先を引き上げると、地面にぶつかる寸前で箒が前へと飛び出した。筆を地面にこすりつけながら箒はなお飛び続け、そしてついに体制を維持できなくなって少女たちは地面に投げ出された。

 

 リコとみらいやわらかい草むらの上に転がり込んだ。同じように飛んできたモフルンは見事に3回でんぐり返してから草むらの上に立ち上がった。

 

「みらい、リコ、大丈夫モフ?」

「いってて」

「大丈夫よ。下が草で助かったわ」

 

 みらいは片方の目を閉じて少し痛い頭をおさえ、リコは冷静に辺りを確認する。

 

「ここって?」

 

 みらいの目には広い草原に突き出すいくつかの大岩や、切り立った断崖が映っていた。大地が樹木の魔法界であまり見ない景色だった。

 

「ここは最果て島みたいな空中に浮かぶ無人島よ」

 

「おまえたちを葬るには丁度いい場所だな」

 

 その声を追ってリコとみらいが振り向いた視線の先に、フェンリルが白い翼を開いて浮んでいた。そしてその白猫が眩い白光に包まれて、その光が次第に人の形を成してゆく。そして光が消え去った後にはリコとみらいよりもいくらか年上の少女が腕を組んで立っていた。

 

 フェンリルの金の左目とターコイズブルーの右目から発する研ぎ澄まされた視線がリコとみらいを貫く。彼女のポニーテールの結元に翼の形をした髪飾りが陽光を返して光り、短めの薄ピンクのスカートと腰の尻尾飾りが風に揺られる。リコとみらいの魔法学校の制服のスカートと胸元のストライプリボンも同じように揺れた。

 

「それがあなたの本当の姿なのね」

 

「どうなのかねぇ。猫の姿が本当なのか、あるいは人の姿が本当なのか。妖精だから猫の姿が本当と言うべきなのか? それともどちらもわたしの本当の姿だと言うべきなのか?」

 

 フェンリルはリコに言葉遊びでもしているように答える。その間も終始、口角を上げて攻撃的な笑みを浮かべていた。そしてフェンリルは最後にこう言った。

 

「ある意味これから見せるわたしの姿が本物だと言えるだろう。さあ、プリキュアに変身しな、相手になってやる」

 

 リコとみらいは目で合図して手をつなぐ。

『キュアップ・ラパパ! ダイヤ!』

 

 モフルンがリンクルストーンダイヤを胸に、みらいとリコと手をつないで輪になると、

『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 全身が7色の光に覆われたリコとみらいは、つぎの瞬間に現れた魔法陣の上にプリキュアの姿となって現れる。

 

「二人の奇跡、キュアミラクル!」

「二人の魔法、キュアマジカル!」

 

 二人のプリキュアが寄りそい決めのポーズで、

『魔法つかい、プリキュア!』

 

 現れた二人のプリキュアを前にフェンリルは笑みを消し、組んでいた腕を下げていた。そして彼女が右手を上げるとミラクルとマジカルは必然的にその手首にある腕輪を見ることになった。

 

「え!? その腕輪、小百合とラナがしているのとそっくりだよ!」

「どういうことなの?」

 

 驚くミラクルに怪訝なマジカル、その二人にフェンリルは不敵な笑みを浮かべて今度は左手をプリキュア達に向けてまっすぐ突き出して、手の内に隠していたものを見せつけた。その宝石は太陽の光を受けて7色に燃え上がった。

 

『!!?』

 

 あまりに驚いてミラクルもマジカルも声が出なかった。フェンリルの手の中には二人が最も見慣れたリンクルストーンと同じものが輝きを放っていた。

 

「モフ!? ダイヤのリンクルストーンモフ!!」

 モフルンが叫ぶ。

 

「な、なんで!? どうしてダイヤが二つもあるの!?」

 

「落ち着いて、伝説のリンクルストーンが二つもあるわけないわ。考えられるとしたら、あれは本物そっくりに作られた偽物のリンクルストーンよ」

 

 混乱するミラクルを抑えるようにマジカルが言った。二人のプリキュアを見つめるフェンリルのオッドアイがさらに鋭くなり、狂暴な光を帯びる。

 

「その通り、これはコピーリンクルストーンさ。だが、その力はオリジナルに劣るものではない! 見るがいい! 古代超魔法の力を!!」

 

 フェンリルは右手の腕輪のくぼみにダイヤのリンクルストーンをセットすると、その手を高々と天に向けて呪文を唱えた。

 

「キュアップ・ラパパ!」

 

 フェンリルの足元から白い魔法円が広がっていく。円の中心に太陽を現す文様があり、さらにその中に白抜きの猫がちょんと座った姿が描かれる。そして太陽の周囲に歯車と可愛らしい肉球の文様が三つずつ順番に並び、三つの歯車が魔法陣の回転に合わせて動いてゆく。同時に偽のリンクルストーンダイヤが本物に劣らない眩さの輝きを放つ。腕輪からあふれた光は2方向に細い帯状に広がって、包帯のようになってフェンリルの全身に巻き付いた。

 

 フェンリルの体に巻き付いた光の帯が半袖パフスリーブの白いドレスに変わる。ミニスカートは白、薄ピンク、ピンクの3重フリル。パフスリーブの袖口には白のフリル、腹部に薄ピンクのリボンが二つ現れる。

 

 両足に巻き付いた光はひざ下あたりまである白のブーツに変化し、左右の靴の外側には3枚の白い羽根飾りのついた真円に六芒星の描かれたアクセサリーが現れる。

 

 左右の腕に巻き付いた光は白いフィンガーレスのグローブに早変わり。手の甲には菱形のダイヤが輝き、袖はふさふさの柔らかい毛におおわれていた。

 

 フェンリルの背に集まった光の帯が織り上げられ、腰のあたりで大きな白いリボンに変わり、そのリボンから先の尖った2本の長い帯が斜め下に垂れ下がった。

 

 腰の下まで伸びた長い銀色の髪の根元に光の帯が絡みつき、それが水色のリボンに変化して狼の尻尾のようにフサッとしたポニーテールにまとめ上げる。

 

 フェンリルが右手で自分の髪をなでると、そこに薄ピンクに白抜の猫が座っている円平のヘアピンが現れた。

 

 胸の中心に集まった光が大きな白いリボンになり、その中心に菱形のダイヤが現れて光を放つ。最後に腰に付いていた白い尻尾のアクセサリーが輝きながら伸長すると蛇のように彼女の右足に巻き付いて太腿から足首まで届く長い尻尾の飾りとなった。

 

 フェンリルが閉じていた瞳をゆっくり開き、右手の中で白い炎を燃え上らせる。その手を横に一閃させると、一瞬だけ彼女の背中に白い炎が翼のように燃え広がった。

 

 光と共に姿を変えたフェンリルを見て、ミラクルとマジカルは驚嘆の至りに達した。

 

「その姿はまるでプリキュア!!」

 

 そう言うマジカルをあざ笑うようにフェンリルは言った。

 

「これからお前たちの悪夢が始まるのだ!」

 

 フェンリルはロキからもらった闇の魔法陣のタリスマンを出して放り投げると、落下してきたそれを蹴り上げた。

 

「はあっ!」

 

 タリスマンが真っ二つに割れて、そこから黒い闇の魔法が噴出する。そして闇がフェンリルの手足にまとわりついて一体化した。フェンリルは黒い靄のようなものに包まれた自分の手足を見て口角を上げた。

 

「わたしの光の力を害することなく闇の力を得ることができるとは! 素晴らしい魔法ですロキ様!」

 

 フェンリルが身を低くした瞬間にミラクルとマジカルの視界からその姿が消えた。変身したフェンリルに驚いていた二人は完全に虚を突かれる。ミラクルがあっと思った瞬間にはフェンリルが目の前にいて、強烈な拳をまともに受けていた。悲鳴をあげて吹き飛ぶミラクルは墜落すると土と砕けた岩を吹き上げながら長い土埃の道を作った。

 

「ミラクル!!」

 

「油断するなよ、戦いはもう始まっている!」

 

「このっ! はぁーーーっ!」

 

 すぐ近くまで来たフェンリルにマジカルが連続パンチで応戦する。フェンリルはそれを軽い身のこなしで避けて、マジカルが打点の高い上段蹴りを出した時に身を低くして地面に片手を付き、相手の腹部に痛烈な蹴りを叩き込む。

 

「キャアァァッ!?」

 

 マジカルも吹っ飛ばされ、フェンリルは蹴った勢いを利用して片手で地面から跳躍して立ち上がる。その時にマジカルは地面に叩きつけられて土煙を上げていた。フェンリルは腕を組み二人が立ち上がってくるのを待った。岩陰から様子を見ていたモフルンは、ミラクルとマジカルがいる土煙の向こうを心配そうに見つめていた。

 

 

 

 暗い海底の神殿で密かに伝説の魔法つかいの戦いを見つめていたフレイアはその美しい顔からいつも浮かべている笑みを消して震えていた。

 

「何ということでしょう、封印されていない閃光の魔法戦士がまだいたなんて……」

「フレイア様、奴は何者なのですか?」

 

 バッティが問うてもフレイアは険しい表情のまま無言を通した。言わないのではない言えないのだ。バッティにはフレイアの様子からそれがすぐにわかった。しかし彼は、プリキュアのように変身し、プリキュアを圧倒する戦闘力を持つフェンリルの存在があまりにも異様で看過することはできないと思った。そんなバッティの気持を汲むようにダークナイトが語り始めた。

 

「フレイア様が口にするにはあまりにも酷な話。しかし、同志であるバッティ殿に黙っているわけにはいくまい。閃光の魔法戦士は人が神を越えようとして生み出した古代超魔法の遺物だ」

 

「古代超魔法とは一体!?」

 

 バッティが赤い瞳を見開いて問うと、ダークナイトは粛々と答えた。

 

「失われし時代に災厄を生んだ閃光の魔法、その恐ろしさは闇の魔法など足元にも及ばない」

 ダークナイトの冷たい声が薄闇に響き渡り、バッティはその声に静かに耳を傾けた。フレイアの錫杖を持つ手が震えていた。

 

 

 

「おまえたちが持っている闇の結晶をすべて渡せ。そしたら命だけは助けてやるよ」

 

 もうもうと上がる二つの土煙に向かってフェンリルが言うと、ミラクルとマジカルが煙の中から姿を現す。

 

「バカにしないで」

 マジカルがフェンリルを睨みつけて言った。

 

 ――フェンリルは強いわ。それにさっき使っていた魔法も気になる。ここは力を合わせないと。

 

 マジカルがミラクルに視線を送ると、ミラクルは頷きで返した。それを合図に二人は同時にフェンリルに向かって疾走する。その戦いの様子を大きな岩の後ろに隠れて見ている少女たちがいた。

 

「どうなっているの? セスルームニルに戻らずにこんな場所に瞬間移動するなんて……」

「そんなことよりも、ミラクルとマジカルが戦ってるよ!?」

「あの白いプリキュアは誰デビ?」

 

 リリンがラナの頭の上でフワフワ浮きながら言った。ラナは訳が分からないながらもすごく嫌な予感がして、心配そうにミラクルとマジカルの戦いを見つめている。一方、小百合の目は冷ややかで輝きが薄く感情が欠落していた。

 

 ――ミラクルとマジカルが戦っているところに瞬間移動するなんて、意図的なものを感じる。そうだとすればバッティさんがタリスマンに細工をしたということになるけれど、何のためにそんなことを……?

 

 小百合は思考しながらフェンリルに向かっていくミラクルとマジカルの姿を見つめていた。

 

「たあーーーっ!」

「でやぁっ!」

 

 マジカルとフェンリルの気合と攻撃が重なる。二人の蹴りや拳が重なるたびに衝撃が起こり、離れた場所で見ている小百合たちの足元にまで振動が伝わる。マジカルの表情が苦し気に歪んでいる。フェンリルと攻撃を撃ち合うだけでもダメージがあった。

 

 マジカルの背後からミラクルが空中に躍り出る。

「リンクル・ペリドット!」

 

 ミラクルのリンクルステッキから出た深緑の葉の渦をフェンリルはまともに受けた。

「なにっ!?」

 

 全身に葉っぱがはりついて動きが鈍ったフェンリルに、マジカルの渾身の回し蹴りが入った。ざざっと靴の底がないてフェンリルのしなやかな身体が地面をすべる。フェンリルが通った場所に跡が残り、いくらか土煙が上がった。マジカルは確かな手ごたえの割に吹き飛びもしないフェンリルの姿に眉をひそめる。フェンリルは顔を下に向けたまま不気味な笑みを刻んだ。

 

「効かないねぇ」

 

 顔を上げたフェンリルにミラクルとマジカルの視線がぶつかる。ミラクルはとても嫌な空気を感じた。

 

「どうして? マジカルの攻撃を思いっきり受けたのに……」

「あなた、やはり光の戦士なのね」

 

「その通り。正確には閃光の魔法戦士という」

 

 フェンリルは嫌な笑みを崩さずにマジカルにいった。そしてさらに言葉を重ねる。

 

「伝説の魔法つかいは強力な光のエレメントを持つ魔法つかいだ。だから混沌や闇の魔法を退けることができた。だが、相手が同じ光のエレメントを持つ場合はその力は激減する。その条件はわたしにも適応されるので、本当ならわたしたちが戦っても勝負はつかない。しかし、今のわたしにはロキ様の魔法により、攻撃にのみ闇のエレメントが付加されているのさ。そろそろ自分たちの置かれている絶望的な状況が理解できてきたかい?」

 

 話を聞いていたマジカルの背中に嫌な汗が伝わった。

 

「手と足にだけ闇のエレメントを付加しているとでもいうの? 光のエレメントに闇のエレメントを重ねたら、普通なら反発し合って暴発してしまうわ」

 

「それこそがロキ様の偉大さだ。あのお方は闇の魔法を真に極めている。闇を自由自在に操ることができるのさ」

 

 フェンリルの戦意が燃えて彼女らの間に緊張の糸がぴんと張り詰める。再び戦いが始まる直前にマジカルは言った。

 

「閃光の魔法戦士って何なの?」

 

「消えゆくお前たちが知る必要はないね!」

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